カプ厨がていとくんに憑依転生しました   作:暗愚魯鈍

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今回はメチャシリアスです、色々とおかしい所があるかもしれませんが…気にしないでください。ツッコミどころ満載かもしれませんが気にしないでください

今回は病理さんの過去、何故病理さんがていとくんばかりに構うのか、その秘密が明らかに!そしてあのキャラがほぼオリジナル設定で登場


堕ちた聖母

帆風は暫く考え込んで気づいた。これは木原病理の過去の記憶なのだと

 

(恐らくこの帝督さんの年齢を考えるに…5、6年前ぐらいの記憶でしょうか?)

 

この記憶の垣根を見るに、小学5年か6年だろう。つまり最低でも5年前の病理の記憶なのだと推測する…だがそんな事よりも帆風はある事に注目していた…

 

(ショタな帝督さんが目の前に!可愛らしいです、愛くるしいです、ああ、帝督さんはショタでも素敵です!幼天使です!ショタ督さんです!)

 

そうニンマリと笑って幼い頃の垣根(帆風命名 ショタ督)を眺める帆風、お巡りさんこいつです

 

「おっと、わたくしの愛がスパークリングしかけていましたわ…何故こんな状況になったか考えなければ…」

 

気を取り直して帆風は今の自分の状況について考え始める、恐らくは自分の放電攻撃で病理の電気的な回線に偶然繋がり、彼女の記憶を読み取っているのだろう

 

(……あの人の記憶を読み取るなど大変不本意ですが、解除の仕方も分かりませんし一応見続けてみますか)

 

そう帆風は考えついた。現実世界の自分はどうなっているのか少し気になるがすぐに頭の片隅に追いやる

 

(恐らく現実世界のわたくしは今も放電攻撃を続けている筈。今のわたくしは一種の思念体…いわば魂だけの状態な筈。ならわたくしの身体が急に動かなくなって無抵抗に攻撃される心配はない……と思いますわ)

 

現実世界の自分は今は放電をし続けている筈、ならばこのまま記憶を見続ける事にしようと帆風は結論を出した

 

『ただいまー、ていとくんの帰還だぞお前ら』

 

垣根は病理と共に孤児院の中に入る、そして帰ってきた事を大声で言うと奥から十数人の幼い少年少女達が現れる

 

『あ、お使いお疲れ様ていとくー』

 

『道草せずにちゃんと帰ってきたんだね、偉いねていとく!』

 

『寄り道しなかったのかよ……賭けは俺の負けかよ』

 

『へへ、「帝督が寄り道するかしないか』の賭けは俺の勝ちだな!賭けのデザート献上を忘れんなよ!』

 

『くっそぉ〜かきねなら絶対に寄り道すると思ったのに…変な所で真面目だなこの不良メルヘン!』

 

『ていとくマジメルヘン(笑)』

 

『ていとくの癖に道草食わずに帰ってくるとは生意気だ』

 

『俺キレていい?』

 

帰ってくるなり散々な言われようの垣根、垣根は子供らしく無邪気な笑みを浮かべながら未元物質で槍を形成する。こいつ大人気ねえ

 

『まあまあ、落ち着いてください帝督ちゃん。ほらほら皆もご飯の用意をするので大人しくなっててくださいねー』

 

『『『はぁーい、病理せんせー』』』

 

『チッ……命拾いしたなお前ら、今日がクリームシチューの日じゃなかったら爆発をお見舞いしてたぜ』

 

病理がやんわりと喧嘩を収める、子供達は素直に言う事を聞き垣根もクリームシチューの日だからか言う事を聞く。病理はそんな子供達を見て笑みを浮かべながら車椅子を動かしてキッチンに入る

 

『さてと、昨日作って一晩寝かしておいたクリームシチューを温めて…提督ちゃんに買ってきてもらったこのお肉でハンバーグでも作りますか』

 

クリームシチューを取り出し、それをコンロに起き火を受け温め始める。その間に病理は垣根が買ってきたお肉を使ってハンバーグを作り始める

 

(……普通にお母さんみたいですわね)

 

普通に料理する病理の姿は何処にでもいそうなあふれた母親に見えた、現在の病理とは大違いだ。そんな病理の一面を見て帆風は目を大きく見開く

 

(…これも演技なのでしょうか?それとも…)

 

帆風は木原病理という女が分からなくなった、この記憶を見る前は単なる狂人だと思っていたが…この記憶を見ているとそれが正しいのか分からなくなってくる…現在の狂人である木原病理と過去の母親の様な木原病理…どちらが本当の彼女なのだろうか?

 

『はい、出来ました〜皆〜ご飯の時間ですよ〜』

 

『『『はぁぁい!』』』

 

『ではご一緒に、手を合わせましょう』

 

『『『いただきます!』』』

 

病理は出来たご飯を食堂へと持っていく。子供達はそれを見て大はしゃぎ。病理もそんな子供達を見て笑みを浮かべる。全員で手を合わせ一斉に食べ始める

 

「……演技には、見えませんわね」

 

帆風には病理の笑顔や子供達に対する扱いが演技には見えなかった。どうにも今の病理と過去の病理が重ならない。同一人物である筈なのに別人にも思えてしまう…帆風はさっぱり理解出来なかった

 

『美味しいですか帝督ちゃん』

 

『ああ、マジ病理姉さんの作った料理まいう〜。プロ並みだな』

 

『そんな事ないですよ〜ただ、料理と科学て似てる気がするんですよ。だから病理さんは料理が得意なのです』

 

そう病理の隣の席に座って楽しげに会話する垣根、病理はまるで母親の様な表情で垣根と話していた。それを見て少しむっとする帆風

 

「……昔はどうだったか知りませんが、今は帝督さんはわたくしだけのものですからね」

 

記憶の中の病理に言っても仕方ないが帆風はそう呟いた。まさか病理に嫉妬する日が来ようとは夢にも思わなかった

 

『病理お姉ちゃんのハンバーグ美味し〜!』

 

『病理姉ちゃんて料理も美味いし、家事洗濯もできるし、優秀な科学者だしいいお嫁さんになるな!』

 

『てか、将来僕のお嫁さんになってよ!』

 

『あー!ズルいぞお前ー!こいつのお嫁さんになるくらいならおれのお嫁になってよ!』

 

『じゃあ私も病理先生をお嫁さんにするー』

 

『うふふ、お嫁さんだなんて照れますねー』

 

『いや、でももう無理だろ。だって病理ねーちゃんてもうおばさ……』

 

男の子も女の子もいつの間にか病理を嫁にしたい発言をして、クスクスと病理が笑う。そんな時にある一人の男の子が病理はもうおばさん…と言いかける。するとその男の子の顔面がクリームシチューの中に埋まった

 

『……な・に・か・言・い・ま・し・た・か?』

 

『………イエ、ナニモ』

 

『なんだ、私の聞き間違いでしたか!あ、皆さんは何も気にせずご飯を食べてくださいね』

 

『『『うっす』』』

 

男の子の顔面をクリームシチューの中に叩きつけた病理はにっこり笑顔なのに、全く笑っている様に見えなかった。その顔を見て男の子はなんでもありませんと告げる。もし頭部を病理に掴まれていなかったら土下座していただろう。垣根を含めた子供達は病理にジロッと睨まれ大人しくご飯を食べ始める

 

『まあ、お嫁に行くかどうかはおいておいて…まあ、私も結構歳ですからねー。そろそろ相手が欲しいのです』

 

『てか、病理姉さんていくつ?俺の予想だともう三十越え…』

 

『帝督ちゃん?それ以上言ったらケツの穴に能力開発を行いますよ?』

 

『なんでもないっす』

 

垣根が失礼な発言をしようとしたが病理に睨まれ口を閉じた

 

『では…皆も食べ終わった様ですし…では手を合わせて…ご馳走様でした』

 

『『『ご馳走様でした!』』』

 

食べ終わった後、病理は一人で食器を片付け始め、台所で食器を洗い始める。鼻歌を歌いながら食器を洗う様は本当に母親の様だった

 

『俺も手伝うよ、病理姉さん』

 

『あら手伝ってくれるのですか?助かりますねぇ』

 

垣根が食器洗いを手伝いにやってくる、病理は垣根に食器を手渡し、垣根はスポンジに洗剤をつけて食器を洗い始める

 

『なあ、前から思ってたんだけどさ。病理姉さんはなんで孤児院なんかやってんの?』

 

『はい?』

 

『ほら、病理姉さんて木原一族じゃん?科学者のエリート一族出身のアンタがなんでこんな孤児院の院長なんかやってんの?』

 

垣根はそう病理に尋ねる、彼は帆風と同じく病理が孤児院の院長をやっている事に疑問を抱いているのだろう

 

『う〜〜ん、そうですねぇ。単純に研究に疲れたんですよ』

 

『疲れた?』

 

疲れた、その一言を聞いて垣根は、そして帆風は目を丸くする。彼女がまさかそんな事を言うとは思っていなかったからだ

 

『はい、病理さんは『諦め』のエキスパートです。それと同時にそれ以外の研究を全て『諦め』ました。『諦め』しか自分には才能がなかったんです。人は皆私のことを天才と言いますが…本当の天才、て言うのは加群さんや唯一さん、数多さん、幻生さん、脳幹ちゃん達みたいな人の事を言うんでしょうね』

 

『私なんて所詮は木原にとっての『凡人』、正しい研究者であれと自分で思っていても…木原としての性質なのか歪んだ考えや研究になってしまう。学園都市を守る為とはいえ何人もの人の心を折ってきたか…もう数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいに他人の人生を壊してきました』

 

『私だって好きでこんな人生を歩んでるんじゃないんですよ、私は科学が好きですがこんなロクでもない研究がしたくて科学者になったんじゃない。もっと平和に…平和な世界を実現したかっただけなのに…どうしてこんなに人として歪んでしまうんでしょうねぇ『木原』て存在は…』

 

『結局木原は科学となんら変わりはありません。科学の本質とは生産ではなく破壊です。核兵器しかり、ダイナマイトしかり。科学は破壊の権化です。きっと木原もそんなんでしょうね。破壊する事しか出来ないから誰かを守りたい…そんな事は絶対に出来ない…そう思い知らされました』

 

そう嬉々とした顔で病理は語り出す、だが話の内容は彼女にとって喜ばしいものではない。『諦め』の道を極める為に彼女は何を犠牲にして、何を『諦め』、それでもこの道だけは『諦め』ずにいたのだろう?

 

『そんな時、私は数多さんの様に子供に能力開発をする事になりましてねぇ。私は何人かの少年少女の能力開発を担当する事になりました。その時に私が研究施設兼子供達に能力開発をする施設が立てられました』

 

『……それが、ここ』

 

『ええ、初めは面倒事を押し付けられたと思ったんですよね。子供の相手なんて疲れますし、面倒ですし…そう思ってましたよ。でも子供達と接する内にそんな考えは薄れ、子供達と触れ合うのがとっても楽しくなり始めたんです』

 

そう笑みを浮かべながら語り出す病理、それを黙って聞く垣根。帆風も話に耳を澄ませる

 

『私が能力開発を行った子は置き去り(チャイルドエラー)の子が殆どでした。知っていますか?置き去りを実験動物に非人道的実験を行う研究者はザラにいます……私は置き去り達を救いたいと思い、この施設を孤児院に変えました』

 

『私が引き取り、私が能力開発を行う事でその子達が凄い超能力を手に入れれば…もう迫害される事はないだろう…そう思って…そんな中、私が能力開発を行った子で凄い能力を発現した子がいました…それが帝督ちゃん。貴方です』

 

置き去り、入学費のみ払って子供を寮に入れ、その後に行方を眩ます事。学園都市に子供を捨てる親が後を絶たず、その為に研究者達の実験動物にされたり不当な扱いをされてしまう。そんな置き去りを病理は引き取り、自分が能力開発をして凄い能力を発現させればもうそんな不当な扱いはされなくなると思い、施設を孤児院にした。そんな中金の卵とも言える能力を発現したのが垣根だった

 

『帝督ちゃんは特別でした。私が能力開発した子の中では最優秀な子でした。数多さんの一方通行には負けてしまいましたが…彼に次ぐ程の貴重な能力…新物質による物質の創造。その能力に私は惹かれました』

 

『破壊が科学の本質というのならば…帝督ちゃん。貴方の能力は科学の理想(・・・・・)です。誰かを傷つける為の科学ではなくより良い世界を作る為の科学。そんな能力に私は希望の光を見つけたんです』

 

『科学を悪用してしまう木原である自分とは違い、能力(科学)を平和の為に使う事が出来る。そう思ったんです帝督ちゃんを見て』

 

そう綺麗な目で彼女はそう告げた。彼女の笑みは太陽の様に輝いている様に帆風は見えた。その顔には帆風が知る『狂人』木原病理の姿はない。どこか夢を見ている少女に思えた

 

『……俺はそんな大層な奴じゃねえよ。単なるカップリングが好きな変人だ』

 

『ええ、そうかもしれませんね。でも構いません。きっと貴方はその能力を悪用したりはしませんでしょう。きっと何かを守る為…自分がなすべき事を成し遂げる為に使う筈です。私はそう信じていますから』

 

『……過大評価過ぎるっての』

 

過大評価のし過ぎだと垣根は照れ隠しか病理から目を逸らした、そんな垣根を見て微笑ましく思う病理

 

『ふふふ、お手伝いありがとうございます帝督ちゃん。またお手伝い頼みますね』

 

『おう』

 

食器洗いを終えた後、垣根はキッチンから立ち去っていく。洗い物を終えた病理はそのまま、テレビがある大広間に移動する

 

『あ、病理センセー!この本読んで!』

 

『はいはい、いいですよ…ふむ、桃太郎ですか。これは何回も読み聞かせてますね…なら、特別に病理が即興で考えた桃太郎をお話ししましょうか』

 

『まじかよ!?即興でお話考えたの!?』

 

『聞きたい、聞きたい!』

 

『では…病理さん版桃太郎の始まり、始まり〜』

 

女の子が持ってきた桃太郎の絵本を見て病理は何回も同じものを読み聞かすのは退屈かと考え、即興で考えた新約 桃太郎を子供達に語る事にする。それを聞いて目を輝かせる子供達。そんな期待に溢れた子供達を見て病理は笑って物語を話し始める

 

『では、昔々ある所に桃太郎という筋肉隆々の身長2メートルを超える巨漢がいました。剣術家のお爺さんと少林寺拳法の達人のお婆さんに鍛えられながら育てられた桃太郎は、都を襲う鬼畜生供を退治すべく、ニホンオオカミ、ゴリラ、オウギワシを連れて鬼退治に…』

 

『『『凄えツッコミ所満載なんですけど!?』』』

 

そんなの桃太郎じゃねえ!とツッコミを入れる子供達、そんな子供達を見てくすりと笑う病理…そんな様子を見ていて帆風はつい頬を緩めてしまった

 

(今のあの人からは想像できませんわね…まさか、こんなにも楽しげな記憶があったなんて)

 

帆風は今まで病理は垣根の人生を狂わした血も涙もない狂人かと思っていた。だがこの記憶を見ていると単なる狂人ではないと思う様になった…そんな風に彼女が考えていると…世界が歪み、別の光景に変わり始めた

 

 

気づくと帆風は孤児院の外に立っていた、先程中にいた子供達は外でボールを蹴って遊んでいたり、鬼ごっこをしたりと遊んでおり、病理はそんな子供達を見て笑っていた

 

(……記憶の移り変わり、でしょうか?)

 

この光景は先程とは違う記憶だと帆風は直感で分かった

 

「……帝督さんは…いない様ですね」

 

帆風は垣根はいないのかと色々と見渡す、だが幼い頃の垣根の姿は見えない。ここにはいないのかと帆風は思い始めたその時だ

 

『あ!そこのお兄さん!私のボールとってくれませんかー!』

 

ボールがコロコロと転がり、コツンと白衣を着た男性の足に当たる。そのボールを蹴った少女がボールをとってくれとその男性に向かって叫ぶ。男性はそのボールを見て、ニヤッと笑うとボールを蹴り少女の顔面へと飛ばした

 

『あぅっ!?』

 

『『『!?』』』

 

『はぁ〜い、ちゃんと返してあげたよ。お兄さんは優しいからね〜』

 

そう不気味な笑みを浮かべて男性は笑った、突然の出来事に驚く病理と子供達。だがその動揺もボールが顔面に当たった女の子が泣き始めた事で何人かの男の子達が女の子へと駆け出す

 

『だ、大丈夫か!?』

 

『うぇえぇぇ…痛、い…痛いよぉぉぉ』

 

『お、おいおっさん!何しやがるんだ!』

 

『ん?返してて言ったから返してあげたんだよ』

 

痛みで泣く女の子を見ても、男の子に怒声を浴びせられても、その男はにっこり笑顔で自分何かしました?とでも言いたげな顔をする

 

『大丈夫ですか!?そこの貴方……!私の子供達になにを…!?』

 

病理が男性に怒声を浴びせようとした、だがその男の顔を見て病理は顔を固めてしまった。何故ならその男性のことを知っていたからだ

 

『………相似?』

 

『やあ、病理姉さん。久しぶりです』

 

その男の名は木原 相似(きはら そうじ)、病理の()であり、同じ研究者でもある男だ

 

『な、ぜ……ここに?』

 

『姉さんに会いに来たんだよ。でも、まさかこんな治安の悪い地区でこんなお子様の相手をしてるなんてね。僕も驚いたよ』

 

相似は子供達を一瞥し病理へと視線を向ける、病理は相似を軽く睨む

 

『ちょっと、怖いよ姉さん。なんでそんなに睨むのさ?』

 

『なんで、睨むの…ですか。貴方は、忘れたんですか?18年前、貴方が一人の少女を実験で殺したことを!?』

 

18年前、まだ十代後半だった病理は自分の当時の友人であった超能力者の少女がいた。彼女の超能力は珍しいもので、詳しい能力の詳細は不明だった。なので友人である病理とその弟 相似でその能力がどの様なものか調査していたのだ

 

だが能力の暴走を相似が誘発し、その少女は死んでしまった。病理は自分の友人の死を悲しんだ。だが元凶である相似はこう言ったのだ

 

 

『えぇ…あっさり死んだなぁ。まあいいか。新しい超能力者(モルモット)を探そっと』

 

 

彼は人の死など興味がなかった。この一件からだろうか、病理が彼を避ける様になったのは

 

 

『………あぁ、あの実験か。姉さんてあんなちっぽけな事をまだ気にしてたの?』

 

『ちっぽ………!?何を言ってるんです!命にちっぽけも何もないでしょう!?』

 

『チッチッチッ、甘いな姉さんは。僕にとってこの世には二種類の人間しかいないのさ。実験する人間か実験される人間。ね?シンプルでしょ?』

 

そう笑顔で言い放つ相似、その顔にはなんの悪意もかけらもない。子供の様な純粋な笑みを病理へと向けていた

 

『相似ッ……!!貴方は……!……いや、貴方にはなにを言っても無駄ですか…で、何の用です?』

 

病理は相似に何か言いたげな顔になるがこの弟にはなにを言っても無駄だと言いだしかけた言葉を飲み込む

 

『ああ、そうだった。どうでもいい話のせいですっかり忘れてたよ!実はさ、僕今度新しい実験に参加するんだ!』

 

そう楽しそうな顔で喋り始める相似

 

『『暗闇の五月計画』ていう置き去りを利用した計画なんだけどね、僕今度の主任になっるんだ!』

 

『それはおめでとうございます』

 

『うん、凄いでしょ!』

 

病理は興味なさげに返す、そんな態度をとる病理を見ても一切気にしない

 

『で、姉さんの所の置き去り…何人かくれない?実験サンプルは多い方がいいと思ってさ』

 

『…………は?』

 

相似が笑みを浮かべてそう言った、病理の顔から感情が消えた

 

『何を……言ってるんです貴方?』

 

『え?何その怖い顔?別にいいでしょ?置き去りなんて死んでもいい科学者に(・・・・・・・・・・・)とって丁度いい実験動物(・・・・・・・・・・)なんだからさ』

 

そうニッコリと笑って相似は言った、自分は何も間違ってことは言っていないのだとでも言う風に。まさに吐き気を催す邪悪、悪事を悪事と思わない下劣、畜生以下の外道である

 

『……帰ってください、私の子供達はそんな下らない研究に使っていいものじゃないんです』

 

そう冷たい声で病理は言い放った、それを聞いて相似は驚いた顔をし……何か失望した様に頭を振る

 

『……はぁ、姉さんはここまで腐ったのか。仕方ない今回は帰るよ、今回は……ね?』

 

そう言って白衣のポケットに手を突っ込みながら立ち去る相似、彼が完全に消えるまで病理は彼を睨み続けていた

 

『………せんせー、怖い顔してるよ?大丈夫?』

 

気づけば先程相似に顔面にボールをぶつけられた女の子に服の裾を掴まれていた。他の子供達も心配した目で病理を見つめていた

 

『……ええ、大丈夫です。怖がらせてすみません。病理さんは元気ですよー、おー!』

 

病理は子供達に心配をかけまいと、元気よく腕を上げる。それを見てクスクスと笑い始める子供達…そんな子供達を見て病理は笑顔を浮かべながら改めて決意したのだ。この子達は自分が絶対に守ると

 

(そう、今まで沢山のものを取り零してきた私だからこそ、もう絶対に取り零さない。この子達は学園都市の闇から…守ってみせる)

 

そう内心で固く誓う病理、そんな思いが帆風にも伝わってきた。この思いに偽りはないと理解した

 

(……なら、何故貴方は…帝督さんの友達を…?)

 

だから分からなかった、何故彼女が孤児院の皆に手をかけたのか。今の言葉に偽りはなかった、だが垣根の話では病理が孤児院の皆を殺したのだ。一体何があればこの病理が子供達を殺すのか…帆風には分からなかった。するとまた世界が歪み色が変わり始める

 

 

(また、記憶の移り変わりですか)

 

帆風が立っていたのは孤児院の入り口の前だ。病理は何処かに出かけるのかいつものパジャマではなくスーツを着ていた

 

『明日の朝には帰りますからねー、皆さんいい子で過ごすんですよー?』

 

『『『はぁい!病理先生!』』』

 

『任しときな病理姉さん、俺がこいつらの面倒を見るからよ』

 

『……帝督ちゃんが一番の心配なんですけどねぇ』

 

『ひでぇ!?』

 

『『『あはははは!!』』』

 

『うふふ、冗談です』

 

そう軽口を言って病理は手を振りながら車椅子を動かして孤児院から遠ざかっていく。口ではああ言ったが垣根は年の割にはしっかりしているし、料理を作れる子供達も何人かいるので然程心配していなかった…だが、何故か胸の中に少し不安が宿っていた

 

(……ま、気にし過ぎ…なんでしょうね)

 

そう思って病理は車椅子を進ませる、それが分水嶺だとは気付かずに

 

 

病理が行ったのは木原一族総出の宴会…というよりも研究成果の発表会の様なものだ。自分が能力開発した子供がどうなの、新しい論文がどうなのを無駄に長く語り合うつまらない時間だ

 

『はぁ、やっと終わりましたよ…あんな無駄な時間はもうこりごりです』

 

彼女はそう言って孤児院への帰路へとついた。腕時計で確認するともう朝の7時だった。もう全員起きている頃だろう

 

『皆さん、病理さんのお帰りですよ〜…て、あれ?』

 

病理が帰ってきたというのに誰も来ない、その後も何度もただいまと言ってみるが誰からの返事もない。何か嫌な感じがした病理は子供達の部屋を見回るがどの部屋にも子供達はいなかった

 

『……!?ゆ、誘拐!?い、いえ…そんな筈……いえ、まだ地下室を見てません…あそこにいるとは思いませんが…一応確認を』

 

病理は焦りつつも冷静を装い、地下室へと向かう。何故か地下室に近づく度に嫌な感じがするのだ。そして病理は地下室の対能力者用のテスト空間の部屋の扉を開け…目を見開いた

 

『こ、れは……一体?』

 

それは惨劇の光景だった、孤児院の子供達が全員無惨な死体となって転がっていたのだ。鮮血が白かった空間を染め上げ肉塊がゴミの様に散らかっていた…そしてそんな血生臭いグロテスクな空間に美しい天使の様な羽を生やした少年が倒れていた

 

『……帝督、ちゃん?』

 

その少年は垣根帝督だった、彼は病理が見たことのない羽を背中に生やしながら部屋の中央で死んだ様に倒れていた

 

『帝督ちゃん!なんですかこの状況は!?』

 

垣根からの返事はない、気を失っているのだ。そして病理が近づいて垣根に何か言おうとしたその直後だった

 

『いやぁ、その子凄いねえ病理姉さん。流石姉さんのお気に入りなだけはあるね』

 

『!?』

 

その声の主を病理は知っていた、そして理解した、この惨劇を作り出したのは…こいつだと。病理は顔を動かし後ろへと振り返りながらその男に呪詛の如き叫びを上げる

 

『木原ァ相似イイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!』

 

『姉さん声を抑えてよ、煩いよ?』

 

木原相似は病理へとそう、笑顔を向けた

 

『貴方…何故、私の子供達に手を出したんです!?』

 

『いやさ、前に言ったじゃん。暗闇の五月計画で姉さんの子供を何人か貰いたいてさ。姉さんがダメって言ったから…じゃあ勝手に使わせてもらおうて思ったんだ』

 

そう笑顔で最低なことを抜かす相似

 

『まず手始めに、何人かの子供達を車の中に入れて第一位の演算パターンを無理やり植えつけて凶暴化させたんだ。ウチにも黒夜ていう問題児がいてさ…おっとそれは今はどうでもいいか。まあ、簡単に言えばそこの帝督君…だっけ?その子以外を全員洗脳してさ、その子に殺させようと思ったんだ』

 

『…!?何故です!?』

 

『だってこの子は第一位の一方通行の次に注目されてる第二位でしょ?なら、その子の精神をとことん追い詰めればどうなるかな〜て思ってさ。で、結果はその羽だよ。それと子供達全員死ねば姉さんも善人気取りやめて僕らと同じ世界に戻ってきてくれるかな〜て思ってさ』

 

つまりは、子供達が死んだのは全てこの男の自分勝手な理由ということか?そう思うと病理は全身から溢れんばかりの怒りが湧いた。こんな男に自分の子供達は殺されたのかと

 

『まあまあ、そんなに怒らないでよ姉さん。所詮は置き去りの命(・・・・・・)だよ?別に死んでもいいじゃん』

 

その一言がトリガーだった、病理は車椅子から鉈を取り出し車椅子を高速で移動させ相似の心臓めがけて身体に鉈を差し込んだ。肉を潰す感覚が鉈越しに伝わった。相似は口から血反吐を吐き出す

 

『グフッ………!?……ふ、ふふ。いいよ姉さん。その顔最高にいいよ』

 

血の繋がった実の弟を鬼神の如き怒りの形相で睨む病理、そんな姉の顔を見ても相似は笑っていた

 

『そうだよ、姉さん…姉さんには善人なんて似合わない…姉さんは狂ってるからいいんだ。そう、木原らしい姉さんは僕は好きだなぁ…』

 

そう、遺言を残す様に病理へと話しかける相似

 

『姉さんは人殺しだよ、そんな姉さんが誰かを抱きしめる権利なんてな…』

 

『もう黙りなさい』

 

病理は無感情に鉈を相似の身体から引っこ抜き、相似の首を切断した。弟の首が床に転がる…そして病理は気づいた。垣根が意識を取り戻し呆然と立ち尽くしている事に

 

『帝督ちゃん!?』

 

病理は鉈を投げ捨てて垣根に駆け寄る

 

『病理………姉さん、俺…皆を……この手、で…この翼で殺し……』

 

『しっかりしてください!貴方は何も悪くはありません!悪いのは……』

 

『違う、殺したのは俺…俺、俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺なんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

垣根はそう叫ぶと翼が更に巨大化し、周囲の空間が歪み始める

 

(これは……RSPK症候群!?)

 

能力者が自律を失い、自身の能力を無自覚に暴走させる現象(ポルターガイスト)。垣根は子供達を殺したトラウマと自信を責める過度なストレスによりRSPK症候群を引き起こそうとしているのだ

 

(これだけの規模をたった一人で!?)

 

そう病理が冷や汗をかく…このままでは第十学区が垣根の能力の暴走で崩壊してしまうと…だが、垣根は突然意識を失い、ピタッと能力の暴走も収まった

 

(……助かった?)

 

病理は垣根の脈を確認する、死んではいない。気絶しただけだろう…だがこのままでは垣根は子供達を殺した自責でまたRSPK症候群を起こしてしまうかもしれない…そのトラウマの記憶がある限り

 

『……ならそのトラウマの記憶を改竄(・・)するしかないですね』

 

ならばその記憶を改竄してしまいえばいい、と病理は一人で呟き垣根を両手で持ち上げ地下室のある部屋まで連れて行く…そこには学習装置(テスタメント)と呼ばれる機械がある。本来は技術や知識を電気信号として、脳に直接インストールする装置だが…病理はこれで垣根の記憶を改竄する気だ

 

『帝督ちゃんの記憶を改竄すればもうRSPK症候群は起きない筈……可哀想ですが、子供達の記憶を忘れ……』

 

そこまで言いかけて病理は学習装置を操作する指を止めた

 

(いえ…そもそも帝督ちゃん達は何故相似の下らない実験に付き合わされたのでしょう?)

 

病理は頭の中で思考する、何故こんな事になったのかと…そして一つの結論に辿り着いた

 

『……私のせいですか』

 

自分がいたから子供達は死ぬ羽目になった、自分が孤児院など開かなければ子供達は死ななかったのかもしれないのに

 

『……何が、置き去り達を助けたい…ですか…!全然助けてないじゃないですか!寧ろ助けられたのは私の方…!』

 

彼女は絶望した、結局自分には誰も助ける事が出来ないのかと…そしてベットの上に寝かせてある帝督を一瞥する

 

(…私と一緒にいればまた帝督ちゃんも危険な目にあうかもしれない)

 

それだけはダメだ、自分にはもう垣根しかいないのだから。だが自分に何ができる?何も守れない女に垣根を学園都市の闇から守れるのか?

 

(……全部『諦め』てきた私ですが…帝督ちゃんだけは『諦め』たく…ありません)

 

そう決意を固め、病理は学習装置を操作し直す。垣根の記憶を改竄し…二度と自分に関わらせない…いや、子供達を殺した犯人(・・)である自分を恨ませる為に

 

『……帝督ちゃんが殺した子供達は私が全員洗脳して帝督ちゃんを殺す様に仕向けました』

 

そう改竄した、敢えて子供達と過ごした記憶は消さないでおく。その方が病理に対する憎しみが大きくなるだろうから。それから色々と記憶を消したり改竄する。病理との楽しかった日々を…消去した

 

『……これでいい、私といると不幸になるのなら…嫌われればいい。なにせ私が子供達を殺した様なものですから』

 

そう彼女は笑った、相似があんな事をしたのも元は自分のせいだと思っていたから。なら、自分の罪を償う方法はただ一つ。垣根に殺される事だ

 

垣根はこの後学園都市の闇…暗部に身を堕とす事になるだろう。ならそんな闇の中でも負けない様に自分が憎悪の種になろう。復讐を果たすまで垣根はそれまで死なないだろうから

 

病理は泣いていた、自分の息子(・・)の記憶から病理と彼の楽しかった日々の記憶消す事に。だが『諦め』よう。それで息子が助かり、残酷な世界生き延びる糧になるのなら

 

『……結局、私も木原の宿命からは逃れられないんですねぇ』

 

そう悲しげに呟いてから、病理はボタンを押した。これで記憶の改竄が終わり…彼から病理との楽しかった日々の記憶が消される

 

『……さようなら帝督ちゃん』

 

そう涙を流しながら病理は車椅子を動かしながら地下室から立ち去っていた

 

 

これは彼女にとっての下らない人生における唯一暖かかった頃の思い出の終わり。この日、彼女は『優しかった母親』から『木原の狂った科学者』になる事を誓った。全ては…垣根帝督の為に

 

 

 

 

 

 

 




相似の事はまだよく分からないままなのでオリジナル設定で病理さんの弟にしときました。そしてこいつが全ての元凶。このシスコンめ!てか、縦ロールちゃんのセリフが殆どねえ(白目)

病理さんの暴走は良くも悪くも木原…だからでしょうかね。ていとくんに構ってた理由は単純明快、強くなって欲しいから。強くなって自分を殺して欲しいから。そんな歪んだ愛情故です

ん?色々設定とか展開がおかしい?安心してください、自覚はある。てか最近面接練習で忙しいから書く暇がない(白目)。少し更新が遅れるかもですがこれからも頑張るのでよろしくです!

次回もお楽しみに!
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