この鬼畜姫に祝福を!   作:パイン村

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劇場版このすばの最後には三期の告知があると信じています。


第17話

「明日はダンジョンに行きます」

「嫌です」

「行きます」

「嫌です」

「嫌ですじゃないです!行くったらいくんです!」

 

 私がそう叫んだ瞬間、めぐみんは立ち上がり逃げ出そうとします。

 

「《スティール》、そもそもこのパーティー入るときになんでもしますと言いましたよね?さっさと戻らないとこのパンツをそこらの男どもに売り付けますよ」

「ああ!わかりました!わかりましたからパンツ返してください!」

 

 めぐみんは私の手に握られたパンツを見て降伏します。

全く、最初から素直にそうしてればよいものを。

私が斬首されて復活してから一週間が経ちました。

主治医(アクア)からも激しい運動が許可されたので稼げるクエストを探していたところ、テイラー達から先日の礼だと言われ、あるダンジョンでのもうけ話を紹介されたのでした。

それでいつも通りギルドでたむろっていた皆にダンジョン行きを提案したというわけです。

 

「相変わらず容赦がないな、カズハは。....私も実はダンジョンに潜るのは反対なのだが、冬将軍に剣を折られたことだしな!」

 

 ダクネスが大声で何故か嬉しそうに言います。いえ、何が目的かはわかっているんですけどね。

 

「...言っときますが貴女は端から戦力として見てないので。逃げてもスティールなんてかけませんよ」

「なっ」

 

 ダクネスは悲しそうにシュンとします。誰が好き好んで変態を喜ばせますか。

 

「行くのはいいですが私、ダンジョンでは役に立ちませんよ。ダンジョンで爆裂魔法を使ったら崩れますし。ただの一般人です」

 

 めぐみんの顔はやはりとても不満げです。爆裂魔法を撃てないのがよほどおきに召さないようですね。

 

「それわかってるならいい加減、他の魔法覚えてくれません?」

「嫌です!こればっかりは何をされても曲げません!」

 

 本当に強情ですね。私も今さら本気で言っているわけではないですが。

 

「まあ、いいです。それに安心してください、ダンジョンに入るのは私だけですから、めぐみん達には道中の警護をしてほしいんですよ」

「えっ?一人で行くんですか?」

 

 めぐみんが不安そうにこちらを見てきます。それを見ていたアクアが頬杖をつきながら私の方を見ます。

 

「この前のパーティー交換で活躍したからって調子に乗っているのかもしれないけれど、ダンジョン攻略には盗賊が必須よ。あの、クリスって子でも誘ってきなさいな」

「私も最初はそうしようとしましたよ。でもクリスが『ごめんね、ちょっとお世話になった先輩の尻拭い....いや、頼まれごとの後始末をしなくちゃいけなくて』って忙しそうだったので」

「なにそれ、ひどい先輩もいたのもね。私がその先輩にガツンといってあげようかしら」

 

 それはいいかもしれません。アクアみたいのに絡まれたらその先輩とやらもクリスに面倒ごとを押し付けないでしょう。

クリスをあんなに困らせるとは、きっとろくでもないクズに違いありませんしね。

 

「で、クリスには代わりにダンジョン探索に必要なスキルをあらかた教えてもらえました。それで思ったんですよ。

他のスキルと組み合わせれば安全に一人でダンジョン攻略できるんじゃないかなと。今回はその実験というわけです」

 

 どんなスキルでも覚えられるのは冒険者唯一の特権ですからね。

雪精退治やゴブリンのお陰でレベルも上がり、私は、ダンジョン攻略に必須の罠発見と罠解除のほかにこの前、キースに教えてもらったアーチャースキル《千里眼》も覚えました。

これは遠くのものが見えるだけでなく、暗闇でも周囲の様子が見れる暗視も可能になる優れもの。

さらには私には《敵感知》と《潜伏》があります。これを組み合わせればモンスターをやり過ごしながら、ダンジョンに隠されたお宝だけを得られるというわけです。

モンスター討伐したところで討伐依頼があるわけでもないですし、これからいくダンジョンでは金になるようなモンスターもいません。

だったらお宝だけ狙うのが合理的。

....なんだか、こそ泥みたいですが、多かれ少なかれダンジョン攻略なんて、盗掘みたいなものですしね。気にしたら敗けです。

 

「もちろん危なかったらすぐ逃げますし、今日は偵察と実験をするだけのお試し攻略です。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。では行きましょう!」

 

 皆は不安そうに私を見ながらも納得したようで、私の声にうなずきギルドから件のダンジョンに出発しました。

 

 

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アクセルから半日ほど歩いた先の山の中。山を貫く街道を逸れた森の中に隠されるように、そのダンジョンはありました。

山の岩肌に作られた煉瓦造りの神殿のような建物、そこから見える暗闇はどこまで続いてるのか窺い知ることはできません。

すぐ近くには、宿泊用の避難所と書かれたログハウスもあります。

 

「これが初心者御用達、キールダンジョンですか」

 

 昔、昔のお話です。この国には大魔術師と称されるキールという優秀な魔法使いがおりました。その名声は他国に届くほど。

 しかし、彼は魔法の研究のみに執心で世間に一切の興味を示しませんでした。

 そんな彼がある日、気まぐれに街に出かけると、偶然見かけた少女に恋をしました。彼のすべてを変えるほどの恋を。

 ですが、少女は貴族のご令嬢。いくら才ある魔法使いとはいえ平民の彼には身分違いの過ぎた恋でした。

当然、叶うはずもなくそれから間もなく貴族の令嬢はこの国の王に見初められ妃の一人として迎えらました。

 

 そんな恋をした大魔術師は研究一筋から一転、その魔法の才能を使いこの国のために尽くしたそうです。

東に邪悪なモンスターが現れれば魔法でこれを滅し、西で干魃が起これば魔法で湖を作り出し人々を救ったと言います。

人々から称えられた彼はついに王から直々に褒美を与えられることとなります。

そして、王はキールにどんな望みでも一つだけ叶えてやろう、そう言ったといいます。

彼は、王にこう返したと言います。この世にたった一つどうしても叶わなかった望みがあります。

それは―――

 

キールがその時、王に何を願ったのかというのは伝わっていません。ただ、彼は王との謁見の後、件の令嬢を攫い、このダンジョンに隠れ住んだのだそうです。

当然、王国軍による討伐が行われ大きな戦闘になったそうですが、キールがどうなったかはわかりません。

聞いた話によれば当時の王が外聞を恐れ箝口令を敷き、この話を徹底的に抹消したと言います。そのため今や断片的なお話が伝わるばかり。

まあ、普通に考えれば多勢に無勢、倒されちゃったのでしょう。

そして、主のいないダンジョンだけが残され、今では駆け出し冒険者の修練場となっているわけです。

ですから、お宝もとり尽くされなにも残っていないと思われていました。

しかし、テイラー達が偶然このダンジョンに隠された未踏達域を見つけたらしくこの前のゴブリンの礼だといって探索する権利を譲ってくれたのでした。

 

「しかし、いいですね。すべてを掛けてまで愛してくれる人にさらわれる。ロマンに溢れるじゃないですか」

 

 めぐみんがキールダンジョンの云われについてそんな感想をこぼします。

 

「ロマンチストですね、めぐみんは。私には愛で一生を棒に振った男の話にしか思えません。もしくはストーカーの誘拐事件」

「そういうカズハはロマンの欠片もないですね。いいですか、カズハ?紅魔族はロマンに生きロマンに死ぬ種族なのです!ロマンこそがすべて、ロマンがない生き方など死んでるも同然です!」

 

 流石、種族全員が中二病患者、生きざまが明後日の方向向いてます。

 

「そうですか。私は愛とか恋とかは嫌いなんですよー」

「ひねくれてますね。格好いいじゃないですか、お姫様を拐う悪の魔法使い」

「そっち?そっちなんです?」

 

 相変わらずめぐみんの感性はわかりません、女の子なら素直にお姫様の方に憧れましょうよ。

 

「私は浚われたお姫様に憧れるが」

 

 ダクネスが話を聞いていたのかボソッと呟きます。

 

「へえ、ダクネスもかわいいところ....」

「浚われた姫、逃げ場のないダンジョン。姫を我が物とせんと魔法使いは次々と凄まじい攻め苦を....!」

 

 ダクネスは顔を赤くし鼻息荒く言います。

そうですね、貴女はただの変態でした。

さて、気を取り直してダンジョンに向かいましょう。

 

「ねえねえ、めぐみん。カズハも好きでひねくれたわけじゃないの。あの子はね、昔手痛い失恋をしてね....」

「黙れ、駄女神!!余計なこと言ってると貴女を餌にジャイアントトード釣りをしますよ?余計なことは言わない、わかりましたか?」

 

 服従のスペルで黙らされたアクアは私が本気で怒っているのを感じ取ったのか、青い顔で頷きます。全くこの子はほっとくと余計なことしかしませんね。

「では、本当に行ってきますので。皆はそこのログハウスで待っててくださいね。

一応、偵察だけのつもりですし夜までには戻ってくるつもりですが、朝まで戻ってこなかったらテイラー達に助けを求めてください」

 

 そう言って私はダンジョンの暗闇の中に足を踏み入れました。

 

 

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 ダンジョンは洞窟を利用して作ったらしくじめじめとしていて地下水が漏れているのか壁が水で濡れていました。

私は入り口から続く階段をある程度降りるとギルドで買ったモンスター向けの消臭ポーションを体に振りかけます。

ダンジョンは暗闇に包まれているためそこにいるモンスターは視力以外で敵を察知する能力に長けている可能性が高いのです。

たとえば嗅覚とか。ほかには蛇のように熱に反応したりコウモリのように超音波で空間を把握したりという風に。

幸い、ギルドで聞いた限りこのダンジョンにいるのは臭いに敏感なのと夜目が利く奴だけらしいのでこのポーションと敵感知があればなんとかなるでしょう。

それに潜伏スキルは匂いを誤魔化す効果もありますからね、行ける、行けるはずです。もちろん、これから行くのは誰も行ったこともない未踏達域。

油断は大敵です。この前、あれほどの活躍を見せた私です。成功するはず。それに今回はあくまでも実験。

ヤバくなったらさっさと逃げましょう。

しかし、成功すればもっと格上のダンジョンに挑戦して稼ぎまくれるはず。

ふふっふ、借金返済どころか大金持ちも夢ではないかもしれません。

そうしたら引退してこの探索方法をカズハ式ダンジョン攻略方として売り出し特許でさらに大もうけ、フフフ。

と私が夢に浸っていると、誰もいないはずの後から足音がしました。

まさか、モンスター!?私は剣を引き抜き後ろを向くといきなり剣を向けられ驚く、アクアの姿が。

 

「ヒッ!どうしたのよ、カズハ!?私よ私、偉大で美しいアクア様よ!」

「....何してるんです。待ってるように言ったはずですけど?心配してくれるのはいいですが。貴女こんなに真っ暗だとなにも見えないでしょうに」

 

 しかし、アクアはそんな私の言葉を鼻で笑いました。....殴っていいですよね、これ?

 

「私を誰だと思っているのかしら。美しく可憐なアークプリーストとは仮の姿。ほら、言って、めぐみんもダクネスも信じようとしないけれど、ほら私の真の姿を言ってみて」

「....疫病神?」

「違うわよ!こんな素晴らしい女神に向かって何を言うのよ!水よ、水の女神に決まってるでしょう!」

 

 そういうのならトラブルを起こさないでほしいですし、言うことを聞いてほしいです。

 

「で何が言いたいんですか。貴女が女神なのと暗闇にどんな関係があるんですか」

「そうよ、女神様なのよ、私は。だから当然、神様らしい力も持っているの。私の目にはね、全てを見通す力があるの。

だからカズハが死んだときも死因だのなんだの色々知っていたでしょ?まあ、貴女のせいで地上に落とされて力のほとんどは失っちゃったけどね。それでも暗闇位は見通せるわ!」

 

 アクアは自慢げに胸を張り、辺りを物色し始めます。

確かに迷いなく動く様子から見てこの暗闇の中でもはっきりと見えているんでしょうが、はっきり言って迷惑です。

こういう自信満々の時のアクアは絶対になんかしらポカを起こすんです。何とかして帰ってもらいましょう。

しかし、アクアはそんな私の胸中を知らずにさらに自信満々に言います

 

「いい、カズハ?ダンジョンにはね、大抵アンデッドがいるものなの。そして彼らは生者の生命力を目印に襲ってくるわ。

つまり、アンデッド相手じゃお得意の潜伏も使えないってわけ!なら、調子に乗っている哀れなニート娘を助けるためにこの私がついて行ってあげるしかないじゃないの!」

 

さて、この疫病神をどうやって撒きましょうか。

 

 

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 長く深く続くダンジョンをしばらく探索し、ようやく目的の場所に出ます。

 

「えーと、テイラーからもらった地図によると...ここですね」

 

 私は地図に書かれたメモに従い壁の近くにおいてある鷹の石像の左目をつきます。

すると目は奥へと沈み込み、それと連動するように目の前の壁が割れ隠された通路が現れます。

 

「ここから先が未知の領域ね。お宝ザクザクじゃない?」

 

 チッ、撒けませんでしたか。暗闇を利用して上手く撒こうとしたのですが。思った以上にアクアはこの暗闇を見通せるようですね。

もしかしたら昼間と変わらないくらい見えてるのではないでしょうか。

 

「そうじゃないと困りますよ。一攫千金でも狙わないと一生借金生活です。この世界には自己破産なんて優しい制度はありませんしね」

 

 そんなことを言いながら、奥へと続く階段を降りていきます。

...どれほど降りたことでしょうか、あくまで感覚ですがもう三十メートル近くは降りてる気がします。

未踏領域とはいえ初心者向けダンジョンなんてそこまで広くないだろうと高をくくっていましたが予想外に広そうです。

今回はあくまで実験と偵察を兼ねたお試しです。いざとなったら一目散に逃げましょう。今更怖くなどなっていません、いませんてば!

 

「ねえ、カズハ?あ、暗視はちゃんとできているかしら?

私の曇りなき眼には貴女がおどおどしながらおっかなびっくりに降りていく姿がばっちり見えているけど。

も、もし暗視がいまいちならこの私が導いてあげるわ」

 

 この子は心配しているのか、喧嘩売っているのかどっちなんですか。

 

「バ、バッチリ見えていますとも。貴女が物音がする度にビクついている情けない姿がね!

頼みますから転んだりしないでくださいよ、私まで巻き込まれそうです」

 

「そう、それはよかったわね。ちなみに私はこの中でも走って逃げられるほどには見えているから。モンスターが近づいてきたら言ってね。最悪、カズハを置いてでも逃げるから」

「いやー、奇遇ですね。私も貴女をどうやってダンジョンの奥深くに置いてけぼりにできるか考えていたところです」

 

 私とアクアはお互いの言葉を聞いて真顔で向かい合います。そして、お互いに嘘くさい笑みを浮かべます。

 

「やだもー、カズハたら冗談ばっかりー!クスクス!」

「ははは、何言ってるんですかアクアー?もう結構長い付き合いになるんですから、私が普通にそういうことをする人間だってわかっているでしょう?」

 

 私達はお互いに再び向き合って真顔にになります。

 

「キシャアアアア!!」

「「ヒッ!」」

 

 ダンジョンの奥深くから聞こえて来たモンスターの鳴き声にびっくりし私とアクアは叫び声をあげ抱き着きます。

 

「ア、アクア。ここは仲間同士裏切らず協力し合いましょう?一人で逃げるなんてことはしませんから」

「そ、そうね!仲間だものね。もちろん私も一人で逃げるなんてマネしないわ!」

 

 そうやって仲間同士の絆を深め合っているとようやく階段が終わり通路が見えてきます。

 

「左右に分かれてますね。どっちに行きましょうか...。うん?何ですこれ?」

 

 私は壁際にある何かに視線をやります。暗視のスキルもはっきりと見えるわけではありません。

暗闇の中で物体の輪郭がおぼろげに見える程度、はっきりとモノを見ようと思えば近づくしかありません。

私はその物体に近づきます、そう、それはまるで朽ち果てた死体のようで......

 

「きゃあああああああああ!」

 

それはまさしく朽ち果てた死体でした。鎧などの装備をつけていることから冒険者だったのでしょう。

 

「ここまでたどり着いた人がほかにもいたんですね...。私のように一人で挑もうとしたのか、仲間に置き去りされたのか、どちらにしても哀れなことですね」

「そうね、こんなところに居たら成仏もできないでしょうね...。ちょっと待ってねカズハ。うん、やっぱりアンデッドになりかけてるわね」

 

死体に駆け寄ったアクアはそうつぶやき、その亡骸に手をかざします。そして亡骸が淡い光に包まれます。

 

「志半ばで息絶えた迷える魂よ、さあ安らかに眠りなさい。...これで大丈夫よ」

 

 アクアが祈りの様なものを唱え終わると、光はフッと消えてしまいました。きっと無事に成仏できたということなのでしょう。

日頃からこうならもう少し女神様として扱ってあげてもいいと思うんですけどね。しかし、いきなり死体とか心が折れそうになります。

...悔しいですが、アクアがいなければもう帰ることを決意していたでしょう。

 

「...アクア、ついてきてくれて...」

「それにしてもきゃああああって!カズハでもあんな声出すのね!一人でダンジョンに潜るって粋がってたくせに!プークスクス!」

 

 置いていく!絶対にダンジョンの奥底に置き去りにしてやる!

私がアクアを置き去りにすることを決意していると敵感知でこちらに何かが向かっていることに気づきます。

もしかすると、さっきの浄化の光か、私たちの話し声に反応したのかもしれません。ここは用心して声は出さない方がいいでしょう。

そう考えた私はアクアに敵が向かってくる方を指さし、そしてその反対方向を親指で指し逃げるようにジェスチャーします。

 

「なになに?変な動きして、もしかしてこの私に指芸披露?ちょっと灯り付けなさいな。陰で狐や兎なんてぬるいもんじゃなく機動要塞デストロイヤーを披露してあげるわっ!」

「違います!逃げましょうっていうジェスチャーです!というかデストロイヤーってなんなんですか!...って、声出しちゃったじゃないですか!ああっ敵が!仕方ありません、迎え撃ちますよ!」

 

 クソ、いつもの癖で大声で突っ込んでしまった自分が恨めしいです。私はなんとか腰から抜いた剣で暗闇から襲い掛かってきた敵を切り捨てます。

 

「ハアハア...な、何だったんですか、こいつは?暗視じゃ形くらいしかわかりませんし...。アクアはこれの正体わかります?」

 

 アクアはそれを聞くと足元に転がるモンスターの死体を見るとつぶやきます。

 

「グレムリンっていう下級悪魔ね。ダンジョンは地上よりも魔力が濃いから弱い悪魔がたまにわくのよ」

「本当、よく見えますね。私には人型ってことしかわかりません。確かにグレムリンっていうのはギルドからもらった事前情報にありましたね」

 

 その時、私はあることに気づきます。

 

「ねえ、ねえ、アクア?もしかしてあなたっていつでも暗闇がはっきり見えちゃいます?」

「そうだけど。いつでもどこでも昼間と変わらないくらいには見えているわ」

 

 ということは馬小屋のときも?...私も普通の人間です。女の子とは言え、少しは性欲だってたまります。ですから時折はそういうことをして慰めていたわけで...。

 

「馬小屋で一緒に寝ている時、何か見ました?」

「大丈夫よ。何か物音がし始めたら反対側向いて耳塞いでてあげたから」

「あ、ありがとうございます、アクア様」

 

 ...今度から、そういうことするときは、もう少し気を付けましょう。

 そうですね、丁度いいので前から聞きたかったことも聞いておきましょう。幸いなことに私たち以外ここには誰もいませんしね。

 

「そういえば、女神の時はすべてを見通せたとかのたまわっていましたが、それで私の人生も見通したのですか?初めて出会った時ボロクソに言ってくれましたが」

「そうよ、でもあんたのニート人生なんて興味ないから適当にしか見てないけどね。

...なに?もしかしてトラウマの失恋ことどれだけ知られてるか心配してるの?安心なさいな、本当に適当にしか見てないから」

「そうですか、何であなたが死後の案内人だったのか疑問ですよ」

「何を言っているの?優秀だったからに決まっているじゃない!」

「......」

 

 この様子だと本当に適当に見てたようですね。なんとなく今までの話しぶりからわかってはいましたが、あのことには気づいてもいないようです。

それならよかった。それはそれとして、その程度の理解で砂場感覚でトラウマをほじくり返してくれたこの駄女神には怒りを感じますが、今はぐっと抑えましょう。

 

「いつまでもここにいると血の匂いでほかのモンスターがやってくるかもしれません。早く行くとしましょう」

 

 そう言ってアクアを連れ私は更にダンジョンの奥深くへと歩を進めました。

 

 

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「しかし、碌なものがないですね」

 

 私達は先ほどの通路から少し先にあった小部屋を物色していました。するとチョークで帰る時のための目印を付けていたアクアがこちらを見て言います。

 

「カズハ、この探索方法といいそのセリフといい、コソ泥みたいなんですけど」

「言わないでくださいよ...私もちょっとそう思っていましたけど」

 本来ならダンジョン探索はモンスターに神経をとがらせ罠を警戒し恐る恐る進みながらマッピングしていくものなのでしょうが、暗闇でも問題なく見える私たちは先頭の私が敵を感知できるためどんどん奥へと進むことができています。

 まじめにやってる人たちから見れば邪道もいいところ、それだけこの探索方法が有用ということでもありますが。

この探索方法の実用性も証明できましたし、一回地上に戻ってもいいんですがどうせならお宝とまでは言いませんが、金目のものを見つけめぐみんやダクネスに自慢したいです。

 

「...?ねえ、カズハ。あそこになにかあるわよ」

 

 私が考え事をしているとアクアが何かを見つけた様です。私はアクアと一緒に部屋の隅に行くとそこにはいかにもな宝箱が置いてありました。

 

「ちょっと、宝よ、宝箱よ!やったわねカズハ、これで借金返済よ!」

「待ちなさいアクア!いくらなんでも怪しすぎます、まずはスキルで調べましょう」

 

 そう言って私は逸るアクアを止め宝箱にスキルを使います。やはり目の前の宝箱から反応があります。

しかも罠ではなく敵感知の方に。これはあれです、ミミックという奴ですね。

 

「やっぱり、これモンスターですよ。見ててください。...ぽーいっと」

 

 私はダンジョンに入る時に使った消臭ポーションの空瓶を宝箱に向かって投げつけます。きっと宝箱が開き瓶を捕食するはず。

しかし、瓶が床に落ちても宝箱は動きません。動いたのはその周りの壁や床でした。

突如として宝箱の周りの壁がうごめき宝箱ごと瓶を咀嚼するように動き、しばらくすると吐き出すようにこちらに瓶を飛ばしてきました。

 

「な、何ですかこれ!キモイです、怖いです!」

「あれはダンジョンもどきよ...。体をダンジョンに擬態させ、その体の一部を使って宝箱やお金の様な冒険者を釣る疑似餌を作るの。

場合によってはモンスターを釣るために人間の疑似餌を作ることもあるわ」

「モンスターまで!?タチ悪いですねっ!」

 

 そういえば、テイラーもダンジョンに行くならダンジョンもどきに気をつけろと言っていましたね。敵感知があれば大丈夫と言っていましたが...。

ダンジョンでもこうやって生存競争が成り立っているんですね。本当にこの世界は世知辛いです。

 

 

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「この暗く冷たいダンジョンでさまよえる魂よ、さあ安らかに眠りなさい。『ターンアンデッド』ッ!」

 

 今日のアクアは一味違います。迷える魂を次々と導くその姿は貧乏神でも疫病神でもない、正真正銘の女神様です。

しかし、はっきり言って、私はダンジョンをなめていましたね。アンデッドはよほど生者の生命エネルギーを欲しているらしくかなりの数に襲われていました。

アクアがいなければ私も彼らの仲間入りをしていたことでしょう。

 

「助かりましたアクア、私一人で来ていたら危なかったですよ」

 

 あらかたアンデットを浄化し終えたアクアは一息つき、私の言葉にまんざらでもなさそうな笑顔を見せます。

 

「あら、ようやくカズハも私の実力がわかってきたようね。崇めてもいいのよ、奉ってもいいのよ!」

 

 すぐに調子に乗らなければ崇めてあげる気にもなるんですけど。本当にこの子は残念駄女神です。

しかし、かなりの数のアンデッドを倒しましたね。下手をすると五十近くは...いくら何でもおかしいですね。

これだけの数のアンデッドが沸くようなダンジョン、アークプリーストがいなければ攻略できないはずなのですが。

しかし、ここは駆け出し用のはず、いくら未踏領域とは言えここまでの数は異常です。

 

「アクア、さすがにこの数おかしく...」

「待って、まだアンデッドの匂いがするわ。しかもこの臭い、ただのアンデッドじゃないわ」

「えー?私の敵感知には何の反応もないですけど、そんなことよりもこのアンデッドの数...」

「いえ、絶対にいるわ!私の鼻がそう言っているの!」

 

 ...今日のアクアは絶好調ですし、本当に何かあるのかもしれません。しばらくほっておくとしましょう。

アクアは行き止まりになっている壁に近づくと猫か犬のように周りを執拗に嗅ぎ始めます。

そうして私とアクアが行き止まりの壁をしばらく調べるも何も見つかりません。アクアも怪訝な顔をしながらもあきらめたようで壁にもたれながらこちらを向きます。

 

「おっかしいわね、絶対にいるはずなんだけど」

 

 その時です、突如アクアの後ろの壁が消えそのままアクアがすっ転びます。

 

「うぎゃっ」

「大丈夫ですか、アクア?」

 

 私はそう聞きながら隠し部屋を慎重に覗きます。どうやら、アクアが開いたのではなく向こう側から開かれたようで奥には何者かが待ち構えていました。

それはくぐもった声で言います。

 

「そこにプリーストがいるのか?」

と。

 

 私は剣を構えながら持っていたランプに火をつけ部屋を照らします。椅子に座っていたそいつは目深にローブを被った干からびた皮膚が張り付いた骸骨でした。  

 

「ヒッ!しゃべるアンデッド!?まさかリッチー!?」

 

 不死王(リッチー)。アンデッドの最上位種。戦えば私なんてひとたまりもありません。

 

「あ、アクア寝てないで早く立ってください!」

「ま、待ってよ。今起き上がるから」

 

 そんな様子を見てリッチーが言います。

 

「落ち着き給え、お嬢さん方。危害を加えるつもりはない。自己紹介がまだだったね。私はキール。君が言った通り、リッチーで、このダンジョンを造り、貴族の令嬢を攫った悪い魔法使いさ」

 

 

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 昔、昔のお話。かつて国一のアークウィザードとうたわれたキールという魔法使いがおりました。

彼は偶然見かけた貴族の令嬢に恋をします。彼のすべてを変えるほどの恋を。

しかし、キールはその恋が叶わないことがわかっていました。すでに、彼女が王の側室になる事が決まっていたからです。

キールはそれからというもの魔法の研鑽を積み、人々のためにその力を使いました。

そして、人々にたたえられたキールは王城に招かれます。そして王より望みを一つだけ叶えようと言われました。

キールはこういいました、この世にたった一つどうしても叶わなかった望みがあります。

それは虐げられている、愛する人が幸せになってくれること―――

 

「そう言って私は彼女を攫ったのだよ!彼女はな、親に王の御機嫌取りに嫁がされてな。

しかし、王からも可愛がられず、他の妃からもいびられていてな、だったらいらないのだったら私にくれと、王に願ったのだが、激怒されてしまってな。

仕方ないのでその場で攫ってしまったわけだ」

 

キールはそんなことを楽し気に懐かしむように言います。

 

「えーと、するとあなたは虐げられてた令嬢を助けた、いい魔法使いだったってことですか?」

「そいうことだな。で、攫ったお嬢様にプロポーズしたら二つ返事でオッケーもらってなぁ。お嬢様と愛の逃避行をしながら王国とドンパーティーをして、最終的にここに二人の愛の巣を築いたわけだ。いやあ、あれは楽しかったなあ」

 

 キールはのどをカタカタを震わせながら笑います。いや、ダンジョンを愛の巣って。

 

「とにかく、こじらせたストーカーの誘拐事件じゃなかったんですね」

「結構辛辣だね君。もうちょっと素直に生きた方がいいぞ。あっ、ちなみにあそこで眠っているお方が件のお嬢様だよ。どうだ、鎖骨のラインが美しいだろう」

 

 キールがさす方向を見ると確かにドレスを着た骸骨がベットに横たわっています。これが件のお嬢様なのでしょう。

しかし、鎖骨が美しいとか言われてもどう返せばいいんでしょう。私、死体性愛(ネクロフィリア)とか高度すぎて理解できないんですが。

というか、どうしたもんでしょう、これ。横にいるアクアは私が抑えてないと今すぐにも回復魔法ぶっ放してキールを浄化しそうですし。

 

「で、だ。そこの彼女に頼みがあってね。」

「はあ、頼みですか」

 

キールは私の言葉に静かに頷きます。

「私を浄化してはくれないだろうか。彼女はそれができるほどの力を持ったプリーストだろう?」

 

 

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「お嬢様の方は安らかに成仏してるわね。」

 

 そう言いながらアクアは浄化のためにチョークで魔法陣を描いています。

キールはお嬢様を守り王国軍と戦うなか重傷を負い、彼女を守り抜くため禁呪を使いリッチーとなったそうです。

不覚です、ちょっとカッコいいとか思ってしまいました。ウィズお姉ちゃんのせいかキールにはあまり悪い感情抱けないんですよね。

キールは国を相手取り、世界を飛び回り逃避行を繰り広げたそうですが最後は愛の巣こと、このダンジョンに腰を落ち着け、お嬢様が最後の時を迎えるまで仲睦まじく暮らしたそうです。

しかし、キールは一つだけ気がかりなことがあったといいます。それはお嬢様は本当に幸せだったのかどうか。

お嬢様を不遇な境遇から救ったのは確かですがお嬢様に不自由な逃走生活を強いて、結局新たな監獄に閉じ込めてしまったのではないか。

彼女はいつも笑っていてくれたけれどそれは本当に心からの笑みだったのだろうかと。

 

「そんなこと私に聞かれても。でも、少なくともあなたは幸せだったんでしょう?だったら今はそれでいいじゃないんです。

お嬢様が幸せだったかどうかは向こうか来世ででも聞けばいいんですよ」

「ありがとう、キミは優しい子だね」

 

 そう言ってキールは微笑みました。...別にやさしくなんてないです、適当なこと言ってるだけですよ。

 

「できたわよ、二人とも」

「なんか、すごく凝った魔法陣ですね。というか、ウィズお姉ちゃんとかベルディアの時はこんな凝ったことしてなかったですよね」

「今回は、自ら望んでの浄化だからね。あんな不心得者たちとは違ってちゃんと送り出してあげようと思ってね。本気も本気の魔法陣よ、これがある限りあらゆる邪悪な存在はここに立ち入れないわ」

 

 アンデットと見れば構わず浄化すると思っていましたが悔い改めるのなら罪を許す度量くらいは持ってるのですねこの駄女神。

 

「いや、助かるよ。アンデッドが自殺なんてシュールなことはできないからね。それでじっとここで朽ち果てるまで待っていたらとてつもない神聖な力を感じて思わず私も長い眠りから覚めたってものさ」

 

キールはそう言って笑います。

 準備が整ったアクアは噛みしめるようゆっくりと呪文を唱え始めます。そして魔法陣が光り輝き部屋全体が清浄な光に包まれます。

そして、詠唱を終えると今まで見たこともない優しげな顔でキールに微笑みかけます。

...誰ですこれ。え、これアクア?いつも腹出していびきかいて寝ているあの駄女神?

 私が目を疑っているとアクアはその顔に似つかわしい優しげな声でキールに話しかけます。

 

「神の理を捨て自らリッチーとなったアークウィザード、キール。水の女神アクアの名においてあなたの罪を許します。

...目が覚めるとあなたの目の前には幸運の女神エリスがいることでしょう。不自然に胸が膨らんでるけど気にしないであげてね。

...もしどんな形であれお嬢様と再会したいというのなら彼女に頼みなさい。きっと彼女ならその願いを叶えてくれるでしょう」

 

 本当に誰でしょうこれ?というか、初めて会った時もこういう対応をしてくれたら私も怒らなかったのですけれど。

そんなことを考えているとキールは深々とアクアに頭を下げます。

 

「我が罪、我が業をお許しくださり感謝します。...妻よ今、逝く」

 

 それを聞いたアクアはまるで赤子を見る母親のように心底嬉しそうにやさしく微笑み最後の呪文を唱えます。

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』」

 

 強い光が部屋を包み込みしばらくすると部屋は元通りの暗闇に閉ざされます。

キールが座っていた椅子を見るとそこにはもう何もありません、なぜかお嬢様の遺体も。

私はそれを見て小さく笑うとアクアに言います。

 

「それじゃあ帰りますか」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「しかし、いい人でしたねあのリッチー。もう使うこともないからって私達に隠していた財宝をくれるなんて、これで借金が返済できるといいんですが」

 

 私たちはキールから譲り受けた財宝を持ち、地上へと向かっていました。

 

「そうね、彼らの分までしっかりと使ってあげましょう」

 

 アクアはあのリッチーに何か思うところがあったのかどこか物憂げな顔です。

 

「あの人また奥さんに会えますかね」

「どうかしらね。でも、きっとエリスなら何とかしてくれるわ」

「ふーん、そうですか」

 

 なんだか会話が続きません。全くいつでも明るいのがアクアでしょうに。

私はこの空気に耐えられなくなり、地上に出るまで胸に秘めておこうと思っていた疑問をつい口に出してしまいます。

 

「ねえ、アクア?」

「なに...?」

 

 

 いまだにちょっと気分が沈んでいるのかどこか気のない返事のアクアに私は問います。

 

「あの人言ってましたよね、神聖な力を感じて眠りから覚めたとか。もしかしてなんですけど、このダンジョンでやたらとアンデッドに会うのって貴女に引き付けられてるからなんじゃないです?」

「ッ!?」

 

 それまで沈んでいたアクアはその問いに表情をこわばらせ動きを止めます。そして絞りだすような声で言います。

 

「そ、そそそ、そんなことはない...と、思うわ......?」

 

 なんですかそのとてつもなくあいまいな返事は。

 

「...そういえばデュラハンのベルディアが襲撃してきたときも部下のアンデッドナイトにたかられていましたね。つまりはそういうことですよね?」

「!?」

 アクアはびくりと肩を震わせます。私はアクアから離れ今すぐ逃げ出そうとします。

そんな私に気づいたアクアは私の手を握ってきます。

 

「何をしているのかしらカズハ?私たち仲間でしょう、いつモンスターが襲ってきてもいいように少しでも近くにいるべきではないかしら!?」

 

 そんなアクアの手を振りほどき言います。

 

「私は有言実行の女。というわけで置いていきます、さらばですアクア」

「いいのかしら!私を置いていったらアンデッドを倒せないのよ?それにカズハの貧弱な暗視で果たして私のつけてきた目印が見えるのかしらね!?」

 

 アクアのその言葉に私は足を止めてしまいます。

くっ、確かにその通りです、帰るためのルートも分からないうえアンデッドを迎え撃つ戦力がないとなると帰還は困難です。

その反応を見て反撃の好機と見たのかアクアは早口でまくしたててきます。

「ふふっ、私の大切さがわかったようね。これで立場は五分五分、いえ、帰り道を知り、アンデッドを倒せる戦力である私の方が格段に立場は上じゃないかしら!

そこら辺をよく理解したなら、今後は私のことをしっかりと崇め奉りなさい、もちろん名前は様付けね、そして街に帰ったらこの私の武勇伝を...!」

 

 しかし、私はすでにそんなアクアの声を聴いていませんでした。

なぜならダンジョンの奥からアクアのわめく声につられたであろう大量のモンスターたちがこちらに向かってきているのを敵感知で感じていたからです。

 

「そうですか、そんなにすごいアクアなら一人でも大丈夫ですね。じゃあ、そういうことで、≪潜伏≫」

 

 私はそう言ってスキルを発動し、ダンジョンの闇の中に紛れました。私の姿を見失ったアクアはモンスターたちの接近に気づいたようで泣きながら私の名前を叫びます。

 

「カズハ!!なにちょっと一人で潜伏なんてしてるのよ!冗談でしょ?冗談よね!?

ご、ごめんなさいカズハ、調子乗ったのは謝るから私にも潜伏スキル使ってよね!ごめんなさい、カズハ様ああああ!!」

 

 

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「なんとなく何があったかわかりますが、何があったのか聞いてもいいですか?」

 

 地上で待っていためぐみんがあきれ顔で開口一番にそんなことを聞いてきます。

 

「カズハがああああああ!また、カズハがぁいじめたあああ!!」

 

 ダクネスは私の後ろで泣きわめいているアクアをあやしています。

 

「私、悪くありません。アクアのアンデッドを集める体質が悪いんです。そのせいで散々苦労させられたんですから」

「何よ!私が神々しくて生命力にあふれているのは生まれつきなんだから仕方ないじゃないの!!それとも何!?私にカズハのようなヒキニートレベルまで神聖なオーラを下げろっていうの!?そんなことをししたら、世界に散らばる敬虔なアクシズ教徒がどれだけ嘆き悲しむか!!」

「やっぱり貴女、反省していないですね!!そうです、もう一回ダンジョン潜ってあのリッチーとお嬢様の爪の垢でも探して来たらどうです!

それを煎じて飲めばあなたも少しはまともになるでしょうよ!!」

「何よ!女神にリッチーを見習えとでも!ふざけてるのこのニート娘!」

「何ですかやる気ですか、いいですよ相手になってやりますよ!」

 

 いつものようにつかみ合いの喧嘩に突入しようとしているとダクネスが止めに入ってきます。

 

「いい加減にしないか二人とも...というかリッチーとお嬢様というのは何のことだ?」

 

 そう言ってダクネスが首をかしげるので私はアクアと死闘を繰り広げながらかいつまんで説明します。

 

「なるほどそんなことがあったのか」

「ええ、そんなことがあったのです。...ハアハア、思った以上にやるじゃないですかアクア」

「あ、当たり前よ、私を誰だと思っているの?私のステータスは一部を除きカズハよりはるかに高いのよ。そういうカズハこそ、小ズルい手でよく抵抗したわね」

「二人は一体何をやっているのですか...」

 

 正直私が聞きたいです。なぜに私たちは仲間同士で争っているのか。主にアクアのせいだと思いますが。

 

「しかし、初心者ダンジョンにそんな大物が眠っていたとは驚きです。私も一緒にいれば不死王殺しの異名が名乗れたのに、残念です」

「はいはい、ほかのクエストで頑張りましょうね。そう言えば、あのリッチー。お嬢さまを幸せにできたかと悔やんでましたね。

お嬢様は未練なく成仏していたらしいですけど。実際、逃亡生活をどう感じていたのでしょうかね」

 

 そんな私のつぶやきに。

 

「幸せにだったに決まっている。お嬢様はその逃亡生活が人生で一番楽しかったに決まっている」

 

 ダクネスはお嬢様に思うところでもあったのか、さみし気な笑顔でそんなことを言います。

 

「そうですか、そうだと」

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

 私の声はめぐみんのその詠唱によってかき消されます。

そして、その瞬間、山に巨大な閃光が現れ山の一部を消し飛ばしました。

 

「なんで今撃った!?今、しんみりとした雰囲気だったじゃないですか!」

「だって、ここで爆裂魔法撃っておかないと今日は撃つ機会無さそうでしたし。こんな街から離れた、絶好の爆裂スポットを逃す私ではないのです!」

 

 めぐみんはとびっきりの笑顔で言います。

だめだ、この子、本当に爆裂魔法のことしか頭にないんですね。

折角いい話で終われそうだったのに、爆裂オチとか最低です!

 




原作でも一日一回は爆裂魔法を撃たないと死ぬらしいめぐみんはどこかで撃ったのでしょうか。
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