ゼロの使い魔~銀の騎士~   作:89R

4 / 5



『異世界での夜』

 

「その話本当なの?」

 

ルイズが疑わしげに俺に目を向ける。2人はテーブルを挟んだイスに腰掛けている。

 

ルイズの部屋は12畳ほどの大きさだ。窓を南向きにするなら,西側にベットが置かれ,北側に扉がある。東に大きなタンスが置いてあり部屋に置いてある家具はどれも細かな装飾が施された高級感あふれるものだ。

謙吾はさっきいた草原から歩いてルイズの部屋まで来た。

 

「嘘ついて,俺に何の得があるんだ」

 

謙吾は今日までこれほど驚いた事はない。

 

魔法使いがいて,空に浮かぶ国がある。そんなお伽話のようなことを信じられる事は出来なかった。だが,今現在全くといっていいほど情報が少なすぎるそれに,空に見える2つの月,間違いなくここは地球ではない。

 

時刻は夜・・・・・・・。今日のところはひとまず休むか・・・・・・明日からこれからどうするか考えよう。

 

窓からは,先ほど謙吾がいた草原が見える。月明かりにてらされ,その向こうには大きな山が見える。右手にはうっそうと茂る森が見える。

 

 

「信じられないわ」

「俺も同じだ」

「別の世界って,どういうこと?」

「そうだな・・・・・魔法使いがいない。それに月が1つだ」

「そんな世界どこにあるの?」

「さあな,どこにあるんだろうな」

「なによ,平民の分際で」

「平民か・・・・・・」

「だって,あんたメイジじゃないんでしょ。だったら平民じゃない」

「気になっているんだが,そのメイジってのは何なんだ?」

「もう,あんた本当に,この世界の人間なの?」

「だからさっきからちがうと言っているだろ。人の話を聞け」

 

謙吾がそういうとルイズはせつなそうにテーブルに肘をついた。テーブルの上にはランプが置いてあり,ランプの中の淡い光が部屋をぼんやりとてらしている。電気は通っていない様だ。まあ,馴れているから問題ないんだが。

「それで,俺はどうやったら元の世界に帰れるんだ?」

「無理よ」

「それは何故だ?」

 

ルイズは困った顔をして謙吾に告げる。

 

「あんたの世界とこっちの世界を繋ぐ魔法はないんだから」

「じゃあなんで俺はこの世界にきたんだ」

「召喚の魔法,つまり『サモン・サーバント』は,ハルゲニアの生き物を呼び出すのよ。普通は動物や幻獣なんだけどね。人間が召喚されるなんてはじめて見たわ」

「そうなのか・・・・・・。それでこいつは何なんだ?」

 

謙吾は左手の甲に描かれた,ルーン文字を見つめる。

 

「ああ,それね」

「そうだ」

「私の使い魔ですっていう,印みたいなものよ」

 

ルイズは立ち上がり腕を組んだ。

 

よく見ると,本当に可愛らしい。するりと伸びた足,細い足。背はそんなに高くない。155センチといったところだろう。

 

目は猫のようによく動く。生意気そうな眉が,目の上の微妙なラインを走っている。

 

「わかった,しばらくはお前の使い魔になってやる」

「なによそれ」

「文句はないだろ」

「口の利き方がなってないわ。『なんなりとお申し付けください,ご主人様』でしょ?」

「そのうちな。それで使い魔はどんな事をすればいいんだ?」

 

謙吾は尋ねた。一応魔法使いが出てくる本などを読んだとき,カラスやフクロウといった動物が出てきたのは覚えている。

 

「まず,使い魔は主人の目となり,耳となる能力を与えられるわ」

「つまり,俺が見たもの,聞いた音がルイズも感じる事が出来るということか?」

「ええそうよ。でも,あんたじゃ無理みたいね。あたし,何にも見えないもん!」

「ついてないな」

 

謙吾はぼけっとした声で答えた。

 

「それから,使い魔は主人が望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」

「秘薬ってのはどんなものだ?」

「特定の魔法を使用するときに使う触媒(しょくばい)よ。コケとか硫黄とか・・・・・・」

「なるほど」

「あんた,そんなの見つけてこれないでしょ! 秘薬の存在すら知らないのに!」

「ああ無理だ」

 

ルイズは苛立ちげに言葉を続ける。

 

「そして,これが一番なんだけど・・・・・。使い魔は主人を守る存在であるのよ! その能力で,主人を敵から守るのが一番の役目。でも,あんたにできる?」

「ああ,それなら問題ない」

 

 

 

 

 

ルイズは謙吾がいれば並大抵の奴には負けないと思った。それほど謙吾から感じる雰囲気が普通のものではなかった。

 

ルイズは久しく会っていない母親のことを思い出す。

 

カリーヌ・デジレ・ド・マイヤール。ルイズの母親で,ラ・ヴァリエール公爵夫人。ルイズとルイズの姉カトレア同様の桃色がかったブロンドの持ち主。目付きの鋭い高飛車なオーラが漂う人物で,長年人を率いて命令し,傅かれてきた故の威厳と貫禄に満ちている。普段は夫である公爵を立てているが、ヴァリエール公爵家で彼女に逆らえるものは誰もいない。

 

風系統のスクウェアメイジで,公爵家に嫁ぐ前(30年前)はマンティコア隊隊長『烈風カリン』として,顔の下半分を仮面で覆った姿で数多くの武勲を立て,トリステイン国内で広く知られていた。

 

そんな母親にこの使い魔の雰囲気が似ている。

 

「他には,あんたにできそうな事をやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」

「まあ,しかたない・・・・・・・契約成立だな」

「ええ。さてと,喋ったら眠くなっちゃった」

 

ルイズはあくびをする。

 

「それで,俺はどこで寝ればいいんだ。外か?」

 

ルイズは床を指差した。

なるほどね床で寝ろと。まあ,問題ないが。

 

「仕方ないでしょ,ベットは1つしかないんだから」

「別に問題ないさ」

 

ルイズは毛布を1枚投げてよこした。

それから,ブラウスのボタンに手をかける。

1つずつボタンをはずし,下着があらわになる。

 

「なにやってんだ?」

 

ルイズはきょとんした声で答える。

 

「なにって,寝るから着替えるのよ」

「せめて俺のいないところで着替えろ」

「なんで?」

「まずいだろ,普通」

「まずくないわよ」

「魔法使いは,男に裸見られても平気なのか?」

「男? 誰が? 使い魔に見られたってなんとも思わないわ・・・・・・」

顔が若干赤くなっている。説得力がないぞルイズ。

 

「じゃこれ明日になったら洗濯しといて」

 

ぱさっ,ぱさっと何かが飛んでくる。

謙吾は飛んできたものを拾い上げる。

ルイズの下着だった。

 

「これも仕事か・・・・」

 

謙吾は立ち上がる。ルイズは,大きめのネグリジェを頭から被ろうとしている。淡いランプの光に,ルイズの肢体(したい)があらわになる。薄暗い為一般人にはよく見えないだろう。謙吾は夜目が利くためはっきり見えた。

 

まったく無防備すぎるだろ。

謙吾は壁に寄りかかり横になった。AKは手に持ったまま安全装置をかけておく。

いつなんどき何が起こるかわからないからだ。これは日頃から戦場にいる為自然に身についた。

 

 

いつ以来だろうこんなに静かな夜は・・・・・・・。

 

なんとしても帰らなくては元の世界に。

だが帰ってどうする?

 

仲間は,あの時全員死んだ・・・・・・・。

 

謙吾の頭の中に仲間との思い出がうかぶ。

 

 

俺はいったい何をしたらいいんだ・・・・・・・・。

 

 

 

謙吾はそんなことを思いながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ご意見やご感想があればよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。