あの日、四糸乃とよしのんとの二度目の邂逅から、俺の日常には新たな仲間が加わった。その名も、夜刀神十香。
士道とあの日にデートをしていた美少女である。彼女が我らがクラスに加わってからは、色々な意味で刺激的な日々となった。
学校でトップクラスの人気を誇る鳶一折紙との士道争奪戦である。どうやら、二人とも士道に好意を抱いているようで、毎日の様になにかにつけて勝負をしている。
そして、その争奪戦は今も続いている。どうやら、今日の勝負は調理実習で作ったクッキーの出来で勝負するようだ。
全くあの野郎…あれだけの美少女達にクッキーを作ってもらっておきながらなんだあの困ったような顔は…
「羨まけしからんなぁ〜」
俺の言おうとしたセリフを、後ろに座っていた友人兼実験台二号、殿町宏人が代弁してくれる。
「全くだよ…あの野郎…次はどんな実験に協力して貰おうか…フフフフフフフ」
「…お前さんの実験は時々死より恐ろしいことをするから、軽めのにししてやれよ…だがまぁ、お前と違って、俺にはこの子がいるからなぁ」
俺が士道の顔を見ながら笑っていると、殿町は俺の肩に手を置き、スマホをこちらに見せつけながら言う。
「あぁハイハイ、お幸せそうで何より」
全く、彼女が出来ないからって、流石に二次元に行くのはダメだろ…俺は………大丈夫だよね
学校が終わり放課後、俺は町外れにある眺めのいい公園へと来ていた。
「ほぉう…ここがこないだ空間震が起きた場所かぁ」
そう、あの日、俺が四糸乃とよしのんに二度目の邂逅を果たした日、突如空間震が発生したのだ。発生した時刻は、俺が二人と別れてから1時間が経過した時で、すぐに近くのシェルターに避難したのだ。
しかし、俺はどうにもおかしいと思っている。何故この短いスパンでここ最近、空間震が発生しているのか、原因が不明にしても、今までここまでの短期で起きたことはないことから、明らかに異常事態であることは、専門家でも無い一般学生の俺でもわかる。
その為、俺は放課後の時間を使い、こうしてここまでやってきたのである。
「と言っても、9割は俺の個人的興味なんだが」
俺はそう呟きながら、封鎖されていない抜け道を通り、現場のすぐ近くまで来た。
「おいおい、なんでこんなに綺麗に崖が斬れてやがるんだ?」
俺が現場に到着して、まず目に入ったのは、まるで巨大な鋭利な刃物で切断されたような崖であった。
「これが空間震?んなわけあるか…空間震でこんな風に斬れる訳がねぇ」
そう、ありえない。何故なら、空間震とは発生源から徐々にドーム状に広がり、周辺を飲み込むものと我々一般人の知識でそうなっている。だというのに、これではその前提が崩れる。まぁ、お上が嘘の情報を国民に報告しているのであればどうしようもないが、今までそんなことがなかった中、突如こんな…
「これじゃあまるで、SILVER・BREADの世界みたいじゃねぇか…いつから少年誌の世界になったんだよここは」
俺は、連載が停止してしまった大好きな漫画を思い浮かべながらそう呟く。
「それにしたって…これは…」
俺がそう言いながらまじまじと断面図を眺めていると、突然、背後から物音がした。
「コラァ!!!そこで何してる!!!」
どうやら、一般学生をまんまと現場に入れてしまった無能警備員のようだ。
「チッ…もう少し見てたかったが、流石に取っ捕まるのは困るな」
俺はそう小さく呟き、そのまま通って来た道を走っていった。
なんとか警備員から逃れ、なんとか俺は家へと帰ることができた。
「はぁ…もうこんな時間か…」
思いの外、あの警備員の諦めが悪く、こんな時間になってしまった。
「全く…空間震…一体何が原因なんだ…あぁ…気になる…とてもとても気になるなぁ」
俺は、余程疲れていたのか、そのままぶつぶつと考察を続けながら、深い深い眠りへと落ちていった。
俺が最大に寝落ちた次の日、俺はいつものように、学校へと向かった。
「全く…いつも通りの光景で俺は涙が出そうだぜ、なぁ、殿町」
「あぁそうだな友よ、俺も同じ気持ちだ」
俺と殿町はそう言いながら、弁当を咀嚼し、目の前で繰り広げられる女の戦いを眺めていた。
というか、なんで鳶一は士道が弁当箱を買った場所を知ってるんですかね?
俺がそんな疑問を抱くと、件の鳶一はこちらを見つめてくる。その目には、まるでそこについては触れるなという力強い意思が感じられた。
俺たちというか、士道達がそんな茶番を繰り広げていると、教室内に、ここ最近聴き慣れすぎて、最早目覚ましアラーム同様のウザさを孕んだ音が鳴り響く。
「はぁ〜〜〜〜またですか」
これがそんな愚痴をこぼしていると、たまちゃん先生が教室に入ってくる。
「みなさーん!慌てないで、ゆっくりと避難してくださいね〜!おかしを守るんですよぉ〜」
いやいやいや、俺らよりまずアンタが落ち着け
「避難?」
そんなこんなで、俺は避難準備をしていると、士道の隣にいた十香さんが、呑気に弁当を食べながら首を傾げていた。
「そうだよ、この警報は空間震警報って言って、危険だから避難してください〜って言う音なんだ」
今時この警報を知らないなんて、どんな生活をして来たのか疑問に思うが、取り敢えず簡単に説明する。
「だから、俺たちは安全なシェルターに行かなきゃ行けないわけよ、取り敢えず、君は士道と一緒にいれば大丈夫」
俺がそう言いながら、十香さんを士道の方へと導く。すると、その肝心の士道は、新任の村雨先生と何やら会話をしている。
あの二人知り合いなのか?というかあの二人さっさと避難しねぇと
俺がそう思い、声をかけようとすると、士道と村雨先生は、シェルターとは真反対の方向へと走る。
「おい!!!士道、お前どこいくつもりだ!!!」
俺は、友人の突然の奇行に驚き、そう大声で叫ぶ。しかし、士道は止まることなく叫ぶ。
「士!!!十香のこと頼んだ!!!」
あの馬鹿野郎ッ…どこいくつもりだ
俺は士道を連れ戻そうと、追いかけようとする。しかし、俺の動きは、たまちゃん先生により阻まれてしまう。
「ダメですよ新道君!!!外は危ないですから、十香さんと一緒に避難してください!!!」
クソ…なんでこう邪魔が入るかなぁ
先生を突き飛ばす訳にはいかなく、俺はそのままなす術なく、十香さんと共に、シェルターへと避難することとなった。
士道は、令音共に学校を出て、フラクシナスへと向かう。
フラクシナスへと到着すると、士道の妹である琴里達が、モニターに集中していた。
「丁度空間震が発生したところよ」
士道が到着し、モニターを見ると、隣に座している琴里がそう呟く。
「今回は小規模ね」
「僥倖と言いたいところですが、ハーミットならこのくらいでしょう」
「ハーミット?」
琴里と副司令である神無月の会話を聞き、士道がそう疑問の声を上げる
「今回現れた精霊の名よ、比較的大人しいタイプとして認識されているわ」
琴里はそう士道の疑問に答え、それと同時にモニターは、ハーミットをアップで映し出す。
「あれ?…俺、この子知ってる」
「何ですって!」
士道の呟きに、琴里は驚きの声をあげるとともに、タブレット端末を持った副司令、神無月の方向を向く。
「当該時刻に霊波数値の乱れは確認できません」
「十香のケースと同じか」
琴里がそう小さく呟くと、モニター上でASTによる攻撃が開始される。
逃げ惑うハーミット、そして、それを追いかけ回すAST、その光景を見て、士道は声を荒げる。
「琴里!!!俺はあの子を助けたい!!!」
士道の心のこもった叫びに、琴里はニヤリと笑みを浮かべる。
「それでこそ、私のお兄ちゃんよ…総員!!!第一種攻略準備!!!」
笑みを浮かべながら、琴里は全クルーに向けて叫ぶ。士道はその叫びと同時に、ハーミットの元へ向かうため、艦長室から走り出た。
「あの野郎…一体どこにいやがる」
雨が降り、人っ子一人いない街で、新道士は、友人である五河士道を探していた。
原作キャラを動かすのキチィ…