友紀が目を覚ますと何処か暗い部屋の中だった。
(・・確か・・ボクは・・・)
雷門のサッカー部室に泊まった友紀。起きてすぐに顔を洗うためグラウンド近くの手洗い場に向かって・・。そこからの記憶がない。どういう状態なのかを把握するため立ち上がろうとして気付く。両手両足を縛られ口にはガムテープが張られている。
(え・・何で・・)
全く状況の掴めない友紀。何とか脱出しようとするも頑丈に縛られ全く効果がない。窓も閉ざされ時間も分からない中必死に脱出しようとする友紀。努力むなしくただ時間が過ぎていった。
「くそ!!友紀のやつ何処にいきやがったんだ?」
試合開始前、誠也は綺羅星学園周辺を探していた。何となくだがこの近くにいると感じているがやはり何処にも見当たらない。
「これは、これは、雷門の池ノ上君ではありませんか?」
何処かで見たイケメン、レンが誠也に話しかけてくる。
「・・おいなんのようだ?こっちは忙しいんだよ」
「そう敵視しないでくださいよ・・折角良いものをプレゼントしにきたのにね」
そう言って携帯を見せるレン。そこに写っていたのは何処かの部屋で縛られた友紀の姿だった。
「な?、お前?!」
「・・この女は俺のことをバカにしやがったからなぁ!!」
人の好みは人それぞれ、友紀もあくまでも苦手と告げただけでバカにしたわけでない。恐らくレンはかなりプライドが高く苦手を悪口として捉えたのだろう。
「・・だからって・・」
「それにてめぇもだよ!!汚い手で触りやがって!!いいか?この女が大事なら今日の試合分かってるよなぁ?」
「誠也!!一体どうしたんだよ!!」
試合開始早々オウンゴールを決めた誠也に皆が詰め寄る。
「・・少し足下が狂っただけだ」
そう言ってポジションに戻ろうとする誠也。やはり様子がおかしい。皆そう考えてはいるものの、周りを寄せ付けないオーラを纏う誠也に誰も言い出せないまま試合は再開。黒牙と豪炎寺が上がりそれに水瀬と切那、更に誠也までもが後に続く。
「・・・面白そうじゃないか・・必殺タクティクス!!『ストライク・コロッセオ』!!」
「・・なんだこれ・・魔王でも呼び出そうってのか?」
レンの合図を元に皆が陣形を変え始める。気が付くとボールを持った黒牙とDFのイブの二人を残し周りには誰もいなくなっていた。いや、イブを除く皆が走り回り黒牙と他の皆の間に壁を作っていたのだ。
「・・おせーよ!!ノロマ!!」
イブがボールを奪い壁に向かって蹴る。そのボールは壁に取り込まれるもすぐにレンと共に飛び出してくる。
「・・早速決めさせてもらうよ!!『七星剣!!』」
ボールを持ったまま飛び上がるとレンの後ろに北斗七星が現れる。その北斗七星の星から光がボールに向かって伸び集まり始めそれをゴール向かって蹴る。
「・・ダークトルネードは無理だが・・『スピニングカット!!』」
古島が足を振ると衝撃波が起きてシュートの威力を弱める。弱まったシュートを簡単に受け止める円堂。それをそのままアリスにパス。パスを受けたアリスはすぐに水瀬にバスするも水瀬はトラップミス。こぼれたボールを優菜が拾い黒牙にパスするもやはり黒牙もトラップミス。近くにいた豪炎寺がボールを拾うも相手に奪われる。違うポジションとの連携、そして一つ一つのプレイが全く噛み合わない。
「・・・やはり今の雷門は・・」
ーー全てを友紀に任せていた。
元々優秀なプレイヤーが集まっていた今の雷門。もし皆がそれぞれ全力のプレイをすれば綺羅星程度20-0という大差で圧勝できる。但しそれは空想理論、実際に皆が全力を出せば一切の連携が取れなくなってしまう。それを友紀が上手くバランスを取っていたのだ。たが今の友紀が不在の状況ではそのバランスが取れない。その為それぞれのプレイや連携が互いの長所を殺しあっている。いやそれだけだったら良かったのかもしれない。
「な?!誠也?!」
切那が奪い返したボールをどういうわけか誠也が奪いそのまま上がっていく。だがそれもすぐにイブが奪い取る。イブからMF、そしてレンへとボールが繋がるがそれをすぐに古島が奪い水瀬にパスするもやはり誠也が奪い取る。理由は分からない、だがどういうわけか誠也は雷門のプレイを邪魔している。その為雷門は攻めきれない。だがそれは綺羅星も一緒。連携が乱れているとはいえ個々の能力の高い雷門。綺羅星の攻撃を簡単に防いでいく。結局前半はその拮抗した状態のまま終了した。
ハーフタイム
「ちょっと!!貴方達!!」
それぞれベンチに戻り後半への準備を整えている皆に1人の女子生徒が近付いてくる。その姿を見た冬海が狼狽え始める。
「夏未お嬢様!!」
雷門の生徒会長であり理事長の娘、雷門夏未。恐らく王帝月ノ宮に勝利したサッカー部の試合を見に来ていたのだろう。だが前半の体たらくをみたら文句を言いたくなるのもわかる。
「後半は池ノ上君を下げなさい!!いい?これは理事長の言葉と思ってもらって結構です!!」
「・・分かりました・・後半は池ノ上君に変わって・・」
「ま、待ってくれ!!」
誠也が冬海に交代をやめるように懇願するも全く聞く耳を持たず交代を審判に告げようとした瞬間・・
「誠也!!」
友紀の声。見ると入り口の方にジャージ姿の友紀がいた。
「・・友・・紀?」
ヨロヨロと友紀の方に向かって歩き始める誠也。友紀はすぐにその誠也に飛び付き胸に顔を埋める。
「・・嬢ちゃん誘拐されてたんだ・・普通は病院で検査をしなきゃならないんだがどうしてもここに来たいって言うからよ」
友紀をつれてきた鬼瓦という刑事によると友紀は綺羅星のキャプテン、レンに誠也を脅すための材料として誘拐されたらしい。証拠は集まっており逮捕は可能だが逮捕状が出るのは試合後。更に今回の件で綺羅星は失格となりこの試合勝てなくても次に進むこと事が可能らしい。
だが小さく体を震わせている友紀を見て皆が思う。このままでいいのかと。大切なチームメイトを怖い目に合わせたゲス野郎に負けていいのか。
「・・勝ちたい・・」
切那が呟く。
「・・やつらを闇の底に!!!」
黒牙。
「・・奴等を許すことは出来ない」
豪炎寺。皆の気持ちは一緒だ。その言葉を聞いた友紀が誠也から離れ目元の涙を拭う。
「・・ごめんね皆・・・後半からはボクが・・」
「必要ねぇよ・・今の雷門は逆にお前がいるから勝てない」
恐らく友紀も気付いている今の雷門の弱点。それを克服しなければこのまま勝ち続けれない。
「・・友紀!!お前は病院で検査を受けろ!!心配ねぇよ・・お前がいなくても勝てるさ」
「誠也・・」
友紀が皆を見るとそれぞれの目に決意の光が灯っていた。
「・・皆・・後は頼むよ・・」
それを見た友紀は鬼瓦と共にその場を後にする。それを見届けた誠也は皆に向き合うと頭を下げる。
「皆すまなかった!!」
謝る誠也に近付く夏未。
「・・理事長の言葉としても命令します・・この試合必ず勝ちなさい!!」
今回の話を読んで気付いた方がいると思いますが・・綺羅星は咬ませ役です。七星剣とか結構真面目に考えましたが咬ませ役です。