ゆかりん、子育て始めるってよ   作:エスカルゴ・スカーレット

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ゆかりん、成長の早さに驚いたってよ

紫が自分の赤ん坊・茜を自宅に迎えてから、実に2週間ほどが経過した。最初こそオムツや授乳で慌てることも少なくなかったが、流石に、何日も経過すれば難なくこなせるようになった。

その甲斐あって、藍の負担も徐々に少なくなり、彼女は通常の業務に戻れるようにすらなった。

尤も紫は、元気な娘に未だに振り回されている。それが時に楽しく…また時に大変に感じることもあったが、彼女にとってはどれも新鮮で、楽しく感じられる時間であった。

…が、茜の生後1週間が経つ頃から、ヨタヨタと歩き始めた。それによって行動範囲が広くなり、必然的に紫はあちこちに動き回るようになった。多少身体が成長はしても中身は赤ん坊だ。見る物触れる物、全てに興味を示し家中を動き回った。

 

「しかし…見れば見るほど、茜は紫様にそっくりですね…。アイツに似ているのは目だけですか」

 

「そうねぇ…。何故ここまで私に似てるのやら。霊愛も霊夢に激似だし…どちらかに瓜二つになることも、有り得なくもないのかしらね?」

 

「ご冗談を。紫様のことです、なにかやらかした(・・・・・)のではありませんか?」

 

ややため息混じりに言葉を返す藍。それに対して紫は、わざとらしく答える。

 

「あら酷い。他人の子には(・・・・・・)手出ししないわよ?」

 

「ご自分の子には?」

 

「ま…ほんのちょっとだけ、ね♪」

 

遺伝子操作…若しくはそれに類することをやってのけたのだ。お得意の「境界弄り」で。何物にも境界は存在する。存在するのなら弄れる。たとえそれが、彼女の目に見えても見えなくても。存在そのものが能力の対象となり得る鍵なのだ。

それを察した藍は、少し肩を震わせた。そして、声すらも震わせながら、言葉を続ける。

 

「…紫様が恐ろしいです。生命の理に逆らう事も難なくこなせる、そのお力も…」

 

「理由があったの。エスカルゴに似てはいけない理由がね。いつか、あなたにも分かるわ。もしも理由を知りたいのなら気長に待ちなさい。そして茜をよく視るの。面倒という意味ではなくね…」

 

「本来は…どんな子に生まれてくるはずだったのですか?紫様が何もしなかった場合は…」

 

「んーとねぇ…紅魔館の吸血鬼…フランドールに近くなっていたかしら。能力の使い方も危険で…冷酷無比な暴走癖もあり…っていう意味で。彼に似るとヤバくなりがちだからねぇ」

 

「それが、弄った理由…ひいては、エスカルゴに似てはいけない理由…ではないのですか?」

 

「それ()ある、とだけ言っておこうかしら。ただ破壊するだけの暴走なら鎮圧は楽よねぇ。でも、この能力で暴走すれば…………私の言わんとすることは、あなたならわかるわね?」

 

「はい。しかし、その暴走を未然に防ぐ以外に、生命の理に逆らうほどの大きな理由があるとは…到底思えませんが…」

 

「大丈夫、あなたは気長に待ちなさい。1000年も待たせたりしないから」

 

「………」

 

気長すぎる。長命な妖怪だからこその発想・発言だが、やはり気になるものは気になる。藍は更に追求しようとするが、紫の性格上、正解はきっと教えてはくれず、はぐらかされてお終いだろうと考え至り、追求することを諦めた。

 

「何週間か経ったし…そろそろ茜もまともに喋り始める頃かしら?」

 

「早すぎでは?」

 

「人と同じように考えちゃダメ。ある一定までの成長は早く、老化は極めて遅く…。これが彼の…いや、吸血鬼の血を継ぐ者の特徴らしいわ。まぁこれは、吸血鬼だけじゃなくて妖怪全般に言えることでもあるのでしょうけどね」

 

「確かに……近頃はちょっと返事しますしね…」

 

「でしょ?流石私の茜ちゃんだわ〜♪」

 

そう、茜は返事をするのだ。保護者側がイエスかノーの二択で答えられる簡単な質問をして、茜がそれを理解した場合、何かしら反応を見せたり、返事をするようになった。

 

「茜、そろそろお腹空いてきた?」

 

「あぶぃっ!」

 

「そう、分かったわ♪」

 

元気に頷いた茜は、紫の母乳を欲して彼女の方に歩み寄る。それを見た紫は、茜を抱き上げて乳を飲ませる。多少身体が大きくなったところで茜はまだまだ赤ん坊だ。離乳食にはまだ早い。

茜が話し始めたのはそれから実に数日後の事だ。

紫と藍が話していたところに、歩いてきた茜が、これまでとは違う言葉を発したのだ。

 

「おかぁ…さんっ!」

 

「!?」

 

「しゃ…喋った……?茜…今あなた、喋った?」

 

「うんっ!」

 

ぱぁっと顔を輝かせた紫は、おもむろに茜を強く抱きしめる。あまりに突然の事に、抱かれた茜は目を丸くしたものの、普段母親に抱きついているのと同じように抱きつく。

 

「凄い…凄いわよ茜っ!偉い偉いっ♪」

 

「くるしーよぉ…おかあさぁん…」

 

「うふふ、ごめんなさいね♡」

 

「もー…」

 

若干頬を膨らませながら、彼女は母から離れる。一方で紫は、ニマニマと緩みきった頬はなかなか収まらない。

 

「早いうちから意思疎通が可能になる…これってすっごく楽よねぇ♪」

 

「いしそつー?」

 

「何故こうも言葉を覚えるのが早いのでしょう…それともこれが普通なんですかね…?」

 

「そういえば、前に月の兎がドヤってたわね…。

『子供に話し掛けていくのも大事だけど、言葉を聞かせるのが何よりも大事。子供は、身近な人の会話を聞いて言葉を覚えるから』って……」

 

「成程…。つまり茜は、私と紫様の会話を聞いて言葉を学習していった、と。そういう事ですか」

 

「恐らくね…」

 

「あかね、おかーさん、らん……あと…だれ?」

 

「…?誰か他にいたかしら?」

 

「えーとぉ…」

 

「橙ですかね?前に連れてきた事がありますし」

 

「ちぇん…ちがぁう…」

 

「ますます分からないな…」

 

「もしかして…あなたのお父さんの事かしら?」

 

「あぁ…ちょくちょく話題に上がってましたし、そうかもしれませんね」

 

「おとーさん…って、なーに?」

 

「あなたのお父さんは、エスカルゴっていうの。今度会わせてあげるわね♪」

 

「それ!わたしいまあうっ!」

 

「えぇ?今はだーめ、藍とお仕事に行くからね。また今度にしましょ」

 

「やーだっ!いまがいーの!」

 

「コラコラ、ワガママ言わないの。ほら茜、もうお昼寝の時間よ?お母さんはいつも通りに、茜が寝てる間にお仕事終わらせてくるから。おうちでおねんねしましょうね♪」

 

「やだ!あかねねない!おとーさんにあうの!」

 

「…イヤイヤ期でしょうか?」

 

「…かもね…」

 

意思疎通が可能になった娘と、早速ぶつかり合う事になってしまった紫は、娘を泣かさないようにどう言いくるめるかを考え始めた。




俺の従兄妹(人間)は、まだまだ喋りませんな。
まだ1歳だし、これが当たり前でしょうがね(笑)

これが正真正銘平成最後の更新です。
年越しそばならぬ元号越しそば食べますか?俺は食べませんけど、何となく面白そうですよね。
では、良い平成時代を。令和でもよろしくです!
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