雨が深々と降る街並み。そこで俺は一人、改造したスーパー傘君をさしながら一人寂しく下校していた。
いつも俺の実験台になってくれる友人は、なにやら妹の大好物を作るために買い物に行くといい、そそくさと帰ってしまった。
「あのシスコンめ」
俺はそう愚痴をこぼしながら歩いていると、いつのまにか、家の近くの神社まで来ていた。小さい頃いつもお参りをしていた神社の目の前に立ち、いつもと違い一人なためか、変な懐かしさを覚える。
「懐かしいなぁ…いつも通ってる筈だけど、一人で通るのは久々だなぁ、よく親父とお袋と一緒に、お参りしたっけな」
俺はそう言いながら、久々にお参りしようと思い、境内へと足を進める。すると、先程まで人っ子一人いなかった筈の境内には、一人、左手にパペットを持ち、緑のウサミミのついた服装をした、可愛らしい少女が立っていた。
少女は、どうやらこちらに気づいてはいないらしく、雨の降る中、元気に走り回っていた。
「ちょっと君」
俺はその服装では流石に風邪をひくと思い、楽しそうに遊ぶ邪魔をしてしまうのを心で謝罪しながら、そう声を掛ける。
「…え?…」
少女はそう呟くと、こちらの方へと首を向ける。どうやら、やっと俺の存在に気がついたらしい。
「そんな格好で遊んでいたら風邪を引くぞ」
俺は少女にそういい、俺の素晴らしき発明品であるスーパー傘君を渡そうと思い、少女へと近づく。しかし
「………痛く…しないで……ください」
少女はか細く、恐怖の感情を孕んだ声でそういいながら、まるで自分を守るように頭に手を置き、俺から離れる。どうやら訳ありらしい。
俺はそんな少女を見て、取り敢えずなんとかこちらが安全であることを証明しなければと、普段はくだらない発明にしか使わない頭脳をフル回転させる。
「大丈夫、痛くしないよ、俺は君にこれを渡そうと思ってるだけだから」
俺は出来るだけ優しい声色でそう言いながら、その場で屈み、目線を少女と同じ高さにして傘を見せる。
「それ…を?」
俺が危害を加えるわけでは無いと察してくれたのか、少女はそう言いながらゆっくりとこちらに近づいてくる。
「そう。こんな雨だし、元気に遊ぶのはいいけど、そんな格好だと風邪を引いちゃうだろ?だから、これを使ってくれれば、ある程度は濡れる心配もないし、風邪を引く確率も下がる」
「でも……それ…なら、お兄さん…は?…」
「うん?俺は大丈夫だ、あと少しで家に着くし、家でシャワーを浴びて暖かくすれば風邪を引く確率は限りなくゼロだ。だから君は遠慮せず、この傘を使ってくれ」
きっと彼女は心優しいのだろう。俺の身を案じるように見つめながら、ゆっくりと俺の手から傘を受け取る。
「あっ…ありがとう…ございます…大切…にします」
俺の手から傘を受け取ると、少女は自身の服のうさ耳が地面についてしまうのではないかというほど、深々と頭を下げてそう小さく呟く。
「うん、そうしてくれるとこちらも助かる。それじゃあ、俺はこのまま走って帰るから、君もあまり遅くならないようにね」
俺は少女の頭を優しく撫でながらそう言い、立ち上がる。
「それじゃ!帰ったら風邪ひかないように体を暖めるんだよ〜!」
俺は少女にそう叫びながら、雨の降る歩道を、猛ダッシュで走り抜けた。
「イヤ〜、あの人いい人だったね!四糸乃」
士が走りって行ってから少し達、静かな神社の境内にて、少女のパペットから元気な声が鳴り響いていた。
「うん」
少女は、自身の左手についたパペットに向かって、静かに頷く。
「あんなに優しいなんて、きっと彼モテるよ〜!次会った時にお礼しなきゃね!」
「うん…その時はよしのんも」
少女とパペットがそんな会話をしていると、少女の体がうっすらと透け始めていた。
「おぉ、どうやら時間みたいだね〜、次はよしのんもいっぱい話せるのいいなぁ〜、あっ!でも名前聞きそびれちゃった〜」
消え始めている中、二人に怯えというものはない。
「次…会った時に…名前、聞けばいいよ」
「それもそうだねー!」
まるで母親から迎えに来てもらった子供のように、慌てず、最後まで普段通りのテンションで会話を繰り広げ、そして、神社の境内から、少女の姿は消えていた。
なんか四糸乃とよしのんが違う気がする…