Fate/Gorgeous Tango †隔離楽園都市・冬木†   作:ログインできた

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Gorgeous Tango
2-1 貌のないあなた


 

 

 

 

「サーヴァントを呼び出そう。」

 

 あなたはサーヴァントを選んだ。

 サーヴァントがいなければ聖杯戦争の舞台には立てない。サーヴァントは聖杯を勝ち取る為の矛であると同時に身を守る為の盾でもあるのだ。あの女サーヴァントの誘いも気になるが、こちらもサーヴァントを用意してから応じるべきだろう。

 あなたはそう結論付けるとベッドから起き上がった。

 目覚めた時にも思ったが、身体に異常は無いようだ。その代わりのように強い空腹をあなたは覚えた。サーヴァントを喚び出したら食事にしよう、そう考えながら病室から出る。さてどこで喚び出そうか、人目の無い場所は……

 

「ああ、良かった! 意識が戻られたんですね!」

「……?」

 

 病室から出た途端に、あなたはスーツを着た若い女に声をかけられた。横には同じようなスーツを着たもっと若そうな女がいる。誰だ?

 

「私たち、こういうものです。少しお話を聞かせてもらいたくて。」

 

 そう言いながら二人は懐から黒いものを取り出した。こ、これは――警察手帳!?

 

「なんであんな格好であんな所で倒れてたのか、をね。」

「病室に戻りましょうか。三日は入院することになってますから。」

「大丈夫ですよ、このために一人部屋を取っておいたので。さあ。」

「さあ。」

 

 どこからか哀愁漂うBGMが流れる。

 何も知らないんだ、みんなそう言うんですよ、そんな会話をしながらもぐいぐいと前に出られる。

 あなたは病室に連れ戻された……

 

 

 

 

「それじゃあ本題に入るか。」

 

 ベッドに腰掛けるあなたの前で、最初に声をかけてきた女刑事が雰囲気を変えた。スーツを腕まくりしてあらわになった肌にあるのは、令呪だ。

 隣の若い方の女刑事も同じように腕まくりして令呪をあなたに見せつけている。この二人、マスターか!?

 

「!?」

 

 あなたは類稀なる洞察力でさらなる事実に気づいた。二人の令呪はそれぞれ赤と白という色の違いはあるが、形はあなたの令呪とほぼ同じだ。

 

「……わかってると思うが、妙なマネはするな。まあ安心しな、別にアンタを殺しに来たわけじゃない。むしろ逆だ、アンタと同盟を組みに来た……ここからは、サーヴァントも居たほうがいいか?」

「そうですね。しかし、アサシンを霊体化させるのはリスクが大きい。我々があちらに行きましょう。」

「ていうわけだ。屋上まで一緒に来てもらう。」

 

 同盟? 突然だ。

 屋上? 病室に行かずに最初からそっちに行ってれば良かったんじゃないか。

 あなたは色々とツッコみたかったが、とてもそんな雰囲気ではなかったので彼女たちに従うことにした。二人の立ち振る舞いは、刑事だからかマスターだからか一般人とは違う。迂闊なことをすればどうなるかわからない。それにしても今日は厄日だ、女難の。

 あなたは腹を決めて立ち上がった。

 

 

 

 

 屋上は開放されているようで、コンクリートに返しのついた高いフェンスという、殺風景ながらも広く澄んだ冬空を見られる空間があなたの前に広がっている。隅にはちょっとした花壇もあるようだが、季節柄なにも植わっていない。そして、誰もいなかった。人避けに何かしたのだろうか。

 白い令呪を持つ女刑事が後ろ手にドアを閉める。それが合図だったのか、物陰から髑髏の仮面をつけた黒ずくめの人影が三人現れた。

 あなたはそのうちの一人から何かを感じた。直感でわかる、あれが自分のサーヴァントだ。そして他の二人もサーヴァントだ。二騎掛かりで足止めされていたのだろうか?

 あなたはカッと目を見開いた。それと同時に相手のステータスが表示された。*1*2*3

 

「!?」

 

 あなたは思わず自分のサーヴァントを二度見した。*4うわっ…私のサーヴァント、弱すぎ…?

 

「影分身か……」

 

 白い令呪を持つ女刑事が呟く。その後ろには、いつの間にかまた仮面の黒ずくめがいた。同じように、赤い令呪の女刑事と、二騎のサーヴァントの後ろにもいる。その手には皆黒い短剣を握っていた。

 あなたは奇妙な感覚を覚えた。あなたから何かが流れ出る感覚が六つある。マスター二人とそのサーヴァント二騎の後ろにいる仮面と、サーヴァントと同時に出てきた仮面、それとは別に。

 

「遅参の挙句このような形で申し訳もつきませぬが……アサシン、参上した。」

 

 あなたの真後ろ。

 いつの間にかいたのか、最もあなたとの『線』を強く感じる仮面のアサシンがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【一方その頃】

 

 放課後とはいえ既に太陽は沈みすっかり夜の校舎の壁面を、二つの人影が転がり落ちる。

 

 そのうちの片方、大鎌を持つ女は、もう片方、髑髏の仮面の首を刎た。

 

 その一瞬の後、髑髏の仮面の姿がかき消える。

 

 それを見届けた大鎌を持つ女は霊体化で壁をすり抜けると暗い校舎に現れた。

 

大鎌の女「アサシンは討ちました。首を刎ねた後に令呪を使われたようで、魂喰いはできませんでしたが――」

 

 大鎌の女に話しかけられた紫髪の少女はそちらを一瞥もせずに廊下にへたり込み続ける。

 

 その膝には赤髪の少年の頭が乗せられていた。

 

 その手には赤く染まった少年の首筋が抑えられていた。

 

 そして辺り一面は血の海だった。

 

大鎌の女「……サクラ、また別のサーヴァントが近づいてきています。」

 

紫髪の少女「まだ……まだ温かいから……!」

 

大鎌の女「……失礼を。」

 

紫髪の少女「!? ランサー!」

 

大鎌の女「勝てば、勝てばまた会えます。」

 

 大鎌の女は髪を鎖に変えると、それで紫髪の少女を絡め取り担ぎ上げる。

 

 同時に紫髪の少女の首筋に噛みつくと、少女はすぐに意識を失った。

 

大鎌の女「八つ当たりかもしれませんが……あのアサシンのマスターにはお礼に行かなくてはなりませんね。」

 

 

 

 

 大鎌の女からあなたへの好感度が低下しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖杯戦争。」

「参加者は四九人のマスターと四九騎のサーヴァント、七色七騎の四九主従。」

「彼らは万能の願望器を巡り殺し合う。」

「勝利条件はただ一つ。」

「自分の色かクラス以外の主従を全滅させるのみ。」

「――というのが、この聖杯戦争のルールです。」

 

 病院の屋上。

 あなたのアサシンは実力を示して拮抗状態に持ち込んでいた。

 その後、白い令呪の女が赤い令呪の女と共にあなたの周りをぐるぐる周りながら聖杯戦争について語る。

 ……なんだろう、思っていたのと違う……

 

「四九騎?」

「らしいな。アタシのが赤のアサシン、ソイツのが白のアサシン。で、アンタのが橙のアサシンか?」

「参加者はそれぞれ白・黒・赤・青・黄・緑・橙の七色に分けられるようです。令呪の色と形でどの色のどのクラスのサーヴァントを従えているかがわかる、ということでしょう。そして我々は色こそ違えど同じアサシンのクラス――陣営です。共闘する意義は大きいと思います。」

「他のクラスはアサシンよりも強いらしい。」

「ええ、特にドラゴンのクラスは強力と聞いています。」

 

 ドラゴン? 何だそれは、クラスなのか?

 あなたの訝しむ視線に気づいたのか、白のアサシンのマスターである女は言葉を続けた。

 

「サーヴァントの七つのクラスの内訳は、セイバー・アーチャー・ランサー・シールダー・キャスター・アサシン・ドラゴンというらしいです。」

「その情報はどこから?」

「白の陣営の他の主従からです。その主従は白の勝利を狙うと。」

「うさんくさいよな? だがサーヴァントは嘘だって言ってない。」

 

 そうだ、サーヴァントには召喚される時に自分の記憶に聖杯からの知識が混ぜられるらしい。それならサーヴァントから話を聞けばいい。

 あなたはあなたのアサシン――橙のアサシンの方を向いた。

 

「今の情報は本当?」

「その情報が本当かは答えかねますが、嘘はついてはいません。」

「……?」

 

 歯切れの悪い回答だ。だがそれ以上橙のアサシンは何も言わなかった。

 

「サーヴァントは聖杯戦争については何も話しませんよ。禁呪を課せられているようです。」

「禁呪というのは?」

「サーヴァントが召喚に際して課せられる、禁止されるべき行動とそれを破ったときに発動するペナルティ、でしょうか。神秘の秘匿、戦争の秘匿、秘匿の秘匿の三つがあると聞いています。詳しくはわかりませんが、サーヴァントが一般人の前で戦うことなどが禁止されているようです。そして、それを破ると討伐令が出されると。討伐令に関しては私もよくわかりません。サーヴァントから聞き出そうにもそれだけで討伐令が出されるようですしね。」

 

 白のアサシンのマスターの説明に、あなたは困惑しつつもその頭脳で開示された情報を整理した。

 この聖杯戦争はあなたの持つ聖杯戦争の知識とはいくつかの乖離といくつかの整合があった。

 七つのクラス、サーヴァントシステム、令呪。これらはあなたの知識にもあるものだ。

 七つの色、禁呪、シールダーとそしてドラゴン。これらはあなたの知識をもってしても未だ理解が及ばない。

 あなたは考え方を変えた。無くなったクラスはライダーとバーサーカー。ルールの変更点は最後の一人まで戦うバトルロワイアルから変則的なチーム戦になったこと。そして最大の謎は四九騎ものサーヴァントを現界させられる聖杯の出力。

 あなたは脳内で一つ一つ情報を咀嚼する。この場で今最も考えるべきは――

 

「その白の主従はどうやって禁呪について知った?」

 

 まずはいかにして情報を得たかだ。

 開示された情報がある程度本当だとするならば、本来なら知り難いものだ。なぜならそれについて知ろうとしても、情報が与えられているサーヴァントはリスク無しには話せない。ということは、誰かがそのリスクを冒したか、あるいはサーヴァント以外で情報を知っている何者か、か――

 

「何もわかりません。その主従、クラスはわかりませんが、キャスターではないかと思います。彼らは私達に便箋で情報を伝えてきました。」

「便箋?」

「昨日聖杯戦争が始まってすぐのことです。気配を消していた私達の近くに、いつの間にか便箋が貼られていました。極めて強い感知能力を持っているようです。」

「便箋を見せてほしい。」

「読み終わると同時に消えました。」

「だからキャスターか。」

「ええ。」

「そんだけ首根っこを押さえられてるのによくアサシンで同盟組もうなんて考えるな。」

「それが、生きるために必要だと考えたからです。それに、貴女も似たようなものでしょう?」

「ハッ……」

 

 聖杯戦争が始まって直ぐに他の主従を特定し一方的に情報を与えた主従がいる。そのことはあなたを驚かせた。これでは今この瞬間にも自分に同様のことが起こらない保証はない。もっともその場合は便箋ではなく爆弾かもしれないが。

 とにかくはっきりしたのは、強力なサーヴァントがいるらしいということだ。色々と考えなければならないことはあるが、まず一番にそれを念頭に置かなければならない。

 あなたはあらためて覚悟を決めた。

 

 

 

*1
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運B

*2
筋力D 耐久D 敏捷A 魔力D 幸運A

*3
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E

*4
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E

二人のマスターと二騎のアサシン、そして自らが従えるアサシンと出会ったあなた。話しているうちにすっかり日は沈み、既に女サーヴァントに言われた時刻はとっくに過ぎている。別に応じる義理はないが……

  • ……今からでも向かおうかな(属性:善)
  • いちおう二人に話してみる(属性:中庸)
  • 行くわけねえだろ情報交換だ(属性:悪)
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