カプ厨がていとくんに憑依転生しました   作:暗愚魯鈍

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今回は病理戦決着です。縦ロールちゃんvs病理さんの最終決戦です。病理さんが最後にどうなるのか…是非お楽しみに

そしてこれは私事ですが……今週の火曜日に面接本番があるんですよ…うわぁ緊張するなぁ…てか、そろそろ面接合格しないとマジでヤバい…てな訳で頑張るぞ!




さよなら

「こんな、事が……」

 

帆風は病理の記憶を…彼女の悲しい過去を、そして真実を知って涙を流していた。確かに病理は善人とは言い難い、加群の生徒を殺す為に罪もない男の子を洗脳し通り魔に仕向けたり、学園都市に何度も混乱を起こした。だがあの木原相似という男が子供達をあんな目に合わせなければ…彼女も狂わなかったのではなかっただろうか

 

「何故…この人は……」

 

帆風がそう言いかけた、その時だった。腹部に拳を突きつけられた様な激痛が走った

 

「かぁ……!?」

 

すると痛みと共に世界が消え始める、恐らく病理との電気的な回線が先程の激痛で途切れた事に

 

 

「かはぁ……!?」

 

帆風は地面を転がる、帆風は何が起こったのか分からなかったが空中に静止する病理の背中から一本の腕が生えているのを見て全て理解した

 

(放電を止める為、背中から腕を生やして腹部に突きつけ吹き飛ばした…そういう事ですか)

 

病理は左手で頭を押さえながら地面へと降り立つ、何故か苦しそうな顔をして帆風を睨む

 

「………潤子ちゃん、貴方私の記憶を見ましたんですか?」

 

「!?」

 

病理の言葉に驚きを隠せない帆風、病理は忌々しい顔をする

 

「……はぁ、今まで隠してた事が全部バレちゃったじゃないですかー。あのアレイスターでさえも知らなかった事なのにまさかバレてしまうなんて…病理さんうっかりです」

 

そうあくまで茶化した様な態度をとる病理だが今までと比べると少々余裕のない様に思える

 

「……質問、いいですか?」

 

「………どうぞ」

 

帆風は質問してもいいかと尋ね、病理は少し間を空けてから構わないと頷いた

 

「先程アレイスターさんも知らなかった…と言いましたがそれはどういう意味です?」

 

「簡単ですよ、子供達との楽しい時間を盗み見されない様に滞空回線を衝撃波で壊す装置を建物の中に配置してありましたから。滞空回線は衝撃や爆風に弱いですからね」

 

「…何故加群さんの生徒に通り魔を仕向けたのは何故ですか?」

 

「気に食わなかったんです、私と同じ様な事をしてるのに私と違って挫折しない彼に。だから彼も私が味わった絶望を与えようとしたんです…まあ、帝督ちゃんに妨害されましたが」

 

「何故学園都市を襲ってきたんですか?」

 

「憎かったんですよ、子供達か殺される間接的な原因になった学園都市が、置き去りを利用して実験を行う学園都市が許せなかった」

 

「そうですか…では最後の質問です」

 

いくつか病理に質問する帆風、そして最後に一番気にしていた事を質問する

 

「……貴方は……辛くなかったんですか?」

 

それが帆風が一番疑問に思っていた事だ、自分が元凶ではないのに垣根にわざと嫌われ、憎悪を向けさせ殺されようとしている…それが辛くないのかと尋ねる…そして病理はその質問に答えた

 

辛いに決まってるでしょう(・・・・・・・・・・・・)

 

そう病理は簡潔に言った

 

「帝督ちゃんと別れるのは辛かったです。本当は帝督ちゃんと一緒に過ごしたかった、でも、それではダメなんです…また、相似の時の様に私といれば不幸な目に合うかもしれない…それならいっそ恨まれた方がいい。その方がいいと私は『諦め』たんですよ」

 

そう悲しげな顔で病理は笑った。自分も他社も何もかもを『諦め』させてきた女の末路がこれだ。そう皮肉げに笑う病理を見て帆風は口を開いた

 

「……このお馬鹿さん!」

 

帆風は病理を睨みつけて大声で怒鳴った

 

「自分といればまた帝督さんが傷つく?そんなの憶測でしかないでしょう!そんな自分を悲劇のヒロインみたいにするだけの自己犠牲なんか要らなかった筈です!貴方が側にいて帝督さんの心の傷を治していく方法もあった筈です!」

 

「…………!?貴方に、貴方に何が分かるんです!その時の私の気持ちが貴方に分かるとでも言うんですか!?」

 

帆風のその叫びを聞いて、病理は一瞬目を見開き…即座に反論する為の口を開く

 

「子供達が死んだ原因である私といればまた帝督ちゃんが不幸になる!だから立ち去ったんです!」

 

「いいえ、違います!貴方は逃げたんです!自分の罪から!帝督さんの為と口で言いながらも、結局は自分の罪から逃げただけです!」

 

「違う!私は逃げてなんかいない!あれが、最適解だったんです!帝督ちゃんは私といれば、また不幸に…」

 

「自分の罪から逃げるなッ!!!」

 

「!?」

 

帆風の一喝が周囲に轟く、思わず病理が目を見開いて押し黙る

 

「貴方は逃げてるだけです!自分の罪からも、帝督さんからも!貴方がやっている事は全て八つ当たりです!学園都市を襲うのも、加群さんを意識するのも、女王達に手を出したのも…貴方の八つ当たりです!子供達を助けられなかった怒りを学園都市に向けて関係ない人まで傷付け、自分が子供達を助けられなかった怒りを同じく子供達と接している加群さんにぶつけ、帝督さんと本当は仲良くしたいのに自分の罪から逃げたせいで出来なくて、その怒りを女王達に向けた…貴方がやってきた殆どの行いは全て単なる八つ当たりなんです!子供の癇癪みたいな下らない行いなるです!」

 

「ーーーーッ!?」

 

病理が行なっていることは全て八つ当たりだと言い切る帆風、そこまで断言されて病理は何を言うのか悩む…だが病理は彼女が口を開くより先に喋り始める

 

「……ですが、貴方が帝督さんの為に動いているのは理解しています。行動こそ歪んでいますが…貴方の行動理由は帝督さんを思っての行動。それだけは…わたくしは素晴らしいと思います」

 

そう、いくら行動が歪んでいても、関係のない人を巻き込もうとも、その行動が尊敬できるものでないとしても…病理の今まで垣根にしてきた行いは全て垣根自身の為だった。そこだけは認めていると帆風は呟く

 

「だから納得できないんです、何故貴方は逃げようとするんですか?記憶を書き換えなくても…貴方が側にいれば帝督さんは暴走しない筈です…だって貴方は…帝督さんの母親なんですから」

 

「…………………………………私には、そんな資格はありませんよ」

 

帆風の言葉を病理は頭を振って否定した、自分にはそんな資格はないのだと

 

「貴方には分かりませんよ、私の気持ちなんて。ええ、貴方の言う通り私が側にいれば帝督ちゃんを救えたかもしれない…でも私にはそれができなかった…耐え切れたかったんです。貴方と違って…私は弱いんですよ。潤子ちゃんみたいに強くなかったんです」

 

自分には耐えられたかった、自分は帆風の様に強くなかった。だから仕方ないのだ、そう病理は言う…その顔はどこか儚げで哀愁が漂っていた…だが帆風はバッサリと切り捨てた

 

「それは言い訳ですよ病理さん(・・・・)、貴方はただ勇気がなかっただけです」

 

「………勇気?」

 

「ええ、貴方が一歩でも自分の罪を抱え込む勇気があれば…貴方はあんな決断をしなかった。自分が弱かったからではなく…貴方には勇気がなかった…それだけです」

 

強い弱いは関係ない、勇気があればそんな選択をとることなどなかった筈だと帆風は言った。ほんの一握りの勇気さえあれば病理は自分の罪を抱え込みながら垣根の心の傷を癒す道を選ぶことが出来ただろう…だが彼女は逃げたのだ、自分の罪の重たさに背負うことが出来ずに、安易な道を選ぶことで逃げたのだ。垣根からも、罪の重さからも、責任からも何もかもを

 

「結局貴方は心が弱かったから何もかも捨てて逃げ出した。全部貴方の自己責任、自業自得です。ですから自分を悲劇のヒロインみたいに言わないでください」

 

他者が聞けば冷たい言葉だと思うだろう、だがこれは正論だった。帆風は何も間違ってなどいないのだから

 

「……ふふ、厳しいですね潤子ちゃんは」

 

それを聞いて病理は自嘲地味に笑った、これが自分と彼女との差なのかと

 

「……確かに貴方の言う通りかもしれません。いえ、きっと貴方が正しいのでしょう」

 

そう病理は背中に展開した三対の黒い翼の内、四枚の翼を消す。そして彼女の身体に黒いラインが刻まれる。そして残った一翼の翼が巨大化し邪悪に輝く

 

「ですが、私は私が選んだ道を曲げるつもりはありません。間違っている?そんなのおかしい?それで結構。私は私が選んだ道を最後まで歩み続けましょう。例えそれが間違っていても、最悪の結果を生んでしまったとしても…これが私が…木原病理が選んだ道です。それを『諦め』たりしません」

 

それが彼女の答えだった、例え自分が選んだ選択が間違っていたとしても…もう今更選択肢を変えることなどできないし、するつもりもない。選んだのなら最後まで進み続けよう。その結果自分が死に、愛した者に最後まで憎まれ続けようとも…それが自分が選んだ道なのだから。それを茨の道とは思わない、自分がそんな道を選んでしまったのだから

 

「だから、手加減抜きで全力で殺しに来てください潤子ちゃん。今更同情して殺せないとかさむーい展開はなしですよ?」

 

「………それがお望みなら」

 

対する帆風も自身の背から展開されている虹色の翼を更に巨大化し、虹の輝きを増す。そして頭の上に七色に色を変える光輪が出現する

 

片や悪魔や堕天使を連想する漆黒に輝く黒き翼に身体中に悍ましい黒のラインが刻まれた病理()、片や丸で絵画に描かれし天使の如き美しい姿と美を超越した虹の翼を持つ帆風()…対称的な二人はお互いを睨みつけ…激突を始めた

 

「来なさい神の神秘(ラジエル)神の力(ガブリエル)!」

 

まず仕掛けたのは帆風からだった、彼女は天使崇拝(アストラルバディ)でラジエルとガブリエルをその身に降ろし、翼で飛翔しながら魔術による戦闘を行う。宙に現れし無数の魔法陣、そこから雷撃が迸り、火炎が放射され、暴風が吹き荒れ、大地は隆起し、吹雪が発生する超高等魔術が病理へと放たれ病理は音速を超える速度でそれらを回避していく

 

「甘い……ですわ!」

 

だがラジエルの天界の魔術はこれだけではない、レイヴィニアの召喚爆撃に似た光の大爆発や太陽よりも輝くプロミネンスの如き火柱、降り注ぐ流星群、次元ごと万物を裂こうとする斬撃波、意識を奪う魔の音色…十字教の様々な伝承を再現する神秘の一撃が病理へと襲う。一撃一撃がラジエルの魔術の膨大な知識とガブリエルの天体制御(アストロインハンド)で星々の配置を変え術式の強化を行う事で極限まで強化された一撃だ、たった一発で人一人を10回殺してなおお釣りがくる威力を誇る…だが

 

「甘いのはそちらですよ潤子ちゃん!」

 

病理は反転物質(アンチマター)により身体の構造を変え、恋査の様に他者の超能力を引き出す、一方通行の反射で魔術を逸らしながら病理へと迫り、ベクトル操作で強化された拳を彼女へと放つ

 

「ッ!?神を見る者(カマエル)神の監視者(ザフキエル)!」

 

それに対し帆風はカマエルとザフキエルを降ろす、ザフキエルの超スピードで拳を避けつつ、病理へと回し蹴りを放ち病理は翼でガードする。カマエルの身体能力の大幅な向上とカマエルの如き格闘術の修得、それに加えザフキエルの神速が加われば神速の格闘戦を可能とする

 

「はぁ!」

 

接近戦ならば聖人の一人や二人をも圧倒する力を宿した帆風はコンマ1秒で病理へと接近、その拳を思い切り病理へと叩きつける。それは丸で大砲の様な一撃。だが病理は翼を盾にし無数の羽根にしてばら撒く事で衝撃を拡散、もう一方の翼で槍の様に刺突し帆風は左腕で翼を殴りつけ粉砕する

 

「剛力ですねぇ…野蛮ですが力こそ全て。さっきの魔術と違って単純だからこそ対処に困りますねー」

 

魔術ならば一方通行の能力で反射すれば良い、だが帆風の拳は反射の演算を超える速度で拳を打ち込み無効化してくる。単純な強さ故対処が難しい…先程の魔術特化と違うベクトルで厄介だ

 

「ですが、この身体の前では無力です」

 

「ーーーッ!」

 

だが病理の身体は反転物質で構成されている、故に破壊されても即座に再生可能。しかも完全に消滅しても反転物質さえあれば何度も復活出来る。帆風もそれに気づいたのか新たな天使を宿す

 

神の正義(ザドキエル)神の如き者(ミカエル)!」

 

帆風が宿したのはザドキエルとミカエル、ミカエルは言わずとも知れる最強の天使、そしてザドキエルはあの堕天使アザゼルと同一とされるザフキエルを宿した。ザドキエルの能力は記憶に関する力だけでなく、アザゼルの人間に与えた叡智 武器や魔道具の創造の能力がある。帆風は数百の魔の武器を作り出し病理へと一斉に投擲する

 

「数が多ければいいてもんじゃないですよ」

 

病理はそれを翼で羽ばたき空を飛翔して避ける、帆風はそれを追尾する様に武器を投擲するが病理は悉くそれを避け、紫色の原子崩しを放つ。帆風はそれを作り出した鏡で反射。その隙に帆風はミカエルの炎の剣で病理を斬りかかる。病理は左手を大剣に変化させる事で帆風の剣を防ぐ

 

「なら、これなら……!」

 

ならばと帆風は左手を掲げ、空中に十数個の魔法陣を展開。そこから暴風や水流を放つ。ラジエルとガブリエルと比べると見劣りするがこれも強力な一撃で病理は左翼でこれを防ぎ、帆風は病理から距離を取る

 

「臨機応変に攻めて来ますねぇ…ですが、その能力はオールラウンダー系…つまり先ほどの二つより平均的に優れている分、何かに尖っていない。なら対処はしやすいです」

 

「……その様ですわね」

 

魔術特化のラジエルとガブリエル、接近特化のカマエルとザフキエル、器用万能のザドキエルとミカエル。どれも病理には通用しない…ならば

 

神の王国(サンダルフォン)神の代理人(メタトロン)!」

 

魔神としての帆風の名前でもある天使と垣根の魔神としての名の天使を降ろし、右手に巨大な剣を顕現させる。そして病理をサンダルフォンの力で結界に閉じ込め、メタトロンの力で結界ごと病理を光の杭で串刺しにしようとする

 

「!?くっ!」

 

病理は翼を繭上に閉じて光の杭から身を守る。帆風は右手の剣を天へと突き上げ空から無数の聖光を放ち病理を焼き尽くそうとする…だが病理は右翼の翼で聖光を防ぎ一方通行の能力で左翼が勢い良く羽ばたかれ竜巻が発生する。帆風はサンダルフォンの歌を歌う能力で自身の声を衝撃波に変える事で竜巻にぶつけ消滅させる

 

「まだ終わってませんよ!」

 

「!?」

 

病理は空へと飛び立ち、太陽を背にして帆風を見下ろす。そして反転物質の翼の隙間を抜けた太陽光が目に見えないレーザー光線となって帆風に降り注ぎ帆風の肌や服に所々傷を負う

 

「ッ!?」

 

「逃げても無駄ですよ、光からは逃げられない。私のレーザー光線は光の速度と同速。それに太陽が空にある限り攻撃から逃れる事は出来ません」

 

帆風は慌てて逃げようとするが光の速度からは逃げられない、この攻撃を防ぐには太陽が雲に隠れるなどして太陽が消えてしまわないといけないのだから

 

「でしたら…神の薬(ラファエル)神の栄光(ハニエル)!」

 

帆風が降ろしたのは癒しの天使 ラファエル、そして寵愛の天使 ハニエル。まずはラファエルの力で傷を治癒。更にラファエルを降ろした状態ならどんな怪我も自己再生出来る。そしてハニエルの五大元素を操る能力で地面を粘土の様に柔らかくし病理の身体に纏わせて拘束しようとするが病理はこれを反転物質の翼で振り払った

 

(……これは困りました、ラジエルとガブリエルの魔術戦も、カマエルとザフキエルの接近戦も、ザドキエルとミカエルの万能性も、切り札のサンダルフォンとメタトロンも決定打にならないとは…ラファエルとハニエルはどちらかというと攻撃的ではありませんし…弱りましたわ)

 

ラファエルとハニエルの能力は攻撃よりも、相手や味方の傷を癒したり、相手の気持ちを和らげ敵意をなくしたりなどの平和的な能力だ。攻撃には特化していない。ならばどうするかと帆風は悩む

 

「どうしたんです潤子ちゃん!?この程度で終わりですか!?そんな事じゃ病理さんは止められませんよ!」

 

そう叫ぶ病理、確かにこれでは病理を倒す事は出来ない。何故なら病理の肉体は反転物質で構成されており、病理自身は無尽蔵に反転物質を形成できる。この世から反転物質が一欠片も残さず消滅しない限り病理は決して死滅出来ないのだ。なら全ての反転物質を破壊すればいいだけの話…というわけでもない。もし学園都市以外の場所に反転物質を隠していれば何度でも病理は復活しまう

 

(なら一体どうすれば?周囲の反転物質全て破壊しても別の場所にあれば再び復活してしまう…どうすれば完全に病理さんを倒せ事が…)

 

そう、帆風が頭をフル回転して悩んでいた時だ。病理の身体に亀裂が走った

 

「おや………もう限界(・・)ですか」

 

そう何気もなしに病理は呟いた、だが彼女とは正反対に帆風は驚きの目を向ける

 

「な……!?限界とはどういう意味ですか!?」

 

「そのままの意味です。まさか未元物質を無制限に使えるとでも?」

 

「で、ですが貴方は言っていました!自我の崩壊は克服した、と!」

 

限界が来た、そう呟く病理。だが彼女は最初に出会った時言っていたではないか。自我の崩壊は防げる様になった、と

 

「あんなもの嘘に決まってます。まあ、1日や2日の連続使用なら大丈夫でしょうが…私の場合は全身を未元物質…いえ、反転物質で形成してますからね。もうそろそろ精神が自滅しそうなんですよ。いや寧ろ二、三ヶ月よく持った方ですよ」

 

最初から克服などしていなかった。ただ彼女は気合で精神の自滅を堪えていただけだ。全てはこんな所で死んでは垣根の成長に繋がらない、ただそれだけの理由で病理は精神の崩壊を防いでいたのだ

 

「……な、ぜ…それ程まで?」

 

「これも全て帝督ちゃんへの愛(・・・・・・・・)故ですよ。私の命なんてどうでもいい。私の命が帝督ちゃんの成長に繋がるなら…この命なんて捨ててあげましょう」

 

そうニッコリ笑う病理、やはり彼女は狂っている。全ては垣根の為に、彼女は自らの命を捨てようとしているのだから

 

「だから潤子ちゃんも私を殺す気でかかって来なさい。遠慮なんかいりません…でないと…死にますよ?」

 

「ーーーッ!」

 

病理は大地を蹴りつけ跳躍、音の速さで帆風へと接近、帆風は虹色の翼でそれをガード。大地を操って病理を拘束しようとするが病理はそれから逃れる

 

「……本当に戦うしか方法はないんですか?」

 

「ええ、もう私は助からないでしょうし…それに確かめておきたいんですよ。貴方に帝督ちゃんを任せていいのかどうか…とかをね」

 

帆風は何か言いたげな顔で病理を見つめるが病理はこれでいいのだと笑う、それに本当に帆風に垣根を任せられるかどうか確かめてとかねばならないと呟く。すると病理の翼が変形し紫の竜巻状の翼となる…それは一方通行のあの黒い翼と酷似していた

 

「な……!?」

 

「意外ですか?私が第三位のこの翼が使えるのに?今の私は第三位の能力の噴出点。この翼が能力の一部であるなら…使えない筈はありません」

 

そう言って病理は紫の翼を真横に振り回す、帆風は空へと飛び立つ事でそれを回避。周囲一帯の建物がそれだけで薙ぎ払われ破壊の限りを尽くす。だが病理は攻撃の手を一切緩めず紫の羽根をマシンガンの如く乱射。一枚一枚が帆風の肉体を裂く程の威力を秘めており、帆風は羽根を虹の翼を羽ばたかせる事で虹の羽根を飛ばし紫の羽根と相殺させる

 

「まだ終わってませんよ!」

 

「……ッ!」

 

紫の翼による横薙ぎに棍棒の様な振り下ろし、散弾の如き羽根の乱射、AIM拡散力場に干渉し帆風の身体に圧力をかける…様々な攻撃を仕掛ける病理。帆風はそれらの攻撃を巧みに避けていく

 

「ふふふ、言っておきますけど第三位の能力とは少し違いますよ?これは私なりのオリジナリティが加わってますから」

 

恋査の様に体の構造を組み替え、能力の噴出点として作用し能力を引き出す…だけではない(・・・・・・)。恋査と違い反転物質とその能力を融合させ更に能力を強化する。故に一方通行の黒い翼とは少し変質した能力と化している

 

「避けるのは上手いですねぇ…ですが、いつまで持ちますかね?」

 

帆風は全ての攻撃を回避し続ける、だが少しずつ傷を負い始める…その度にラファエルの力で回復していくがこのままでは時間の問題だ……帆風ではなく病理が(・・・)だが

 

(彼女の体は今でも徐々に崩壊へと向かっている…このまま逃げ続ければ自滅しわたくしの勝ちになります…)

 

そう、このまま帆風が病理から逃げ続ければ病理は自滅し死に至る。そうすれば帆風の勝ちだ…だが

 

(でも、そんな勝利は認めません。正々堂々病理さんが死ぬ前にわたくしが引導を渡してあげます)

 

だがそんな勝負の幕引きなど認めない、自分自身で病理を倒すと

 

(だから……わたくしも全身全霊で、貴方を倒させていただきます)

 

恐らく紫の翼は病理にとって最後の切り札の様なものなのだろう。ならば帆風も切り札を切らねば無作法というもの。故に帆風は二重の天使降ろしを超える切り札を発動する

 

「……天使達の完全体にして共有体たる隠匿されし神の真意よ、十のセフィラを掌握し、二十二のパスを通過し、三つの柱を超え、生命の樹(セフィロト)の深淵たる知識(ダアト)へと到達せん」

 

そう聖句を唱えた直後、病理の虹の翼の輝きが更に増した。その身に宿した天使は一体や二体などというけち臭い数ではない。聖句通りの生命の樹を守護する十体の天使達全てをその身に降ろす(・・・・・・・・・・)のだ

 

「……それが貴方の本気、ですか」

 

病理はそれを見て笑った、そして悟った、今の帆風は勝てないと。そもそも時間がもうない。あと十分と持たず自分の精神は崩壊し消滅するだろう…もう周囲にばら撒いておいた反転物質は消滅している…もう病理の負けは確定していた

 

(ですが、これだけは最後まで『諦め』ません。彼女なら安心して帝督ちゃんを任せられるか…見極める為には…手を抜く事など絶対に出来ないのです)

 

だがまだ終われない、帆風になら垣根を任せられると確信を得られるまで…病理は死ねない、死んでも死に切れない。例え幽霊などという非科学的な存在になってでも帆風が垣根に相応しいか見極めてやろう…ただそれだけを病理は考えていた

 

結局のところ、どれほど彼女が木原の性に飲み込まれ、狂人と化しても唯一変わらないものがあった。それが垣根への愛だ。それが歪んでいても、関係のない者を巻き込んだとしても、全ては垣根の為なのだ。何故なら彼女にとって垣根は守るべき存在だからだ

 

そんな彼女の思いに能力が答えた。何も窮地において強くなるのは主人公(ヒーロー)だけでない、時には悪も新たな力に開花する場合もある。今この時の彼女は、噴出点の元となっている一方通行よりも遥かな先に立っていた。病理の翼の色が変わっていく…紫から薄紫へと色彩が変化していく

 

「……さあ、これが最後の一撃ですよ潤子ちゃん。私か貴方…最後まで立っていた方が勝者です」

 

「ええ、望むところですわ」

 

帆風は右手に剣を顕現させる。その剣はミカエルの炎の剣とサンダルフォンの最後の剣、その他の天使達の権能を融合させた神秘の剣だ。対する病理は左右の薄紫の翼を大きく広げる。その翼には莫大なちからが込められており、一方通行や麦野の翼とは比較にならない力が収束している

 

両者は睨み合い、まるで西部劇のガンマンの様にいつ相手に襲いかかるか見定めている…両者は睨み合う。それが二人には永劫の時に感じた…だが、ふと風が吹き…それを合図に二人は一直線にお互いに突き進む。そして二人の身体が交差した

 

「……………………………ッ!?」

 

「…………………………………ふっ」

 

帆風の身体が斬り裂かれ、そこから血が吹き出し、思わず地面に膝をつく。それを見て病理は笑みを浮かべて帆風の方を向く…しかし、その笑みは勝利を確信した笑みではなく…自分の敗北(・・・・・)を認めた笑みだ

 

「………どう、やら…私の負け、みたいですねぇ」

 

そう呟いた後、病理の上半身と下半身を分けるかの様に上半身と下半身が吹き飛ばされた

 

「…………ふぅ」

 

帆風は汗を滝の様に流しながら一息ついた、予想以上に全ての天使を降ろすのに負担がかかった。暫くの間は天使が降ろせなくなるだろうし降ろせる時間も短い…病理との一騎打ちでなければ使用後の隙を突かれて死んでいただろう

 

「……成る程、これが『死』ですか。病理さんも等々死んじゃうみたいですねぇ。憎まれっ子世に憚るて言葉を体現してたこの私も死ぬ時は死ぬもんなんですねー」

 

下半身はそのまま消滅、上半身も下の方からサラサラと光になって消え始める。そんな自分の姿を見ても何処か他人事の様に喋る病理。そんな彼女の前に帆風が歩み寄ってくる

 

「合格です潤子ちゃん、貴方になら帝督ちゃんを任せられる……てな訳で帝督の事後は任せましたよ潤子ちゃん」

 

「……貴方に言われなくとも分かっていますわ」

 

「それと、これは多分ないと思いますが…もし、帝督ちゃんを悲しませたりしたら…地獄から這い上がってでも貴方に天罰を下してあげますのでくれぐれも帝督ちゃんを悲しませない様にしてくださいね?そうしないと…化・け・て・で・て・き・ま・す・よ?」

 

「……心へておきますわ」

 

そう言うと病理は憑き物が取れた様に孤児院にいた頃の優しげな笑みを浮かべる。そして空を見上げながら口を開いた

 

「………ねえ、潤子ちゃん。私の人生に意味はあったんでしょうかね?こんな『諦め』てばっかりの私の人生でも…何か意味が当たったんでしょうか?世界に何か残せたんでしょうか?」

 

「…ええ、貴方の人生には意味はありましたわ。貴方がいなければ帝督さんは未元物質を発現しなかったかもしれない。貴方がいなければ今の学園都市 第一位 未元物質 垣根帝督は存在しなかったかも知れません。確かにロクでもない人生だったかもしれませんが…確かに貴方の人生には意味はありました」

 

「そ、う……ですか……それなら良かった。私の人生は…無駄ではなかった。『諦め』てばっかりな人生でしたが…それも無駄、ではなかった…」

 

「ええ、決して無駄ではありません。それはそれはわたくしが認めますわ。だから、安心して消えてください」

 

自分の人生に意味はあったのか、と問いかける病理に帆風は貴方がいなければ今の垣根帝督はいなかったと返し、病理の人生に意味があったと肯定する。それを聞いて安堵したのか病理は涙を流しながら微笑む

 

「帝督ちゃん……どうか、どうか死んでしまった子供達の分まで…お幸せに…私の大事な、大事な息子」

 

そう病理は言い残して、病理は光となって消え去った。帆風の周囲に病理だった光が舞い散る…それを儚げに帆風は見つめていた

 

「…………さようなら、お義母様」

 

帆風はそう言って垣根のただ一人の母親の最後を看取ったのだった

 

 

 

 

 

「…………………」

 

垣根は娘々との戦いの最中にふと何かに呼ばれた様に首をある方角に向けた。その先には第十学区がある…そして垣根は無意識にこう呟いた

 

「…………………………病理(・・)姉さん(・・・)?」

 

何故そんな言葉が出たのか垣根にも分からない。なのに、何故か垣根は涙を一雫流していた。この感情が何なのか垣根には分からなかった。今も、そしてこれからもこの気持ちを理解する事は決してないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最初の頃は単純な悪役として殺そうと思ってたのに…いつの間にかこんな役割になってたよ病理さん…やっぱ病理さんは悪役だけど敵キャラらしい魅力があるからかもしれない

そして次回は娘々との決着、こちらの方は短くなる予定。そして次回で反転物質編は終わりの予定です。てか早く1月になってとある科学の超電磁砲Tが見たいです

次回もお楽しみに!
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