この鬼畜姫に祝福を!   作:パイン村

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前回、カズマには弟いるのにカズハを一人っ子って書いちゃったので少し内容を修正しています。
文章の稚拙さ間違いで修正が多く申し訳ありません。

今回も長め、というか前回よりも長い。


第10話

今日は待ちに待った、キャベツの報酬の支払い日なんですが....

 

大金が入るというのに私の気持ちは全く高揚しません、むしろ憂鬱です。

どれだけの大金だとしてもキャベツで稼いだと思うと虚しくなります。

なんか、この世界に来てからどんどん心が擦りきれっていっている気がします、これが大人になるということなんでしょうか?

そんな憂鬱な気分でギルドに入ると何やらざわついていました。

皆、なにかに怯えた様子でキャベツの報酬に喜んでるという風ではありませんね。どうしたのでしょうか?

 

....おっ、あそこに話の聞けそうなゴミクズが丁度よくいますね。冒険者らしく、ここは情報収集といきましょう。

 

「この騒ぎはどうしたんです、ゴミクズ。ついにあなたが借金の形に売られることにでもなりましたか?」

「おい、誰がゴミクズだ、誰が。俺の名前はダストだ!ってカズハじゃねーか」

 

どっちにしても意味は同じでしょうに。

まあ、この世界でダストという言葉にゴミという意味があるか知りませんが。

私の目の前にいるクズという言葉を体現した金髪の男はダストといいます。

この前、先輩面をして私にセクハラをかましたゴミです。

一応、先輩冒険者なのでこの騒ぎの原因も知っているでしょう。

 

「お前、この騒ぎのこと聞きにきたんだろう?それなら態度ってもんがあるんじゃないか?この前のこと俺は忘れたわけじ....」

「《スティール》ですっぽんぽんになりたいようですね?」

「ふっ、なんでも聞きな」

 

最初からおとなしくそうしてれば良いものを。

全く、人の弱味に突け込むことしか考えていないクズはこれだから。

 

「で、これなんの騒ぎなんですか?」

「ああ、廃城で行方不明になっていたパーティーの一人が発見されたんだとよ」

「いいことじゃないですか、どうしてこんな騒ぎに?」

「なんでも一人残して全滅だとよ。あそこにいるのは魔王軍の幹部で近づかないよう、警告のために一人生かして返したらしい」

 

なるほど、皆、魔王軍幹部に怯えているというわけですか。

そりゃあそうです、どう考えても駆け出し冒険者専用の街に来ていいモンスターではありません。

魔王軍幹部とか専用ダンジョンの中で待ち構えているものでしょう、普通。

まったく、魔王軍の幹部様がこんな街になんの御用なんでしょうかね?

 

「そうですか。私には関係ない話ですね、魔王軍幹部とか会いたくもありません」

「そりゃあそうだ。わかってると思うが間違っても廃城に近づくんじゃねーぞ」

「そんな馬鹿なことするわけ無いですよ」

 

そういって私はダストと別れます。

魔王軍幹部ですか。一応、魔王を倒す勇者候補の私としては倒すべきなんでしょうが....。

駆け出しの私達に魔王軍幹部の相手なんて無理ゲーですし、そもそも私は生計をたてるので精一杯なんです。

そんなことは他のチート持ちの転生者がやればいいんですよ。

勇者に憧れたこともありましたがそんな夢とかロマンは腹の足しにもなりません。

夢を見れるの余裕のある人間だけです。第一、私の仲間は...

 

私は、集合場所になっているテーブルを見ます。

そこにいるのは、駄女神、ドM聖騎士、爆裂狂の魔法使い。

これでどうやって魔王倒せっていうんですか...。泣くな、泣くんじゃない、きっと報われる日が....。

 

「どうしたの、カズハ?遠い目なんかしちゃって」

「...人生の不条理さについて考えてたんですよ。そんなことよりも貴女達に聞きたいことがあるんですが、貴女たちのスキルってどんな感じなんです?次の習得スキルの参考にしたいんですが」

 

このパーティー、バランスが悪すぎますからね。スキルの自由度が高い私が穴を埋めていかないと。

 

「私は《物理耐性》、《魔法耐性》、各種《状態異常耐性》で占めているな。あとは《デコイ》という囮になるスキルぐらいだ」

 

見事に防御系スキルばかりですね。まあ、わかっていましたが。

 

「一応、聞きますが両手剣などの命中率を上げるスキルを取る気は?」

「無い。私は、体力と筋力だけはあるからな。命中率が上がれば、無傷でモンスターが倒せてしまう。だが手加減して攻撃を受けるのは違うのだ。必死に剣を振るうが力及ばず圧倒されてしまうというのが」

「もういいです、黙っていてください」

 

聞いた私が馬鹿でした。この変態は性癖のために全てを犠牲にする阿呆でした。

 

「んっ...くっ!自分から聞いておいてこの仕打ち!」

 

反応したら喜びそうなので無視です。次はめぐみんですが、この子も...

 

「もちろん爆裂系スキルのみです。爆裂魔法に爆発系魔法威力上昇、高速詠唱。最高の爆裂魔法を放つためのスキル振りです。これまでも。これからも」

 

めぐみんは強い口調で言い放ちます。これはいくら言っても無駄そうですね...。

 

「えっと、私は」

「貴女は言わなくていいです」

「ええっ!」

 

どうせ、この駄女神のスキルなんて宴会芸、宴会芸、宴会芸に決まっています。聞くだけ時間の無駄です。

しかし、このパーティーは本当に...

 

「他のパーティーに移籍するいい方法って無いですかね...」

「「「!?」」」

私の小さな呟きに三人がざわつきました。

 

 

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昼過ぎになりようやくキャベツ狩りの報酬が支払われました。本当は朝方に支払われるはずだったのですが魔王幹部の発見でギルドもてんてこ舞いだったようです。

 

「どうだカズハ?報酬で鎧を新調してみたのだが」

もらった報酬でいつもより少し豪華めの食事を食べているとダクネスがそんなことを嬉々として聞いてきました。

確かに鎧がピカピカになっていますが、これは...。

私は、正直な感想をダクネスに告げます。

 

「成金のボンボンがつけてる鎧みたいですね、趣味悪いです。というか私、食事中なので邪魔しないでもらえますか?」

「...カズハはどんな時でも容赦ないな。私だって素直に褒めて欲しい時もあるのだが」

 

ダクネスはすねたように呟きます。知りませんよ、そんなこと。というかなんで私が変態を褒めなきゃいけないんですか。

....まあ、前より騎士らしくなったと思わなくもないですが、間違っても口には出しません。

 

「というか、そんなことよりもあれを何とかしてくださいよ」

 

私は、紅潮した顔で杖に頬擦りしているめぐみんを指差します。

 

「はぁ、はぁ、....た、たまらないのです!魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色つや....ふっ、ふっふふ」

 

めぐみんの常軌を逸した様子を見て流石のダクネスも押し黙ります。

 

マナタイトというのは魔力を含む希少金属で杖に使うと魔法の威力が増すらしいです。

これで爆裂魔法の威力が上がるとめぐみんは大喜びであの杖を買ったわけですが.....

 

「報酬で新しい杖を買ってからあの調子です。正直、関わりたくないのですけど、ほっといたら街中で爆裂魔法をぶちかましそうで怖いんですよ。どうにかできませんか、正義の騎士様?」

 

ダクネスは私の言葉に困ったような、あきれたような顔になります。

 

「...早く、クエスト受けて適当な場所で撃たさせてやるしかないのではないか?」

 

確かに、ダクネスの言うとおりなのですが、この街のクエストは今....「はあぁぁっ!なんでよ!」

ギルドに聞きなれた声が響きました。....気のせいであってほしいな、と願いながら、ギルドの受付の方を見ます。

しかし、そんな願いも虚しく、そこにいたのはやはりというか、当然というか、青い髪の自称女神でした。

何やら、ギルドの受付さんともめているようですが?

 

「なんで、私の報酬が5万ぽっちなの!私が捕獲した数は十や二十じゃ利かないはずよ!」

「それが、アクアさんが捕まえてきたのはほとんどがレタスでして...」

「何でレタスが混じってるのよ!」

 

ちなみにレタスの買い取り価格はキャベツの十分の一ほど。つまり、想像していた報酬が十分の一、アクアが騒ぎたくなる気持ちもわからなくはないですね。

 

あっ、諦めてこっちに近づいてきましたね、あの駄女神。

 

「カーズハさん♪今回の報酬はおいくら万円?」

 

円じゃなくてエリスですけどね。

ここで黙っているとしつこく聞かれそうなので私は、正直に答えます。

 

「100万飛んで5000エリスです」

「「「ひゃっ!?」」」

 

私の答えを聞いたアクア達は絶句します。そう、私はあのキャベツ達のお陰で小金持ちになったのでした。

捕獲した数も多かった上に、私のキャベツは良質なものが多く高値で取引されたそうです。

これがもって生まれた運の差というやつですかね。

 

私が中断していた昼食を再開しよようとすると、アクアが媚びを売るような笑みで近づいてきます。目的が見え見えです。

 

「カズハ様。貴女って何て言うか、そう、えーっと、あの、なんかいい感じよね!」

「なにも思い付かないなら黙っていてもらえます?というか、ひとつくらい何かあるでしょう!」

「うーん....お金持ちよね!」

 

ふざけてんのか、この駄女神。

 

「はい、はい、私はどうせお金以外取り柄の無い女ですよーだ。...言っときますが、絶対に1エリスもあげませんからね!」

 

アクアの顔から笑みが消え、絶望に染まっていきます。

 

「まって、待ってください、カズハさあああああん!私、クエストの報酬がかなりの額になるって思って、有り金全部使っちゃったの!しかも、ちょっとヤバめのところから借りたお金が20万くらいあるの!今回の報酬じゃ利息しか払えないの!」

 

アクアは泣きながらすがり付いてきますが引き剥がします。

 

「ご飯が食べられないじゃないですか!というか利息で五万もとられるってどんなところから借りたんですか、貴女!」

 

「あの人たちのところ」

 

アクアが指差した方を見るとどう見ても堅気じゃないスキンヘッドのお兄さんと痩せこけたナイフを持ったお兄さんがいます。

どう見てもヤバイ人たちですね。ちなみに借金背負った冒険者がいつの間にか消えてるってよくある話らしいですよ。

 

「....助けませんからね!そもそも今回の報酬はそれぞれのものにって言ったのは貴女でしょう!」

「だってその方が私の取り分が多くなると思ったんだもん!」

 

この女神、最低ですね!これなら、まだ私の方が女神らしいですよ。

 

「このお金の使い道はもう決めているんです。そう、いまこそ馬小屋生活から脱する時!というか、うら若き乙女がいつまでも馬小屋暮らしとかあり得ませんから」

「カズハが乙女?あり得ないんですけど、プークスクス」

 

ぶちのめしてやりましょうか、この駄女神。

 

「....そうですか。では、あの人たちにアクアが借金は身体で払うと、言っていたと伝えときますので」

 

そういって私が立ち上がるとアクアが全力で引き留めてきます。

 

「ごめんなさあああい!カズハに見捨てられたら、私どうしようもないの!お願いだからお金を貸して!そりゃあカズハにだって秘密にしたいことのひとつふたつあるのだし、プライベートな空間がほしいのはわかるわよ?例えばこっそり自分を主人公にした、ファンタジー小説を書いてる事とか...」

「なぜ、それを!黙れ、黙りなさい、黙るのです!」

 

 

その場は服従のスペルで黙らせましたが、その後もことあるごとに私の秘密を暴露したので、しかたなくお金を貸しました。

お陰で私の報酬は半分ほどに。

畜生、何でこんなことになるのです、異世界転生してからはそれなりに、清く生きているつもりなのに...。

あの駄女神、水の女神ではなく貧乏神の間違いじゃないんですかね。

 

 

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「カズハ、早速クエストにいきましょう!それもたくさんの雑魚モンスターがいるやつです!新調した杖の威力を試すのです!」

 

私がようやく昼食を食べ終わるとめぐみんがそんなことを言い出しました。それに続くようにアクアとダクネスも口を開きます。

 

「いいえ、お金になるクエストがいいわ!借金を返済したせいで 今日の晩御飯代もないの!」

「いや、ここは強敵を狙うべきだ!一撃が重くて気持ちいい、すごく強いモンスターをだな...!」

 

相変わらず、協調性が欠片もないですね、この子達...。

 

「盛り上がっているところ、悪いですが、今、この街で私達に受けられるクエストなんて無いですよ」

「「「は?」」」

 

私の言葉に三人とも愕然する。やはり三人とも知らなかったようですね。私も三人が報酬を受け取っている間に聞いた話ですからね、当然といえば当然ですが。

 

「どういうことよ!私の晩御飯はどうなるのよ!」

「そんなこと言われても。何でも魔王軍幹部のせいで雑魚モンスターが軒並み隠れていて高難易度のクエストしか今は受けられません。行きたければ止めませんけど、私は絶対にいきませんからね」

 

私の言葉を聞いてアクアは膝から崩れ落ちます。

 

「な、なんでよおおお!」

 

自業自得はとはいえ、哀れですね。明日から、また労働者生活スタートですか。

私もアクアに報酬をとられたせいで稼がないといけません。

これ以上、この駄女神と一緒の空間に暮らしていると私の秘密がどれだけ握られるかわかったものではありませんからね。

さっさとお金をためて賃貸でも借りたいところです。

そう思いながら私はギルドから斡旋される仕事が載ったバイト雑誌をめくっていました。

 

 

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「というわけで、王都から幹部討伐のための討伐隊がこの街に派遣されるまで冒険者稼業はお休みです」

「私達のレベルでは仕方ありませんね。...となると、カズハにはしばらく私に付き合ってもらうことになりそうですね。」

 

陽気のいい昼下がり、私はめぐみんと街の外に出掛けていました。

普通、街からこれだけ離れればモンスターも出てくるものなのですが、魔王軍幹部のお陰で平和そのものです。

その為、爆裂魔法が撃つことできずうずうずしていためぐみんが、爆裂魔法の練習がしたいと私を連れ出し今に至るわけです。

 

「練習なら一人でいいんじゃないですか?私は、惰眠をむさぼりたいんですが。毎日のバイトで疲れているんですよ」

 

私は毎日の労働による疲労を訴えますが、めぐみんは私の言葉を気にする様子もありません。

 

「あなたが毎日、昼過ぎまで寝ていることは知っています。 しかもバイトって、ギルドの書類整理の手伝いですよね?そんなに大変だとは思えないのですが。」

 

ちっ、知ってやがりましたか。

この世界、中世風なだけあって、やはり識字率が低いのか、読み書きできるだけで楽にそこそこのお金もらえる仕事もあるんですよね。

転生時のサービスで言語の習得だけでなく文字の読み書きまで習得できたのはラッキーでした。

まあ、幹部の件で王都に派遣している人員が戻ってきたら私はお役御免らしいですが。

 

「だいたい、私一人だと、誰が私をおぶって帰るんですか。私は一日一回は爆裂魔法を放たないといけないんです!」

 

そうでしたね、あなた爆裂魔法撃つと動けないんでしたね。

って私、これから毎日めぐみんをおぶってこの距離を歩かなきゃいかないんですか?

 

「もうこの辺でよくないですか?適当にぶちかまして帰りましょうよ」

「だめです、街からもっと離れないとまた、守衛さんにしかられてしまいます!」

 

またって言ったか、この爆裂娘 。

 

「あなた...街の近くで爆裂魔法ぶっぱなしたんですね...」

 

めぐみんは 私の言葉にうなずきます。...面倒ですが仕方ありません、たまには遠出をすることにしましょうか。

 

「わかりましたよ、どこまででも付き合ってあげますよ」

「さすが、カズハです!実はあっちに丁度良い廃城がですね...」

 

全く、本当に嬉しそうにはしゃいでます。どんなことであれ、それだけ熱意を持てることがあるというのは羨ましいです。

私もいつかそういものが見つかるのでしょうか?

そんな、たわいもないことを考えながらしばらく歩いているとめぐみんが急に立ち止まりました。

 

「カズハあれがさっき言った廃城です。あれなら盛大に吹き飛ばしても誰も文句は言わないはずです!」

 

めぐみんが楽しそうに指し示した先には確かに朽ち果てた古城があります。

 

「紅き黒炎、万界の王、天地の法を敷衍すれど...」

...なにかでそうな雰囲気のお城ですね。あまり近づきたくありません。

「我は万象照応の理...」

しかし、確かにあれならに誰も....うん?...()()

「崩壊破壊の別名なり...」

「めぐみん、もしかしてですけどあの廃城って...」

「永劫の鉄槌は我が元に降れ!『エクスプロージョン』ッ!」

めぐみんのその叫びと共に廃城は爆炎に包まれます。

 

....あれがもし件の魔王軍幹部が住むという城なら私たち確実に殺されるのでは?早く逃げないと!

 

「燃え尽きろ、紅蓮の中で。ハァ...最高です」

なんか満足して倒れている元凶は放置していってやりましょうか。

 

 

...ふむ、結構経ちましたがなにも起きませんね。あれが件の城というのは私の思い過ごしだったようですね。

ここはファンタジー世界、きっと、廃城のひとつやふたつその辺にたくさんあるんでしょう。

だってもし私が魔王軍の幹部で、あそこに住んでいたら今すぐに犯人をぶち殺します。もし、あれを我慢しているというのならどんだけいい人だって話ですよ。

 

私とめぐみんはそれから安心して毎日あの城に爆裂魔法を放ち続けました。

 

雪の日も雨の日も穏やかな陽気の日も。毎日、毎日。

そんなことを続けていた結果、私はその日の爆裂魔法の出来がわかる様になっていました。

 

「『エクスプロージョン』ッッッ!」

「今日のはいい感じですね。爆裂の衝撃波が骨身に浸透し、それでいて肌をなでるかのように空気の振動が遅れて来ました。ナイス爆裂です!」

 

しかし、なぜあの城はあれだけの爆裂魔法をくらって、形を保っているのでしょう?結界でもあるのでしょうか?

 

「ナイス爆裂!今日のカズハの評価はなかなかに詩人でしたね。爆裂道がわかってきたと見えます。....どうです?冗談ではなく、本当に爆裂魔法をおぼえるというのは?」

「うーん....興味はなくはないですが、いかんせん覚えるためのポイントが....でも、人生の最後とかに修得して最高の一発をぶっぱなすとかいいかもしれません」

「それいいですね。私も最後の時は人生最高の爆裂魔法を放って逝きたいものです」

私達はそんなことを笑いながら言い合いました。

 

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そんな、爆裂散歩を日課にしてしばらく経った、ある日。

 

ギルドで食事をしていると文無しアクアが

「クエスト行きましょう!もうキャベツを売るのは嫌なの!」

と駄々をこね始めました。

 

「嫌です。今のクエスト内容じゃあ、自殺しにいくようなものです。....というかですね、私もこんなこと言いたくはないですが貴女、何の役にも立ってないですよね」

 

アクアが私の言葉にビクリと震えます。

 

「いや、別に貴女を転生の特典に選んだのは私ですし、今さら貴女の力で楽をさせろー、とかは言いませんよ。でも正直これじゃあ魔王討伐なんて諦めるしか無いですよね。」

「待って、カズハがそんなんじゃ、私帰れないじゃない!」

 

アクアが私の魔王討伐放棄宣言を聞いて涙ながらに叫びます。うるさいです。

 

「そんなこと言うなら女神として役に立ってくださいよ。女神って勇者を導いたり、魔王を封印して時間を稼いだりするものではないんです?ここ最近で貴女がやったことって、借金作ったことぐらいですよね。貴女の様な人を世間ではなんて言うか知ってますか?穀潰しです。人から借りたお金を返さず食べるご飯は美味しいですか、穀潰し?」

「わ、わあああああんっ!」

 

アクアが机に突っ伏しって盛大に泣き始めます。私はアクアの現状を正確に言ってあげただけなんですがね。

 

「という訳で私はある程度お金を稼いだらそれを元手に商売でも始めます。だから貴女も手軽に出来て、儲かる商売を考えてください。それが出来ないんなら貴女の最後の取り柄である回復魔法を私に教えるんです」

 

アクアは机に突っ伏したまま泣き叫びます。

 

「嫌よぉぉ!回復魔法だけは嫌ぁ、私がいるんだからいいんじゃなぁい!」

 

そんなアクアの泣き叫ぶ様子を見てダクネスとめぐみんがこちらに来ます。

 

「どうしたんです、これ?」

 

めぐみんがアクアを指差して聞いてきます。

 

「アクアにちょっとお説教」

「....カズハは口撃力高めですから、遠慮なく本音をいうと大抵の人は泣きますよ」

 

めぐみんはそういいますが私は本当のことを言ったまでです。本人も思うところがあるからこうやって泣いてるんだと思いますがね。

 

「ストレスがたまっているのなら私を」

「変態は黙ってください。声で耳が腐ります。」

「ん....くっ..!」

 

なにやっても喜びますね、この変態。変態を直す薬とか無いですかね。

 

「ひどいわ、カズハったらひどいのよ!」

机で泣いていた、アクアはめぐみんとダクネスに助けを求めます。

 

とその時です。

 

「緊急、緊急!全冒険者は武装し戦闘状態で街の正門に集まってください!」

いつものギルドの受付のお姉さんがそんなことを叫びながら駆け込んできました。

 

 

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急ぎ、私達は装備を整え、街の正門に集まります。

 

そこには首の無い馬に乗った、同じく首の無い漆黒の鎧に身を包んだ騎士がいました。

 

「あっ、あれは!デュラハン!魔王軍八大幹部の一人、デュラハンのベルディアだ!かつてある王国の騎士だったが理不尽な処刑で魔に身を落としたといわれる、強い力持ったモンスターだ!」

 

いつぞやギルドで私を応援してくれた、したり顔のモヒカンおじさんが説明口調でそんなことを言ってくれました。

 

あれが魔王軍幹部...凄まじい威圧感です。私達では相手にもならないことが伝わります。

 

ベルディアというらしい魔王軍の幹部は右手で抱えた首で冒険者達を見渡すとくぐもった声で喋り始めます。

 

「...俺はこの近くの廃城に越してきた魔王軍幹部のものだ」

 

風のせいでしょうか、ベルディアの首が小刻み揺れています。

 

「ままま、毎日、毎日、毎日!!おお、俺の城に欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでくる頭のおかしい大馬鹿は誰だあああああ!!」

 

うん、身に覚えしかありません!

 

いや、だって何発撃ってもなにもなかったんですから、そりゃあ無人だと思いますよ!

ベルディアの叫びに周りの冒険者もざわつき始めます。ヤバイ、このままでは幹部に犯人として差し出されます!

 

「爆裂魔法?」

「爆裂魔法を使える奴って言ったら....」

 

ここにいる全冒険者がめぐみんの方をみます。このままじゃデッドエンドまっしぐらです!

あっ、めぐみんが視線に耐えきれず隣にいた魔法使いの女の子を見ましたね。私も釣られてその子を見ると周りも合わせてその子を見ます。

 

「ええっ!!違うよ!私、爆裂魔法なんて使えない、使えないよう!」

 

あの女の子に悪いですが少しの間、犠牲になってもらいましょう。その間に打開策をなんとか....

 

「私には()()()()()がいるの!だから、まだ死ぬわけにはいかないの!」

 

 

「私の名前は佐藤和葉!女神に選ばれし勇者にして、いずれ魔王を倒す者ッ!!覚えておくがいいです!」

 

 

私はいつの間にかベルディアの前に立っていました。

...死にましたね、私。妹から姉を奪うなんていう行為が許せず、考えなしでここまで来てしまいましたが....どうしましょう?

 

「カズハかっこいいです!今度、一緒に名乗り合い勝負しましょう!」

さっきの名乗りがめぐみんの琴線に触れたらしく大変楽しそうです。

こっちはノリと勢いでやって後悔しかないですがね!というか、あなたも元凶なんだから助けてください!

 

「貴様が、貴様が!毎日、毎日、俺の城に爆裂魔法を撃ち込んでくる大馬鹿者か!

俺が魔王軍の幹部だと知っていて喧嘩売っているのなら、堂々と城に攻めてこい!

それが無理なら大人しく街で震えているがいい!どうしてこんな陰湿な嫌がらせをする!

どうせ、低レベルの雑魚しかいない街だと思って放置しておれば、調子にのって毎日ポンポンポンと撃ち込みに来おって!頭おかしいんじゃないのか!」

 

正直、私もそう思います。というか、私なら初日でこの街の住人を血祭りにあげてます。

 

「というか、その装備で勇者ってふざけてんのか!」

「お金がないんですよ...。元はといえばこれもあなたのせいです。あなたのせいで雑魚モンスターが隠れてしまいこっちはまともな仕事が出来ないんです。大人しく魔王城にでも帰るというのでしたらこちらも爆裂魔法はもう撃ちません」

 

私はノリと勢いに任せそんなことを言いました。相手は魔王軍幹部とはいえあれだけの迷惑行為を我慢した人物、もしかしたらこれで大人しく帰ってくれるかもしれません。

 

「断る、こちらも魔王様から命じられた調査があるからな。だが、俺も雑魚にちょっかいをかけに来たわけではない。もう、二度と爆裂魔法を撃たないというのなら早めに調査を終わらせ、この地を去ろう」

 

あれだけの迷惑行為を受けながらこの対応。このデュラハン、モンスターだけどいい人です。

 

「わかりま」

「だめです、紅魔族は一日一回爆裂魔法を撃たないと死ぬのです」

 

私の了承の言葉をいつの間にか隣にいた、めぐみんのそんなふざけた言葉が遮りました。

 

「めめ、めぐみん、なんてことを!せっかく、いい感じにまとまりかけたのに!」

「カズハにばっかりいい格好はさせませんよ。元とはいえば私のせいですしね。」

 

めぐみん、私をかばってくれているつもりなんでしょうが、今は余計なお世話です。

 

「なるほど、その自称勇者の仲間か。どうあっても爆裂魔法を撃つのをやめる気はないようだな!故あって魔に身を落としたとはいえ元は騎士。弱者をいたぶる趣味はないがそっちがその気ならこちらにも考えがあるぞ」

 

最悪です、ベルディアさんやる気になっちゃったじゃないですか。よし、ここは専門家に任せましょう。

 

「ま、魔王軍幹部かなにか知りませんがこちらにはアンデッド退治の専門家がいるのです。さあ、来なさいアクア!」

 

...来ませんね、あの駄女神。

私が後ろの方を向くとアクアがこちらを見ながらニタニタしていました。

 

「どこかのヒキニートいわく、穀潰しの私じゃなんの役にもたたないわね。もし、誰かさんが泣いて謝るなら助けてあげてもいいけど」

 

この子はさっきのことまだ根に持ってるんですか!今はそんな場合じゃないでしょうに!

 

「謝りますから!ごめんなさい、アクアさんは素敵なアークプリーストです!だから早く助けてください!」

 

アクアは満足したようでにこやかな顔でこちらまで来ました。さすがに言い過ぎたかなと思って服従のスペルは使わず謝りましたが無理矢理にでも呼びつければよかったです。

 

「しょうがないわね!魔王軍幹部だかなんだかしらないけど、この私の前に出てくるなんて浄化してくださいと言ってるようなもの。あんたのせいでまともなクエストが受けられないのよ!覚悟しなさい!」

 

アクアはなんだかんだ言っても女神。アンデッド相手には最強カードです。リッチーであるお姉ちゃんですら浄化しかけましたしね。

ベルディアも脅威を感じたのか右手に持った頭をつきだし、アクアを興味深そうに見ています。

 

「ほう、アークプリーストか。だが、仮にも俺は魔王軍幹部。この街の低レベルなアークプリーストに浄化されるほど落ちぶれてはいない。...そうだな、そこの自称勇者を苦しめてやろう」

 

そう言うとベルディアは私に左手の人差し指を向けます。あれ、やばくないです、これ?

 

アクアが魔法を唱えようしますがそれよりも早くベルディアが叫びます。

 

「汝に死の宣告を!貴様は一週間後に死ぬだろう!!」

 

その声が聞こえた瞬間、私は襟首を捕まれ後に飛ばされます。そして、私の代わりに前に出たのは

「ダクネス!?」

 

私の身代わりになったダクネスの身体を赤黒い光が包み、一瞬で消えました。

 

「ダクネス!なんで私をかばったんですか!?痛いところはないですか?」

ダクネスは私を見ると安心したような顔で笑います。

「平気だ。なに、姫を守るのは騎士の勤めと決まっている」

「変態の癖になに格好つけてるんですか!馬鹿なんですか!」

 

ダクネスの言うとおり身体に異変はなさそうです。しかし、デュラハンは伝説では死を告げる妖精、それが一週間後の死を宣告したということは....

 

「予定が狂ったが仲間同士の結束が固い冒険者ならこちらの方がこたえるだろう。...自称勇者の娘よ、このままではお前の仲間であるクルセイダーは死の恐怖に怯え苦しみながら一週間後に死ぬ。そう貴様のせいでな!その姿を見て己の行いを悔いるがいい。素直に俺の言うことを聞いておけばよかったのだ!」

 

私のせいでダクネスが....

あの時、無理矢理にでもめぐみんを止めていれば、

あの廃城が魔王軍幹部の住む城だと気づいていれば、

私のなかで後悔の念が渦巻きます。

そんな私を見てダクネスは何を思ったのか、ベルディアに叫びます。

 

「なんてことだ!つまり貴様は私に呪いをかけ、呪いをといてほしくば俺の言うことを聞けと!つまりはそういうことなのか!」

 

何を言っているのだろうこのド変態は....。さっきまでの私の後悔とか自責の念とかを返してほしい。

ベルディアも何が起きているのか理解できず、呆然としています。

 

「くっ...!呪いぐらいではこの私は屈したりしない....しないが、ど、どうしようカズハ!?見てみろ、あのデュラハンの兜の下の嫌らしい目を!あれは私をこのまま城へと連れ帰り、呪いを解いてほしくば黙って言うことを聞けと凄まじいハードコア変態プレイを要求する変質者の目だ!」

 

なんででしょう、さっきまで憎しみすら感じていたベルディアに今はあわれみしか感じません。

 

「この私の身体は自由にできても、心まで自由に出来ると思うなよ!城にとらわれ、魔王の手先に理不尽な要求をされる女騎士とかっ!予想外に燃えるシチュエーションだ!行きたくはない、行きたくはないのだが、仕方がない!ギリギリまで抵抗して見るから、邪魔はしないでくれ!では行ってくりゅ!」

 

「ええ!?」

 

ベルディアもダクネスの行動が意味不明すぎて戸惑っています。もうほっといてもいいんじゃないかとも思いましたがさすがに不味いので羽交い締めして止めます。

 

「なぜ止める!はなせー!はなすのだ!」

 

そんな様子を見てベルディアもほっとしています。彼も呪いをかけた人間がこんな変態だとは思いもしなかったでしょう。

 

「とにかく、もう爆裂魔法を撃ち込んでくるのはやめろ!そして、自称勇者よ、そこのクルセイダーを助けたければ、俺の城に来るがいい!俺の部屋まで来ることが出来れば、その呪いを解いてやる!....だが城には配下のアンデッドナイト達がひしめいている。貴様ら駆け出し冒険者に果たしてたどり着けるかな?ククククッ、クハハハハッ!」

 

そう言ってデュラハンはいかにもな笑い声と共に城へと去っていきました。

残された私達はただ黙ってそれを見ていることしかできませんでした。

私はダクネスの方を見ます、よほど連れ去られたかったのか、地面にのの字を書いていじけてます。

....こんなんでも、私を助けくれた騎士様です。だから今度は私がダクネスを助けないわけにはいかないでしょう。

私は腰につけた短剣の柄を握りしめ、あの廃城に向かおうとします。

しかし、その手をぐっとつかまれます。

 

「痛いんですけど、めぐみん?」

「一人でどこ行く気ですか」

「ちょっと勇者伝説を創りに」

 

めぐみんは私の言葉を聞くと少し笑って見せ

「じゃあ、私も行かないとですね。勇者のパーティーに優秀な魔法使いが付き物ですから」

とそんなことを言います。

 

「そもそも私の責任ですしね、それにカズハだけじゃアンデッドナイトに囲まれてタコ殴りされるのが落ちです」

 

全く、人が一人で格好つけているところに水を差す子ですね。...でも、まあ、一人で行くよりは確かに、ほんのちょっとは心強いかもしれません。

 

「仕方ありませんね、一緒に行って伝説になりますか。確かに私一人じゃ無茶ですしね。めぐみんがいればいろいろとやれることも増えますしね。それに一週間もあればいくらでも策が」

「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

私達が決死の覚悟を決めていると後ろから場違いな詠唱が聞こえました。振り返るとアクアが嬉しそうにダクネスを指差します。

 

「この私にかかればデュラハンの呪いなんてこんなもんよ!」

 

ダクネスの身体はうっすらと輝いており、さっきまで感じられた暗黒のオーラは微塵もありません。

 

どうやら、本当にベルディアの呪いは解呪されたようでその様子を見ていた冒険者達がアクアに駆け寄り誉め称えます。

取り残された、めぐみんと私はただただ呆然としていました。

 

そして、私はハタと冷静になってきます。

さっきまでのやり取りで私は、何をかっこつけていたんでしょうと。

ベルディアへの勇者宣言とか、めぐみんに言った伝説を創りに行くとか次々とそんな言動がフラシュバックして。

 

「うなああああああ!!」

「どうしたんですか、カズハ!?」

 

お父さん、お母さん、異世界で私の黒歴史が増えました。

 




今話から一話一万字くらいにしたいと思ってるので投稿が一週間おきになるかもしれません。
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