Fate/Gorgeous Tango †隔離楽園都市・冬木† 作:ログインできた
1-1 聖杯戦争開幕
あなたは夜空を見上げてドーム状だと思った。
遠く、地平線あたりの雲は低く見え、真上の雲は高く見える。まさしくドームの内側のテクスチャのようだ。これで星が見えればプラネタリウムだろう。
「…………!?」
あなたはその景色を見上げていることで今の状況を思い出した。今その体重は足ではなく背中が支えている。そして頭にはアスファルトの堅い感覚がある。重い手足は投げ出され地面に寝そべっていた。そして、空を見渡そうと身じろぎして全身に走った痛みがあなたを覚醒させた。
あなたは自分が爆発により吹き飛ばされたと察した。目がかすみ、色彩が暗く、視野が狭い。耳はほとんど聞こえず、周囲の人間の声は判然としない。首から腰にかけては筋肉痛とは比べ物にならない筋肉の強ばりがある。かざそうとした腕は上がらず、指先は震え、そして内側の手首の部分には、刺青のような痣があった。
「…………」
その刺青は橙色をしていた。
その刺青は鍵のような、戈のような形をしていた。
あなたは自分の使命を思い出した。行かなければ!
あなたは、聖杯戦争のマスターだ。
あなたは、生命力の強い肉体と不屈の精神力と高い学習能力を持っている。
あなたは、魔力が無く融通が利かずあやふやだ。
そしてあなたは、令呪を持っている……持っている? 持ってないかもしれない。
そしてあなたは、サーヴァントを……召喚した覚えはない。でも召喚されてるかもしれない?
あなたは身体に力を込めてゆっくりと立ち上がった。既に聖杯戦争は始まっている。あなたは生き残りたい。
Fate/Gorgeous Tango
【チュートリアルを開始します】
【STEP1 画面のスクロール】
【画面をスクロールするとあなたはオートで行動します】
【行動の内容とその結果は方針フェイズでのアンケートに基づきます】
【今回はこちらで【中立・中庸】・【生存】の方針を用意しました それでは画面をスクロールしてみましょう】
あなたは周囲を見渡した。周囲にはコンテナが積み上げられ、ところどころにサーヴァントによるものかはわからないが、ほんの少し前にできたような気がする破壊の跡があった。そして不幸なことに、近くには幼い少女が倒れていた。あなたたちがいる場所はコンテナのすぐ側だ。どうやら港のようだ。
【画面をスクロールしたことであなたは行動し、情報の入手と人物との出会いがありました】
あなたは慎重に物影へと移動すると自分の持ち物を調べた。しかしあなたは全裸だ。目に見える怪我はないが、これでは社会的にここから移動することが困難だ。
(……あれは。)
あなたは、視界の端に一瞬の閃光を捉えた。暗色の服装の人影の周囲で、明色の帯が高速で動いている。あなたはその光景を類稀なる洞察力で理解した。人影は手に持つ武器を人間技とは思えぬ速度で振るっているのだ。間違いない、サーヴァントだ。
【STEP2 見る】
【テキスト中に小さな数字が書かれている場合があります】
【この数字にカーソルを合わせることで、追加の情報が得られます】
【このコマンドで得られる情報は信用性が低いものの、時に有用な情報が含まれているかもしれません】
サーヴァントかどうかは『見る』ことでステータスが表示されるかで判断できることをあなたは知っている。あなたはカッと目を見開いた。それと同時に相手のステータスが表示された。*1
【このコマンドで得られる情報は、その話の最後でまとめて見ることができます】
あなたは倒れている少女を抱え上げた。神秘は秘匿するものであるということをあなたは知っている。僅かな間でもサーヴァントに自分の姿を見られたと思われれば口封じされてしまうだろう。逃げなければ!
「どこに行く気ですか?」
「!」
ダメだ、回り込まれた! 首筋に冷たい感触が走る。鎌だ。大きな鎌があなたの首にそえられていた。
「殺さないようにとは言われていますが、あまり勝手に動くと――」
ギィン!
ハッキリと音が聞こえた。至近距離から鳴った大きな金属音は、あなたのくぐもった聴覚にも突き刺さった。
あなたは自分の首から振るわれた大鎌が空中に光の帯を作るのを見た。その光の帯に二箇所、閃光。遅れて聞こえた硬質な何かが地面に落ちる音。おそらく、飛んできた何かを弾き落としたのだ。
「……狙いが移ったようね。」
「…………」
「穂群原学園、今日の午後五時。」
「?」
「お待ちしています。」
「!?」
あなたは少女ごとサーヴァントに抱え上げられた。同時に腹部に強烈な痛みを覚えた。
あなたは目の前が真っ暗になった。
【一方その頃】
静謐な空気に満ちる寺院に場違いでありながらも溶け込む男女がいる。
黒衣の女はタブレット端末に目を落としながら長髪の男に話した。
黒衣の女「全サーヴァントの召喚が確認されました。これから聖杯戦争が始まります。」
黒衣の女「英霊、セイバーに連絡を。」
長髪の英霊「はい。」
黒衣の女「……いえ、新しい情報が入りました。これは……討伐令。」
長髪の英霊「早いですね。禁呪を侵したのでしょうか。」
黒衣の女「…………」
黒衣の女「セイバーには私が連絡します。あなたは、保護を。」
黒衣の女「遠坂凛。オリジナルセブンの一人。今彼女を喪うことは大きな損失になる。」
黒衣の女「猶予は312時間ある。その間に決着はつくでしょう。行きなさい。行って戦いを止めなさい。」
長髪の英霊「宝具は使用しても?」
黒衣の女「消滅が避けられない状況でなければ極力使わないように。あなたの宝具はこの場所では危険が大きい。」
長髪の英霊「心得ました。吉報をお待ちください。」
長髪の英霊はその言葉を最後に姿を消す。
後には黒衣の女だけが残された。
遠坂凛に討伐令が発令されました。
イシュタルに討伐令が発令されました。
あなたは奇妙な夢から目覚めた。
意識が覚醒すると、独特な匂いと色彩から自分が病院のベッドにいると察した。
手足は問題なく動く。身体のどこにも異常は無いようだ。
しばらく病室を見渡していると、あなたの元に看護師がやってきた。意識を失っていたので担ぎこまれたらしい。過労が原因だと言われた。今日を含めて三日ほどは入院にしておいた方が良いと。あなたは目や耳の症状について訴えたが、異常は認められなかったとのことだ。
最後に、あなたは港で出会った少女について聞いた。看護師は、あなたを発見して病院に搬送した警察官から何も聞いていないと言った。
あなたは、天井を見上げながら考えた。
あなたが聖杯戦争の参加者となって数時間。その短い間にいきなり英霊の戦闘を目のあたりにした。対してあなたの手には令呪があるが、サーヴァントは姿を見せない。そしてあの女サーヴァントの言葉。今日の五時に、どこかの学校で待つと言ったが……
あなたは首を横に向けた。夕日がカーテン越しに病室を照らしている。あなたは選択をしなければならない。
病院で目を覚したあなた。既に聖杯戦争は始まっているが、あなたにはマスターとしての準備が足りていない。特に足りていないのはサーヴァントと情報だ。どちらか一つは今すぐにでも入手したいが、どちらを優先するべきだろうか?
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サーヴァントだ、令呪で呼び出す。
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情報だ、女サーヴァントの誘いに乗る。