この鬼畜姫に祝福を!   作:パイン村

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平成最後の投稿のつもりが、間に合わず令和最初の投稿になりました。


第12話

 私は呼び出しのアナウンスを聞いて急ぎ街の正門に駆けつけます。

私やアクア、めぐみんは軽装のため早くつきましたが、重装備のダクネスは一人遅れています。

すでに正門の前には多くの冒険者達が集まっていました。そしてその目線の先には......。

 

「まーた、あの人ですか....」

 

 そう、魔王軍幹部の一人デュラハンのベルディア。彼が騎乗し、正門を望む丘にいました。

その後ろには朽ち果てた鎧を身に纏った動く死体達。彼の配下のアンデッドでしょうか。

ベルディアだけでも厄介なのに、さらにあの数、無理ゲーにもほどがあります。さっさと帰ってくれませんかね。

 

しかし、そんな私の願いは天に届かなかった様で、ベルディアは私とめぐみんを見つけると鬼のような形相で睨み付け、怒鳴りつけます。

 

「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがあああああっ!!」

 

 化け物に人でなしって言われるってなかなか新鮮な体験ですね。

 私はめぐみんを庇う形で前に出ますとデュラハンに問いかけます。

 

「....なぜ来ないと言われましても行く理由もないですし。それに約束通り、もう爆裂魔法は撃ち込んでいないのに人でなし呼ばわりされましても」

 

 何故か、ベルディアは私の言葉を聞いてさらに怒り狂い、思わず手に抱えていた自分の頭を地面に叩きつけようとします。....途中で気づいたようですが。

 

「約束通り撃ち込んでいない?撃ち込んでいないだと!?ふざけるな!白々しいにもほどがあるわっ!そこの紅魔の娘が、あれからも毎日欠かさず通っておるわ!どうせ、頭のおかしいお前の命令だろう!」

 

  この常識人カズハさんに頭がおかしいとか失礼ですね、このデュラハン。

しかし、この様子から察するにまだ毎日、爆裂魔法が撃ち込まれているのは本当のようですね。となると....

 

「めぐみん?怒らないから本当のことを言ってください」

 

 私は優しく微笑みめぐみんに問いかけます。

「...いや、実はですね...今までならば何もない荒野に魔法を放つだけで我慢できていたのですが...城への攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢....ひたたいでふ(痛いです)ほおをへっぱらないでくだふぁい(頬を引っ張らないでください)!!」

「アホなこと言ってるからです。というか貴女、魔法撃ったら動けませんよね?ということは共犯が....」

 

 私がめぐみんの頬を引っ張っているとアクアがこそっりとこの場から立ち去ろうしているのが見えました。

 

「あなたですかああああああっ!!....あっ、昨日のベルディア討伐クエストも、貴女、わざと受けようとしましたね!」

「だって、五億よ!五億!ゆっくり爆裂魔法で追い詰めて、最後にみんなで退治するつもりだったの!」

 

 なんという浅知恵!結果ベルディアを激怒させただけ。この駄女神は本当に....!

 私が逃げようとするアクアの襟首をつかんでいるとデュラハンが言葉を続けます。

 

「この俺が真に頭に来ているのはなにも爆裂魔法の件だけではない!貴様らには仲間を助けようと言う気はないのか?これでも俺は魔に堕ちる前は真っ当な騎士だったつもりだ。その俺から言わせれば、貴様を庇って呪いを受けた、騎士の鑑のようあのクルセイダーを見捨てるなど....!」

 

 ベルディアがそこまで言いかけた時。

ようやく、装備を整えたらしいダクネスがやって来ました。隣には盗賊のクリスもいます。

どうやらさっきまでの会話を聞いていたらしく赤い顔で照れています。

ダクネスはベルディアの方を申し訳なさそうに見ます。

 

「....や、やあ....」

「....あ、あれえッッッッッッ!!」

 

 ベルディアは驚きのあまり面白い叫び声をあげます。まさか、駆け出し冒険者の街のプリーストにあの呪いが解かれるなんて思ってもみなかったんでしょうね、哀れな。

 

「プークスクス、ダクネスに呪い掛けて一週間経ったのに、ピンピンしているから驚いてるの?私達が呪いが解くために城に来ると思ったんでしょうけど、おあいにくさま。呪いなら私が綺麗さっぱり解いてあげたわ!それも知らず待ってたなんて、うけるんですけど!ねぇねぇ、今どんな気持ち、どんな気持ち!プークスクス!」

 

 アクアがここぞとばかりにベルディアを煽りまくります。

兜とその腐敗しきった相貌のせいで表情は読めませんが、体がプルプルと震えていることから激怒していることでしょう。

 

「貴様あああ!もういい、貴様だけでも血祭りにあげてくれるわ!魔王様の加護を受けた、この不死の体に傷をつけられると思うなよ!」

 

 我慢の限界が来たのか、ついにベルディアは背中に下げた大剣を抜き愛馬とともにアクアに突っ込んできます。が、その剣はアクアに届くことはありませんでした。

ベルディアに銀髪の少女が突貫したからです。

 

「クリス!?」

 

 クリスは凄まじい速さで手持ちのマジックダガーによる攻撃を打ち出します。

ベルディアの方も見事な剣裁きでそれを防ぎ、まさに攻防一体の戦いが繰り広げられます。

 

「そのマジックダガーなかなかの業物のようだが、魔王様の加護を受けたこの俺には通....」

 

 そう言った瞬間、クリスの一撃がベルディアの剣を通り抜け彼の鎧に深々と刺さります。

 

「えっ?....ぎゃああああ!」

 

 ベルディアは一瞬なんで?といった様子で唖然とし、すぐに悲鳴をあげます。

 

「害虫がムダ口たたくからだよ。神の理に逆らう腐れアンデッドが。今すぐに消してあげるよ」

 

 クリスさん?キャラ変わってません?そんなクリスを見て、冒険者達が声をあげます。

 

悪魔殺し(デビルスレイヤー)だ!悪魔殺し(デビルスレイヤー)のクリスが来たぞ!」

「何だって、あの悪魔殺し(デビルスレイヤー)か!?」

「これで勝てる、勝てるぞ!」

 

 え、あの子そんな、怖そうな通り名付いてるんです?あの子、盗賊のはずですよね?

 

「あの嬢ちゃんはな、この街にアンデッドや悪魔族が来ると何処からともなく現れて殺していくことで有名でな。いつの間にかみんなこう呼んでたのさ....悪魔殺し(デビルスレイヤー)ってな。」

 

 いつの間にかいた、いつものモヒカンおじさんが私の疑問に勝手に答えてくれました。

クリスって盗賊なのに、なんで、通常攻撃が効きにくいアンデッド相手に有利に戦えてるんでしょうか?

 

「そのダガーどうやら高位のプリーストの聖別でもなされてるようだな。....なあ、ここ駆け出しの街なんだよな?なんでそんなもんもってんの?魔王様の加護を貫くレベルの武器なんて普通王族くらいしかもってないんだが....。あれか、お前たまに現れる異世界からきたとかいうわけわからん連中なのか?」

 

 ベルディアはダガーを引き抜くと、クリスにそんな疑問ぶつけます。

 

「腐れアンデッドに答える義理はないね。《スティール》」

 

 そう言った瞬間にクリスはスティールでベルディアからダガーを取り戻し、再びベルディアへ攻撃を仕掛けます。

....もう、クリスだけでいいんじゃないですかね。そう思い、ベルディアの目がそれているうちに冒険者のなかに紛れ込もうとすると。

 

「いまだ!弟子ちゃん、あたしが教えた技を使うときだ!こいつの武器を奪うんだ!さあ、いってみよう!」

 

 もしかくしなくても、弟子ちゃんって私ですよね。何故に知り合って間もない私にそんな大役を。

おかげでダクネスやほかの皆がこっちをバッチリ見てるじゃないですか。こっそりフェードアウト作戦が....。

しかも、スティールをかけようにも二人が高速で動き続けているため狙いがさだまりません。

 

悪魔殺し(デビルスレイヤー)が少し押され始めたぞ!」

「くそ、やはりあの人を呼ぶしか....」

 

....こうなったらやけです。

 

「ああもう、失敗しても知りませんからね!《スティール》ッ!」

 

 私は二人に右手を突き出し叫びました。....そして、私の手のなかにはベルディアの大剣....はなく、布でできたなにかが握られていました。

ごめんなさいクリス、私はこういうところで決められない女なんですよ。私は手のひらを開き中のものを見ます。

 

....え?

 

 私はそれを見て驚愕します。

 それはいわゆる、胸パッドというものでした。そう、胸を大きく見せるあれです。

 

....何かの間違いですね。ベルディアがこんなものつける訳がないですし、クリスだって....

いや、だって、クリスってなんというか、そう、凄く慎ましやかな胸なんですよ。もし、あれでパッドいれていたとなるともう....。

うん、やっぱり何かの間違いですね。きっと、別の誰かのに決まっています。

私はそう信じ、クリスの方を見ます。

そこには、すべてを失ったかのような表情を浮かべたクリスと、クリスのあまりの様子に戸惑い剣を納めたベルディアがいました。

私は恐る恐る、クリスの胸をみます。

 

....そこには()がありました。

 

「…ダクネス、私の首を切ってください」

「カズハ!?どうしたんだ、落ち着け!?」

「もう、この罪は命で償うしか…」

 

 私だって決してある方ではない人間ですから、少しはクリスの気持ちがわかります。

これがどれ程の恥辱か、クリスがどんな思いでこれをつけてきたのか。

....うん、やはり万死に値します。

 

「さ、一思いにダクネス。ここにいるのは貴女の友人を貶めた外道です」

「おい、さっきからおかしいぞ!一旦落ち着いて、考え直せ!」

「いいえ、なにもおかしいことはないですよ、ダクネス」

 

 戸惑うダクネスにめぐみんが話しかけます。その目からは涙があふれてました。

あぁ、めぐみん、貴女も持たざるものとしてクリスのために涙を....。

私はめぐみんとアイコンタクトをとり、そして頷き合います。

 

「「さ、ダクネス一思いに」」

「だから落ち着け!!」

 

 私はこれ以上なく落ち着いているというのに何を言っているのでしょうか。ダクネスはため息をつき、頭を抱えます。そして言ってはならないことを言いました。

 

「だいたい、たかが胸のことでなにをそんなに大袈裟....ちょっ!痛い!離せ!胸をそう掴むものでは....あっ、だが、これはこれで....くっ....」

 

私とめぐみんは怒りに任せ、ダクネスの胸を揉みしだきます。なぜ、なぜ、この変態にはあって私達にはないんですか!

 

「乙女の切実な悩みをそんなことと言うのはこの胸ですか、この胸ですか!」

「めぐみん!この無駄に乳がデカイ女から何とかして乳をもぎ取り、我ら持たざるものに分け与えましょう。そうすればすべて解決です!」

「そうです!持てるものからすべて奪い、持たざるものに分け与えましょう。そう、これは革命なのです!持つものと持たざるものが逆転する大革命なのです!」

「いきましょう、めぐみん!私達を悩める乙女たちが待っています!」

「そうですカズハ!いざ行かん、革命という覇道を!」

 

 私達がおっぱい革命について盛り上がっていると、もはや忘れ去られていたベルディアが怒号をあげました。

 

「お前らいい加減にしろおおおおおおおおおお!ふざけてんのか!俺は仮にも魔王軍の幹部だぞ!幹部!それをいつまでも放置しおって、殺されたいのか!....というかだな、それよりも、あの盗賊の子をなんとかした方がいいんじゃないか......?」

 

 ベルディアがそう言って、示した先にはクリスが三角座りでうずくまっていました。

....さっきまで殺しあっていた相手にこの気遣い、本当にできた人ですね、このデュラハン。

 

「ははっ....わかってたんだ。いつかこうなるって....わたし....なのに人を欺いたらこうなりますよね。....ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 

ヤバイです、口調すら崩れるほどの精神的ショックを与えてしまったようです。

先のパンツの件含めて本当に命でつぐなうしかないんじゃないですか、これ。

 

「ええい、いつまでもメソメソと!大体だな、たかが胸で」

「「「あぁ?」」」

 

ベルディアはめぐみん、クリス、私の怒りの籠った声に恐れをなしたのか急いで弁明を始めました。

 

「ッ....!いや、失言だった。俺が言いたかったのはだな、胸に貴賤などないと言うことだ。大きかろうと小さかろうと胸というのは胸というだけで素晴らしいものだと俺は思うんだ」

 

ほう、なかなかわかっているじゃないですか。やはり、このデュラハン悪い人ではないのかも....。

 

「ちなみにあなたの胸の好みは?」

「もちろん、大きいのに決まっているだろう!たわわに実ったおっぱいこそ....いや違うんだ」

「殺れ、アクア」

「任せなさい!見てなさい腐れアンデッド!『ターンアンデッド』ッ!」

「ぎいゃあああああ!」

 

 ベルディアが白い光に包まれ悲鳴をあげます。

この腐れアンデッド、いい人かと思ったのは大間違いでした。人の価値を胸でしか計れないゴミなどこの世から消えるべきです。

 

「おかしいわ、カズハ!わたしの浄化が効いてないわ!」

 

 いや、思いっきり効いてたと思いますが。さっきのクリスのときよりもすごい声でてましたし。

乗っていた馬はしっかりと浄化されて消えてますしね。

 

「何故、駆け出し冒険者の魔法がここまで強力なのだ?お前たち本当に駆け出しなのか?お前らがおかしいのか、この街がおかしいのか?」

「黙れ変態騎士、お前に答える義理などないのです。さっさと土に返るがいいです」

「変態じゃないわ!男はなみんな大きいのが好きなんだよ!ああそうだよ巨乳が好きで何が悪い!」

 

 こいつ、開き直りやがったです。こんなのが絶対生前は真っ当な騎士だったとか嘘ですよ。

 

「最低です!不条理な処刑で死んだとか言ってましたが、それもどうせ冤罪じゃなく変態行為の逆恨みでしょう!」

「違うわ!俺はな、国家反逆罪で死罪になったんですぅー!」

「じゃあ、具体的に何をしたか言えますよね、言えますよね!」

 

 反逆罪といってもその内容は様々、こいつが変態行為で処刑されていない証拠にはなりません。

ベルディアは痛いところを突かれたのか突如無言になります。

 

「....」

「なんでそこで無言なんです?やっぱり変態行為で」

「違うわ!」

「じゃあ言えますよね」

 

 ベルディアはしばし黙り込みますが、私や冒険者達の厳しい視線に耐えられなくなったのか、ついに自ら罪を告白しました。

 

「....王女の寝室にしのびこんだ」

「やっぱり黒じゃないですか!」

「違う!あれには事情が!」

 

 どんな事情があれば真っ当な騎士が王女の寝室に忍び込むというんですか?

いえ、事情があろうと女性の寝室に勝手に忍びこんだ時点でアウトでしょう。

 

「ええい、いい加減にしろ!雑魚だからと付き合ってやれば付け上がりおって!......この街に強い光が落ちてきたとか、うちの占い師が騒ぐから魔王様に調査を命じられてきたが...もう、いっそ街を滅ぼせばいいか」

 

 キレてとんでもなく理不尽なこと言い始めましたよ、このデュラハン大人げないです。

 

「だが、わざわざ俺が相手をしてやるまでもない。ゆけ、お前たち!俺をコケにしたこいつらに地獄を見せてやれ!」

 

 ベルディアは右手を高く上げアンデットナイトに突撃を命じようとします。

 

「うわー、恥かかされたからって皆殺しにしてうやむやにしようとしてますよ、大人げないです。しかも、アクアの攻撃が意外と効いたからって部下を使って自分は安全なところへ逃げようだなんて、恥ずかしくないんですか?」

「ちちち、違うわ!最初からそのつもりだったのだ!俺は魔王軍幹部だぞ、そんなヘタレなわけがないだろう!いきなりボスが出てきては興ざめだろう、雑魚を倒した後にボスと戦う。これが昔からのお約束と...」

「話が長いです。やりなさいアクア」

「任された!『セイクリッド・ターンアンデッド』ッ!」

「ひああああああああああああああああ!」

 

 話長いですし、めんどくさい雑魚戦とかスキップできるならスキップするに決まっているでしょう。私はゲームは最短クリアを目指す派なんです。

変態騎士はアクアの魔法が直撃し、鎧のあちこちから黒い煙が吹き上がり、まるで体に火が付いた火を消すように地面を転げまわっています。

 

「ど、どうしようカズハ!やっぱり、おかしいわ!あいつ、私の魔法がちっとも効いてないわ!」

 

 思いっきり効いていたように思えますが、今もまだのたうちまわってますし。

...いえ、本来ならアクアのターンアンデッドなら一撃でアンデッドを消滅させるはず、それでもベルディアは体を保てています。

さっきのクリスのダガーを食らった後も痛がりはしましたがすぐに動いてましたし...あれ、もしかして思ってた以上に、あの変態騎士強い?

 

「お前ら本当にいいかげんにしろよ!セリフは最後まで…ええい、もういい、ゆるさん、許さんからな貴様ら!お前たち、この街の連中を皆殺しにしろ!」

 

 ゆらりと立ち上がったベルディアは、怒気をはらんだ声を上げアンデットナイトたちに攻撃を命じました。

相手は、アンデットナイト。中身はゾンビとはいえ、鎧を着こんでおり駆け出しの私たちには十分な脅威です。しかもこの数相手では...

 

「おい!プリースト!プリーストを呼ぶんだ!」

「誰か教会に行って聖水ありったけ持ってきて!」

 

 あちこちから追いつめられた冒険者たちの叫びが聞こえます。なんとか、街への侵入は防げていますがそれも時間の問題でしょう。

そんな冒険者達の奮闘をあざ笑うかのようなベルディアの嘲笑が響き渡ります。

 

「クハハハ、お前たちの絶望の叫びをこの俺に!...うん?」

 

 ベルディアは持っていた首を少し傾けます。デュラハンにおける首をかしげるという行為なのでしょう。ベルディアの見ている方を見ると

「へ、...?わ、わあああああ!なんで私ばっかり狙われるの!?私、女神なのに!神様だから、日頃の行いも良い筈なのに!」

アクアがアンデットナイトたちにたかられていました。

 

 アンデットナイトたちはアクアを見つけるとほかの冒険者達にも目もくれず、アクアに向かっていきます。

腐っても女神、迷えるアンデッドたちも本能的にアクアを女神だと認識して救いを求めてるのでしょうか。

 

「ああっ、ずるい!私は本当に日ごろの行いもいい筈なのに、どうしてアクアにばっかり!」

 

この変態は本当にどうしようもないですね、時と場所くらいは考えてほしいです。

しかし、なんにしてもチャンスです。

 

「めぐみん、今こそあなたの出番です。あの群れの中に爆裂魔法を」

「ええっ!ああもまとまりがないと......それに街も近いですし」

 

 確かにめぐみんの言う通りです。これでは撃ち漏らしも多く、街にも被害が...

とその時、クリスの叫び声が聞こえてきます。

 

「わあああ!アクアさんなんでこっちくるのー!」

 

 どうやら、アンデッドから逃げまどっていたアクアがクリスを巻き添えにしたようでした。

クリス、今日は本当に色々、ごめんなさい。後でご飯おごるので許してください。あれ、あの二人こっち来てないです?

 

「ちょっ!こっち来ないで!あっち行ってください、晩御飯おごりますから!」

「弟子ちゃん、キミはあたしにこれくらいのことはされても文句は言えないでしょ!」

 

 確かに、クリスには今後何されても文句言えないくらいのことしましたけど、さすがにこれは本当に死にます!

 

「カズハさん!晩御飯なら私がおごるから、このアンデッドをなんとかしてえ!私のターン・アンデッドでも消し去れないの!」

 

 アクアのターン・アンデッドが効かないって...ああ、あの変態騎士が言っていた魔王の加護とやらがあのアンデッドにも効いているということですか!

何かいい方法は...そうです!

 

「めぐみん!そこの高台で魔法唱えて準備してください!」

「ええっ?...了解です!」

 

私はめぐみんにそう告げると、後ろの二人を見ます。

 

「ちょっと、二人ともこのまま走ってアンデッドを集めますよ!」

「「へ?」」

 

盗賊と女神はそんな間の抜けた声を出しました。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 私たちは戦闘中の冒険者たちのそばをわざと通り、アンデッドをできる限り多く集めました。

 

「カズハさーん!なんか、私の後ろに街中のアンデッドナイトがついてきてるんですけどー!」

 

 アクアの言う通り、私たちの後ろには恐らく全てのアンデッドナイトが集まっています。良し、ここまでは作戦通り!

 

「弟子ちゃん、これで本当に大丈夫なんだよね!?」

「大丈夫です!...多分」

「なんかすごく心配なんだけど!」

 

 魔王の加護とやらが何処まで効くのかは賭けですが、ここはこれが最善手のはず!

そして、いよいよゴールが見えてきました。一人安全圏から悠々と私たちの戦いを見ていたベルディアの前へ。

 

「アクア、クリス、分かれますよ!」

 

 その言葉とともに私たちは走る方向を変え左右に分かれます。目標を見失ったアンデッドナイトたちは急に止まることもできず、そのままベルディアへと突っ込みます。

 

「なっ!」

「今です、めぐみん!」

 

 私の合図にめぐみんが杖を構え、紅い瞳を輝かせます。

 

「なんという絶好のシチュエーション!感謝します、深く感謝しますよカズハ!我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者!我が力、見るがいい!『エクスプロージョン』―――――――ッッ!」

 

 そして、めぐみんの会心の爆裂魔法がベルディアもろともアンデットナイトたちを吹き飛ばしました。

街の正門の前には今やアンデットナイトたちは影も形もなく巨大なクレーターしかありません。あまりの威力に皆、言葉もなく場は静寂に包まれています。

 

「クックックッ......。わが爆裂魔法の威力を目の当たりにし、誰一人として声が出ないようですね......。ふあぁ......口上といい...凄く、気持ちよかったです。......」

 

 魔力を使い切っためぐみんはそんな満足しきったようなことを言って倒れました

めぐみん、今日の爆裂魔法は最高でしたよ。

 

「......おんぶはいりますか?」

「あ、お願いします」

 

 私はめぐみんに駆け寄り背中に背負います。よく見ると近くにはアクアが倒れてました。

どうやら、私よりアンデットの近くにいたため爆風に巻き込まれたようです。そんなアクアをクリスが介抱していました。

 

「大丈夫、アクアさん?立てる?」

「大丈夫よ、爆風でこけただけだから。あー、口の中がジャリジャリする...」

 

 アクアがクリスに背中をさせすられながら、口の中の砂を吐き出します。

そんな私たちを見ていた冒険者達から歓声が上がります。

 

「うぉおおおおおおおお!やるじゃねーか、頭のおかしい子たち!」

「頭のおかしい紅魔の子と頭のおかしい勇者の子がやりやがったぞ!」

「さすが、頭のおかしい姉妹!やるときはやるじゃねーか!」

 

 よし、あいつら後で覚えとけよ。後、だれとだれが姉妹ですか。......いや、ありっちゃ、ありですが。

 

「すいません、あの人たちの顔、覚えといてください。今度、ぶっ飛ばします」

 

 めぐみんも同じ気持ちのようですね。しかし、めぐみん心配はいりません。なぜなら...

 

「大丈夫です。ギルドのバイトをしていたおかげでこの街の冒険者の名前と顔は大体覚えてます。あとは住所を突き止めるだけです」

「さすが、カズハです。敵にだけは本当に回したくないですね」

 

 そんな、会話をしていると吹き飛んだ瓦礫の陰から何かが立ち上がります。

 

「変態騎士!」

「違うわ!ベルディアだ!」

 

 爆裂魔法を受けてもまだ無事とは...。ダクネス並みの硬さですね、幹部なだけに魔王の加護も強くかけられているのかもしれません。

ベルディアは、部下を全滅させられ怒っているのか、肩を震わさせています。

......いえ、違います、これは。

 

「クハハハハハ!面白い!面白いぞ!まさか、配下を本当に全滅させられとは思わなかった!よし、では約束通り...この俺自ら、相手をしてやろう!」

 

 ベルディアは心底楽しそうに、うれしそうに宣言します。......やっぱりこいつ、変態(戦闘狂)じゃないですか!

 




クリスさんのパッドは一期BDの副音声ネタです。クリスの胸がパッドだとすると本当にやばいですよね。
クリスとエリス様の体が全く同じとは明言されてないので、エリス様の胸がそうとは決まったわけではないですけどね。

......結局、令和までに一巻おわらなかったなあ。
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