銃の勇者の成り上がり   作:夜神 鯨

7 / 8
エピソード5

 加奈が目を覚ますとそこは先程までいた部屋とは違っていた。壁には装飾品が掛けられていて、手入れも行き届いている。

 

「...懐かしい夢を見たわね」

 

 加奈は深く目を閉じて感傷に浸りながら夢の内容を鮮明に思い出す。最近では夢すらも見ないようになって来ていたが。久しぶりに見たのは大事な仲間との記憶。

 

 思えばあの戦いが地獄への旅路、その第1歩だったのだろうか? 結局の所、死にものぐるいで戦い続けた私達が最後に得たのは、一時的な平和とナノマシンに侵されもはや人とは呼べなくなってしまったこの体だけだった。

 

「おはようございます、やっとお目覚めですか」

 

 声がした方向を向けばアンファが椅子に座って書き物をしている。加奈は起き上がろうと体に力を入れたが上手く体が動かず思うように立ち上がれない。

 

「っ!..」

 

 無理矢理にでも動こうと加奈は身体に力を込めるが、身体は全く言うことを聞かず、生まれたての小鹿のように何度も倒れ込んでしまう。何度も試したが結局上手くいかず、しまいには起き上がる事を諦め、ふかふかのベットに身体を預けた。

 

 ここまで体が動かないのは久しぶりだ、と人間味のある体に感動したが、同時に体の機能が制限されているようにも感じる。しかしそれ以上に久しぶりのふかふかベットを堪能する事に決めたのだった。

 

 堪能し始めてから5分程で意識を覚醒させる想像以上にふかふかで体が沈みそうになるベットではいつも使っている硬すぎるベットと違いすぎて逆に落ち着かない。

 

「アンファ、体が動かないのだけども助けてくれないかしら?」

 

 しまいにはアンファへと助けを求める加奈、

 

「無理をなさらない方がいいですよ、貴女はまる1週間も寝続けていたのですから」

 

 それを見たアンファは楽しそうに微笑むと椅子から立ち上がるり、加奈の寝ているベットに寄り添った。そして加奈の体を優しく支えると、ゆっくりベットから起こした。

 

「...はぁ..こんなに体が弱いとは思わなかった」

 

 例えどんな怪我をしていても2日で戦場に戻り戦線を支え続けた丈夫な体に絶対的な自信を持っていた加奈は悲しそうな顔をしてため息をつく。

 

 そんな加奈を見てアンファはフフと上品に笑うとこう続けた。

 

「仕方のない事ですよ、加奈様。本来召喚されるだけでも莫大な量の体力を消耗し、多大な疲労が蓄積するのです。更に貴女様は勇者召喚に巻き込まれたであろうイレギュラー、通常よりも大きな負荷がかかっていてもおかしくありません」

 

 更に言えばその状態でメルロマルクから逃げ出し、アンファとの戦闘も行ったのだ。身体の限界を超えてもおかしくは無い。

 

「逆にこれほど早い目覚めをしただけでも素晴らしいと思います。流石は勇者様ですね」

 

 そこまで言ったアンファは次の言葉を言おうとして踏みとどまった。アンファが加奈に伝えようとした情報は加奈の体に関する情報で加奈は知らない情報だった。

 

 ブルーコスモスのメンバーは加奈が寝ているに回復薬の類いを使い目覚めを促そうとしたのだが、どんな薬を使おうとも加奈には一切薬が効か無かった。更に回復魔法も使用したが、一切の効果は無く、効果があれば3日で起きるはずが1週間まで延びてしまっていた。

 

 更に確証を得る為、寝ている加奈の皮膚を浅く切り裂き、その部位に回復薬や回復魔法を使う実験を行ったが結果は変わらず、唯一自然治癒だけが加奈の傷を癒したのだった。

 

「...」

 

「どうしたのアンファ?」

 

「い、いえなんでもありません」

 

 悩んだ挙句アンファは言うのを止めた。それは、一時的なだけであって確実な情報では無く、無駄に加奈の選択肢を狭める事になると判断したからだった。

 

「そう? じゃあ悪いんだけど私は途中から話を聞いてなかったからどうなったか教えてくれないかしら?」

 

「ええ..そうですね。この1週間で変化があった事も教えしておきましょう」

 

 まずアンファが話し始めたのは幹部との話し合いで決まった事項だった。

 

 加奈はブルーコスモスへ歓迎はされたが、加奈がブルーコスモスを信用出来ていないのと同じく、いくら幹部であるアンファの紹介だとしても組織として加奈を完全に信用する事は出来ない。

 

 その為暫定的な処置として枠が空いていたアンファの副官として組織に貢献して貰い、その功績をもって加奈が信用するに値すると判断出来れば、加奈を旗として蒼き正常なる世界を創る為に活動を開始すると決定した。

 

「なるほど、信用を得たいなら功績を残せと言うことね、それで私はどうしたらいいのかしら?」

 

(私が信用していないように組織も私を吟味しているところか)

 

 アンファの事があった為意外とチョロい組織なのでは? と考えていた加奈だったが警戒しながら付き合っていくべき組織だと認識を改める。

 

「そうですね。加奈様にはまず勇者としての務めを果たして頂きましょう」

 

「務め?」

 

「この世界に来た時に説明を受けたように、勇者は波と言う厄災を止めるために召喚されます。そこで活躍をすれば勇者として認められ評価されるでしょう。あと、その為に龍刻の砂時計に触れる必要があるので後で一緒に登録に参りましょう」

 

 砂時計は第7支部で保管されていて、波時期を知らせる以外にレベル上限を迎えた者をクラスアップする事も出来るそうだ。

 

「取り敢えずは波に備えなければね」

 

 加奈にとって波と言うのがどれほどのものか皆目検討もつかないもしからしたらあの戦場よりきついものかもしれないのだ。その為彼女は数値上の強さであるレベルアップをしておきたかったのだ。

 

「ああ、そういえばその件で1つお話が」

 

「何かしら?」

 

「はい、波の際にパーティメンバーを組んでいれば現場に仲間を連れて行けるのです。我々からも人員を出せますが仲間の要望などはありますか? 。因みに6名以上でパーティを組んだ場合1人1人に入る経験値が下がります」

 

 ふむ、と加奈は深く考え込む。波というものを経験したことが無い以上あまり複数で行ってもかえって犠牲者を増やすだけだ。ならば少人数で腕の経つものがいた方がありがたい。

 

「性格云々は気にしないからとにかく腕の経つ者が欲しいわ」

 

「分かりました。至急手配しておきますね」

 

 そう言うとアンファはすぐさま一筆書きあげると、部屋の外で待機していた男に紙を渡す。そして男は紙を受け取ると静かに部屋から出ていった。

 

「ありがとう。そう言えば他の勇者達はどうなったの?」

 

 今後、戦場に出るのなら勇者達と会う事もあるだろう。が、しかし初手で最悪な印象を与えてしまった加奈は正直、他の勇者達と出会いたく無かった。それに、あんな行いをした為、勇者達この一週間でどう動いたかの動向が少し気になったのだ。

 

「えーっと、槍、弓、剣の勇者達は互いに仲間を作り、無事旅へと出ていかれました」

 

「なるほどね、城に篭ったりはしなかったんだ」

 

 戦場で身を削り人の死に慣れた私と違い他の勇者は一般人だったはずそんな彼らに人の死を見せてしまった事を加奈は後悔していたが、気にする事はないようだ。

 

「それで、盾の勇者は?」

 

「盾の勇者は...マルティ王女に嵌められ、強姦罪の冤罪で城を追い出されました」

 

「...その話詳しく教えてちょうだい」

 

 加奈は興味津々にアンファに言い寄る。言い寄られたアンファは知りうる情報を加奈へと伝えた。

 

 メルロマルクに残った諜報員の情報によると盾の勇者は第1王女であるマルティに嵌められた挙句、装備を剥ぎ取られ国中でさらし者にされていた。

 

 状況が状況だった為、盾の勇者を信じるものは1人も居らず他の勇者達も盾の勇者を責め立てたようだ。

 

 会ってから盾の勇者とあまり会話の無かった加奈だが、温厚そうだった彼が裏切りで心を病んでしまっていないか少し心配になってしまっていた。

 

「彼が少し心配ね」

 

「ならば見に行きますか?」

 

「はい?」

 

「いえ、私もそろそろ戻らねば怪しまれますし、メルロマルクに戻ってしまえば諜報員としての仕事で加奈様の補佐が出来なくなります。なので代わりに直属の部下を加奈様の補佐につけようと思っていたのですが、メルロマルクで街の様子を見ながら現地で合流なんてどうでしょう?」

 

 加奈のこれからを近くで見守りたかったアンファ、だが影の1人としてそれなりの地位と信頼を得てしまっているアンファはメルロマルクを離れることが出来ない。

 

 その為、非常に悔しかったが、部下であるメアリーに後を任せる事にした。メアリーは優秀な諜報員であり並の兵士以上には戦える。

 

「いいわね、結局メルロマルクに居られる時間は無かったし、この世界での人々も見て見たいしね」

 

「そうと決まれば早速龍谷の砂時計に行きましょうか」

 

 こうしてアンファに手を引かれた加奈は龍谷の砂時計に向かうのだった。

 

 

 ──────

 

 

「ここがメルロマルクね」

 

 アンファと共に馬車でメルロマルクに降り立った加奈はメルロマルクの街並みを見渡す。石造りの建造物が目立つ中世ヨーロッパの街並み。

 

「いい街ね、活気があって人が生きている」

 

 ブルーコスモスの拠点でも人々の生活を見れたが、あれは街と言うよりは拠点という感じだった。みなで協力して生きている感じは素晴らしかったが、やはり喧騒溢れる街並みも素晴らしい。

 

「国王がマシならもっと素晴らしいんですけどね」

 

「いいの? あなたがそんなことを言って」

 

 心底うんざりそうな顔をして言い放つアンファを加奈は心配そうに見つめる。

 

「誰も聞いてないですよ」

 

「そう、ならいいけど」

 

 馬車から降りて少し歩いた路地では亜人の奴隷が使役されていた。まだ幼い子供も多くいたが、皆、布切れ1枚しか着ておらず、身体中擦り切れてボロボロになっている。

 

「さっさと動け!! このノロマ!!」

 

「....ごめんなさい..ごめんなさい..」

 

 加奈の見ている視線の先では幼い亜人が身なりのいい小太りの男に鞭を振るわれていた。

 

「前言撤回、そう言えば奴隷が許容されているんだったわね」

 

 鞭を振るわれる度に傷つく亜人の少年を見て加奈は怒りで拳を震わせた。

 

「加奈様、今は抑えて下さい。ここではあれが正常です」

 

 今にも亜人の少年の方に向かって走り出しそうな加奈をアンファは必死に押さえた。

 

「分かっている!!」

 

 加奈は煮えくり返っている腹をどうにか抑えて言葉を返した。握りしめた拳には血が滲んでいたが、加奈は気にせず更に力を込めた。

 

「最悪よ、こんな光景を見ないように戦い続けたというのに! 異界の地で再びこの光景を見ることになるなんて..」

 

「加奈様が力を付け皆に認められるようになればこの光景も無くなります...いえ、無くして見せます!」

 

 加奈がアンファを見ると彼女も悔しそうに歯を食いしばっていた。

 

「分かったわ、いずれこの光景も無くしましょう」

 

 加奈は固く心に誓いその場を後にした。何も出来ない自分の無力差を噛み締めながら。

 

「それではここでお別れですね加奈様。このお店で待っていれば仲間に会えるはずです」

 

「ありがとうアンファ。早く行きなさいあまり私といると怪しまれるわよ」

 

「えぇ、それでは名残惜しいですが、また逢う日まで」

 

 アンファと別れた加奈は1人寂しくアンファに紹介された店で食事をとっていた。

 

「美味しい、味がする料理はやはり素晴らしいわね」

 

こちらに来る前はナノマシンの注入しすぎで味覚が鈍くなっていた為、料理の味もろくに分からなくなっていた加奈だが、こちらに来てからは料理を味わうことが出来ている。

 

「...また来たのかよ」

 

「...汚らしい」

 

「...亜人もか」

 

 しかし亜人を連れた男が来店すると落ち着いていた店の雰囲気がガラッと変わり、急に険悪な雰囲気が漂い始めた。せっかく先程の気持ちに整理がついて良い気分で食事をしていた加奈だが、店内の変化に気分を悪くしていた。

 

(クソッ、ナノマシンの制御が薄くなっているせいかこの世界に来てから感情の制御が上手く出来ない)

 

「あれは..」

 

「盾の勇者ですよ加奈様」

 

 感情を紛らわせる為に吐いた独り言に返事が返ってくる。慌てて視線を向けると誰も居なかった向かいの席には黒髪の女性が座っていた。

 

「....貴女がアンファの部下かしら?」

 

油断していたとはいえ、気付かれることも無く近付く技術から彼女が待ち人だと当たりをつけた加奈はなんのひねりもなく質問した。

 

「はい、メアリーと申します。貴女様の事は長より聞き及んでいます。私の事は手足のようにお使い下さい」

 

 メアリーと名乗った女性は後ろで束ねた黒髪と三白眼特徴の美しい女性だった。金髪でおっとりとした顔立ちだった、実際おっとりとしていたアンファとは違い、メアリーはクールな顔付きで知的な雰囲気を出していた。そしてチラリとめくられた腕の裾から見える青い花の刺青がブルーコスモス一員である事を語っていた。

 

「それにしても各地における龍谷の砂時計へのご登録おめでとうございます。これで貴女様は四聖勇者と同じと証明されましたね」

 

ここに来る前アンファと共にブルーコスモスの拠点を飛び回り各地にある砂時計に登録を済ませてきた。かなりハードなスケジュールだったがこのメルロマルクにある砂時計に登録すれば準備は整う。

 

「それはどういう事?」

 

「聞いてないのですか? 龍谷の砂時計への登録は四聖勇者でしかできないのです。それが出来た貴女様は四聖勇者と同列に語ることができます」

 

「おやぁ、盾の勇者が何故こんな所にいるんだぁ!?」

 

 加奈が話を続けようとした時、店の扉から怒号が飛ぶ。見れば立派な鎧を着た男達が騒いでいた。

 

「俺がここにいちゃ悪いのか?」

 

「あぁ、犯罪者がいていい場所ではない」

 

「チッ、行くぞラフタリア」

 

 鎧を着た男たちに言われ店から出ていこうとする盾の勇者とその連れの女の子。

 

「下らない」

 

「駄目ですよ加奈様、ここで目立ってはいけません」

 

盾の勇者を庇おうと加奈は席を立とうとしたがメアリーに腕を捕まれ席に引き戻される。

 

「貴女様もメルロマルクを逃げ出しているんです。ここで目立ってしまっては今後、不利な状態になるでしょう」

 

奴隷騒動に続いて差別まで見てしまった加奈は既に我慢の限界。今すぐにでも騎士達を蹴散らしに行きたかった。

 

「....いいえ、我慢の限界よ」

 

 加奈はメアリーの腕を振り切り盾の勇者と鎧を着た男達との間に入ろうと飛び出す。

 

「この国の騎士様は随分と礼儀がなってないんだなぁ」

 

加奈が盾の勇者の元に到着する前に声を荒らげる男がいた。声を荒らげた男は騎士達の後に入ってい来た集団の先頭に立つ30歳くらいの男だった。

 

「ルドルフ、やめてください此処で目立っては.」

 

「ヘンシルさん、此処は言うべきでしょう。波から人々を守る勇者相手にこの仕打ち常識的ではありません」

 

「フローレンスの言う通りだ、いくら騎士だろうが許されることではない」

 

「シムナさんまで....」

 

扉の前で騎士達に絡んでいるのは3人の男性と1人の女性だ。パッと見た立ち姿だけでも、4人が相当の実力者だと言うことが分かる。

 

「な、なんだ貴様らは!?」

 

「なんだっていい、取り敢えず表に出な、お前らは気に食わん」

 

 ルドルフと呼ばれた男が騎士達を店の表へと連れ出す。

 

「はぁ...全くあの人達は..」

 

 近くまで来ていたメアリーは4人の姿を見見て溜息をついて顔を伏せる。

 

「知り合い?」

 

「いえ..その.」

 

「まあ、いいわ取り敢えず見に行きましょう。騎士に喧嘩を売るあの人達が気になるわ」

 

 そういうと加奈は1人、店の外へと出ていった。

 

「よくも我々に舐めた口を聞いてくれたな。総員抜剣」

 

 総勢5名の騎士が同時に剣を抜いた。5人の騎士は4人を取り囲むように構えた。

 

「それで、誰が行くんですか?」

 

「いや、私が行こう最初に挑発したのは私だからな」

 

ヘンシルが問いかけるとルドルフが名乗りをあげる。彼は荷物をヘンシルに預け騎士の方へと歩き出す。

 

「この人数に1人で立ち向かうのかぁ? 随分と舐められたものだ」

 

 騎士の1人が挑発するが、ルドルフは1歩前に出ると首や腕を鳴らして挑発し返す。

 

「フン、強がるのも今のうちだぞ!」

 

「いいからかかってこい、来ないならこちらから行くぞ」

 

 ルドルフの言葉を聞いた騎士たちは一斉に攻撃を開始した。一斉に向かって来た剣が振り下ろしきる前にルドルフは剣の間合いの内側に入り、騎士の1人に密着した。

 

「なッ!?」

 

 そして、そのまま剣を振り下ろした腕を取り、腕の勢いを利用して引くようにして騎士を投げる。投げられた騎士は武器をその場に置き去りにして空高く飛んだ。

 

 ルドルフは剣が戻る前に流れるように2人目の騎士に接近すると、軸足を刈り地面へ倒す。そして倒れた騎士の剣を持った方の腕を思い切り踏みつける。ボキッと言う鈍い音が響き、騎士の1人は呻き声をあげながら腕を押さえて転がり回った。

 

「案外不甲斐ないな、この国の兵士も」

 

 瞬く間に2名を戦闘不能にしたルドルフはそう言うと2人の剣を拾い二刀流の独特の構えをとった。

 

「クソがァァァ!!」

 

叫びながら向かって来くる3人目の騎士。勢いよく振りかぶった剣はルドルフの左手で払われ、がら空きになった胴体にルドルフが構えていた右手の剣が振るわれる。攻撃を食らった騎士は1mほど飛んだのに腹を押さえてその場に突っ伏した。

 

 4人目の騎士はルドルフに切りかかろうとするが、ルドルフの投げた剣に驚き、咄嗟に剣を弾く。剣の対処で意識を取られた一瞬を狙ってルドルフは一瞬で騎士に肉薄すると、剣の柄頭で腹を叩き相手を気絶させる。

 

「残るは1人か、以外と楽しめないものだ」

 

「ナメるなァァァ」

 

 叫びながら上段から振り下ろされる剣をルドルフはものともせず、剣を斜めに傾け攻撃をいなし、上段から騎士肩に向けて振りかぶる。

 

ルドルフの攻撃に耐えられなかった最後の一人も倒れ、立っているのはルドルフだけになってしまった。

 

「他愛も無い。これでは波が来ても負けてしまうぞ」

 

 倒れている兵士達にルドルフは吐き捨てるように言い放つ。そして持っていた剣を放り投げると盾の勇者に向き合った。

 

「その...ありがとうな」

 

「いいえ、これから波に向かう勇者様を思えばこれしきのこと....おっと、すいません私達も人を待たせておりますので」

 

 そう言うとルドルフは店内へと入って行く。それに続くようにして3人も店内へと入っていた。

 

「随分と面白いものが見れたわね、それじゃあ私達も戻りましょう。彼らの待たせ人は誰なのか気になるけど私達も話の途中だった訳だし」

 

「はぁ...初日からこんな感じかぁ、先が思いやられるなぁ..」

 

 悲しそうにボヤきながら加奈の後に続いてメアリーも店内へと戻っていく。メアリーの足取りは重く戻った後に訪れるであろう面倒に頭を抱えた。

 

「ナオフミ様彼らは一体..」

 

「さあな、ただ彼等ような仲間がいれば俺も..いや..」

 

そうボヤきながら盾の勇者尚文は唯一の仲間であるラフタリアを見る。

 

「ナオフミ様?」

 

 ラフタリアの声を聞き数秒考え事をした尚文だったが、すぐにフッと笑い飛ばして歩き始める。

 

「行くぞラフタリア」

 

「は、はい」

 

 こうして盾の勇者と銃の勇者の再開は激しく、しかし何事もなくすれ違うように終了した。尚文の様子を最後まで見た加奈は優しく微笑み安心した表情で席へと戻り、加奈に出会ったことすら気付かなかった尚文は先程まで無かった希望を胸に宿しながら店を後にしたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。