ゆかりん、子育て始めるってよ   作:エスカルゴ・スカーレット

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茜0歳編
ゆかりん、赤ちゃん迎えたってよ


ここは幻想郷の南端、通称“迷いの竹林”内に建つ住居兼個人経営の医院、永遠亭。初冬のある日、数日前に出産を終えたとある妖怪が、医者の検診を受けていた。

 

「赤ちゃんも母体も、至って健康ね。予定通り、今日退院して大丈夫よ」

 

「そう…それは良かったわ」

 

白衣を纏う医者…八意永琳は、その赤子と母親の八雲紫の検診を終え、「大丈夫」と結果を迅速に伝えた。当然、健康を願う母親はその言葉に安堵して、少し長めに息をついた。

しかし、2人に健康と告げたはずの永琳の表情は決して明るいものではなかった。暫く検診結果のカルテとにらめっこした後、意を決したように、一呼吸置いてから口を開いた。

 

「ねぇ?その赤子……茜ちゃん、だっけ。やけにあなたの血が強いような気がするのだけど…?」

 

「……♪」

 

永琳がそう訊ねても、紫は不敵に微笑むばかりで返事をしない。答えずとも、何となくはわかる。彼女が何もしていないはずがない、と。

 

「今までの彼の子供達って、見た目こそは母親に似てる事が殆どだったけど…中身までまるっきり母親だなんて前代未聞よ?」

 

「あら、そう?なら私が初めてね」

 

「父親も今ここに居るんだから、ちゃんと教えてあげたら?誤魔化したりして変に誤解されるのはあなたとしても本意じゃないでしょ?」

 

「まぁ、ね…」

 

母親の腕の中で、スゥスゥと静かな寝息を立てて眠る赤子…茜を、母親らしい優しい目で見る紫。彼女が元々子供を欲しがった理由は「有事の際に備えて」という理由だったが、出産を経て多少は我が子に愛着が湧いてきたらしい。その目からは普段の胡散臭さをあまり感じられない。

 

「…具体的には、どこら辺が似てないんですか?翼が無いのは分かりますが…」

 

茜の父親…紫に種を提供し、これまでにも数人の子供達を育ててきた吸血鬼、エスカルゴは永琳にそう問うた。すると彼女は、一目カルテを見て、淡々と答え始めた。

 

「翼は無い、牙も無い、日光・流水等耐性有り、視力、反響定位(エコーロケーション)、再生力は共に不明。…こんなに吸血鬼要素薄い事ってある?まるでクローンよ。目の色だけは、母体と違って明るめの紅だけど。満月の夜だって吸血鬼化はしなかった。どこまで父親の血が薄いのかしら」

 

(吸血鬼要素薄めるんなら、俺である必要あった

のか…?とてもそうは思えん…。どうも紫さんに弄ばれてるような気がするな……はぁ…)

 

「さぁ、運命の悪戯じゃない?」

 

「…まぁ、それは私の管轄外だから、これ以上は何も言うつもりは無いけどね。お大事にね。後は好きなタイミングで出ても大丈夫よ。あなたならスキマで帰るんでしょうけど」

 

「うふふっ、そうかもね」

 

やれやれと言わんばかりに浅く肩を竦めた永琳はカルテを持って部屋を出ていき、その検診などを手伝っていた助手、鈴仙・優曇華院・イナバも、彼女に従って部屋を出る。

その際、茜の父親…そして自分の彼でもあるその男吸血鬼に、小さく手を振った。

 

「…投げキッスとかしないの?」

 

「俺そんなキャラじゃないです」

 

「それもそうね。じゃあ、早速帰りましょうか。あなたにもお世話になったわ、ありがとうね」

 

「いえ、俺なんて全然。何回か…その…紫さんと交わっただけですし。それで、俺の役目って…」

 

「無いわ。ま…これからもよろしくね、とだけ。この子は私と藍で育てるから、あなたはこれから産まれてくる神の子と妖舞君、霊麗ちゃんの面倒見てなさい。そっちで手一杯でしょ?」

 

「そこまででもないですけど……分かりました、茜の事はそちら任せます…」

 

「どうしたのよ、そんなにしょぼくれちゃって。

私達(こっち)だけで育てると合意しての子作りじゃない。

元より、私が後継者を育成したいが為にあなたに無理に種を強請(ねだ)ったのよ?」

 

「そーですけどね…経緯はどうあれ、俺の子でもある訳ですし、やっぱ育児には父親も…と思うんです。……でも、いつまでもグチグチ言ってるとみっともないですね、切り替えていきます」

 

「そうしてちょうだい。それじゃあ、またね」

 

「はい」

 

優雅に微笑んだ紫は、茜を抱っこしたままスキマを開き、その中に姿を消した。シンと静まり返る部屋の中で、彼は紫の使っていた布団を片付け、生まれて数週間の長男の方へ向かった。

 

 

 

「おかえりなさいませ、紫様。必要な物資は全て取り揃えておきました」

 

居間に直接スキマを繋げた紫は、九本の尾を持つ妖狐で、式神として使役している八雲藍の前に、少し疲れた様子で現れた。お茶を飲んでまったり過ごしていた藍だったが、主の姿を見るやすぐにその居住まいを正し、出迎えの言葉をかけた。

 

「ただいま、藍。お疲れ様、後はゆっくり休んで頂戴。忙しくなったら手を貸してもらうわね」

 

「分かりました」

 

自分が不在だった間に、茜を迎える準備をさせた藍を休ませる為に下がらせて、未だに眠っている茜をベビーベッドに降ろす。しかし、母の感触が無くなった為か、降ろされた直後に目を覚ます。

 

「あうぅ〜……ゔぅ〜っ…!!」

 

「え?えっ?ちょっと、何で今このタイミングで目ぇ覚ますのよ!?」

 

「ゔわ゙ぁぁうぅぅ〜…」

 

グズる茜を見て焦った彼女は、大慌てで娘を抱き上げ、言葉を掛けながらゆったりとしたリズムであやし始める。

 

「よしよし、お母さんはここでしゅよ〜!だから泣かないでね茜ちゃん〜!よしよし、よしよし…良い子だから、ゆっくり寝ましょうねー…」

 

「うぅ〜………スー…」

 

(…本格的に泣き始める前で良かったわ…)

 

妖怪の子は人間の子よりも成長が早い。吸血鬼や悪魔…といった上級の種族となると特にだ。茜はその吸血鬼の血を継いでいる。なので、入院期間中に首は座っているし、目はとうに見えている。まだハイハイまではいかないが、体を揺らしたり首を振ったりなどは普通に可能だ。

永琳曰く「人間と同じように考えてはいけない。動物が産まれて間もない内に立てるのと同じく、妖怪もそれなりに成長は早い」とのこと。人間と違って、妖怪は本来野生なのだから、永琳のこの言葉には紫も深く納得している。

 

(まずいわ…。茜ったら、降ろしたら泣くタイプなのね…。入院してた時みたいに、私も茜の隣で寝ていれば大丈夫なんだろうけど…流石にベビーベッドには入れないし……どうしたものかしら)

 

目尻に溜まった涙を指で拭ってやり、そんな事を考える紫。そうなると、茜を降ろして寝かすにはベビーベッドではなく布団である事が望ましい。

そう考えた紫は自室に行き、押し入れから片手で布団を引っ張り出し、娘と並んで横になる。傍に母の気配を感じているのか、よく眠っている。

 

(ふぅ……これで私も、少しは休めるかしら…。早速だけど、母親って随分と大変なのね…。少し甘く見てたかもしれないわ…。今の内にゆっくり体を休ませておきましょ…)

 

「ん゙ゔゔぅ〜〜〜………」

 

「へ?」

 

「あああぁぁ〜〜〜っ……」

 

娘の肌着から漏れ出してきた黄色い液体。それを見た紫は、顔を青くして悲鳴を上げた。

 

「きゃあああああああっ!!お漏らししてるー!藍!らぁぁぁん!!来てぇ!今すぐ来てえええ!茜がお漏らししちゃってるーーーー!!!オムツ仕事してないぃぃぃっ!!!」

 

「紫様!!」

 

主の悲鳴を聞き付けて、すぐさま駆け付ける藍。彼女は茜の新しい肌着と換えの布団を用意する。

 

「あーん、もう…布団も肌着もびしょびしょ…。私の服まで少し濡れちゃったわ…」

 

「大丈夫ですよ、乳児の尿はそこまで汚くないといいますし。後は私に任せて紫様もお着替えを」

 

「ううん、着替える前にお風呂に行ってくるわ。茜のことも綺麗にしなきゃ」

 

「では、片付けとオムツの準備をしておきます」

 

「ええ、お願いね」

 

 

 

風呂にて娘を綺麗にして、自身も軽くシャワーを浴び、下着姿のまま部屋に戻る。片付けを終えたばかりの藍は、主の姿に目を丸くして慌てる。

 

「ゆっ、紫様!?お着替えはいつもの所に置いておきましたよ!?」

 

「もう今日は寝間着でいいわ…」

 

「えっ、まだお昼前ですが…」

 

「その方が都合が良いのよ。授乳とか。それに、後から着替える手間が省けるからね。ちょっと茜抱っこしてて」

 

「はい。オムツも付けておきますね」

 

「ううん、私がやるわ。慣れないとね」

 

「分かりました」

 

普段着とは違い緩い寝間着に着替え、藍から茜を受け取り、少し弱々しい笑みを藍に向ける。

 

「ありがとうね…今度こそ休んでてちょうだい」

 

「大丈夫…ですか?」

 

「オムツくらいは大丈夫よ」

 

「…分かりました」

 

畳に茜を降ろし、藍の用意したオムツを履かせる為にオムツを広げ、茜の腰の下にそれを入れる。それを股の間に通し、腰骨の少し上のあたりで、粘着テープで留める。

 

「あぅ……はぅぃ?」

 

「ふふっ、新しいオムツよ、茜ちゃん♪」

 

「あいぃぅぁ〜………」

 

「おしっこかな?でも、もう漏れないわよね♪」

 

「んぅ〜………」

 

「………………え?」

 

オムツと肌の隙間から流れ出す液体。それは体を伝い畳を濡らし、徐々にその範囲を広げていく。

 

「きゃああああああああああっっ!??!なんでまた漏れてくるのよおおお!!らぁぁぁんっ!!不良品よこれぇぇぇ!!!らぁぁぁん!!!畳が濡れちゃったあぁぁぁぁっ!!どうしよう助けてらああああんっっ!!」

 

すると、呼ばれた直後に部屋へと入ってきた藍。呼ばれることが事前に分かっていたかのような、凄まじい速さだ。

 

「落ち着いて下さい、紫様!オムツをしっかりと留めなかったからです、不良品じゃありません!どうかしっかりして下さい!」

 

「なんで履かせるオムツにしなかったのよぉっ!畳が濡れちゃったわよぉぉっ!!」

 

「オムツを買ったのは紫様ですよ!!私が買ったのはベビーベッド等の大きめの物です!!」

 

「そうだった何やってるのよ私の馬鹿ぁぁ!!」

 

「ぁゔうぅ〜…うあああああぁあぁん!!!」

 

「ああもうっ、落ち着いて下さい2人共っ!!」

 

結局、身体を全く休められないまま、お昼の時を迎える事になってしまった紫達であった………。




赤ん坊の鳴き声ってホント表現難しいですよね。一応、こんな下手な表現でも、俺の身近に1歳に満たない赤ん坊いるんですよ…。
親程じゃないにせよ、色々と世話もしてますし。
でもあの泣き声だけは文字に起こせないですね。
(だから本編じゃなく外伝って形で残す訳です。)
おぎゃーでもふぎゃーでも、うわーんでもない。
聞き方によっては何とでも聞こえる謎の泣き声。

何話構成にしよう。パニくるゆかりん好きだ…。


あらすじの所、句読点を使うと改行されるのか。
たまに改行されてない所もあるけど…。寧ろ読みづらくなってないか?俺だけ?
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