ゆかりん、子育て始めるってよ   作:エスカルゴ・スカーレット

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今回は次章への導入なので短いです。



ゆかりん、娘の成長を感じて寂しくなるってよ

ある日紫は、結界の見回りの仕事を藍に任せて、娘へ能力の使い方の指導をしていた。と言ってもマトモな使い方ではなく、ほぼ遊びと言える様なふざけた使い方ばかりだが…。

 

「うん、結構良いわね。何度も開き直さずとも、一発でピンポイントな場所に開けてるわ。もう、悪魔の館からのつまみ食いも楽ね♪」

 

「そうだね。でも、何だかなぁ…。お姉ちゃんの作った料理、勝手に食べちゃって良いのかなぁ。ちょっと罪悪感…」

 

「大丈夫大丈夫、一口程度ならバレないから♪」

 

「………。ところでお母さん。最近、私の身体が少し変なんだけど…何でかなぁ…?」

 

「変?何がどんな風に変なの?」

 

何も言わず胸に手を当てる茜。それを見て、何を言いたいのかを察した紫は、慎重に言葉を選んでそれに対する返事をする。

 

「茜。それはね、成長してるのよ。胸が少しずつ大きくなってきてるの。成長期はそんなものよ。服とかの刺激でも痛くなってしまうものよ。後であなたに合ったブラジャーでも探しておくわね。とびっきり柔らかい素材の物にしましょう。で、他の所は大丈夫なの?」

 

「たまにだけど…膝とかがズキッて痛くなる…。ていうか今も痛いし…」

 

「あらあら。成長痛だなんて、妖怪としては純粋なのに、妙に人間臭いわね。喜ばしい事だけど、あまり酷いようなら手放しでは喜べないわね…。でもまぁ…悪いことではないから、素直に自分の成長を喜びなさいな」

 

「成長しすぎだよ…。私の身長、お姉ちゃん達をみんな抜かしちゃったし…」

 

「まぁ!もうそんなに大きくなったのね!凄いわ茜ちゃん、凄い凄いっ♪」

 

「撫でなくて良いから…」

 

「あら、ごめんなさいね♪」

 

茜は数多い姉や妹達の中で6女で、見た目年齢は

10歳〜13歳程度、実年齢は先日の誕生日で5歳になった。そして長女である巫月は見た目年齢10歳程度で実年齢は13歳。実に、8歳も離れている。そして、何故か見た目では茜が長女に見える。

とても奇怪な事だ。吸血鬼の血が流れているのは全員共通。それなのに茜だけ成長が早い。それも5歳になった辺りから突然にだ。まるで茜の中のスイッチがオンに切り替わったかのように。

 

「もう少しよ茜。もう少しその痛みに耐えれば…後は楽になるのだからね」

 

「うん…。でもさでもさ、地に足をつけてるのにお姉ちゃんを見下ろすのって、変な感じしたよ」

 

「身長では勝っていても力は負けてるのだから、くれぐれもあの子達を見下した発言とかはしないことね。それだけは気を付けなさい」

 

「分かってるよ、お母さん」

 

「それと、前に『他の皆じゃあ味わえない、特別な経験をさせてあげようと色々考えている』って言ったわね?」

 

「言ってたね。藍とその準備してるんでしょ?」

 

「ええ。でね、そろそろその準備が完了する時が来たわ。あなたのその成長が終わったら…全てを教えてあげる」

 

「…!」

 

「『あなたの成長も不可欠』…とも言ったわね?覚えてるかしら?」

 

「うん」

 

「だから、そのままスクスク元気に、健康に成長してね…。お母さんはそれだけで嬉しいから…」

 

「…うん…」

 

「あなたなら大丈夫。私も藍もそう信じてるわ。全てが上手くいくよう、ここで祈っているわよ」

 

「急にどうしたの、お母さん?まだその説明の時じゃないんでしょ?」

 

「そうよ。でも…私は茜ちゃんが大好きだから…私の元を離れてしまうのが、少し寂しくてね…。ふふっ、子供であるあなたに『精神的な成長』を求めておきながら、私の方はまだまだね…。子供って、本当にいつの間にか成長してるものね…。エスカルゴの言う通りだわ…」

 

指の腹で何度か目元を拭う紫。「私の元を離れてしまう」の言葉に、彼女は怪訝そうな顔をする。親元を離れて生活するなんて、茜にとっては全く想像できないことだったからだ。

 

「お母さん…私に…何を経験させるつもり…?」

 

「お勉強よ。あなたしか味わえない特別な…ね」




成長。それは、別れの時が迫るという事───。
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