この鬼畜姫に祝福を!   作:パイン村

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ちょっとロンドンで紙片を回収していたので遅れました。



第14話

 

 私の名前は佐藤和葉!

非業の死を遂げながらも女神に導かれ魔王を倒すためこの世界に転生した勇者の一人!

人類最強の魔法を使う魔法使い、どんな攻撃にも屈しない気高き騎士、私のために地上に降り立った女神、この素晴らしい仲間たちととも世界を救うため冒険を繰り広げているのです!

そう、これは勇者カズハとそのパーティーが世界を救うまでを描いた一大冒険活劇なのです!

 

 

 

 なんて、ね...ええ。そんな、夢みたいな話はありません。あるのは借金だけです。

 

「今月の利息確かに。サトウさん、今後は遅れないでくださいね。...どうなるかわかりませんから」

「ひっ...!次は大丈夫ですから。本当に、本当ですから!」

 

 ええ、これが現実、まぎれもない現実。怖いお兄さんから借金の返済を催促される日々...。

おかしいな、異世界転生ってこういうのだっけ...?あれ、なんでだろう、目から涙があふれてきます。

負けるなカズハ、あきらめるなカズハ!諦めなければきっと道は開けるはず。うん、多分きっと!

 

「カズハ?もうあの人たち居ない?」

 

 さっきの怖いお兄さんがギルドから去っていくとアクアが隠れていた机の下から出てきます。

この駄女神、借金取りが来たら真っ先に隠れるとは...。あとで制裁です、制裁。本当に怖かったんですからね!

 

「ごめんね、カズハ。泣くほど怖かったのね?あとでおかず好きなのあげるから、許してね?」

「泣いてません!......唐揚げ三つですからね」

 

 

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 ベルディア討伐からしばらく経ち、この世界も秋が過ぎ冬がやってこようとしています。

それなのにいまだ私たちは馬小屋生活。アクセル周辺の冬は厳しく河も凍るとか...着実に死が近づいてますね。

 

「いざとなったらめぐみんの宿に押しかけましょうか。まだ床で寝る方がマシなはずですし」

 

 つい最近知りましたが、あの一発屋魔法使いは生意気にもちゃんとした宿をとっているのです。

なんでも、アクセルに来るまでの道すがらで行商人を助け、半年分の宿代をせしめたのだとか。上手いことやってますね、あのちみっ子。

 

「そうね、めぐみんならきっと泣いて頼めば大抵のことは許してくれるはずよ」

 

 アクアが私の冬越えプランに賛意を示します。

 

「それ本人の前で言ったら怒られますよ。まあ、確かにあれでめぐみんも結構ちょろいですけど」

「ほう。面白い話をしてますね、カズハ、アクア?」

 

 後ろからかけられたその声に背筋が凍ります。

その声と目の前にいるアクアの真っ青な顔から後ろに誰がいるのか想像がつきますが想像したくありません。

 

「誰がちょろいんですか?私の冷徹さをこの場で見せてあげましょうか?」

 

 後ろを見るとめぐみんの紅い目がいつも以上に紅く光り輝いています。これは戦闘色!

アクア、曰くめぐみん達紅魔族は、感情や魔力が高ぶると目が紅く光るそうです。

つまりめぐみんは怒ってるということですね。まあ、目関係なくわかりますけどね!

 

「落ち着け、めぐみん。カズハやアクアの冗談に一々突っかかっては身がもたんぞ」

「わかりました。カズハの唐揚げ三個で手を打ちましょう」

「分かりました。......って、私がアクアからもらう唐揚げの数知っていたってことは貴女、さっきの取り立て見てたんでしょう!だったら助けてくださいよ!」

「いや、ここはパーティーのリーダーであるカズハの仕事かなと...」

「私はめぐみんより後から来たからだな、その、とにかくすまん...」

 

 ダクネスは悪くもないのに謝まります。どこぞの紅魔族や女神に見ならわせたいです。

 

「ダクネスは悪くないですから頭を上げてください。...それよりも今日はいいクエストはあります?」

 

 とにもかくにも今はお金です。荷物運びでも、魔法実験でも、駆け出し向けで稼げるクエストを少しでもこなさないと。

 

「残念ですが、ベルディアの余波がまだあるのか雑魚モンスターはまだ隠れたままです。下手をすると春までこのままだとルナさんが...」

 

 絶望です、このままでは冬越えどころか、今日、明日生き残れるかどうか。神はいないんですか...

私がこの世の理不尽を嘆いているとそれがアクア以外の神に通じたのか救いの主が現れました。

 

「あのー、サトウカズハさん?折り入ってお願いがあるのですが」

 

 ギルドの受付嬢ルナさんはそう言って、そのお願いとやらの報酬であろう、硬貨が詰まった袋を私たちの目の前に置きました。

 

 

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 で、ルナさんのお願いというのはギルドで冒険者たちの懺悔や悩みを聞く告解師をアクアにやってほしいということでした。

冒険者というのは、ストレスのたまる仕事です。常に危険を伴い時には人語を介すモンスターすらも手にかけなければなりません。

そうした冒険者たちの心のケアをするためにギルドには告解師が常駐しています。

いつもなら、おじいさんのプリースト、この世界に来た時お金をくれたあの人です。

あの人がやっていたらしいのですが、お孫さんに会うため今アクセルから離れており、代わりにアクアを指名したとのことでした。

 

「ルナさん本気で言ってます?仕事し過ぎでついに頭おかしくなりましたか?」

「なってません!一応、アクアさんはアークプリーストになれるほどの信心深い方ですし、ボランティアで共同墓地の除霊もされているとか。...金ぎたないこの街のプリーストよりはまだましかなと...」

 

 五十歩百歩、いえ、どう考えても他のプリーストの方がマシだと思いますが。

まあ、指名したのはあのおじいさんらしいですし、ルナさんに言っても無駄なのはわかっていますが。

 

「あのプリースト、エリス教徒ながら見る目は持っているじゃない!私に任せればどんな悩みだろうとたちどころに解決してみせるわ!」

 

 アクアはすでにやる気満々です。いやな予感しかしませんが人の話を聞くだけでお金がもらえるなんて楽な仕事を断るわけにはいきません。

 

「わかりました、引き受けます」

「では、お任せしましたよ。あと相談だけで布教は禁止ですので。ギルドでの不和の原因になりますからね」

 

 それだけ言うとルナさんはそそくさと去ってしまいました。最近どんどんルナさんが冷たくなっていってる気がします。

 

「聖騎士としては民の心を守るのも務め。ぜひ手伝おう...それに、こういうのは懺悔を装って不埒な行為をするのがお決まりなのだ...ああっ!一体どのような目に合うか、想像しただけで...くっ!」

「...爆裂魔法を撃てないのは不満ですが、お金のためには仕方ありません。その代わり明日は私の新しい詠唱の考案に付き合ってもらいますからね」

「そうこなくちゃね!さあ、悩める子羊たちが待っているわ!」

 

本当に不安です...。

 

 

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「プリースト様。私は先日、初めてゴブリンを手にかけたのですが...その時の彼らの恨めし気な目が忘れられず夜も眠れないのです。こんなことで悩んでいる私は冒険者に向いていないのでしょうか?」

 

 最初の相談者である机に座った剣士らしい青年は私たちにそんな悩みを打ち明けます。

うわー、しょっぱなから重いの来ましたねー。確かにモンスターだって生き物、それを殺すのは誰だって忌避感があります。しかも、人型のゴブリンとなれば猶更です。

しかし、冒険者としてやっていくには乗り越えなければいけない壁、ここはあなたのその行為が人々を救ったのだと肯定してあげましょう。そうすれば彼も...

 

「そうね、むいてないわね、ケーキ職人にでもなったら?」

「おーい、女神様?しょっぱなから何言ってるんですか!」

「ええ?だって、無理に続けてもその人のためにならないわ。それに嫌なことから逃げたっていいの、だって逃げるが勝ちって言葉があるじゃない!」

 

 いや、そういう意味の言葉じゃないと思いますが。それに立ち向かうことだって人生には必要...

 

「そうですか!ありがとうございます!吹っ切れました、故郷に戻ってケーキ職人になります、俺!」

 

......本人がそうしたいのなら私に止める権利はないですし、彼にとってその方が幸せなのでしょう。釈然とはしませんが。

 

「アクア、相談の答えとしては間違っていませんが一応ギルドからの依頼ですので、冒険者をやめさせるのはまずいと思いますよ」

 

 めぐみんがアクアをいさめるように言います。

確かにめぐみんの言う通りです、いくら告解師とは言え我々はギルドの回し者。ギルドの不利益になるような行為はご法度です。

 

「えー?私間違ったこと言ってないと思うのだけど。解ったわ、次はちゃんと冒険者を続けてくれるように仕向ければいいのね」

 

 仕向けるとか告解師から出ちゃいけない言葉ですが突っ込みません。

そうこうしていると今度は魔法使いらしき女の子がやってきます。

 

「プリースト様、懺悔します。私、この前、下級悪魔を退治したのですが、その断末魔が耳に残って...」

「よくやったわ!悪魔なんて言う下賤な存在を撃ち滅ぼすなんて、すばらしく徳の高い行為よ!貴女の人生には女神の祝福が..んーんっ、ぷはっ。ちょっと、カズハなんで邪魔するのよ!」

「あなたが馬鹿なことを言うからです!いきなり大絶賛してどうするんですか!物事には順序ってものがですね...」

「ありがとうございます、目が覚めましたプリースト様!」

「え?」

 

 魔法使いの女の子は先ほどまでの沈んだ様子とは打って変わって怖いくらい目をらんらんと輝かせています。

 

「エリス様もアクア様もおしゃっていますものね、悪魔殺すべしと!あのような下賤な存在の卑劣な罠に落ちるところでした、感謝します!では、これからさっそく悪魔を狩るための準備してきますので、さようなら!」

 

 魔法使いの子はそう言うと「悪魔殺すべし!」と叫びながらどこかに走り去っていきました。

 

「悪魔を倒すのにあそこまで熱心とはなんと徳の高い魔法使いなのだろう、私も見習わなくては」

 

 ダクネスが心底、感心したという風に言います。

 

...私がおかしいのですか!?私がおかしいのですか!?

 

 釈然としない気持ちを抱えつつもしばらくすると次の相談者が来ました。

金髪碧眼の青年ですね。身なりもよくなんでこんなところにいるか不思議です。

 

「気を付けろ。あの男、身なりからしてかなり高い身分の者、おそらく貴族だ」

 

 なんでそんな人が冒険者ギルドなんて来ているんです?言っちゃ悪いですけど、変人とごろつきの巣窟ですよ、ここ。

 

「というかダクネスはなんでそんなことがわかるんですか?」

「いやそのだな。実家の都合で王都に行くことが多くてな、それで貴族を見る機会があってだな...」

 

 何かすごくごまかされている気はします。しかし、嘘をついている風には見えませんし、無理に追及しても答えてくれそうにないです。

気にはなりますがここはあきらめますか。誰だって秘密の一つや二つあるものですしね。

 

「すみません、ここでは悩みを聞いてくれるんですよね?」

「ああ、すいません。それでお悩みは?」

「ああ、ちょっとカズハ私の仕事とらないでよ。この人は私を頼ってきてくれたんだから」

 

 アクアはむくれた様子で私に文句を言ってきます。

いや、相手はお貴族様ですよ、粗相をしたら無礼打ちとかされるかもじゃないですか、アクアに任せるとかあり得ないです。

というわけで私はアクアを無視して話を続けます。

 

「さあ、迷える子羊よ。貴方の悩みを打ち明けるのです」

「ああ!カズハが人の仕事とった!ひどいわ、ひどいわ!」

 

 煩いですね、この駄女神。命令して静かにさせてやりましょうか。

そんなアクアのわめき声を聞きながら、貴族らしい青年は異を決したように話を始めました。

 

「プリースト様、僕は許されぬ恋をしてしまったのです!どうすればこの恋心を捨てられるのか相談に乗ってほしいのです」

 

 恋愛相談ですか、ド定番の来ましたけど正直このメンバーでまともな助言をできる人間なんているんですか?

ドⅯ、爆裂狂、駄女神、元引きこもり。うん、無理ですねこれ。

 

「あの...すみませんが恋愛の相談なら他をあたられた方が...」

「なに恋愛の相談!?そんなのこのアクア様にまかせない!どんな愛でも恋でも私は許してあげるわ!」

「何勝手なことい言ってるんですか!....すみませんちょっと待ってくださいね。相談タイムです」

 

 私はそう相談者に告げるとアクアの首根っこをつかみ壁際に連れていきます。

 

「わかってますか相手は貴族ですよ!適当なこと言って結果とんでもないことになることだってあり得るんですよ!」

 

 変に勇気づけると勢いで、駆け落ちとかして後継者がいなくなった貴族の親が私たちに責任を取らせようとかしてくるかもしれません。

中世ファンタジー風のこの世界で絶対支配者である貴族なんてできれば関わりたくありません、ここは適当に言いくるめて帰ってもらうのが正解...。

 

「そうなんですね、身分的に許されない恋を...ですが!そこであきらめてどうするのですか!愛の前にあらゆる障害など無意味なのです!」

「めぐみん、あまりあおるな...だが、私も真に愛しているというなら身分なんて捨ててしまって...いいと思う...」

 

 私が後ろを向くと残された二人が相談者を煽りまくっていました。

 

「何やってるんですか!!めぐみんはともかく、ダクネスまであなたはまだこういうところでは常識的だと思っていたのに!」

「いやだな....彼はそれなりに思い悩んでいるようだし、ここは真摯に答えるべきだと思う....」

 

 なぜかダクネスはなぜか恥ずかしながら言います。本当にどうしたのでしょうか。いつも変なダクネスがいつも以上におかしいです。

 

「カズハ、愛とは信じる心、愛しあう二人さえいればどんな障害だって乗り越えられるのですよ!」

「めぐみん、貴女意外に乙女思考というか純情ですね」

「意外にってなんですか!私だって立派な乙女ですよ!」

「落ち着いてください、目を光らせないでください!....愛はともかく考えなしに行動すると、ろくなことになりません。取り敢えずここは一反落ち着いてそれが本当に恋愛感情なのか、確かめてみましょう」

 わたしはめぐみんを落ち着かせながらにこやかに青年に問いかけます。

ここは思考誘導しそれは恋愛感情じゃなく憧れとかそういうものだよと諭して、そう思わせる作戦でいきましょう。

他人の恋路に手を出すのは不本意ですがここは安全のためやるしかありません。こんなプリーストに相談に来たのが運の尽きだと思ってください。

 

「いえ、この気持ちが愛なのは間違いありません!あの人のことを思うだけでこの胸が張り裂けそうだ!ああ、ダ…トさん、貴方のため僕はこの身すべてを捧げても構わない!」

「....あ、はい、そうですか」

 

 あまりの熱の入れように引きます。相手の名前はよく聞こえませんでしたが、ここまで思われているとはある意味幸せな人ですね。

というか、これ私達が何言っても諦めないんじゃ....。いえ、だからこそ相談に来たのでしょうね。どうしましょうか、これ?

 

「お相手の方とは、今どうなんです?」

 

 取り敢えず、現状を把握し対策を考えましょう。

 

「その人は僕が愛していることは知りません。僕の一方的な感情なんです。

きっと彼は僕の愛を受け入れてくれることはないでしょう。それはわかっているんです。

貴族としてもこんな間違った恋愛感情は捨てるべきだとわかっているんです。でも、あの人のことを忘れられないんです。

ダメだとわかっていてもあの人がよくいるこのギルドに足を運んでしまうんです」

 

 うーん、大分こじらせてますね、これ。話から察するにお相手は冒険者なんでしょうね。

たしかに貴族の相手としては問題がありますね。本当どう答えたらいいんですこれ?

焚き付けたところで相手が受け入れてくれるとはわかりませんし、諦める様、諭しても完全に受け入れることはないでしょう、困りましたね....。

私が思い悩んでいると、アクアが青年に優しく微笑みかけます。その姿はまるで女神のようで....えっ、誰ですこれ?

 

「いいのよ、その愛は間違いではないわ。どんな愛であろうと間違いであるはずはないもの。

相手との身分が違おうが、同性だろうが一方的な思いであろうが、人間でなかろうと貴方が抱いた思いは尊いものなの。

受け入れてもらえなくても捨てていいものではないわ。確かにそれはもて余すものかもしれない、でもね、無理して捨てたって虚しいし、後悔が残るだけよ。

ただし悪魔は別ね、あいつらは人間をだまくらかそうとしてるだけだから、どんなに誘惑されても誘いに乗っちゃだめよ」

 

 これ本当にアクアなんでしょうか?割りとまともに説教をしています。

 

「しかし、僕は貴族で....しっかりとした人間じゃないといけないんです!」

「貴方はもう十分に立派な人間よ、もし貴方が間違っていると思っているのならそれは貴方が悪いんじゃない世間が悪いのよ」

 

 あれ、なんか変な方向に転がってきたような?

 

「でも....あの人は僕を受け入れてくれるわけが....」

「相手のことは問題じゃないわ。貴方がどうしたいのかが問題なのよ。悩む貴方にありがたい言葉を授けましょう。

迷った末に出した答えは、どちらを選んでも後悔するもの 。どうせ後悔するのなら、今は楽ちんな方を選びなさい。

さあ、貴方の心の赴くままの答えを選びなさい。どんな答えであれ、私はあなたを祝福しましょう」

 あれ、おかしいな、さっきまでいい話ぽかったのに。堕落へとを人を導く、悪魔の甘言にしか聞こえません。

どう考えてもダメ人間の考え方ですよね、それ。

 

「ありがとうございます!僕はこの気持ちと向き合ってみます!まずは持ってる力すべてを使って彼、ダストさんを見守ってみようと思います!」

 

それ、完全にストーカーじゃないですか。ヤバイですよ、金と権力を持ったとんでもないモンスターを産み出しちゃったじゃないですか。

これじゃあお相手の彼がかわいそう....彼?ダスト?

 

「プリースト様、貴方様の宗派を教えていただけませんか?同性同士の愛を認めているなんて、なんて素晴らしい宗派でしょう!」

 

 あっ、許されぬ恋って身分違いとかじゃなくそういう....。

 

「気高くも美しい水の女神アクアを称えるアクシズ教よ!もし、貴方も教義に共感したのなら是非、信者になりなさい!とても可愛がってあげるわ!」

「ええ、是非!うちは代々エリス教でしたが、今より僕は女神アクア様を称えるアクシズ教徒になります!女神アクア様万歳!」

 

 善良な青年をとんでもない道に突き落としてしまった気がします。しかし、もう彼、完全に目がいっちゃってます。

何言っても聞き入れてくれそうにないです。

....帰ろう。今日、私はなにも見ていない、馬小屋で寝過ごしていたということにしましょう。

 

「いいわね、あなた!そうよもっと崇め称えなさい!世にアクシズ教の素晴らしさを伝えるの!アクシズ教を、アクシズ教をお願いします!」

「お願いします!」

 

 私は後ろから聞こえる声がもはや、告解ではなく布教活動と化しているのを聞くと、ゆっくり立ち上がり、全速力でギルドの外へとを駆け出しました。

 

「あのサトウさん、これなんの騒ぎです?」

 

しかし、入り口にはルナさんが待ち構えていました。

 

「私、不和の原因になるから布教活動は禁止といいましたよね?」

 

 ルナさんは笑顔で問いかけてきますが全く目が笑っていません。というか、青筋が立ってるのが見えますね。

 

「いえ、これはなんというか、その場のなり行きといいますか....」

「ちょっとお話をしましょうか?」

 

 私はみんなと一緒にこってり絞られました。

 

 

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「全く、アクアのせいでひどい目に遭いました。大体アクアに告解任せるとかあのプリースト頭おかしいです」

 

 私は、ルナさんにこってり絞られたあと、ギルドでやけ食いをめぐみんとダクネスと一緒に決行していました。

アクアはギルドの外ならいいのねといって布教活動に行ってしまいました。

 

「いや、そんなことはないとおもうぞ。アクアに相談した人々は確かに悩みからは救われていたからな、ギルドからも告解については評価はよかったではないか。エリス教徒の私からすると複雑な気持ちではあるが」

「まあ、たしかにそうですけど」

 

 怒られはしましたが依頼は完遂したってことでちゃんと報酬はもらえました。

さらに布教をしないのであればこれからもお願いしたいとまでいわれてしまいました。

私は全く納得がいきませんが。あれでいいならその辺のオッサンでも構わない気がするんですが。

 

「アクアもあれでも聖職者です、他の人よりも人の話を聞くのはうまいと思いますよ」

 

 めぐみんまでそんなことを言います。みんな、アクアの綺麗な外見に騙されているだけだと思います。

 

「そうですかね、私は最後の彼なんてあそこで未練を断ち切っていた方が幸せだったと思いますよ。....叶わぬ恋なんて忘れた方が幸せですよ」

 

 そんな私の一言を聞き驚いたようにめぐみんとダクネスが話しかけてきます、

 

「どうした、カズハ?妙に感情的だぞ。お前らしくもない」

「そうですよ、他人の幸福や不幸を気にするたちでもないでしょうに」

「貴女達、私を非人間か何かだと思ってませんか?私だって普通の女の子なんですからね!なんでそこでビックリしたような表情するんですか!いい加減にしないと本気で泣きますからね!....まあ、さっきのは確かに失言でした、忘れてください」

 

 自分で思い返しても私らしくない発言だったと思います。愛だとか恋だとか言うから余計な事をつい思い出してしまったのが原因でしょう。

....やっぱり、叶わない、受け入れられないことがわかりきっている愛なんて持たない方が幸せだったと私は思うのです。

そうであればきっと今頃、私は...

 

「どうしたカズハ、ぼーっとして。本当に大丈夫か?」

「疲れているのなら早く寝た方がいいですよ、残りの料理なら大丈夫です、私がしっかりといただいておきますから」

「大丈夫ですよ、あとめぐみんこれは私のです。一口もあげませんからね」

 

 本当に変なところで食い意地張ってますね、この子。と私がめぐみんを見ているとダクネスが顔を近づけ小さく囁きました。

 

「本当に何かあるのならいつでも相談してくれ。これでも私も神に仕える者だ、話くらいならいくらでも聞くぞ」

 

 この子は、性癖が絡まなければ真面目でいい子ですよね。本当に心の底から私を心配してくれているのでしょうね....。

 

「本当に大丈夫ですよ....それに仲間とはいえ言えないことの一つや二つあるでしょう。ダクネス?」

 

 私はそうダクネスに小さな声で返しました。ダクネスはそれを聞くと黙ってしまいました。

我ながらズルい、いえ、ひどい逃げかたです、ダクネスが私達に隠し事をしていることを知っているのに。その理由も知らないのに。

「どうしたんです、二人とも暗いですよ。食事の時は明るくいきましょう、明るく!」

 

 めぐみんが私達の間の空気を察して場をなんとか盛り上げようとします。

 

「そうですね、追加の注文でもしま」

その時ギルドの扉がバンッと開き、アクアが現れました。

 

「今帰ったわ、みんな!聞いてよ、カズハ!私が布教していたらエリス教会の連中がね!」

 

 この子は空気を読むということはできないんでしょうか?まあ、でも今日は助かりました。

案外この子のこういうところが人を助けているのかもしれませんね。

 

「はい、そうですか、大変でしたね」

「ちょっと真面目に聞きなさいよ!」

「そんなことよりも早く食べないと、夕食がなくなりますよ」

「ああ、まって!私の分もちゃんとあるのでしょうね!」

 

 そう言ってアクアは一心不乱に料理を食べ始めました。

私はそんなアクアの様子を見ながら、アクアの好物のからあげを今日くらいはご馳走してあげようかな、なんてことを考えていました。

 




失恋が原因で引き込まった女子なんてこじらしていないわけないじゃないですかという謎の偏見というか決めつけからカズハさん恋愛に関しては色々と面倒な子になっています。
というか、原作からして失恋がきっかけのカズマも大分こじらしていると勝手に作者は思っています。
そんなわけでこんな感じの話が時々はいりますが基本的には楽しいノリで書くつもりではいます。
というわけで次からは2巻です。
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