本当にトリガーアニメの原液を煮詰めたようなとてつもない映画でした。
「あ?もう一度言って見ろや、ゴミカス?」
「ああ何度でもいってやるよ!荷物持ちの仕事?
それだけ上級職が揃ったパーティーにいるくせにそんなカスみたいな仕事しかできないのかよ?
大方最弱職のお前が足を引っ張っているんだろ?え、自称勇者様よ?」
私が殺されてから数日後。私はギルドでゴミカスことダストと一触即発の状態となっていました。
アクアから静養をとるように言われた私は簡単な荷物のクエストを受けようとしていたのですが、昼間から酒飲んで悪酔いしているこのクズにからまれ今に至るというわけです。
「
「ふん、最弱職に何ができるって言うんだ。これでも俺はこの街じゃ上位の実力者なんだぜ」
といいつつ、ダストは両手で股関を防御します。
「へえ、その実力者様は魔王の幹部が襲来したとき何してたんでしたっけ?ゴミらしくブタ箱入ってたんじゃありませんでしたっけ?」
「あれは、タイミングが悪かっただけだ。あの時、俺がいれば「ティンダー」ああああ、熱い、熱い!」
頭に火がついたダストが転げ回ります。
馬鹿ですね、話に夢中になって人から目をそらすからこうなるのです。やはりゴミは燃やすに限ります。
そんな私とダストのやり取りを見て、青いマントを羽織ったポニーテールの少女が近づいてきます。
「うちの馬鹿がごめんね、カズハちゃん」
この子はリーン。魔法使いでかわいそうなことに先程燃やしたクズのパーティーメンバーです。
「リーン!?こっちを心配しろよ!」
どうやら消火がすんだらしいダストが叫びます。
「あんたの自業自得でしょ?そもそも女の子相手に恥ずかしいと思わないの?」
「思わねえな。そいつが女っていうんならその辺のゴブリンのメスだって立派な女だぜ」
「えいや」
私が脳天めがけて剣を振り下ろすとダストは全力でさけました。
「お前、殺す気か!本気で剣振りかざしてきやがって!」
「もちろんそのつもりでしたが?」
私は笑顔で返します。人を罵倒するならそれくらいの覚悟はもっているってことでしょうに。
「お前、冒険者じゃなくて殺人鬼かなにかじゃねーのか....?」
「なんてこというのよ。本当にうちのバカがごめんねカズハちゃん」
リーンが手のひらを合わせ頭を下げてきます。
「いいですよ、あのチンピラが誰かれ構わず突っかかるなんてよくあることです。それに、全く的はずれなことを言っていたわけでもありませんしね」
確かにダストの言うことにも一理あります。私のパーティーは変人かつ癖のある面々ばかりですが一応は上級職。
他から私を見れば上級職におんぶにだっこの姫プレイヤーみたいなものでしょう。
「そうだろ、そうだろ!俺の言ってることは間違ってねぇだろ!」
ダストが私の言葉尻をとらえて再び突っかかってきます。もう一度燃やしてやりましょうかと思っていると待機していためぐみんやダクネス、アクアが止めに入ってきます。
「もう、相手にしない方がいいですよカズハ。私なら、あんなのになに言われても気にしませんよ」
「そうだカズハ。酔っぱらいの言うことなど捨て置け」
「そうよ。あの男、モテないからってカズハに突っかかってうさばらししてるのよ。私も全く気にしないからほっときなさいな」
まあ、確かに私もこんなチンピラ相手に大人げなかったですね。
そう私も十六、結婚だってできる大人な女です、もうこんなチンピラ相手に本気で怒ることなど....
「逃げるのか?上級職におんぶにだっこの苦労知らずのお姫様よ。あ、鬼畜姫様だっけ?何なら代わってくれよ。俺なら、そのパーティーで魔王だろうと倒しやるからよ!」
「誰が鬼畜姫じゃあ、ボケエ!」
怒り狂った私はダストの股関をおもいっきり蹴りあげます。
「あぎゃああ!」
「私に鬼畜姫などという不名誉な通り名など存在しない!あったとしても過去のものです!」
「カ、カズハ?そこ、そこなの?もっと他にあるでしょう?」
アクアがおろおろしながら聞いてきます。
「そこに決まってるじゃないですか!この男があのカツラギだかミツルギだかいうやつにこの不名誉な通り名を伝えてくれたお陰で今じゃ町中に広まっているんですよ!妹探しに近所の子に声をかけても逃げられる始末、どうしてくれるんですか!」
「いや、それは別の理由だと思うが」
ダクネスが冷静に突っ込んできます。いえ、絶対にこれです、決してロリコンのお姉さんだとか思われていない!
「テメエ、女だと思って手加減してやりゃあ付け上がりやがって...」
ダストが股間を押さえながらうめくように呟きます。
「そもそも、あなたから仕掛けてきたようなものだと思うのですが....。まあ、確かに先に手を出したの私ですし、お詫びと言ってはなんですが代わってあげますよ?」
「は?」
ダストが間抜けな声を出します。
「代わってあげると言ったんですよ?あなたなら私よりも上手くこのパーティでやっていけるんでしょう?」
ダストは私の言葉に唖然としています。自分で言ってなんという反応でしょう。
「本当にいいのか?じゃあ一日、一日だけ代わろう!お前らもいいか!?」
ダストはテーブルに座っていたリーン達に確認をとります。土壇場でひよりましたねこの男。
私としてはずっと代わってもらってもよかったのですが。
なんにしても代わってしまえばこっちのものです。
「お、俺は別にいいけどよぉ.....。今日のクエストはゴブリン狩りだし」
「あたしもいいよ?でも、ダスト?こっちが居心地がいいから帰って来ないとか言い出さないでよね?」
「俺も構わん。ひよっ子一人増えたところでゴブリンくらいどうとでもなる。その代わりよい土産話を期待しているぞ」
交渉成立ですね。私はようやく、ようやく、あの三人から解放されたのです!
「よかったですね、アクア。この人なら魔王も倒せるそうですよ」
「ねえ、カズハ?勝手に話進んでるけど私達の意見は通らないの?」
「通りません。私はサトウカズハ、職業は冒険者です。今日一日よろしくおねがいします!」
「「「は、はあ....」」」
何故か、ダストの仲間達は困惑しているようでした。
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「あのう、カズハ?」
突然今まで黙っていためぐみんが話しかけてきます。
「なんです、めぐみん?トレードの話ならもう覆りませんよ?」
「そうではなく、なんでカズハはあそこまでダストを嫌うんです?確かに最低のセクハラ野郎ですが...なんというか他に理由があるんじゃないですか?」
「....」
つい真顔で無言になってしまいます。いつも爆裂、爆裂言っていますが結構周りのことをちゃんと見ているんですよねこの子は。
知力も高いから些細な違和感にも気づく。この子のこういうところはほんとうに怖い。いつか、私のことにも気づきそうで。
「なんでそんなこと聞くんです?」
「いえ、カズハはあまり敵をつくる感じではないのにダストには妙に敵対的だなとちょっと、気になったもので」
さて、どう答えたものか。
「....私は嘘つきが大嫌いなんですよ」
「はあ....確かにダストは、いつも口からでまかせ言ってますが」
めぐみんはどこか納得していないようだったが私は嘘はついていない。
めぐみんがあの男の最大の嘘を知らないというだけだ。
「じゃあ、リーン達が待っているのでこれで。めぐみん達も頑張って!」
そう言って私はごまかして逃げた。
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「おまたせいたしました!一日パーティーメンバーよろしくおねがいしますね!」
「なんかカズハちゃんキャラいつもと違うくない?」
リーンが少し困惑した表情で訪ねてきます。
「え、そうですか?私はいつもこんなんですよ?」
そうです、いつも元気なカズハちゃんですよ。
「まあいいけど、今日はよろしくね」
そんな風にリーンと会話していると、剣と盾を携え体には装甲鎧をつけた男が話しかけて来ます。
「なんだリーンとは知り合いなのか?」
「前にもあいつがこの子にちょっかいかけてね。その時にちょっとね」
そうです、リーンとはダストと最初に出会った時知り合ったのです。
あのゴミカスがセクハラを仕掛けて来たのでぶん殴って気絶させたのをわざわざ回収しに来て私達に謝罪までしてくれたのでした。
ほんとあの男のパーティーになったばかりに....
「そうか。俺はテイラー、片手剣が得物の聖騎士だ。一応このパーティーのリーダーをやらさせてもらっている。
一日とはいえ俺たちのパーティメンバーになるんだ。リーダーの言うことは聞いてもらうぞ」
「ええ、当たり前です。普段は私が指示する立場でしたからね、そっちの方が楽ですし新鮮です」
私の言葉にテイラーが驚きます。
「何?あの上級職ばかりパーティーで冒険者がリーダーをやってたって言うのか?」
「そうですよ。必ずしも名選手、名監督にならずってところです」
まあ、あの子達は名選手ならぬ迷選手ですが。
私の言葉に三人が驚愕します。
「そ、そうだったの?てっきりダクネスさん辺りがリーダーかと」
あれがリーダーなら、今頃私達は極悪モンスターの餌食でしょうね....。
「まあいいわ。改めて、知っているでしょうけどあたしはリーン。《ウィザード》よ。
中級魔法までつかえるわ。ゴブリンぐらい楽勝よ、あたしが守ってあげるから安心なさい!」
どうもリーンには年下の後輩に見られている気がします。名前もちゃん付けですし。
なんにしてもどこぞの一発屋とは違い本職の魔法使いとは心強いです。是非とも頼りにしたいところですね。
「じゃあ次は俺だな。俺はキース、《アーチャー》だ。狙撃には自身がある。ま、よろしく頼むぜ、嬢ちゃん?」
「では、改めてよろしくおねがいします。私はサトウカズハ。職業は冒険者です。....私もなにか特技とか言った方がいいです?」
私の言葉に三人が吹き出します。む、そりゃあ、私は最弱職ですけど、笑うことないじゃないですか。
まあ、私の特技なんて人生無敗のじゃんけんぐらいのものですけど。
「おっと気分を悪くしたなら謝るが、荷物持ちの仕事を探していたんだろ?じゃあ、嬢ちゃんは俺たちの荷物持ちでもやってくれ。
ゴブリン程度三人でどうとでもなるからな。ああ、心配はするな報酬はちゃんと四等分だからよ」
テイラーはからかうように言ってきますが、むしろ望むところです。常に命懸けだったいままでと比べれば天国です。
荷物持つだけで報酬もらえるとか楽すぎます。向こうが言い出したことですしここは甘えさせてもらいますか。
その時クエスト掲示板から聞きなれた声がしました。
「えー!ゴブリン退治ー?なんでそんなのが街の近くにわいてるのよ?そんな雑魚より、ここはドカンと稼げる大物にしない?
一日とはいえ他所にレンタルされるカズハに私達が日頃どれだけありがたい存在なのか見せつけないといけないの」
「そうですね、雑魚モンスターを一掃するのもいいですがここは我が魔法にふさわしい大物を討伐してあの薄情者に、お願いですからもう一度パーティーに入れてくださいと言わせやりましょう」
どうやらダストが選んだクエストが気に食わずアクアとめぐみんが難癖をつけているようでした。
「いやいや、あんたらが実力者なのはわかるが、俺の実力が追い付かねえよ。上級職が三人も揃っていたら魔王の幹部でも楽勝だろうけどよ。
まあ、今回ははじめてなんだし無難なとこで頼むよ。....なんだお前ら!なんで可哀想なものを見る目でこっちを見てくるんだよ!?」
今の会話を聞いてダストがあの三人のことをなにも知らないことに気づいたようで事情を知っている冒険者達はダストを哀れな犠牲者として見ているようですね。
あそこのプリーストなんかは、念仏みたいなのを唱え始めましたね。
「まあいい、どうせやっかみだろうぜ。そんなことよりもあんたなんで武器も鎧も持ってないんだ?」
「大丈夫だ、鎧などなくとも固さには自信がある。武器はどうせ当たらんしな」
「え?当たらないって....あれ、なんかおかしいぞ?もしかして、俺はめられた?」
ヤバイです、ダストが真実に気づきかけています。私はそれを見て立ち上がります。
「さあ、早くいきましょう!冬のこんな時期にゴブリンなんて狩りやすいモンスター早々出ないんですから!さあ!」
「なんでそんな急いでいるんだ?まあいい、そんなに言うのなら早速行くとしようか、新入り?」
テイラーは怪訝な顔をしながらも立ち上がり、私達はギルドを出発しました。
ゴブリン。ファンタジーでは定番のメジャーモンスターです。その性格は下劣で残忍、ほっておけば集団で人や家畜を襲ってきます。
個体で見れば雑魚ですが群れではけして侮っていはいけません。高くはないといえ知能を持ち、武器も使います。
なめてかかれば足を掬われます。駆け出し冒険者はゴブリン退治をして一人前と、冒険者の始めの関門ともされるモンスターです。
普通は森や山奥の洞窟など人の目が及びにくい場所にいるのですが何故かこのゴブリン達は人通りの多い山道に住み着いてしまったらしいです。
「しっかし、なんでこんなところに住み着いたのかな?まあ、お陰でゴブリン退治なんていう滅多にない美味しい仕事にありつけるわけだけどさ!」
山に向かう道中、リーンがそんなことを言います。
ゴブリン一匹につき二万エリス。ゴブリンが大したこともないモンスターというなら確かに美味しい仕事でしょう。
リーン達も慣れているようですし私は荷物を持って三人の後ろにかくれているだけでいいですね。
こんなに楽な仕事は始めかも知れません。いつもなら道中であの子達が揉め事か厄介事を起こして自分達から危機に陥ってましたからね。
本当にここの子になってしまいたいです。
と、そうこうしているうちに目的の山に着きます。緑も少ない荒涼した山で隠れるところも食料も少なそうです。
ゴブリンは隠れ棲みながら集落を襲うと聞いたのですが、なんでわざわざ自分達に不利な場所に?
というか道中ここまでなにもないとなるとなにかとんでもない落ちがあるのでは?そう、いつもなら....
「おいどうしたんだ、嬢ちゃん?」
「あっ、すみません」
キースの言葉でハッとなり足を早めます。まあ、あの子達じゃないんですから道中なにもないからと過度に疑心暗鬼になる必要もありませんね。
テイラーが地図を広げこの先の山道を指ししめします。
「件のゴブリンが目撃されたのが天辺からちょっと下ったこの場所だ。もしかしたら奴らの住みかになるような洞窟が近くにあるかもしれない。ここからは気を引き締めていくぞ」
全員が視線を合わせ、無言でうなずきます。
まともです。そうなんですよ、私が求めていた冒険者というのはこういうのなんですよ。
敵地のど真ん中に突っ込もうとしたりとにかく爆裂魔法を使ったりトラブルを起こしたりそんなのとは全然違います。
そしてしばらくして件の山道にたどつきました。
山道は険しい岩肌の間を這うように延びておりそれなりの広さがありますが、一方は壁のような岩肌が立ちはだかりもう一方は崖になっています。
やっぱりこんな、逃げ場のない場所にゴブリンが住み着いたのか疑問です。一応、用心のため、敵感知発動させておきましょうか。
やっぱりなんの反応もないですね、取り越し苦労のよう....うん?なんですこれ?私達に向かって凄い速さでなにか向かってきてます。
しかも一体だけで。どう考えてもゴブリンの斥候とかではないですよね。だとすると?
「あのう、向こうから凄い速さでなにか来てます。敵感知に反応がありました。ですけど一体だけなんですよね」
私の言葉に驚いたのか三人が振り向きます。
「嬢ちゃん敵感知なんて持っているのか?そういえば冒険者はどんなスキルでも習得できるんだったな。
それにしても一体だけだと?ゴブリンが一匹でうろつくなんてそうないはずだが。....まさか」
そう言ったキースの顔が青ざめます。
「リーン、最大火力の魔法を用意しておけ。おそらく初心者殺しだ」
「マ、マジ?」
リーンが声を震わせて聞き返します。なんでしょうか初心者殺しって、またずいぶんふざけた名前ですが。
「そもそも、季節外れの上ゴブリンがこんなところにいるのがおかしかったからな。奴がいるのなら説明がつく、もっと早くに気づくべきだった!」
「あのう、初心者ごろしってそんなにヤバイんですか?」
「ああ、今すぐ逃げ出したいくらいにな!こんな少ない茂みじゃすぐ見つかるし、逃げたところですぐ追い付かれる!嬢ちゃん、すまんが」
「隠れられますよ」
「「「は?」」」
覚悟を決めていた様子だった三人がすっとんきょうな声をあげます。
「いえ、私、潜伏スキル持っているので。あの程度の茂みだったら十分モンスターの目から逃れられます。このスキル私が触れていれば他の人間にも効果ありますし」
「本当か!助かった、すぐに隠れるぞ」
私達は大急ぎで茂みのなかにはいり縮こまります。
流石、場数を踏んできただけあって避けるべきところは避けるべきというのがキチンとわかっています。
自分達よりも強い相手に考えなしに突っ込んでいくなんて自殺行為ですからね。
なぜだか、うちのパーティはそんなのばかりでしたけど。アクアは実力差も考えずに相手を煽るし、ダクネスは言わずもがな。
めぐみんは的確に相手との実力差を判断できますがとにかく爆裂魔法を撃ち込もうとしますからね。
あの子、普通の魔法使えたらそれこそ引く手あまただと思うんですけどね。
「おい来たぞ」
キースが敵の襲来を告げます。私は息を潜めそれを見ます。
そこにいたのは真っ黒なサーベルタイガーのような猛獣、しかも虎やライオンよりもでかいです。
猛スピードで来たそいつは私達が先ほどまでいた場所で止まるとなにかをたしかめる様に周囲を嗅ぎ回り始めます。
それを見て私と手を繋ぐ三人の手に力が入ります。リーンやキース、テイラーでさえも必死に声を圧し殺しているのが伝わってきます。
しばらくすると諦めたのか、他の得物を見つけたのか、私達が来た方角の道へと消えていきました。
「....ぶはーっ!怖かったあっ!怖かったよお!初心者殺しだよっ!初心者殺し!」
リーンが涙目になりながら言ってきます。やはり余程危険な相手だったと見えます。
「寿命が縮むかと思ったぜ....。なるほどな、こんな時期にゴブリンが出るわけだ、あいつに住みかを追い出されたんだろうな」
「ああ、....しかし、厄介なことになったな。よりによって街の方に....街に帰る道はこの一本しかない 、どうしたものか」
キースとテイラーが深刻そうに呟きます。
「あれってそんなにヤバイんですか?」
私の疑問に対し三人は驚愕します。どうやら知っていてあたり前の知識のようですね。
「あれは初心者殺し。ゴブリンやコボルトなんていった駆け出しが好む弱いモンスターの近くをうろついてまだ弱い駆け出し冒険者を狩るんだ。
だから、初心者殺し。しかも狡猾なことに定期的に釣餌にしているモンスターの住みかを襲い、別の場所に追いやるんだ。自分の狩り場を変えるためにな」
怖っ!何ですかその食虫植物じみた生態は。しかし、このろくでもない世界ではモンスターですらそれくらい狡猾でなければ生き抜けないということかもしれません。
アクアにも見倣ってほしいところです。
「取り敢えず、ゴブリン退治を済ませよう。初心者殺しは普段、餌となるゴブリンたちを守っている。
討伐を済ませ、さっきみたい隠れていればゴブリン達の血を嗅ぎ付けてそっちにいってくれるかもしれん。
それに来るかもわからない初心者殺しをいつまでも待ってるわけにもいかんだろ?」
リーン達はテイラーのその言葉にうなずき茂みから出ます。私もそれに続き出ようとするとリーンが私が背負っていた荷物を手に取ります。
「カズハも身軽な方がいいでしょ。いつ初心者殺しが襲ってくるかわからないしね。その代わり潜伏と敵感知お願いね?」
リーンは自分の荷物を背負いながら言います。呼び捨てになったのは信頼の証ってことでしょうかね。
そんな私達を見てキースとテイラーも荷物を手に取り始めます。
「「べ、別に俺たちはカズハを頼りきってるわけじゃないからな?」」
これが世にも珍しい男のツンデレというやつですか。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
結局、初心者殺しとあれから出会うこともなく私達は無事にゴブリンが目撃されたという山道の下り道の付近までたどり着きました。
「どうだ、近くにゴブリンらしい反応はあるか?」
あります、あります。それも十や二十では利かない数の反応が。
「あります。....取り敢えず、初心者殺しらしい反応はないですね。ただ数がすごく多いです。数えきれないくらいです」
「じゃあそれがゴブリンだな。奴らは群れるからな」
キースは軽く言います。
「うーん、やっぱりすごく数が多いですよ。私モンスターに詳しいわけじゃないですけどゴブリンってこんな数で群れるものなんですか?」
流石にこの数だと手こずりそうなんですが、私はあまりの数に不安になります。
それを見ていたリーンにも不安が伝播したようでやる気十分のキースを止めようとします。
「ね、ねえ。カズハの言っていることも気になるしさ、一回偵察しよう?それで大丈夫そうならいこうよ、ね?」
しかし、キースは気にもとめないない様子で。
「大丈夫、大丈夫。たかがゴブリンが何匹いようたって平気さ。カズハにばっかいい格好させてたら男が廃るってもんだ!よし、行くぜ!」
そう言ってゴブリンが待ち構えているであろう、坂道の角へと突撃していきます。テイラーもその後ろに続き、そして同時に叫びました。
「「ちょっ!多っ!!」」
それを聞き、すぐさまリーンと二人で彼らのもとに駆けつけます。そこには無数のゴブリンが待ち構えていました。
小さな子供くらいの身長をした緑の小鬼たち。その多くが薄汚れた鉈や剣を持っています。そいつらはじっとこっちを見ています。
リーンはそれを見て顔を引きつらせながらさけびます。
「だからあたし、言ったじゃん!偵察しようって言ったじゃん!!」
テイラーはキースとリーンを庇いながらさけびます。
「普通、ゴブリンなんて多くても十匹くらいだろ!ちくしょう、このまま逃げたってさっきの初心者殺しと鉢合わせして、挟み撃ちにされる!こうなったらやるしかない!」
その言葉を聞きリーンとキースは覚悟を決めたようで悲壮な顔で攻撃の準備をします。
それを見ていたおそらくリーダー格のゴブリンが奇声をあげます。
「ギギャッ!キー、キーッ!」
それを聞きゴブリン達が一斉に襲い掛かってきます。ここは山道で片側は崖で逃げ場はありません。
唯一、私達に有利なのは坂の上に陣取っていたということだけ。
「痛えっ!ちくしょう、矢だ!おい、弓でこちらを狙ってるやつがいる!リーン、風の防御魔法あっただろ!」
「リーンならもう詠唱に入っている!だが、間に合わん、避けろ!」
矢が迫ってくるなか、テイラーが叫びます。それに対し私は、
「『ウインドブレス』ッ!」
初級魔法を叫んでいました。ゴブリン達の矢は魔法の風によって吹き散らされます。
これなら詠唱はいりませんからね。初弾しかふせげませんが時間さえ稼げれば―――
「ありがと、カズハ!『ウインドカーテン』!」
その、叫びとともに渦巻く風が吹き出し風の壁が出現しました。
ゴブリンたちは構わず矢を撃ち続けますが風の壁によって届くことはありません。
これですよ!これぞ本当の魔法ってやつですよ!めぐみんの魔法?ためて、ためて、最後の最後に撃つんならともかく、しょっぱなから所かまわず撃つ必殺魔法なんて魔法とは言いません!
私は感動しつつ、次の策を発動させます。
「坂道ならこの手に限ります!『クリエイト・ウォーター』ッ!」
私は初級水魔法で坂道を覆うほどの水を作り出します。
「何をやってるんだ、カズハ!?」
後ろで矢を構えていたキースが疑問の声をあげます。
「何って?こうするんですよ!『フリーズ』ッ!」
私は全力で魔力を注ぎ初級凍結魔法で先ほどぶちまけた水を凍らせます。
ゴブリン達の立っていた地面はあっという間に氷と化し、ゴブリン達は足が氷漬けにされ動けなくなったり、氷の上ですっ転んだりしています。
もはやこちらに来ることさえままならないでしょう、これで彼らはただの的です。
「テイラーさん、上ってこれないゴブリンは後ろの遠距離攻撃が得意な二人に任せて私たちはこれでも上ってくるゴブリンどもをやりましょう!」
私は腰の鞘から剣を引き抜きテイラーに叫びます。
「ああ、わかった!リーン、キース頼んだぞ!」
「わかった!しかし、よくやったなカズハ!これならいくらゴブリンがいようと楽勝だぜ!」
「いくよ!『ライトニング』ッ!」
何というまともな連携!これぞパーティー、これぞ仲間!ああ、この世界に来て初めてまともに冒険している気がします!私達はなぜか超ハイテンションでゴブリンたちを次々と屠っていきました。
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そうして,ゴブリン達をあらかた討伐した後。私達は山道を引き返し街へと帰ろうとしていました。
「とりあえず、今のところ初心者殺しらしき奴はいませんね、このまま出会わずに帰れるといいんですけども」
私は敵感知スキルでの偵察結果をみんなに伝えます。テイラーはそれを聞くと安心したようにうなずきました。
「そうか、じゃあ今のうちに先を急ごう。それにしても....くっくっカズハ、なんだあの魔法の使い方!見たことも聞いたこともないぞ!なんで初級魔法だけで一番活躍しているんだ!」
「ふっふっふ、どんなものも使い方次第ということですよ!」
私は胸を張り言います。趣味のゲームと小説書きのおかげで、こういう戦術を考えるのは大得意ですし、不本意ですが、あの子たちとパーティーを組んでいたおかげで鍛えられましたからね。
「ふふっ、なによそれー。あたし、魔法学院じゃあ取るだけ無駄スキルポイントの無駄だと教わったのに!」
「いえいえ、ゴブリン達を倒したのはリーンの魔法ですし、私は初級魔法しか使えないからああするしかないだけで」
「謙遜するなよ!ハハハ!こんなに楽なゴブリン退治は初めてだぜ!いや、あのゴブリンの大群を見て俺は終わったと思ったね!」
私達は街へと向かいながら互いに軽口をたたきあいます。そんな彼らを見て私は。
「あ、そうです。戦闘も終わったことですし、荷物ください。最弱職は荷物持ちが基本なんですよね?」
私はいたずらっぽく笑いそんなことを言います。
「ちょっ、悪かった、いや本当に悪かったカズハ。謝る、謝るよ!これからは冒険者だって見くびったりしねえ!」
「ご、ごめんねカズハ!てかなんで最弱職のはずの冒険者が一番活躍しているのさ!おかしいよ!」
「荷物なんていい、いやむしろよこせ!カズハがMVPなんだ、お前の荷物も俺が持ってやる!」
「クスクスっ、冗談ですよ、もう!」
慌てる三人に思わず笑ってしまいます。ああ、最弱職の冒険者が知恵と勇気で信頼できる仲間と敵を倒していく。これこそ、私が求めていた異世界転生ですよ!
「っっ...。いてて...」
テイラーが急に腕を押さえ顔をしかめます。どうやら先ほどの戦闘でささった矢が痛みだしたようで、テイラーは矢を引き抜きます。
「大丈夫ですか?辛いなら回復魔法をこの場で習得しますが?」
幸い、この前あの駄女神からようやく教わりましたからね。以前あんなに渋っていたのにお酒奢ると言ったらいとも簡単に教えてくれました。
あの駄女神の頭はどうなってるんでしょうかね?
「いや、毒が塗ってある可能性もあるからな、傷口は開いたままの方がいいが.....カ、カズハは回復魔法まで習得できるのか?」
「ええ、それが冒険者の数少ないメリットですから」
それを聞いていたリーンとキースがのどをごくりと鳴らします。
「回復魔法...それがあればもっと上位のクエストも...?」
「回復魔法を使える奴がいなかったこのパーティーについに...!おい、カズハがいればもしかしたら俺達、王都でもやっていけるんじゃね?」
二人が期待のまなざしでこちらを見てきます。いやー、それほどでもありますかね私も。
「止めておけ、カズハには帰る場所があるんだ、あの上級職ばかりのパーティーがな。...しかし、なんでカズハがあのパーティーでリーダーなんてやっているのかよく分かったよ」
テイラーはそんなことを言いながら笑いかけてきます。
私には自分があのパーティーでリーダーをやっている理由なんてわかりませんし、わかりたくもないのですが。
まあ、気にはなるので今度聞いておきましょう。
そうこうしてるうちに、山は終わり、街との間に広がる草原地帯に出ます。
もう、大丈夫そうですね、初心者殺しもあの一本道ならともかくこの広い草原地帯で早々私たちを...
「あれ、何かがすごい勢いでこっちに向かっていないか?」
さすがアーチャーのキース、その視力ですぐさまそれに気づいたようです。私も敵感知でそれに気づきます。
さっきのがフラグになっちゃいましたかね...。そう、夕暮れで金色に染まった草原をかける黒いそれは。
「初心者殺し!!」
私の叫び声を合図に一斉に私たちは駆け出しました。
「はあっ……、はあっ……! くそっ、最後の最後でこれか!」
「はあっ、はあっ……。や、やばいよー、追いつかれちゃうよー!」
リーンとキースが息も絶え絶えに叫びます。もうすぐ後ろにまで初心者殺しが迫っています。
街はまではまだまだ距離はあります、このままでは...。
その時、テイラーがこちらを振り向き、剣を構えながら言います。
「リーン!このままじゃ追いつかれる! お前はカズハを連れて街に逃げろ! 俺が足止め、キースは援護! 街に帰ったらギルドに駆け込んで、応援を呼んでくれ!」
「……っ! ああ、そうだな! ま、任せろ! カズハは他所のパーティの人間なのに、今日は一番頑張ってくれた! 今度は俺達が頑張る番だよな!」
「ちょっ!何勝手に...」
私が抗議の声を上げようとしたときリーンが私の手を引っ張ってきます。
「わ、分かった!行くよカズハ!」
なんですか、ここは任せて先に行けってやつですか、カッコいいじゃないですか!
ですけどね、一日限定とはいえ私はあなたたちのパーティーメンバーで、ここで人を見捨てられるほど非道じゃないんですよ!
私はテイラーに迫る初心者殺しを見据えリーンの手をほどき駆け出します。
そしてテイラーの後ろに隠れるようにして近づき、誰にも気づかれないくらいの声で唱えます。
「『クリエイト・アース』」
私の手にさらさらとした土が現れます。
「おい、カズハ!なにをしている!俺達が時間を稼いでる間に逃げろ!」
テイラーの援護をしようとしていたキースに気づかれたようでキースは私に大声で叫びます。
しかし、テイラーの方は初心者殺しに目を奪われ私が後ろにいることにまだ気づいていないようでした。
「おらあああっ!かかって来いよおお!この毛玉があああああ!」
初心者殺しを挑発し叫ぶテイラー。そして、それに怒ったのか、テイラーに飛び掛かってくる初心者殺し。
「『ウインド・ブレス』ッ!」
私はその初心者殺しに向け手のひらの土を魔法で飛ばします。
「ギャンッ!」
テイラーに飛び掛かろうとしていた初心者殺しはその後ろからの突然の砂粒の直撃を目に受け、目を開けられなくなった初心者殺しはそのまま地面に蹲ります。
しかし、目が見えないながらもまだこちらを威嚇してきます。
「フシャアアッ!!」
「ちょっ!えっ?ええっ!?」
何が起こったかわからず、混乱しているテイラーたちに叫びます。
「さあ、今のうちです!逃げますよ!」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
私達は街の近くまで全力で走りました。そして、初心者殺しが周りにいないことを確認するとようやく一息をつきました。
狡猾なモンスターだと言っていましたからね。町の近くまでは来ないんでしょうね。
「ま、撒いたか?」
「はあ.....はあ......。うん、撒いたみたい?」
リーンとキースが何度も後ろを確かめ息も絶え絶えに言います。
「....ふっ.....。ふふっ....。ふへへへっ....」
唐突にキースが変な笑い声をあげ始めます。大丈夫ですかね? 恐怖で頭が壊れちゃいましたかね?
ですが、そのキースの笑いにつられた様に。
「くっ.....くっ、くっくっくっ....!」
「あはっ....。あはははっ.....。あははははははっ!」
あの獣から逃げて来たことにいつの間にか皆が笑い始めていました。もちろん、私も。
「おい、何だよさっきのあれは!カズハは一体何をしたんだよ!ぶっはははは!」
テイラーが背中をバシバシ叩いてきます。男子高校生のからみですか、もう。
まあ、悪くはありません。私も上機嫌でテイラーの背中を叩き返します。
「初級魔法ですよ!初級魔法!さっきも言いましたが私、魔法なんてこれしか使えないんですからね!あっははははは!」
「お前本当に最弱職の冒険者か!?うひゃひゃひゃっ!は、腹がいてえ!生きてるよ、俺達初心者殺しに出会って生きているよ!」
「有り得ないよー! この子有り得ないよ、色々とー! 一体どんな知力してんのさ! ねえカズハ、冒険者カードちょっと見せてよ!」
私は言われるままにリーンにカードを差し出します。
「あ、あれっ? 知力は普通だね。他のステータスも....って、高っ!? この子、幸運、超高いっ!!」
リーンの言葉に、二人もどれどれとカードを覗きます。
「うおっ、なんじゃこりゃ!見たことねえぞ、こんな数値!」
「お、おい、今回こんなに都合良くクエストが上手くいったのは、カズハの幸運のおかげじゃねえか? おい、お前ら拝んどけ拝んどけ! ご利益があるかもしれねーぞ?」
いや絶対に違うと思いますけど。ルナさんも冒険者に幸運値はあまり必要ないって言ってましたし。
そもそも、本当に運が良ければ、初心者殺しにだって会わなかったはずです、もっと言えばまともなパーティーメンバーに会えていたはずです。
大体、日本にいた頃にしたって...止めましょう、昔のことなんて思いだしたっていや気持ちになるだけ.....って!
「何、本当に拝んでるんですか!?やめてください、いくら何でも恥ずかしいです!そうです!コーヒーでもどうです?水も火も用意できますよ」
私は急いで荷物からマグカップを取り出しました。
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私達がアクセルの町の中央、冒険者ギルドに着いた頃には、すっかり夜になっていました。
今日はクエストの達成の報告以外にも初心者殺しのことも報告しませんとね。
ですがテイラー曰く、ゴブリンの群れが全滅したので新しい釣り餌になるモンスターの群れを探して人里からは離れるとのことでした。
「つ、着いたああああっ!今日は、なんか大冒険した気分だよ!」 リーンの声を聞きながら、私達は笑いながらギルドのドアを開け------
「ぐずっ....。ふぐっ....、ひっ、ひぐう....っ。あっ....、ガ、ガズハあああああっ....」
私は泣きじゃくっているアクアを見てそっとドアを閉めました。
「さて、報告は明日にして今日は帰りましょう」
「おいっ!気持ちは心底よーく分かるが、ドアを閉めないでくれよっ!というかはめやがったなカズハ!」
閉めたドアを開け、ダストが半泣きで食い掛ってきます。
後ろを見るとアクアは半泣きでなぜか頭に歯形があるわ、めぐみんがダストに背負われているのはいつも通りとしてなぜかダクネスまで気絶してアクアに背負われています。
なんですかこの惨状は。
「何ですか、新リーダー。あなたが代わりたいと言い出したんでしょうに。ほら、あなたの言う通り優秀なパーティーでしたでしょう?」
「何処がだああ!いや待て俺が悪かった、だから出ていこうとしないで聞いてくれ!...あの後、まず各自がどんなスキルを使えるのか聞いたんだ。
で、この子が爆裂魔法を使えるって言うもんだから、そりゃすげーって褒めたんだよ。
そしたら、我が力を見せてやろうとか言い出してよ、全魔力を込めた爆裂魔法を、いきなり何も無い草原で意味もなくぶっ放して....」
「へえー、そうですか」
私は何の感情もこめず、適当に相槌を返します。簡単に想像できてしまううえ、この後の展開も読めてしまう自分が憎いです。
「まじめに聞けよ!そしたら初心者殺しだよ!爆発の轟音を聞きつけたのか初心者殺しが来たんだが、肝心の魔法使いはぶっ倒れてるわ、逃げようって言ってんのにクルセイダーは鎧も着けてないくせに突っ込んでいくわ、それで、挙句の果てに……」
「そうですか。では、私たちはこれから新パーティー結成記念の宴会を開くので。みんなー、初心者殺しの報告はあのゴミクズがやってくれたみたいなので」
「待て!俺が代わるといったのは一日だけだ!だから、元にもどろう、な、な!」
ダストは執拗に私を足止めしてきます。
「それは、あなたが勝手に言ったことでしょう私は代わりましょうとしか言ってません、では」
「じゃあね、ダスト」
「じゃあな、新パーティーでもがんばれよ」
「応援してるぞダスト」
テイラー、キース、リーンはとてもいい笑顔でダストに別れを告げました。
「待ってくれ! 謝るから! 土下座でも何でもするから、俺を元のパーティに帰してくれぇっ!」
本気で泣くダストに、私は心底同情すると。
「これから、新しいパーティで頑張ってください」
「俺が悪かったからっ!! 今朝の事は謝るから許してくださいっ!!」
「嫌です」
と私が笑顔で立ち去ろうとすると足が動きません、というか何かが引っ張っています。
「待って!カズハあああああ!お願いだから見捨てないでええええええ!よおおくカズハの大切さがわかったから!悪いところは改めるからああああ!」
「逃がしませんよ、カズハ!...私も、もう少し考えてから爆裂魔法を、撃つようにしますので、パーティーに残ってください!ここがなくなったら本当に行き場がないんです!」
アクアとめぐみんが足元で泣きついていました、というか意識のないはずのダクネスまで私の足に組み付いています、怖いです。
「ええい、うっとおしい!やめなさい!鼻水やら涙やらを服に付けないでください!抱き着かないでください!ああ、もう、わかりました!わかりましたから!明日から、明日からは元通りです!」
そう言うと二人は満面の笑みを浮かべました。それを見てなぜかテイラーたちも笑っています。
「はあ....」
自然とため息が出ます。どうやら私とこの子たちの縁はまだまだ切れそうにないみたいです。
カズハがなぜダストの正体に気づいたかは追々。
一応、ダストルートとか、御剣ルートがないことは明言しておきます。
というか書けないです。