「・・であれからどうなんだ?」
次の日の昼休み。円堂に染岡、木野の三人は昼食をとりながら新生サッカー部の勧誘状況について報告していた。
「私は音無さんと一緒に募集のビラを作って配でみたんだけどまだ連絡は無いわね・・」
「俺は幾つかの部活を回ってみて良さそうなやつを探したんだが・・」
どうやら二人ともあまり成果をあげられていないようだ。
「・・そう言えば今朝隣のクラスの大山ってやつが、放課後話があるって・・ってあれ?もしかして冬海先生?」
円堂が指を指した方にはサッカー部の顧問で円堂のクラスの担任、冬海先生がいた。その後ろには一人の女子生徒がついてきている。
「次の授業って確か小此木先生だよね?」
「えー皆さん、今日からこのクラスに転校生が来ます」
「舞埼友紀です!!皆よろしくね!!」
そう言えば今朝机が一つ多かった。それがその転校生の席のようだが・・。
「・・もしかしてあの転校生遅刻したのか?」
「流石にそれは無いんじゃない?」
放課後、日直の仕事を終えた円堂は部室に向かって走っていた。授業が終わってから既に三十分が立っているため恐らく皆勧誘に学校中を走り回っているだろう。だからと言ってキャプテンである円堂がサボる訳にはいかない。玄関を出てグラウンドに出て来た円堂のところに突然ボールが飛んでくる。不意打ちとはいえ円堂はキーパー。難なくそのボールをキャッチする。ボールが飛んできた方をみると大柄の男が立っていた。
「誰だ!!」
「俺のボールをキャッチするとは流石だな!円堂!貴様が欲しいのはこれだろう?」
その男が円堂にみせたのは一枚の紙ーーサッカー部の入部届けだ。
「これが欲しければ俺と勝負しろ!」
「望むところだ!!」
そう言って円堂は鞄を地面に起きグローブを手にする。
「ルールは簡単だ!俺がシュートを打つ。それを止められたら貴様の勝ち!止められなければ俺の勝ちだ!」
その男はそう言ってボールが地面に起き思いっきり蹴る。コースは真正面、しかし円堂は右に飛ぶ。スピンだ。その男はボールにスピンをかけ右に曲がるようにしていたのだ。その事にいち早く気付いた円堂はボールを難なくキャッチする。
「流石だな!俺は古島空羅!これからよろしくな!」
「円堂・・すまなかった!!ラグビー部を代表して謝罪をさせてくれ!!」
円堂が古島をつれて部室に入るなり隣のクラスの大山剛に頭を下げて謝罪される。
「あの・・えっと・・」
「ラグビー部のやつら・・あれだけすごい試合をしたサッカー部をいまだにバカに・・」
大山曰く円堂がサッカー部を立ち上げた頃彼のいたラグビー部は円堂達を馬鹿にしていたらしい。そして少し前帝国との練習試合を見た大山は諦めないその姿に感動を覚えたのだがラグビー部はその姿さえもバカにしたためラグビー部に愛想をつかしたらしい。
「改めて・・俺は大山剛!ラグビー部からの転部だがよろしく頼む!」
「ああ、こっちこそよろしくな!!」
「たった一日で三人ですか・・前と比べるとかなり順調ですね」
大山から入部届けを受けとると同時に冬海先生が部室に入ってくる。その後ろには今日の転校生の姿がある。
「えー彼女は舞埼友紀さん。今日からサッカー部の副キャプテンを勤めてもらいます」
「えー?!副キャプテン?!ボクそんな話聞いてないよ!!」
冬海の言葉に声を上げたのは円堂ではなく友紀だった。
「これから新生サッカー部を立ち上げるのですよ・・ならば今まであやふやにしていた副キャプテンに関してちゃんと話をつけるべきだと私は思いますがね」
冬海のいうとうりサッカー部を立ち上げた頃から人数不足を理由に副キャプテンの話を延期にしてきた。だかこれから立ち上げる新生サッカー部は大会に出られるだけの人数を集める。
「彼女は円堂君、あなたと同じ様にゼロからサッカー部を・・」
「ふ、冬海先生!!その話は!!」
「・・まぁいいでしょう。ともかくこれは決定事項ですよ」
そう告げると冬海は部室を後にした。
「・・えっと・・改めてボクは舞埼友紀!!なんか副キャプテンを勤める事になっちゃったけど・・よろしくね!!」
「チッ豪炎寺も新入部員もいやしねぇ!!」
部員を探しながら帝国戦でゴールを決めた豪炎寺の勧誘を目的として歩く染岡だが全くその成果をあげられないでいた。最も辺りを睨みながら歩いていたら誰も寄り付かないのが当たり前なのだが・・
「あのーもしかして染岡先輩ですか?」
「あ?誰だ?」
「俺は『漆黒のストライカー』黒牙龍斗。聞いたことありますよね?」
「いや全く・・ってストライカー?!」
突然目の前に現れたちょっと残念そうな男の言葉を聞き目を見開く。それもそうだ、ストライカーという言葉はサッカーで有名な言葉。その言葉を使うということは・・
「お前もしかして・・」
「はい!!サッカー部、入団希望です!!」
「どう?音無さん?」
同じ頃木野は音無のいる新聞部を訪れていた。校内新聞による宣伝。その効果を確認するために。
「木野先輩!!学校中の噂になっていますよ!!それと・・これは噂ですがこの学校にかなり有名な選手がいるみたいですよ・・確か昔大きな怪我か何かで消えた人みたいですね・・名前は・・」
「・・高咲優菜」
「そうそう・・ってえ?」
声のした方を見ると小柄な少女が立っていた。
「私は・・・神奈崎切那・・サッカー部に入部希望・・」
「本当?!やりましたね先輩!!」
夕方 鉄塔
空も少しずつ暗くなり始めた頃。全く人気のない場所に一人の女子生徒が来ていた。
「今日もいないか・・」
近くの木に立て掛けられたタイヤを見て少し溜め息をつくと、近くのベンチに腰を掛け本を読み始める。彼女がこの場所に来るようになったのは少し前、偶然バンダナをつけた少年がタイヤで特訓しているのを見つけたからだ。彼女ーー高咲優菜はここ最近その特訓の掛け声や音を聞きながら読書をするのが日課となっていた。しかし数日前からその少年は来ていない。そのせいか、彼女の集中力は五分と持たず、すぐにその場を後にした。
放課後
完全に日も落ちた頃円堂と友紀は家に帰るための帰路についていた。
「・・結局今日は五人しか集まらなかったか」
「そんなに卑屈にならないの!!一日目で五人も集まったんだから凄い事だよ!!・・ボクの時なんて一ヶ月でやっと四人だったし・・」
「ん?なんか言ったか?」
「え?何でもないよ!!」
自分の発言を慌てて誤魔化す友紀。
「それより・・さ、明日からはボクも勧誘手伝うからさ、きっともっと集まるよ!!」
明日からの勧誘について話ながら歩く二人。二人が曲がり角に差し掛かった頃突然現れた人影と友紀がぶつかる。友紀は転けなかったもののその人影は尻餅をついてしまう。
「あ、ごめんなさい!!大丈夫ですか・・」
「いてて・・はい何とか・・・」
「「あー!!」」
その人影と友紀が互いに指を指し驚く。
「お、お前もしかして友紀か?」
「そっちこそ・・誠也?」
「友紀?知り合いか?」
「うん!!ボクの幼なじみの池之上誠也!!これでも一応サッカーやってるんだよ」
その言葉を聞いた瞬間円堂の目が輝く。
「なぁ!!良かったらサッカー部に入らないか!!」
サッカーしようぜとやっている誠也に対してしつこく勧誘してくる円堂。
「あーもう分かった分かった!!こっちも都合があるから明日まで待ってくれ!!」
(・・家には金ないから相談しても反対されるだけだろうけど・・)
次の日、切那はジャージに着替えるため更衣室へと向かっていた。まだ主な活動は勧誘となるものの今までの感じならもうすぐ部員も集まる。そんな事を考えながら歩いている時だった。隣のクラスから出てした一人の女子生徒とすれ違う。一瞬ぶつかりそうになるものの、互いにかわしその場を後にする。そして更衣室にたどり着いた瞬間、先程の女子生徒の顔が脳裏を過る。昔サッカー雑誌で取り上げられた程の有名選手、確か名前は・・。その女子生徒のことを完全に思い出した切那は更衣室に来た目的すら忘れ後を追いかけた。