いらなかった才能   作:へたくそ

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2時間目  2人の時間

優斗が転校してきた日、幼馴染である倉橋 陽菜乃(くらはし ひなの)と再会した。

挨拶が終わり優斗は抱き着いてくる倉橋を相手にしながらみんなの質問に答えていた。

 

 

 

 

 

渚「神島くんはなんでE組になったの?成績不振?」

 

倉橋「それはないよ。もしこの学校にいたなら私が気付くよ」

 

 

 

優斗が答える前に陽菜乃がムスッとした顔で答えるが、上目遣いになっているためそれほど怖くない。

それを見た優斗は陽菜乃の頭を撫でながら渚の質問に答えた

 

 

 

神島「その通り僕はここの学生じゃなかったよ。僕は他所(よそ)から来たからね。」

 

渚「それじゃ転校初日に何かやらかしたの?理事長のトロフィーを壊したりしたとか?」

 

カエデ「流石にそれはないよ渚」

 

 

 

そう訪ねる渚にカエデはそれはないと笑いながら反応する。そのやり取りにクラスのみんなが笑う中渚は一人だけ何かを確信したまっすぐな目で優斗を見る。

渚は気付いているのだ。このタイミング、この時期に椚ヶ丘のE組に入ってくる転校生。かなりの確率でただの生徒ではない。何かしらの才能があるのだろうと。

それは当たっていた。だがそれは渚にとって予想外の回答だった

 

 

 

神島「そうだね。烏間先生さんにも許可はもらってるし教えておこうか。」

 

 

 

 

 

『僕は暗殺者なんだ』

 

 

 

 

 

その途端教室は静まり返った。静かに聞いていた殺せんせーでさえ驚いていたのだ。

 

 

 

岡島「な、なに言ってんだよ神島。それなら俺たちだって同じ…」

 

神島「いいや違うよ岡島くん。君たちの生徒(殺す)先生(殺される)よう一方通行のような関係じゃない。殺るか殺られえるか。殺らなきゃ殺られるような世界。本当の暗殺の世界だよ」

 

 

 

その時の優斗はさっきまでの優しい笑顔ではなく、真剣でどこ悲しい顔をしていた。

渚も自分が思っていた以上の出来事に驚きを隠しきれていなかった

 

 

 

神島「だから俺がE組に来たのは落とされたんじゃなくて依頼を受けて来たっていうのが正しいね」

 

倉橋「ゆーくんが殺し屋になったっていうことはやっぱりあの人が原因なの?」

 

 

 

倉橋が優斗に聞くと少し待った顔で小さく「うん」とだけ答えた

 

 

 

 

倉橋「そんなのおかしいよ!あんなに嫌がってたのに!私やっぱりあの人と話してくる!」

 

神島「それはだめだよひなちゃん。これは僕があの人に頼んでしたことだ」

 

倉橋「そんなわけ、だってゆーくんは…」

 

前原「なぁ、そのさっきから言ってるあの人って一体誰なんだ?」

 

神島「僕の父親であり僕の師、神島 豪(かみしま ごう)だよ。」

 

前原「その人が一体何をしたって言うんだ?」

 

神島「そうだな、隠すようなことじゃないんだけど。これは今話すべきことじゃない。烏間さんによれば停学中の人もいるみたいだし。それに先生を殺す仲間も増えるかもしれない。そうなっていちいち説明するのも大変だからね。E組が本当の意味で全員揃ったら話すよ。」

 

 

 

神島はまるで自分の言ってることが正しいことを疑う余地もなく言った。

自分の言ったことは外れない。そう確信した目で。

 

 

 

 

 

放課後

 

 

倉橋「ゆーくん一緒に帰ろう?」

 

神島「いいよ。スーパーに寄ってもいい?食材がなくて」

 

倉橋「ゆーくんがご飯作ってるの?みんなの分作るの大変じゃない?」

 

神島「今は一人暮らししてるよ。これも人生経験だってさ。」

 

倉橋「そうなんだ。それじゃゆーくんの部屋行きたい!久しぶりにゆっくり話そうよ!」

 

 

 

「いいよ」と答えた神島は帰る準備を終わらせて倉橋と下校した

その話を聞いていた中村、前原、岡島は二人の後をこっそりと付けていった

 

神島は付けられてることに気づいてはいたが、意図を理解してなかった為あえてスルーしながら倉橋と買い物をしていたのだが、その姿はまるで新婚夫婦の買い物のような雰囲気だったため、岡島の殺意に困惑しながら見事に3人を撒いた。

 

神島の住んでるアパートに着いた二人は…

 

 

 

倉橋「いっぱい買ったねえ!何作るの?」

 

神島「ひなちゃんは何が食べたい?」

 

倉橋「パフェ食べたーい!」

 

神島「それはデザートにね?」

 

 

 

そこでもラブラブな雰囲気を醸し出していた

結局夕飯のメニューは無難にカレーという事で2人仲良くカレーを作った

 

カレーを食べ終わった後に神島がパフェを作ったと聞いた倉橋はものすごい勢いでパフェを完食した

甘いものが好きとは知っていた神島もこれには驚いたようだ

 

 

 

神島「パフェはどうだった?うまく作れたとは思うけど初めてだったから」

 

倉橋「すごい美味しかったよ!毎日食べたいくらい!」

 

神島「毎日なんて食べたら太っちゃうよ?」

 

 

 

神島が言った途端倉橋が俯いた

神島はデリカシーのない事言ってしまったと思い急いで謝ったが倉橋は返事の代わりに…

 

 

 

倉橋「…が…ったら…う?」

 

神島「え、ごめんひなちゃん。聞こえなかったからもう一回言って?」

 

倉橋「ぅっ…。私が太ったら嫌いになっちゃう?」

 

 

 

小さく弱弱しい声で倉橋は神島に聞いた

倉橋は幼いころから神島のことが好きだった。もちろん異性として

いきなりいなくなってしまった事で伝えれなかったことに後悔していた倉橋は、再会した時にすぐに伝えようと思ったがやはり簡単には言えなかった。

 

しかも神島優しい顔つきをしており、性格も優しいためいつ他の誰かに取られてもおかしくない状況で自分の事を嫌われるという最悪の展開を想像してしまった倉橋は突然の不安に襲われた。

 

しかし神島はそれに気づいておらず、「久々に会った仲のいい幼馴染に嫌われたくない」程度のことだと考えていた。

 

 

 

神島「大丈夫、ひなちゃんはひなちゃんだよ。嫌いになんてならないから安心して」

 

 

 

誰もが聞いても勘違いしそうな言葉。本人も無自覚に言ってるのだと分かっていても倉橋は嬉しくて思わずニヤけてしまう。それを隠すかのようにまた顔を神島の胸に埋めた

 

 

 

神島「本当に甘えん坊だね」

 

倉橋「…ゆーくんが甘やかすからゆーくんが悪い」

 

神島「はいはい」

 

 

 

まるで恋人のような会話。今はまだこのままでもいいかもと思ってしまった倉橋はそのまま意識を落としていった


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