この鬼畜姫に祝福を!   作:パイン村

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投降が遅れてしまい申し訳ありません。
某スマホゲームのメインストーリー攻略にいそしんでおりました、ごめんなさい。
その代わりといっては何ですが今回は二話連続投降です。
長くなりすぎたため分割しただけですが。


第19話

「カズハぁー。もう疲れたんだけど。もう、横になっていいかしら?」

 

アクアが大広間の暖炉の前でアホなことをいい始めます。

 

「なにいってるんですか!まだ、屋敷の掃除は全然終わっていないんですよ!」

 

 ついに私達は拠点を手に入れました。しかもお屋敷ですよ、お屋敷。

この世界に来てから不幸続きでしたがようやく運が向いてきたのかもしれません。

とにもかくにもこれで最大の懸念であった冬越えの問題が解決されたわけです。

お金もキールの財宝のお陰である程度は余裕が出ました。借金返済とはいかなかったのは残念ですが。

 という訳で、私達は引っ越しに伴うお屋敷の大掃除をしていました。

ずっと放置されていたお屋敷はどこもほこりだらけの上、荷物は散らかりぱっなし。家具つきというのは嬉しいですがこれではまともに生活できません。

 

「さあ、だらけてないで働くんです!見なさいめぐみんとダクネスを、二人とも文句も言わずもくもく....と....?あれ、二人はどこです?」

 

 大広間でいらない荷物をまとめていたはずの二人の姿がありません。まさか、あの二人....。

 

「めぐみんなら魔法の修行とか言ってどこかに出かけたわ。ダクネスはさっき引っ越し祝いに来た、クリスがあまりにもやつれていたからご飯食べさせてくるって二人とも帰りは遅くなるって」

 

 あいつら!というか、めぐみんの魔法の修行ってなんですか!あの子爆裂魔法しか撃てないんだから修行もなにもないでしょう!

一人で撃っても帰れないですし。

ダクネスのは情状酌量の余地はありますが、なんにしても二人までこれだと急激にやる気が失せてきました。私はもっていた、塵取りとほうきを投げ出します。

 

「あー、あほらしいです。もう、メイドさんとか雇って掃除してもらいたいです。大体、この屋敷広すぎです、めんどくさーいです」

「本音が出たわねカズハ。そうよ、楽な方に流されるのよ。水が流れ落ちていくように人間楽な方に身を任せるが正しいのよ!」

 

 いつの間にかアクアは暖炉の前に寝そべり完全にぐーたらモードです。いやさすがにそこまで堕落したくないのですが。

 

「もう、いいです。私もお姉ちゃんのとこに遊びにいくので、留守番お願いします。丁度用事があったのでいい機会です」

 

 それを聞くと暖炉で寝そべりだらけきっていたアクアは急に立ち上がり言います。

 

「あのアンデッドの店にいくですって!そんなの許さないわ!どうしてもいくっていうなら私をつれていきなさい!」

 

 しまった。余計なことをいってしまいました。とはいえ、そろそろお姉ちゃんに会えないのも限界です。

....仕方ありません今日は諦めてつれていきますか。それに今日の目的を考えれば使い道もあるかもしれませんし。

 

「はあ....しょうがないですね。その代わりおとなしくしててくださいよ」

 

そういうことで私達は、お姉ちゃんの魔法道具店にいくこととなりました。

 

 

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 そんなわけでアクセルの街角にポツンとあるお店。ウィズの魔法道具店にやって来ました。

なんという分かりやすい名前。シンプルイズベストという奴ですね、さすがお姉ちゃんです!

 

「本当に本当に、今日はおとなしくしててくださいよ。喧嘩とかはもってのほかですからね。今日来たのは皆のためでもあるんですから」

「カズハは私のことを狂犬かなにかだと思ってない?女神が誰かれ構わず喧嘩売るわけないでしょ?」

 

 アンデッドと見れば回復魔法ぶちこむ女神が狂犬以外のなんだというのですか。

 

「....そうだといいんですけどね」

 

 私はアクアの様子を見張りながら店へと足を踏み入れます。

 

「お姉ちゃん、妹の、妹の私が遊びにきましたよ!」

「いらっしゃいませ。...あの時、あれ本気だったんですね」

 

 ウィズお姉ちゃんはなぜか困惑した様子です。やはり、駄女神をつれてきたのが良くなかったのでしょうか?

「出たわねクソアンデッド!女神であるわたしが借金持ちなのに、あんたはお店の経営者ってわけ!

リッチーの癖に生意気よ!神の名のもとにこんな店燃や、いだい、いだいっ!?ちょっ、カズハやめてっ!?」

 

 私は開口一番に約束を破ったアクアの頭をわしづかみにし、手に強い力を込めていました。

 

「約束しましたよね?しましたよね?」

「ごめんなさい!大人しくするから離して!」

 

 アクアのその言葉を聞くと私は手を離してあげます。アクアはそのまま頭を抱えうずくまります。

「うっ、うぅー」

「怖がらせてごめんなさいお姉ちゃん。アクアが何かしようとしたらちゃんと制裁加えとくので安心してください」

「は、はあ」

 

 お姉ちゃんはアクアのせいかとても怯えていました。

 

「あ、あの粗茶です。よろしければ....」

 

 お姉ちゃんはただのお客である私達にわざわざお茶を持ってきてくれました。なんという優しさやはり、お姉ちゃんは天使かなにかにちがいありません。

 

「カズハ、ウィズがあんたの尋常じゃない眼光に怯えてるわよ。....なんで私がリッチーなんかを、かばってあげてるのかしら?」

 

 ふむ、確かにちょっとテンションが上がりすぎて変になっていたかもしれません。

気分転換に店のものでも見てみますか、マジックアイテムなんて見るのはじめてですし心踊ります。

 

「このポーションはどんな効果があるんです?」

 

 私が近くにあったポーションの瓶を手に取りお姉ちゃんに聞きます。

 

「あっ、それは強い衝撃を与えると爆発するので気をつけてくださいね?」

「...それは怖いですね」

 

 私は瓶をそっと戻し今度は隣の瓶を手に取ります。

 

「あっ、それはふたを開けると爆発します」

 

私はその瓶を戻すとその下の棚の瓶を取ります。

 

「それは太陽で照らすと爆発します」

「....じゃあこれは?」

「湿度が一定になると爆発を....」

 

........。

 

「....ど、独特なポーションですね!」

「いやどう考えても爆薬でしょ。ここ火薬店だったの?」

 

 人がうまくぼかしたのにこの子は!

 

「い、いえそこの棚は爆発シリーズ専用でして!」

 

 って、そんなことはどうでもいいのです。

魔法道具に興味はつきないですが今日はそれが目的ではありません。

 

「お姉ちゃん。以前言ってくれましたよね?リッチーのスキルを教えてくれるって。丁度ポイントにも余裕ができたので何か教えてほしいのです」

「ブッ!」

 

 目の前でお姉ちゃんのだしたお茶を飲んでいたアクアが吹き出します。

 

「なにするんですか!おもいっきり掛かっちゃったじゃないですか!」

「だ、大丈夫ですか!」

 

 心配したお姉ちゃんがタオルを持ってきてくれます。私はそれでアクアが噴出したお茶をふき取ります。

アクアはよほどリッチーのスキルを覚えるのが気に食わないのか今にも飛び掛かってきそうです。

 

「そんなことどうでもいいのよ!カズハ!貴女なに考えてるの!リッチーのスキルなんてろくでもないもんばっかよ!

そんなもの覚えてみなさい、ナメクジやカエルみたいな暗くてじめじめしたところが大好きな連中にすかれるわよ!リッチーなんてそいつらの同類なんだから!」

「ひ、ひどい!」

 

 その暴言を聞いた私はゆっくりとアクアに近づいていきます。

先ほどのポーションを手に取って。

 

「カズハ?なんで無言で近づいてくるの?手に持ってるそれさっきのポーションよね!やめて、謝るからやめて!」

「...もちろん冗談ですよ。お姉ちゃんのお店でやるわけないじゃないですか....やるとしたら帰り道です」

「ボソッとなにかいったわね!?やらないわよね、冗談よね!?」

「そうなるかどうかは貴女次第ですね。....そんな事よりもスキルです、スキル。リッチーのスキルなんてそうそう覚えられませんからね。

それにうちのパーティーはバランスが悪いですから、私がフォローできるように役に立つスキル覚えないといけないんですよ」

 

 そうです、お姉ちゃんにスキルを伝授してもらいたい一番の理由はそれなのです。

私達のパーティはバランスにかけ安定した火力がありません。

最大火力のめぐみんは一回こっきりしか魔法を使えませんし、ダクネスは防御力にステータスを全振りしているため攻撃力は皆無です。

アクアはステータスこそ高いですが、それを使う知能がありません。

結果、毎回、毎回、私が知恵と剣を振り回して命がけで戦うはめになっているのです!

少しでも私の戦力を強化しないとまた確実に死ぬはめになります。

 

「女神の従者がリッチーのスキルを覚えるなんて見過ごせないんですけど」

「いつから私が貴女の従者になったんですか」

 

 本来、貴女が私の下僕なんですからね。私の優しさで自由にさせてあげてるだけですから、本来の立場思い出させてあげましょうか。

私が納得しない顔のアクアをどうしてやろうかと考えているとお姉ちゃんがなぜか不安そうな顔をしています。

 

「どうかしました?不満があるならなんでもいってください姉妹なんですから!」

「....。いえ、そのう、アクアさんが今、言った女神って?まさか、アクアさんって本物の女神だったりするのですか?」

 

 さすがお姉ちゃん、リッチーなだけあってアクアが女神だと見抜いたようです。

私は最近これは女神を騙った悪魔か妖怪の類いではないのかと疑いはじめてますが。

アクアは女神と久々に認められて嬉しいのか胸を張って堂々と言います。

 

「まあね!そうよ、私こそアクシズ教団が崇める水の女神アクアよ!控えるがいいわ、リッチー!」

「ヒイッ!?」

 

 お姉ちゃんが恐怖からか叫び声をあげ、私の後ろに隠れます。腐っても女神、リッチーであるお姉ちゃんをここまで怯えさせるとは。

 

「ダメですよ。お姉ちゃんを怯えさせたら。お姉ちゃんも怯えすぎです。この子なんてなんちゃって女神なんですから」

「なんちゃって女神って何よ!私はちゃんとした正真正銘の女神よ!」

 

 アクアが私の言葉に抗議しますが無視です。私は昼間から酒飲んで寝て暇さえあれば借金をこさえてくる生き物を女神なんて決して認めません。

 

「いえ、そうではなく....。世間一般ではアクシズ教団の人は頭のおかしい人が多いからかかわり合いにならない方がいいと言われておりまして、....そのアクシズ教団の元締めの女神様と聞いて....」

「なんですって!」

「ご、ごめんなさい!」

 

 お姉ちゃんはアクアの言葉に気圧され謝ってしまいます。

 

「謝らなくていいですよ。一般常識のようですし。まあ、これを崇めるくらいですからさもありなんですよね」

 

 きっと電磁波を防ぐために頭にアルミホイル巻いてる人達の同類みたいなものでしょう。正直、これを崇めるなそこらの新興宗教に入信した方がまだましだと思います。

 

「....う、うわーん!なんでカズハまでうちの子達をそんな風に言うのよ!確かにちょっと変わった子達が多いかもしれないけどみんな純真ないい子達なんだから!」

 

私とお姉ちゃんの言葉がアクアの中の何かに触ったらしく、泣きながらアクアは私に掴みかかってきました。

ちょっ、これ、痛いです!この子が本気出すと私じゃあ抵抗できません!

 

「わかりました!ごめんなさい!言い過ぎ、言い過ぎでした!だから離してください!」

 

 

 

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 私はあのあとなんとかアクアを分離すると、この子がいると話が進まないので店のなかでも見てくるといいですよと、なんとか言いくるめました。

そのため、アクアは店内を物色し、店のものをさわったりしてます。危険物に触れないといいんですが....。

 

「そういえばカズハさん、あのベルディアさんを倒したそうで。あの方の剣の腕に関しては幹部の中でも相当なものだったはずなのですが、すごいですねぇ」

「カズハさんなんて他人行儀な、呼び捨てでいいですよ。それにベルディアはまぐれみた....うん、 ベルディアさん?」

 

あれ?さんなんてまるで知り合いみたいな言い方です。

 

「あの、ベルディアを知ってるんです?同じアンデッドですし顔見知りでした?」

 

 お姉ちゃんの知り合いなら悪いことをしまいました。まあ、知ってたとしても確実に殺りましたが。あの変態騎士とお姉ちゃんが関わるなどあってはなりません。

そんな私の思いを知ってか知らずかお姉ちゃんは世間話をするように言いました。

 

「いえ、ベルディアさんとは魔王城で知り合いまして。ああ、そういえば言ってませんでしたね、私魔王軍の幹部の一人なんですよ」

 

.........。

 

 幹部?幹部ってなんでしたっけ?そうです、組織の偉いひとですね。お姉ちゃんが魔王軍の?

 

「確保ーっ!!」

 

 私が突然すぎる衝撃の告白に思考停止していると店をうろついていたアクアがお姉ちゃんに飛びかかります。

 

「待ってーっ!お願いします、アクア様!話を、話を聞いてください!」

 

 アクアはそんなお姉ちゃんの叫びを無視し、いい仕事をしたといわんばかりに汗を拭っています。

 

「カズハ!やったわね、これで借金なんてチャラよ、チャラ!いいえ、むしろ大金持ちになれるじゃないかしら!」

 

 アクアは嬉々としてそんなことを言いますが私としてはお姉ちゃんをギルドにつきだす気になれません。

私は取り押さえられているお姉ちゃんの前に屈み込みます。

 

「お姉ちゃん....事情を話してください。私はいつだってお姉ちゃんの味方です。ですから場合によっては魔王軍につくこともやぶさかではありません」

「カズハ!?なにいってんの!?本当になにいってんの!?」

 

 アクアがなにか騒いでますが私は姉のためなら人類だって裏切ります。もちろん、理由によりますが。

 

「あ、ありがとうございます?気持ちだけはありがたく受け取っておきますね。

なんと言うかですね、私は成り行きで魔王さんから幹部を頼まれた、言わばなんちゃって幹部でして。魔王城の結界の維持しかしてないんです」

 

 なんちゃって幹部って、そんなのが許されるのですか。意外と魔王軍というのは緩い組織なんでしょうか。

 

「そう、とりあえず人類の敵なのは間違いないわね。やっぱり、滅しましょう」

「待ってください!私は人にも危害を加えたこともありませんし、ですから懸賞金もかかっていませんから!」

 

私は詠唱をし始めたアクアを服従のスペルで止めると、お姉ちゃんに気になったことをたずねます。

 

「魔王城の結界ってあれですよね。この世界で一番強力で、それがあるせいで人類側は魔王領に攻め込めず、防戦をしいられているとかいう。たしかギルドでそう聞きました」

「そうです。魔王さんに頼まれたんです。結界の維持だけでも頼めないかって。

まさか幹部が人里でお店をやってるなんて誰も思わないだろうから人間に倒されないだけでも助かるって」

 

 姑息ですね、魔王。お姉ちゃんに幹部を頼む辺り人を見る目だけはあるようですが。

 

「つまり、あんたがいるだけで人類は魔王城に攻め込めないし、私達には十分迷惑ってことね。やっぱり退治すべきね」

 

 アクアの言葉にお姉ちゃんが泣き出してしまいます。

 

「やめなさい。....お姉ちゃん、その結界ってRPGみたいに幹部全員を倒さないと解除されないという感じです?」

 

 お姉ちゃんは泣きながら首をたてにブンブン振ります。

 

「その、あーるぴーじー?というのはよくわかりませんがその通りです!

アクア様なら幹部二、三人の維持する結界なら破れるはずです!

魔王の幹部は元々八人。私を倒したところで残りは六人。

それだけの幹部が維持する結界を破るのはアクア様でも難しいはずです!

せめて、アクア様が結界を破れる程度に幹部が減るまで生かしておいてください!

....私には、まだやるべきことがあるんです」

 

 お姉ちゃんの悲壮な顔をみて流石のアクアも罪悪感を感じたのか、動きを止めこちらをみてきます。

私になんとかしろと、そういうことですか。罪悪感を感じる位ならやめればいいじゃないですか。

 

「まあ、私としてはお姉ちゃんを浄化する理由はないですね。どのみちお姉ちゃんをどうこうしたところで結界はどうにもならないですし」

 

 それに、アクアがいればわざわざ幹部全員を倒さなくても結界を破れるわけで、お姉ちゃんが残っていれば魔王が先に倒されることはありません。

私が日本に帰還するためには私達が魔王を討伐しなければなりません。

そもそも、ベルディアの時はたまたま上手くいきましたが本来ポンコツパーティーである私達に魔王とか幹部とかどうこうできるわけないですし、そもそもそんな危険なことしたくないです。精々、あの魔剣使いのミツラギ?とかみたいなチート持ちの転生者達に魔王の幹部を倒してもらっていいところだけかっさらうとしましょう。

姑息?チートもないのにこれくらいの策略がないと魔王討伐なんてできるわけないでしょう。

時間さえかければもしかしたら私達も魔王を倒せるぐらいになるかもしれませんしそれまではこのままの方が都合がいいです。

 

「ありがとうございます、ありがとうございます!」

 

 お姉ちゃんは表情をぱあっと明るくさせ言いました。

 

「いえ、私がお姉ちゃんに手を下せるわけがないですし、お礼なんていいですよ。....でもいいんですか?魔王軍の幹部ってことは一応、他の幹部とも知り合いなのでは?」

 

 知り合いを手にかけたとすればお姉ちゃんから恨まれても仕方ないことなのではないのでしょうか。あの首なし変態騎士の消滅にだって悲しむ者がいると考えると罪悪感が....

 

「....ベルディアさんとは因縁はありましたけど仲がよかったとか、そんな事もなかったですからね....。

私が廊下を歩いていると足元に自分の首を転がしてきて私のスカートを覗こうとする人でした」

 

 前言撤回です。消滅させて正解でした。というかむしろもっと苦しめて殺るべきでした。というかあの野郎やっぱり変態じゃないですか。

何が生前は真っ当な騎士だったですか。私がどうにかして黄泉にいった変態騎士に苦しみを与えられないか考えていると、お姉ちゃんは寂しそうにポツリといいます。

 

「....それにまだ心だけは人間のつもりですから」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「では、一通り私のスキル見せますので好きなものを覚えていってください。以前、私を見逃してくれたことへのせめてもの恩返し...」

 

 とお姉ちゃんはそこまで言いかけて、何かに気づいたかのように私とアクアを交互に見ておろおろし始めます。

 

「お姉ちゃん、どうかしました?」

「いえ、あのう、私のスキルは相手がいないと使えないものばかりでして、つまり、そのう...」

 

 ああ、なるほど。そういうことですか。アクアを連れてきたかいがありました。

 

「そういうことなら、問題ないです。ここに実験台がいますから」

「もしかしなくても私のことよねそれ、アンタ、女神を何だと思ってるの?いい加減天罰くらわすわよ。...まあ、いいわ。リッチーごときがこの私を傷つけられるわけないんだし」

 

 そう言って、アクアはお姉ちゃんを睨みつけ威嚇します。それに怯えながらもお姉ちゃんは話を続けます。

 

「そ、そうですね、ドレインタッチなんてどうでしょう?これは相手の体力や魔力を吸ったり逆に魔力を分け与えることができるスキルです」

 

 攻撃にも回復にも使える便利スキルですね。まともな攻撃手段が乏しい私たちのパーティーにはありがたいです。

それにやりようによってはめぐみんに連発で爆裂魔法を撃ってもらうこともできるかもしれません。

 

「...では、アクア様、実演よろしいでしょうか?も、もちろんちょっとしかすいませんので!」

 

 慌てたように早口になったお姉ちゃんに対しアクアは何かろくでもないことを思いついたのかにんまりと凶悪そうな笑みを浮かべます。

やっぱりこの子、邪神か悪魔のたぐいなのではないでしょうか。

 

「いいわよ?いくらでも吸ってちょうだいな。さあどうぞ?」

「では失礼します......」

 

 アクアはすんなりと自分の手を差し出します。お姉ちゃんがその手を取ります。するとスキルが発動したのか手が淡く光りはじめます。しかし...

 

「?...あれ?あ、あれ?」

 

 急にお姉ちゃんがあわて始めます。私には何が起きてるか全くわかりませんが予想外のことが起きているに違いありません。

どうせ隣で邪悪な笑みを浮かべている邪神(アクア)の仕業に違いありません。

 

「ほらほらどうしたの?私から吸うんじゃないの?自称、不死王(ノーライフキング)がドレインもできないなんて聞いてあきれるわね」

「あ、あれええ―――!?」

 

 余裕たっぷりに勝ち誇っているアクアと対照的にお姉ちゃんはどんどん涙目になっていきます。どうやら、アクアが小癪にもドレインに抵抗しているようです。

 

「やめんか」

 

 私はアクアの脳天に制裁のチョップを食らわせます。

 

「痛いっ!?ちょっとカズハ、邪魔しないでよ!これはリッチーと女神の戦いなのよ!私だって女神の端くれ簡単に吸われたまるもんですか!」

「端くれ程度ならどうでもいいでしょう。さっさと吸われてください、スキル覚えに来たのであってリッチー退治に来たんじゃないんです」

 

 アクアは私の言葉に渋々ながら納得したのかお姉ちゃんの手の光が少しだけ強まります。

 

「はい、これでいいはずですよ」

 

 私はそれを聞くとすぐに冒険者カードをみます。そこには確かにドレインタッチの文字があります。私はすぐにスキルポイント使い、スキルを習得します。

....毎度のことですがあまり実感ないですね、これ。

 

「あ、あのう、アクア様?」

 

 私が冒険者カードを懐にしまっていると後ろから何故かお姉ちゃんの困ったような声が聞こえてきました。

見るとまだお姉ちゃんとアクアは手を繋いでいます。

 

「アクア様?もう、いいですよ?というかアクア様と触れていると手がピリピリするのでそろそろ離していただいてほしいのですが... 」

 

 しかし、アクアはにっこりと笑うだけで手をはなそうとしません。というか、お姉ちゃんの手にもう片方の手を重ね離されないようにガッチリ握りしめてます。

 

「アクア様、なんだか熱を帯びてきているような....あの、痛いです、痛いんですが!

アクア様、私の身体、アクア様の魔力を吸うごとにどんどん浄化されっていっているんですが....

私、消えちゃう!?アクア様消えちゃう、消えちゃう、消えちゃいます!」

 

「えいや」

「うひゃあ!?」

 

 私はろくでもないことをしているアクアの首もとに手をいれさっき習得したばかりのドレインタッチを使います。

よほどビックリしたのかアクアはお姉ちゃんから手を離し、飛び上がります。

 

「おお、これはすごいです。魔力がどんどんたまっていくのが感じられます。このまま全部吸えば貴女も少しは大人しくなりますかね」

 

いい実験になりました、こういう風に使えばいいんですね。

 

「なにするのよ!?あともうちょっとだったのに!」

「もし、そうなってたら私はあらゆる手段をもって貴女を消滅させていたでしょうね。よかったですね、途中で止められて」

 

 私が笑顔でそう告げるとアクアは顔面蒼白になって震えだします。何がそんなに怖いんでしょうね?

隣にいたお姉ちゃんはかわいそうになったのかアクアを慰めてあげています。なんだかお姉ちゃんの姿が薄くなっている気がするのは気のせいでしょうか。

「お姉ちゃん、力が弱まってるのならそこの駄女神からいくらでも吸い取りますよ?」

「あ、気遣ってくださり、ありがとうございます。でも大丈夫ですよ、これでも不死王(ノーライフキング)のリッチーですから。

それにアクア様の魔力は恐らくアンデッドには毒でしょうから。それにカズハさんもそれ以上魔力は吸わない方がいいですよ。本人の魔力量を越えて吸うとボンッてなりますから」

 

えっ?ボンッてなんです?爆発するんですか?

爆発四散するですか?

そんな事を考えていると、チリーンと店の扉についた鈴がなります。見るとそこには見知った顔が。

 

「ウィズさんはおられますでしょうか?私、冒険者ギルドの....ってサトウさんじゃないですか」

 

 そこにいたのはギルドの美人受付嬢兼雑務担当のルナさんでした。

 

「ああ、ルナさん、こんにちわです。お姉ちゃんのお店になんのご用です?」

「お姉ちゃん?えっと?ウィズさんご家族はおられないと聞いていたのですが」

 

 お姉ちゃんはルナさんの疑問に困ったかのよう笑います。奥ゆかしいです、お姉ちゃんと私の仲を一言でまとめるのは難しいですからね。

 

「カズハが勝手にいってるだけだから気にしないでいいわよ」

「何を勝手なことをいうですか、アクア!私とお姉ちゃんは血は繋がってなくとも永久に消えない絆で繋がった姉妹なのです!」

 

 落ち着いたらしいアクアがまた余計なことをのたまわります。

 

「ああ、なるほど。警察の方から警告があったカズハさんの病気ですか。....ギルドは個人の私生活についてなにもいいませんが、あまり子供たちに声かけするのは控えてくださいね」

 

え?私、警察から要注意人物と認識されているのですか?クソッ、私と妹との運命の出会いを邪魔する権力の犬どもめ!

私はただ、街の子供達の中に妹がいないかと探してだけだというのに!奴等に見つからない手段を早急に考える必要がありますね。

 

「はあ、なんでこの街はこんな人ばかり....。あ、すみません。それで今日はウィズさんにお願いがありまして」

「また、どうしてこの子なんかに。詳しくは言えないけどろくなもんじゃないわよ」

「また、なんで貴女は余計なことを吹き込もうとするんですか!ルナさんこっちは気にせず続けてください」

 

しかし、ルナさんはどうしてか不思議そうな顔をします。

 

「お二人とも知らないんですか、氷の魔女ウィズを!その昔、王国中にその名をとどろかせた凄腕の冒険者ですよ!彼女に憧れ冒険者になった人達は数知れません」

「あの、それは昔のことですし。今はただのしがない街の魔法具屋さんですよ、気恥ずかしいのでやめてください」

 

 お姉ちゃんは顔を赤くしながらルナさんの話を止めようとします。お姉ちゃんがそんな有名な冒険者だったとは知りませんでした。

生前?から只人ではなかったんですね、多くの人達の人生にすら影響を与えるなんて流石です。天使です、むしろ女神、どこぞ駄女神と肩書きを入れ換えるべきです。

 

「で、その凄腕冒険者だった天使にして女神のお姉ちゃんの腕をかりたいと」

「....ええ、この街でなにかあればよくウィズさんを頼っているんですよ。とはいっても今回はウィズさんの魔法具の知識をお借りしたいのです」

 

 

 

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