この鬼畜姫に祝福を!   作:パイン村

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ようやく、二巻開始です。


第15話

 私は目を開けるとギリシャやローマの古代の神殿の様なところにいました。

あれ?私はいつの間にヨーロッパに?

いえ違いますね、柱の間から外が見えますがなにもないです。

比喩ではなく本当になにもないのです。光も地面なにもない、無です。

...えっと、どこです、ここ?日本どころか、地球ですらなさそうなんですが。

よし、こういう時は落ち着いて状況を整理....って、前にも同じようなことがあったような?

 その時、目の前に小さな事務机と椅子が現れたことに気づきます。そして椅子には白銀の髪をした少女が座っています。

うーん、すごくデジャブを感じます。もしかして....

 

「佐藤和葉さん....。ようこそ死後の世界へ。不幸にも、貴女はつい先程亡くなりました。この世界での貴女の人生は終わったのです」

 

私、また、死にました?

あ、なんか思い出してきました。そうあれは――――

 

 

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「お金が足りません....」

 

 私はうめくようにギルドの酒場で呟きました。

ヤバイです、手持ちのお金ではあと一週間も持ちません。馬小屋の代金すらあやういです。私はあまりにも絶望的な状況に天をあおぎます。

 

「カズハ、貴女、仮にもこの私に選ばれた勇者候補なのに甲斐性なさすぎじゃない?女神なのよ私?いつまでも馬小屋生活なんてあり得なくないですか?分かったら、もっと私に贅沢させて。もっと私を甘やかして!」

 

 私は上げた頭を下げ、世の中を舐めくさったことを言い出した目の前の少女を見ます。見た目だけはいい、アクアというこの少女は一応女神らしいです。

中身がダメ人間だろうと女神らしいです。きっと、神は神でも疫病神に違いありません。

 

「....アクア、私達がどうしてこうなったのか思い出せませんか?」

「私は過去は省みないわ。常に今の幸福だけを求めているの!えっと、飲み代に使いすぎたんだっけ?」

「ははは、じつに幸せな頭をしていますね、アクア....借金です、借金の返済で首も回らないんですよ!」

 

 アクアが私の声でびくりと震え目をそらします。

 

「どんなにいいクエストを受けても報酬は借金から棒引きされるからろくに残らないんですよ!しかも元本はほとんど減ってないし!もう手持ちのお金も底を尽きそうなんです!このままじゃ路上で野垂れ死にします!魔王退治?そんなことよりも今の生存です!」

 

 アクアは耳を塞ぎ目をつむりそっぽを向いて私の怒号が聞こえないふりをします。そんなことしたって現実はなにも変わりませんからね。

 

 遂に、アクセルの街にも冬が到来しました。ベルディアによって隠れていた雑魚モンスターは結局そのまま冬眠してしまい、今、街の外にいるのは手強いモンスターばかり。そのため、冬の間は冒険者の多くは宿にこもったり、別の副業をしてお金を稼いでいるそうです。この街は駆け出し冒険者がつどう街、駆け出しに冬のモンスター討伐は自殺行為に等しいですからね。

そんな絶望的な現状を再認識しているとアクアがバンッ!と机を大きく叩き身を乗り出して反論をしてきます。

 

「だってだってしょうがないじゃないの!あの時の私の超すごい活躍がなかったらこの街は滅んでいたかもしれないわ!感謝こそされ借金背負わされる謂われはないんじゃないかしら!不当よ、不当!」

「貴女の魔法で街を壊してしまったからしょうがないでしょう。まあ、確かに街を守ってこの扱いはどうかと私も少しは思いますけど」

 

 ギルドの職員から聞いた話によるとこの街の周辺を治めている領主が大層ケチの上クソ野郎で最初は私達に全額賠償させる気だったとか。

そもそも、よくよく考えれば街の防衛とか、騎士とか警察の仕事でしょう。なんのために税金をとってるんだって話です。

それを私達が代わりにやったというのにこの扱い、できることなら、領主をぶん殴ってやりたいです。

 

「なによ!カズハなんて私がいなかったらなにもできずに終わってたじゃない!もっと私を称えてよ!敬ってよ!褒めて、褒めて甘やかしてよ!もっと私を称えてよ!街中いえ国中でさすがです女神様って尊敬してよ!」

 

 わたしが物思いにふけっている間もアクアはわめき散らします。

....アクアが、魔法を使ったのは私のせいでもありますし、黙って聞いていましたが.....

 

「そうですね、すごいですね。確かに全て貴女の活躍のおかげです」

 

 私がアクアの功績を認めると、アクアはあっという間に笑顔になります。

 

「ようやく、カズハも私の偉大さがわかったようね。いいわ、これからは....」

「だから、あの時の報酬も手柄も、借金も、貴女一人のものですね」

 

アクアはそれを聞くと笑顔のまま凍りつきました。

 

「では、素晴らしい女神様、借金返済頑張って下さい。私は新しいパーティーと冒険の旅に出ますので」

 

 そう言って立ち去ろうとするとアクアが足にすがりついてきます。

 

「わあああ待って!調子に乗ったのは謝るから見捨てないで!」

「いやです!放しなさい!」

 

 私が借金女神をパージし新たな冒険者人生の第一歩を歩もうとしていると誰かが声をかけてきました。

 

「全く、朝から何を騒いでいるのだ。皆もこちらを....見ていないか。いい加減この街の連中も慣れてきたのか....」

 

 そこにいたのは見た目だけは見目麗しいドM騎士ダクネスでした。

....いや、まるで私達だけがおかしいといわんばかりですが、この街の住人も大抵変人ばかりですからね。

この街が駆け出し冒険者の街でいいんでしょうか?悪い影響しかないような気がします。

 

「おはようございます、二人とも。なにかいい仕事はありましたか?」

 

 ダクネスに遅れて黒髪の少女が話しかけてきます。

 

「めぐみん、おはようです。依頼ならまだ見てもいませんよ。この状況じゃ、選びたい放題でしょうしね。」

 私はギルドを見渡します。そこでは冒険者達がまだ昼にすらなってもいないのに飲んだくれています。

 ベルディア討伐の報酬は参加した冒険者全員に支払われました。

お陰で懐が潤った彼らは危険なクエストに出掛ける必要もなく、ギルドで楽しく酒宴に興じていると言うわけです。

そのため、今はほとんどのクエストが放置されています。

....おかしいですね、私達が一番頑張ったのに、なんで一番、私達が悲惨な目にあっているのでしょうか?世の中って理不尽です。

 

「じゃあ、みんな揃いましたし、クエストを見に行きますか」

 

 そういって私はクエストの依頼書が貼ってある掲示板に近づきます。そして、それを見てがっくりとします。

「やっぱりろくなクエストがないですね....。報酬はいいんですが....」

 

【牧場を襲う白狼の討伐】

牧場を襲い家畜たちを食べる白狼の群れを討伐してください。

報酬:百万エリス

 

 狼の大群とか私達が食い殺されて終わりですね。無理です。

と思っているとダクネスが話しかけてきます。

 

「いいではないか!ケダモノ達の群れに蹂躙される自分を想像しただけで....うぅーん、くぅ!」

 

 ダクネスは想像しただけで顔を赤くし喜んでます。

 

「ダクネス、キモいです、却下です。」

「ンッ...クッ、さすがカズハだ。どんな時も罵倒を忘れないな」

 

 よし、無視。

ほかには、と私がクエストを見ているとめぐみんが私の服の袖を引っ張ります。

 

「カズハ、カズハ!これなんてどうです!」

「はい、はい、なんです?」

 

【一撃熊の討伐】

冬眠から覚めた一撃熊が畑に出没。大変危険ですので討伐してください。

報酬:二百万エリス

 

「我が爆裂魔法とその一撃どちらが強力か思い知らせてやりましょう!」

「却下です!却下!熊って大きいのだと車より早いんですよ!貴女が詠唱終わるまでに全員、お陀仏です!」

「わかりましたよ....。車ってなんですか?」

 

 めぐみんはとても残念そうにうなだれますが、私は一撃熊とか物騒な名前のモンスターに関わりたくありません、当然です。

 

「カズハ、カズハ!これなんてどうかしら!」

 

【マンティコアとグリフォンの討伐依頼】 

マンティコアとグリフォンが縄張り争いをしている場所があります。放っておくと大変危険なので、二匹まとめて討伐してください。

報酬:五十万エリス

 

「アホですか!」

 

 今日一番の危険クエストですね。この駄女神は本当に何を考えているのでしょうか?

 

「なによ!二匹をおびき寄せて、めぐみんの爆裂魔法を食らわせれば一撃じゃない」

 

 アクアは拗ねてそっぽを向きます。どうせ、おびき寄せる方法は私に丸投げするつもりだったんでしょう。

また、檻に入れてワニのいる湖に放り込んでやりましょうか?

 そんなことを考えながら掲示板を見ていると、ある依頼書が目に入ります。

 

「...機動要塞デストロイヤー接近中につき、進路予測のための偵察募集?...なんです、これ?デストロイヤー?」

「デストロイヤーはデストロイヤーだ。大きくて高速移動する要塞だ」

「ワシャワシャ動いて全てを蹂躙する、子供達に妙に人気のあるヤツです」

 

 なるほど、わかりません。とりあえず名前から危険な匂いがプンプンするのでこれもなしです。

後は――――

 

「雪精討伐?雪精って何です?名前からしてもそんなに強そうに思えないのですが...。それなのに一匹報酬十万エリスですって」

 

 私の疑問にめぐみんが答えてくくれます。

 

「雪精は雪深い雪原に多くいて、一匹倒すごとに春が半日早く来るといわれています。とても弱いモンスターで、子供でも倒せますが...」

 

 めぐみんは何かを言いよどみます。何かあるのかと聞こうとしたそのとき、

 

「その仕事を受けるのなら、私、準備してくるわね!」

 

 アクアがそう言ってどこかに走っていきました。まだ、受けると決めたわけではないのですが...。

まあ、ダクネスもめぐみんもこの依頼を受けることに文句はなさそうですしこれにしますか。

私はそう思い依頼書を掲示板からはがします。それを見ていたダクネスがポツリとつぶやきました。

 

「雪精か...」

 

 私はそれを聞いて、疑問を抱きます。なぜ、強いモンスターと戦いたがるこの子が反対をしなかったのかと。

しかも、今のダクネスはなぜか嬉しそうです。

...疑問はありますが今はお金です。いつまでも迷ってはいられません。行きましょう、雪精討伐に!

 

 

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 というわけで街から離れた平原地帯に来ました。

街ではまだ雪も降っていないはずなのに、ここは一面の雪原と化していました。これが雪精とやらの力なのでしょう。

そして、雪原にはそこかしこに白くてふわふわした手のひらサイズの綿のようなものが飛んでいます。

みるからに無害で危険などなさそうです。なぜ、これに十万もの報酬が?

これの討伐が依頼される理由はわかります。冬はつらく厳しい季節、暖かな春の訪れを待ち望んでいる人は多いでしょう。

ですがこんな誰にでもできそうなクエストに高額な報酬を出す意味が解りません。

疑問は尽きませんが、今はそれ以上に気になることがあります。

 

「アクア、その恰好、どうにかならないんですか?」

 

 アクアは冬用のコートと帽子に身を包んでいます、アクアがギルドから借りてきたものです。

それについては似合ってますし文句はありません。問題は捕虫網をくっつけた蓮の花がついた杖と腰に下げた小瓶です。

 

「冬場、虫取りに行く馬鹿な子供ですか、貴女は。あとその杖どうしたんですか?女神は武器を装備しないんじゃなかったんですか。まさか勝手に買ったんじゃないでしょうね」

「違うわよ。これはね、私が女神の力を行使しやすいように作った杖でね、私の一部みたいなものなの。だから自由自在に消したりできるわ」

「へぇー」

 

 私はどうでもよさそうにつぶやきます。また、女神とか言っているからかダクネスとめぐみんがかわいそうな子を見るような目でこちらを見ています。

 

「それにね、この網と小瓶はね、雪精を捕まえるために用意したの。その小瓶と一緒に飲み物を入れておけばいつでもキンキンに冷えたシュワシュワが飲めるってわけよ。どう、頭いいでしょう?」

 

 まあ、オチは読めますがここは無視です。

で、残り二人の格好ですがめぐみんはフードのついたコートを羽織っています。

フードには猫耳の様な、角がついていてあざといです。可愛いので文句はないですが。

問題は残り一人の方です。

 

「ダクネス、鎧どうしたんですか?」

 

 ダクネスは黒のシャツと黒のタイトスカートのみという冬をなめ切っている格好です。

 

「ベルディアとの戦いでボロボロになったからな。修理中だ」

 

 だとしてもその恰好はあり得ませんけどね。

 

「そうですか、風邪ひかないでくださいね」

「大丈夫だ、体が丈夫なのが私の取り柄だからな。ちょっと寒いが、それも我慢大会みたいで、それもまた...」

 

 なにか、ハアハアと一人で気持ちの悪いことを言い出しましたが、関わりたくないのでこれ以上の追求はやめましょう。

もしかしたら、頭の温かい変態は体も暖かいのかもしれません。

それよりもです、アクアやダクネスの格好以上に私には言いたいことがあるんですよ。

 

「なんで私だけ蓑なんですか!!」

 

 私は絶叫します。ええ、今の私は頭に頭巾、体には蓑というどこの日本昔話だという格好をしています。

どう考えても青春真っ盛りの女子がしていい恰好じゃないです。別にかわいい恰好がしたいというわけではないんですよ、...自分でもそういうのが似合わないの知ってますし。

でもね、私にだって女子として最低限のラインというのはあるんです!

 

「急に大声でどうしたのよ。...まあ、たしかに女の子にその恰好はないとは思うけど、仕方ないじゃない、ギルドに余っていた防寒具がそれだけだったんだから」

「...あなたがこれがいやだと駄々をこねるから仕方なく譲ったんですが...」

 

 アクアはまたもや耳をふさぎ目を閉じ聞こえないふりをします。今この場でそのコート剥ぎ取ってやりましょうか。

 

「まあ、このクエストが成功したら多少、金銭にも余裕ができるだろう。そうしたら、カズハに似合う防寒具も買えるだろう」

「そうですよ。今度、カズハに似合うコート探しといてあげますから」

 

 そう言ってダクネスとめぐみんが慰めてくれます。そうです、今はお金!私は気を取り直して雪精討伐を開始しました。

 

 

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「待ちなさい!!十万!!」

 

 私は走りながらなんとか剣を当て三匹目の雪精を倒します。

近づかなければただ浮いているだけなのに攻撃を仕掛けようとするとチョロチョロとすばしっこく逃げまわりやがります。面倒な。

 私が苦戦していると遠くから嬉々としたアクアの声が聞こえてきます。

 

「四匹目の雪精捕ったー!カズハ、見て見て、大量よ!」

 

 アクアの方を見ると、アクアは捕まえた雪精を小瓶に詰めています。

 剣よりも網で捕まえてから倒す方が効率よかったですね、私もそうすればよかったです。

まあ、あの雪精はあとでお金に換えさせてもらいますが、冷蔵庫なんぞよりも今は借金返済です。

 

「カズハ、すばしこくって杖が当たりません...爆裂魔法であたり一面吹き飛ばしてていいですか?」

 

 杖を振りましてようやく一匹仕留めためぐみんがそんなことを提案してきました。

 他のモンスターが音に反応して寄ってくる可能性もありますが...敵感知スキルでしっかりと見張っておけば大丈夫ですか。

 

「お願いします。まとめて一掃しちゃってください」

 

 めぐみんはその言葉を聞くと嬉々として詠唱を始めます。

 

「我が真紅の流失をもって白き世界を覆さん!『エクスプロージョン』ッッッ!」

 

 一日一回限定のめぐみんの必殺魔法。爆裂魔法、それが雪原に放たれます。

巨大な火球が白い大地に現れ轟音と爆風を巻き起こし消え去ると、そこには地面をむき出しにさせた巨大なクレーターが現れました。

めぐみんは魔力を使い切り雪の上にうつぶせに倒れこみます。私がめぐみんに近づくと、彼女は自慢げに冒険者カードを見せてきます。

 

「八匹!八匹やりましたよ。レベルも1あがりました」

「おお、やりますねえ。さすが、めぐみんです。雪に埋もれてなければもう少しカッコよかったですが」

 

 これで私の3匹、アクアが捕獲した4匹、そしてめぐみんの分を合わせると16匹。

...ダクネスはいまだに一匹もかすりもしていませんがいつものことなので仕方なし。なんにしてもこれで百六十万エリス。

うまくやれば五百万くらいは稼げるかもしれません。美味しいです、美味しすぎます、雪精討伐。

...やっぱりおかしいです。なんでこんな楽でおいしいクエストを誰もやらないんでしょうか?

 

その時でした、ダクネスが叫びました

 

「でたな!」

 

 慌ててダクネスが見ている方を見ると雪煙が舞っており何かが湧き出るように現れました。ずるくないです?そんなの敵感知スキルでも発見できるわけないじゃですか!

私はとにかく逃げようと隣で倒れていためぐみんを見ます。

 

「.........」

 

 し、死んだふり。山で本当にこれやる人はじめて見ました。熊には通じないのは今や常識ですが、モンスターには通じるのでしょうか?

 

「...カズハ。なぜ冬になると、冒険者達がクエストを請けなくなるのか。その理由を教えてあげるわ」

 

 アクアは神妙な面持ちで語り始めます。えっ、手軽なクエストがなくなるからだけじゃないんです?

 

「あなたも日本に住んでいたんだし、天気予報やニュースで名前くらいは聞いたことはあるはずよ」

 

 天気予報?ニュース?それがモンスターと何の関係が?

 

「雪精たちの主にして、冬の風物詩とも言われている...そう、冬将軍の到来よ!」

「は?」

 

 アクアがそう言った瞬間、狙ったかのように周囲を覆っていた雪煙が晴れます。

そこにいたのは真っ白な和風の重厚な鎧兜に同じく真っ白な素晴らしくきめ細かな陣羽織をつけ、顔には白い総面を付けた鎧武者。

 

「冬将軍!国から指定されている特別指定モンスターの一体!」

 

 ああ、なるほど、こんな化け物がうろついているからみんな外に出ないと...。大ピンチじゃないですか私達!

 

「こいつはきっと将軍の地位を利用して私を手籠めにする気だろう。わたしも抵抗はするが恐らく力及ばず辱められ...ハァハァ」

「あなたはほんと馬鹿ですね!というか、この世界は人もモンスターも食べ物もそろいもそろってバカしかいないんですか!!」

 

 目の前の冬将軍が刀を抜きダクネスに切りかかります。ダクネスはそれを剣で受け止めようとしますが、キンッという音ともに叩きおられました。

 

「ああっ!?私の剣が!?」

 

 アクアはそれを見ながらも解説を続けます。

 

「精霊はね、元々決まった実態をもたないの。だから出会った人が無意識に思い描く姿を元に形を作るわ。

火の精霊は全てを焼き尽くす炎の恐ろしさから凶暴な火トカゲに。

水の精霊ならば清らかでカッコよくて知的で美しい女神から連想して美しい乙女の姿に。

......でも冬の精霊だけは特殊でね。本来冬は危険なモンスターが蔓延る季節......街の人は勿論、冒険者すらも出歩かないから冬の精霊に出会う事がなかったのよ。

......日本から来たチート持ち以外はね」

 

 私は剣を折られたダクネスの前に出て代わりに剣を構えます。

 

「つまり、このモンスターは異世界転生したどこかのアホが冬といえば冬将軍なんていうことを考えたから生まれたんですか!?なんて迷惑な!こんなのどうやって戦えばいいんですか!?」

 

 一見ただの鎧武者にしか見えませんが相手は精霊、私の攻撃など効くかどうか。

 

「カズハ、冬将軍に勝とうなんて馬鹿なこと思っちゃだめよ。あれは一国の軍すら壊滅に追い込んだ超危険モンスターよ!チート持ちが集まっても勝てない化け物なんだから!」

「はあ!?」

 

 なんですそれ、下手すれば魔王よりもヤバいじゃないんですか!?

というかなんで自然現象の擬人化がそこまで強い...ああそいえば冬将軍って、その気候によって軍の進攻が失敗したことを風刺したのが由来でしたね。

そりゃあ強いわけです、だって、何万、何十万の進攻を一人で防いだ将軍ですもの、勝てるわけありません。

頼みの綱のめぐみんは魔力切れのうえ、まだ死んだふりを続けてますし。...あの子はあとで踏んどきましょう。

 

「カズハ、聞きなさい!冬将軍は寛大よ!きちんと礼を尽くして謝れば、見逃してくれるわ!」

 

 そう言って、アクアは急いで腰に付けていた小瓶の蓋を開け雪精たちを逃がし始めます。そして、逃がし終わると雪原にひれ伏し、ぺたりと頭を付けました。

 

「DOGEZAよ!DOGEZAをするのよ!ほら、皆も武器を捨てて早くして!謝って!カズハも早く謝って!!」

 

 プライドなどすでに捨て去ったらしい元なんとか様は、それはそれは見事な土下座を敢行しました。ああはなりたくないです。

しかし、確かに死んだふりをしているめぐみんにも土下座をしているアクアにも冬将軍は目も向けていません。

というかこっち見てません、将軍様?

 私はそれに気づくと慌てて土下座を....しようと思いましたがその前にダクネスがなぜか突っ立ったままでいることに気づきます。

 

「何してるんですか、早く頭を下げましょう!」

 

 しかし、ダクネスは折られた剣を捨て、悔しそうに冬将軍を睨み付けています。

 

「くっ....!私にだって、聖騎士としてのプライドがある!誰も見ていないとはいえ、騎士たる私がモンスターに頭を下げるなどと....!」

 

 ああ、もう変なところで頑固なんですから!私は仕方ないのでダクネスの頭を左手で押さえつけ無理矢理下げさせました。

 

「貴女はいつも、いつも、モンスターにホイホイついていこうするくせになんでこんな時にだけプライドと言い出すんですか。アホなんですか、アホなんですね!」

「や、やめろお!くっ、下げたくもない頭を無理やり下げさせられ、地に顔をつけられるとかどんな御褒美だ!ハアハア....ああ、雪が冷たい....!」

「もう、黙っていてもらえません!?」

 

 変態の形だけの抵抗を破り、頭を押さえつけると私も頭を下げます。

 私はそのまま目を上にしちらりと冬将軍の様子を見ます。冬将軍はすでにその刀を鞘に納めていました。

どうやら、許されたみたいですね、よかった、よかった。

とその時、アクアが大声で叫びます。

 

「カズハ、武器武器!早く手に持っている剣を捨てて!!」

 

 へ?あっ、私まだ剣握ったままです。そう気づき急いで剣を捨てようと。

 

――私はつい、体を起こしてしまいした。

 

そして、私の目に入ってきたのは納めた刀の鍔に左手を添えている冬将軍の姿。その刀は冬将軍の左手の親指が鍔をそっと押すことで白刃を覗かしています。

えっとなんでしたっけ、これ?なんかの動画で見たことあるんですけど、ああ、思い出しました、居合いの構えです。

そう思い出した瞬間、冬将軍の刀と手が一瞬ぶれた気がしました。そしてなぜか私の目線が天を向きます、

あれ?首は動かしていないのにおかしいですね。何故でしょう、気が遠く....

そして、チンという、おそらく冬将軍が刀を納めたであろう音が聞こえると私の意識は途切れました。

 

 

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あ、完全に思い出しました。そうです、私は冬将軍に斬首されたのでした。なんていう死に方なんでしょうか。いえ、トラクターショック死よりは大分ましですが。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「いえ、ちょっと状況の整理を。私、また死んだんですよね?」

「はい、残念ですが。....私は、女神エリス。この世界で死後の道の案内をすることを仕事にしています」

 

 やっぱりですか、さすが二度目ともなると私も多少は落ち着いてます。

私は目の前のエリスと名乗る女神を見ます。揺ったりとした白い羽衣と青い修道服のようなものに身を包み、長い白銀と白い肌。

どこか儚げで、それでいて美しい。正に正統派美少女です。

 しかし、その顔はなぜか、悲しそうです。一体何がそんなに悲し.....ああ、この子は私が死んだのを悲しんでくれているのですか。

 

「女神様ありがとうございます。私なんかのことでそんな悲しんでくれて」

「なんかじゃありません!大切な大切な命です!自分のことをそんなに卑下してはいけませんよ」

 

 怒られてしまいました。見ず知らずの私にこんなに親身になってくれるとはなんという女神!

そうですよ、こういうのが女神様ですよね。どこぞの女神擬きとは格が違います。

 

「そうです。私が死んだ後どうなりました?みんなちゃんと逃げ切れましたか?」

 

 あの子たちは、向こう見ずで考えなしの行動が多いですからね。敵討ちだとか言って冬将軍に挑みかねません。

 

「大丈夫です。冬将軍は貴女を斬った後、姿を消してしまったようです」

 

 良かった、私はそう思い胸をなでおろします。これで心残りはなくなりました、元々、もう一度人生やり直せるなんていうのが奇跡みたいなものでしたからね。

これも運命と思い受け入れましょう。

 

「佐藤和葉さん、せっかく平和な日本からこの世界に来てくれたというのにこんなことになってしまって...」

 

 エリス様が悲しそうな顔でこちらを見つめてきます。

 

「いえ、二度目の人生が送れたのが奇跡みたいなものだと思いますし、そもそも、選んだのは私ですしね。まあ、異世界くれば私も変われるかなと調子に乗った私の自業自得ですよ」

「そんなことないですよ、あなたは十分に勇敢な人です。せめて私の力で次は平和な日本で裕福な家庭に生まれ、何不自由なく暮らせるように転生させてあげましょう!」

「本当ですか!出来れば、姉と妹がいる家庭がいいです!」

「は、はあ....、まあそのくらいなら」

「よっしゃああああああああ!」

 

 よし、来世勝ち組確定です!裕福な家庭とかどうでもいいです、姉妹がいるというだけで次の生の幸せは確定されたも同然!

 

「日本にいた時も含めて色々と鬱屈した人生送ってきましたがはじめて報われた気がします。これもこの世界で頑張ったおかげですよね!本当に、本当に大変でしたからね!」

「ええ、大変でしたね。私も、あなたの生活を時々見ていましたが...」

 

 私の話にエリス様は苦笑します。そりゃあ、あんなの見せられたら苦笑するしかないですよね。

 

「ええ、本当ですよ。異世界転生したら冒険の日々だと思ったら、まさかの労働者生活スタートですし、転生特典で連れてきた女神はわがままばっかり。

仲間ができたと思ったら、一発屋魔法使いにドⅯ変態騎士。魔王の幹部から街を守ったら賞賛されるどころか、借金を背負わさせられますし、信じられます?

仮にも国の機関がヤクザの様な取り立てするんですよ!どんだけブラックなんですか冒険者って!」

 

 私は今までの不満をぶちまけます。本当にこの世界に来て短い間に色々とありましたね。本当に毎日毎日トラブルばかり。まあ、おかげで退屈はしませんでしたけど。

...アクアもダクネスもめぐみんも本当に騒ぎばかり起こして...あれ、おかしいですね、なんで私泣いているんですか。

...ああ、そうですね、私は大変でしたけどあの毎日が案外、気に入ってたんですよね。あの子たちとの冒険の日々が楽しかったんですよね。

...できることなら、もうちょっとだけ、あの子たちと冒険をしてみたかったです。

もう、叶うことはないけれど。

 

 そんな私を見て、エリス様がやさしく微笑みかけます。

 

「よき人生を送れたようですね。...生まれ変わっても貴女にまたよき出会いがあらん事を」

 

 エリス様の手のひらに光が集まりそれが私にかざされます。さようなら、みんな。あなたたちに幸せが...

 

《さあ帰ってきなさいカズハ!何あっさり殺されてんの!死ぬにはまだ早いわよ!》

 

 突如として響いた声が先ほどまでのしんみりした雰囲気をぶち壊します。

え、なんですこれ?今いい感じに人生締めようと思ってたのに!なんかすごくむかつきます。

 この声といい、この空気の読まなさといい、いったい誰なのかすぐに検討がつきます。

 

「何ですか、アクア!私、今、取り込み中なんですが!」

「こ、この声、アクア先輩!まさかとは思ったけど、本当に本物!?」

 

 アクアの声を聞いてエリス様がとても慌てています。

そういえばこの世界に来た時、プリーストのおじいさんがアクアとエリス様は先輩、後輩の仲にあると言っていましたね。

...アクアのお守をしている私にはエリス様がどれだけ苦労してきたかわかります。

この女神さまの心労も種を減らしたと思えばあの駄女神を異世界に連れて行ったかいがあったというものです。

 

《なにか、無礼なこと考えてるわね、カズハ!あんまり調子乗っていると蘇生させてあげないわよ!》

 

 なんで、この子はこんな時だけ勘が...って、「私生き返れるんですか!」

思わず驚きから声が出てしまいます。

 

《私を誰だと思っているのからしら!水の女神アクア様よ、蘇生なんて魔法でちょちょいのチョイよ!

もう、かけたからこっちに帰って来られるわよ。そこに、女神がいるでしょう?その子にこちらへの門開けてもらいなさい》

 

 そういえば、ベルディアの時も冒険者を蘇生させていましたね。生き返れるならそれに越したことなし!

 

「わかりました。今、帰るのでちょっとまっていてください。...なんかそういうことらしいので、門とやら開けてもらってよろしいでしょうか?」

「ちょっと待ってください!あなたは一度生き返っているので天界規定によりこれ以上の蘇生はできません!」

 

 え、そうなんですか?ぬか喜びしてしまいました。

 

「アクアー!なんか私、一回生き返っているから天界規定とやらで無理らしいんですが!」

 

 私はとりあえず虚空に叫びます。これどうやって向こうに伝わっているんでしょうか?

私の言葉にアクアは一瞬静まり返ると。

 

《はあー!?誰よそんなこと言っている馬鹿な女神は!こんなド辺境担当の女神が日本担当のエリートの私になめた口きくとはいい度胸ね!一体どこの誰よ!》

 

 うわあ。その辺境担当がすごく引きつった顔をしています。というかこの世界って、神さま的に辺境なんです?

 

「えっと、エリスという女神様なんですが...」

 

 それを聞いた、アクアが素っ頓狂な甲高い声を上げます。

 

《エリス!? ちょっとこの世界で国教として崇拝されてるからって、調子こいてお金の単位にまでなった、上げ底エリス!? ちょっとカズハ、目の前の女がそれ以上何かゴタゴタ言うのなら、その胸パット取り上げてやんなさ「わ、分かりましたっ! 特例で! 特例で認めますから! 今、門を開けますからっ!」

 

「え、パッドなんですか?」

 

 確かにみると胸の膨らみが不自然なような。エリス様は私の視線から目をそらします。あ、これ、パッドですね。

 

「こほん!」

 

仕切りなおすようにエリス様は咳ばらいをすると指鳴らしました。そうすると、神殿の天井にいえ、私達の頭上に空間にひびが入ります。

 

「まったく、アクア先輩は相変わらず理不尽な...さあ、これで現世への道が開きました。はあ....こんな事普通はないんですよ?

本来であればどんな偉人であろうと魔法で生きかえれるのは一回のみ。まったく、カズハさんといいましたね?」

「あっ、はい!」

 

 やっぱり、美人の前だと緊張しちゃいますね。どこぞのなんちゃって女神と違って正真正銘の女神様ですし。

エリス様は困ったような顔して頬を掻きます。そしていたずらっぽく片目をつむり少しだけ嬉しそうにささやいた。

 

「このことは内緒ですよ?」

 

 女神様、そういうのはズルいですよ。

私の体は空を浮き空間の裂け目に吸い込まれていきました。

そして―――――

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

遠くから声が聞こえます。

 

「...ズハっ!カズハっ!カズハ、起きてくださいっ!カズハ!」

 

 私の名前を呼んで泣くめぐみんの声。

目を開けるとめぐみん、ダクネス、アクアが私を覗き込むように見ていました。

 

「あ、やっと起きた?ったく、あの子は頭固いんだから」

 

 ん?何か頭が温かいですね。どうやら、アクアが膝枕をしてくれていたようでした。

めぐみんとダクネスが私の様子を見ると泣きそうな顔で抱き着いてきます。心から私が生き返ったのを喜んでくれているようです。

...なんか無性に恥ずかしいですねこれ。

 

「ちょっとカズハ、照れてないで何とか言いなさいよ。この私があなたを生き返らせてあげたのよ?何か言うことがあるでしょう?」

 

 にやにやとアクアが笑みを浮かべそんなこと言ってきます。...なんで、私の女神はこんなのなんでしょう。私、エリス様と冒険したかったです。

私はにやにやと笑い続けるアクアに言います。

 

「エリス様とチェンジで」

「上等ね、このニート娘!そんなにあの子に会いたいなら、今すぐ会わせてあげようじゃない!」

 

 額に青筋を浮かべたアクアは立ち上がり、拳に力をこめ光輝かせます。

 

「や、やめなさい!ゴッドブローは私のステータスだと本当に死んじゃいますから!」

 

 アクアは私の静止も聞かず、殴りかかろうとしますが、ダクネスがそれを押しとどめます。

 

「まあ、落ち着けアクア」

 

 アクアをダクネスが止めている間にめぐみんが近づいてきます。

 

「大丈夫ですか、カズハ?体におかしなところはないですか?」

 

 そう言われて、私は自分の体を確かめます。

 

「まあ、大丈夫そうですね」

「そうですか、ひどい殺された方をしましたらね...」

そういえば、はっきりと覚えているわけじゃないですが、冬将軍に首をはねられたんでしたね。

ふと、後ろを見ると雪原が真っ赤に染まっている場所がありました。...さすがにぞっとします。人間ってあんなに血が出るものなんですね...。

 

「蘇生はしたけど、血液まではまだ完全に回復はしていないから、しばらくは激しい運動は厳禁よ」

 アクアはそんなことを言います。この世界の冬は食料に乏しい過酷な環境の中でも生存競争を生き抜ける者のみに生存が許される季節。

私達駆け出しに簡単にこなせるクエストなど存在しないのです。

 

「はい、今日は撤収!」

 

帰りましょう、帰りましょう

 

 

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 私達は、街に帰ると報酬をもらうためにギルドに直行し、受付から報酬をもらいます。

ほんの一時間で、百二十万...稼ぎとしては大きいですが、命と引き換えでは全く割に合いませんね。そういえば...

 

「冬将軍って国の特別指定モンスターとやらなんですよね。どれだけの賞金がかかってるんです?この前のベルディアよりも強い気がするんですが」

「魔王軍と違って冬将軍は冬精霊に手を出さなければ何もしてきませんからね。それでも二億エリスの懸賞がかけられていたはずです。これはそれだけ冬将軍が強いモンスターだからですよ」

 

 二億!それだけあれば借金も返して家も買えて遊んで暮らせるではないですか!

 

「めぐみん?爆裂魔法で...」

「残念ですが無理です。冬将軍は精霊ですからね、あの姿は見せかけで本来は魔力の塊みたいなものです。そのため魔法防御もかなりのものです。

爆裂魔法ならどんな存在でもダメージを与えられますがあれを一撃では倒すことは不可能です。...私もあんな怖いのとはことを構えたくありません」

 

 射程範囲ギリギリから狙えば行けると思ったんですが、現実はそんなに甘くないですよね。

私ががっくりと肩を落とすとアクアが何がそんなにうれしいのかニマニマと笑ってこちらに近づいてきます。

 

「ふふん、カズハ。なにか無謀なこと考えているようだけど、貴女と違って私はただ土下座してた訳じゃないわ!これを見なさい!」

 

 そう言ってアクアが服の中から小さな瓶を取り出します。その中身は雪精ですか。なるほどすべて解放したふりをして一匹残しておいてたんですね。

 

「すごいですね、アクア。では、それ貸してください、討伐するので」

 

 私は、アクアの珍しい機転を誉めながら瓶を取り上げようとしました。

 

「なっ!ダメよこの子は!もう、うちの子なの!家の冷蔵庫にするんだから、もう名前だってつけているのよ!」

 

 アクアは雪精をお腹に抱え、完全防御の姿勢をとります。この子、予想外の抵抗を!

仕方ありません。十万は惜しいですが、今日はアクアに生き返らせてもらってますしね。見逃すことにしますか。

 

「ふふっ、この子は大事に育てて夏になったら、氷を一杯作ってもらうのよ。そして、この子と一緒にかき氷の屋台を出すの!暑さで寝苦しい夜は一緒に寝て....ねえ、めぐみん。この子ってなに食べるのかしら?」

「うーん、ちょっとわからないですね。そもそも精霊ってなにか食べるのでしょうか?」

「フワフワしていて、柔らかそうで、砂糖をかけたら美味そうだな....」

「食べさせないわよ!?」

「お腹すいて来ましたね。何か注文しましょうか」

 

 ......もうちょっと女の子らしい会話ができないんですかね、この子達は。いや、私も大抵ですけれども。

はあ、と目の前の光景に溜め息を着き、私は現実逃避気味に先程の女神様のことを思い出します。私のことをあんな心配してくださった女神様。見た目も美少女で中身も完璧。

ああいう可愛い子と冒険できたら私ももう少し頑張る気になるんですが....いや、女の子と付き合いたいとかそういうのではないんですよ?本当に本当です。

 あ、でも、エリス様にお姉ちゃんとか言われたらなんでもできそうです。魔王だろうと倒せそうです。というかその場で死んでしまうかもしれません。

それに比べこの子達と来たら....

 

「って、貴女達勝手にどんだけ頼んでるんですか!」

 

 私がエリス様のことを思い出している間にいつの間にか私達の前には大量の料理が運ばれています。

 

「大丈夫よ!今日は結構な稼ぎになったんだし!」

 

借金が消えた訳ではないんですが!

 

「大丈夫だ、金がなくなったらまたクエストにいけばいい 」

 

その結果、私、死んだんですが!?

 

「我ほどの大魔導師ともなると大量の贄が必要なのだ....」

 

めぐみん、カッコつけてますがそんなに食べても胸には栄養はいかないんですよ、全部贅肉になるんです。本当に、本当に、残念なことですが。

 

「なにか、カズハの目線から不愉快な思考を感じました。言いたいことがあるなら聞きますよ?」

「そう言って、私を組伏せようとしないでください!やめろ、私は病み上がりなんです!....ちょ、本当にやめて!私、めぐみんより筋力低いんですから!」

 

 ああ、エリス様。もうあそこには来ないように言われましたが、うちのパーティーはこんな感じなので近いうちまた会うことになると思います。

そのときは、今度こそ日本に転生させてください!

 




久々に日間ランキング入りしていました。これも読んでくださっている皆様のおかげです、本当にありがとうございます。
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