そんなわけで、私達はルナさんから頼まれごとをこなすためにギルドの倉庫にやって来ました。
倉庫にはモンスターの檻やらギルドが預かっているダンジョンなどで見つかった遺物やら書類やらなんやら、が山積みされいます。そして、その中でもとくに目立つものが。
「これが古代魔導技術大国ノイズの遺産ですか」
そこには銀色の筒状の機械のようなものがありました。人、一人くらいが丁度、入りそうなそれは、筒というよりは棺桶といった方が正しいかもしれません。
そして、その棺桶から何本ものチューブが延びており計器らしきものに繋がっています。
「....ファンタジー感の欠片もないですね。完全にSFの産物じゃないですか。世界観間違ってません、これ?」
どうみても、
「ふぁんたじー?えすえふ?時々カズハさんはよくわからないことをおっしゃいますね。
まあ、ノイズの魔導文明は現代のものとは隔絶した差がありますから戸惑うのは無理もないでしょうけど」
ルナさん、というよりギルドからお姉ちゃんへの依頼というのがこの遺物の調査と鑑定でした。
なんでも、この前のベルディアとの戦いによって出土した遺跡のなかから発見されたらしいのですが、これがなんなのか、なに使うものか誰にも検討もつかず困ったギルドが頼ったのがお姉ちゃんでした。
「しかし、なに使うかは全くわかりませんけど、こんなものを作るなんて確かにすごい国だったでしょうね。そのノイズ王国というのは」
ノイズ王国、かつてこの大陸をほぼ手中におさめたという古の魔導技術大国らしいです。
冒険者カードやそれに付随するスキル習得システムを発明し、実用化したというのですからその技術力の恐ろしさがうかがえます。
伝承が失われ、詳しくは伝わってませんがなんらかの対魔王兵器を開発し当代の魔王を撃破。敵のいなくなったこの大陸の覇者となったそうな。
しかし、ある事件で本国が滅亡。さらに復興を遂げた魔王軍の侵攻もかなさり、人類側はその混乱で総崩れ。魔王軍との戦乱、人間同士の内乱が相次ぎ、この世界の人類は暗黒時代に突入しました。
そして、戦乱と混乱の時代中でノイズの技術もほとんどが失われたとか。だからこそこうしたノイズの遺産は特級の遺物として扱われ、ものによっては城がたつらしいです。
まあ、全部道すがらにお姉ちゃんから聞いた受け売りですが。
いってしまえばこの世界におけるローマ帝国ですよね。中世ヨーロッパ風世界なんですから、きっと似たような歴史になっているんでしょうね。
封建国家なんて大抵、集権的国家が滅んだ後にできるものですし。
「しかし、なんでそんな国が滅びちゃったんですか?それこそ魔王でも来ない限り滅びそうに無さそうですけど」
「ああ、それはですね、機動....」
「ねえ、ねえカズハ?さわってたらなんかとれたんだけど」
私とお姉ちゃんが歴史談義に花を咲かせているとアクアが件の遺物の一部らしい銀色の板持ってそんなことを言いやがりました。
「なっ!なにやってるですか!?貴女、バカなんですか、アホなんですか!?お姉ちゃんが道すがらにしてくれた話きいてなかったんですか!?これで一つ城がたつかもしれないんですよ!」
「えー?そんなことを言われたってウィズの話長くてつまらなかったし、私悪くないもん。こんなの適当にくっつくわよ」
アクアは悪びれもせず銀色の板を振り回しながら、そういいます。
「くっつなかったらどうするんですか!?今度という今度は貴女を売り飛ばしますからね!チンパンジー並みの知能の女神とかめずらしがって貴族が買ってくれるでしょうよ!」
私の怒声にアクアも声をあらげかえしてきます。
「誰がチンパンジーよ!この可憐な女神に向かってなんてこというのよ!」
「頭がチンパンジーレベルだからチンパンジーでしょうよ!悔しかったらもうちょっと知力あげてみさい!」
「なによ!へちゃむくれのヒキニートの癖に!」
「誰がへちゃむくれですか!」
そんな風に私とアクアが睨みあっているとアクアの持っている板をみてお姉ちゃんが言います。
「あれ?これ....板じゃなくて箱みたいですね」
確かに、その板を見ると板にしてはおかしなところがいくつかありました。
「確かによく見ると板にしては分厚いですし、開きそうな切れ込みがありますから確かに箱みたいですね、これ」
「みなさい、カズハ!私のお陰で一歩これの正体の解明に近づいたのではないかしら。
さっきどこぞのヒキニートは私のことをチンパンジーとか言ってくれちゃったけど。
カズハ、なにか私にいうことはない?さすがアクア様とか、私ごときではかないませんとか、言って、早く誉めちぎって!」
「あー、ハイハイ。すごいです、偉いです、アクアは。....これでいいです?」
「敬いが足りない!」
仕方ないことですね。敬いとはその人の徳の高い行いをみて自然と湧き出てくるもの。アクアに対しては持ちようがない概念です。
「で、中身はなんなんでしょう?」
「待ってください、今開けてみます」
私とアクアは緊張した面持ちで唾をゴクリと飲み込ます。古代文明の遺産の手掛かりというのですから落ち着けるわけもありません。
そして、お姉ちゃんが箱を開けるとそこからでてきたのは紙の束でした。
「なんですこれ?これが古代文明の遺産?」
私はそこに書かれたものをみてひどくがっかりします。なにしろそこに書かれていたのは....
「恐らくは、この装置について書かれているのでしょうがこれはノイズで使われていた古代文字ですね。
何種類もの文字が使われていてほとんど解読されていません、残念ですが手掛かりにはなりそうもないですね」
お姉ちゃんは残念そうに呟きますが私は全く同意できません。だってこれ、ただの日本語ですもん。
日本語でノイズ王国対魔王兵器試作一号とか書いてます。なんか子供のかいたような落書きもかかれてますし、これほんとに古代文明の遺産ですか?
「アクアちょっとこっち来てください」
私はアクアを倉庫の端に呼び寄せます。
「なにあれ?」
「なにあれって、私に言われても困るんですけど、そんなの私が知るわけないじゃない」
「いやどう考えても、転生者が残したもんでしょあれ。というか、ノイズって貴女が送った転生者たちが作った国だったんです?」
「だから、そんなこといちいち知らないわよ。私はこの世界の人口の維持と魔王退治のために、あんた達に送ってるだけなんだから、その他のことなんて知ったことじゃないわ」
なんという、無責任さでしょうか。こんなだからこの世界はおかしいんですよ。
和製英語が通じたりするわ、ファンタジー感ぶち壊しな服や道具は流通してるわ、いくらなんでもひどすぎです。
古代文明の遺産ときいてワクワクしていた気持ちが急激に覚めていきます。
「お姉ちゃん、帰りましょう。こんなどうせろくなもんじゃないです。どうせなかに入ってるのは高性能ダッチ●イフとかそんなです、ほっときましょう」
「急にどうしたんです!?というか女の子がそんな言葉使っちゃダメですよ!?一応、ギルドからの正式の依頼ですし、今さら断るわけにも....」
私としては絶対、ここで永久に眠っていてもらった方がいいと思うのですが、お姉ちゃんにそういわれては仕方ありません。
私は仕方なく先ほどの箱に入っていた紙を読みます。
どうやらそれは対魔王兵器の設計計画書であり、要約するとどうやらあのなかにはいっているのはかつて対魔王軍用に開発された
何でも通常の人間の数倍の魔力と身体能力を持つとか。
「どいうやら中身はホムンクルスらしいですよ。ウィズお姉ちゃん」
「え?よめるんですか!?今まで誰も解読できなかった古代文字を!?」
お姉ちゃんが驚愕した表情でこちらをみます。日本語ほど文字の種類が多い言語はないですからね。
知らない人にとってはたしかに難易度が高いのかもしれませんが私とっては母国語ですから、サクサク読めます。
「まあ、ちょっとした特技ですよ。....あれ、なんか別の紙が」
先ほどの紙後ろから出てきたのは日記帳のページを破りとったらしき紙でした。設計者の記録でしょうか?
○月×日
上司が働け働けととうるさい。対魔王兵器を作れと言われても、チート持ちといっても元々只のニートだったのに無理に決まってんじゃん。
あっ、そうだ、昔書いた小説のキャラクターの設定集だそう。魔王を倒すために作られた人造人間という設定だしいけるいける。
どうやら私と同じ転生者の日記のようですが。
でだしから嫌な予感しかません。できればみなかったことにしたいですが、お姉ちゃんとアクアか興味津々ですし、ここで止めるわけにもいきません。そう思い、続きを読みます。
○月×日
思った以上にあの設定集が好評らしい。中二の頃に適当書いたやつなのに。案外、文才があったのかもしれない。
ニートなんてやらず小説で一発当てればよかった。まあ、あの設定書いたら満足しちゃって本編は五ページもかけてないど。
○月×日
大金が転がり込んできた!あの設定集がよほど気に入られたらしく膨大な研究資金を渡された!
これだけあれば多少横領してもばれないはず。そうだ、このお金で昔、夢見た美少女アンドロイドを作ろう!
これだけのお金と私が女神からもらった望んだものを創ることができる能力があれば行けるはずだ!
わかってた、わかってましたけどこいつだめなやつですね!一番力を与えてはいけない人間ですよ、これ。
○月×日
一応、研究している体を装うためアンドロイドではなくホムンクルスにすることにした。
アンドロイドでは上手くいかなかったがホムンクルスなら行けるかもしれない。むしろこっちの方が隅々まで再現できて....
「......」
○月×日
成功だ!そうか、そうだったのか!なぜ今までどの造形でも納得できなかったのかようやくわかった!
そうだったのだ今までのは年が上過ぎたのだ。そう私は幼女が好きだっ―――
「うなあああああああ!!」
私は、紙束を衝動に任せ壁に叩きつけました。
「どうしたんですカズハさん!?突然奇声をあげて!?そんなに目を背けたくなるような禁断の研究が!?」
「やっぱり、ダ●チワイフじゃねーか!転生者ってバカしかいないんですか!?バカじゃないと転生できないんですか!?」
最悪です、
「カズハ、あんまり、転生者をバカ、バカ言わないでくれる?送ってきた私もバカって言われてるみたいなんですけど」
事実その通りだと思いますが話がこじれそうなので黙ります。
とりあえず続きを読みますか。
○月×日
なぜだ!これだけ完璧だというのになぜ起動しない!初めに見た人間を主人として設定するプログラムもしこんだというのになぜだ!
あれか、そのまま使えということなのか!?しかし、私には幼女にいじめてもらうという夢があるのだここであきらめるわけににはいかない。
糞みたいな欲望がつづられていて、読むに堪えませんが我慢です。これは仕事なんです、心を無にして読みましょう。
○月×日
起動しない理由が判明した。どうやらこのホムンクルスには魂というものが存在しないらしい。
私の能力では人体という物質は作れても魂という概念上の存在はつくりだせないらしい。
クソッ!肝心なところで役に立たないチートだ。あの女神に文句を言ってやりたい。
理由は全く違いますが、最後だけは同意ですね。
○月×日
やばい。研究所の連中が私の様子がおかしいと上に報告したらしい。監査が入るらしいどうしよう。
とりあえず、これを成果として報告するか。なんか知らんけど魔力や身体能力がすさまじいしこのホムンクルス。上手くごまかせるだろう。
○月×日
とりあえずうまくいった。口から出まかせならべただけだが全員納得して帰っていった、あいつらばかなんじゃないだろうか。
詳しく調査されるととまずいから、研究書類やこの日記は昔の拠点の近くに廃棄しておこう。
でも、このホムンクルスの強大な魔力は人間でも再現できるかもしれない、せっかくだし上に提案してみるか。
研究費横領に隠蔽工作。すがすがしいほどまでの屑ですね、こんなもののために振り回されていると思うとがっくりとなります。
取りあえず、私は紙の中身を要約して二人に伝えます。二人とも終始苦笑いで聞いてくれました。
....アクアには後で色々文句いってやります、どうせアクアが適当に送った一人なんでしょうから。
「....そうですか。しかし、どうあれ中身は強い力を持ったホムンクルスみたいですし、欲しがる人は一杯いるでしょう。あまり世に出してはいけないもののような....」
お姉ちゃんはホムンクルスを世に出すことに迷いがあるようです。確かにこんなものを世にいさかいを生むだけかもしれません。
ここはなにもわからなかったとルナさんに伝え、今日のことはすべて忘れましょう。
というか、忘れたいです。そうです、すべてなかったことにしましょう。その方が世のためです。
私達が帰ろうとした、その時、プシュー!という音が銀色の棺桶から響きそれと共に煙が吹き出します。
「何!?なんです!?アクア!貴女がまた何かしたんですか!?」
「私?私、今回は本当になにもしてないわよ!?」
見ると確かにアクアは銀色の棺桶から距離をとっておりなにかできる状況ではありません。
そして、それはお姉ちゃんと私も同じです。ということは?もしかしてなかから出てこようとしている?
「フッフッフッ!フッハハハ!!待っていたぞ!この時を!貴様らに復讐できるこの時をな!」
装置が開き中から自ら敵だといわんばかりの高笑いが響きます。ですが、鈴を転がしたようなその声には威厳は全然ないです。
むしろかわいらしいという感想しか抱けません煙が薄くなるのそこいたのは十二歳くらいの全裸の幼女。
身長はめぐみんよりも低く百三十数cmといったところでしょう。髪は雪のように白く瞳はルビーのように紅く輝き、私を睨み付けるかのように凝視していました。
「えっと、どちら様です?」
「貴様!俺にあれほどの屈辱を与えておきながら忘れたとは言わせんぞ!」
と言われましても全く心当たりがありません。その人形のようにしなやかで幼いながらも美しさを感じさせる造形。
姿形だけでいえば私の中の妹候補ランキングのトップになれるくらいの美少女です。そんな子を忘れるなんてあり得ません。
とすれば、お姉ちゃんの知り合いでしょうか?
「お姉ちゃん、あの子知ってます?」
「いえ、恐らくあったこともないと思うのですが...」
お姉ちゃんは首をかしげます。本当に心当たりがないという風です。
「うん?そこにいるのはウィズか?久しいな、こうして会うのは数年ぶりになるか、人里で店をやると聞いていたが、この街だったのか」
しかし、お姉ちゃんの言葉とは裏腹に幼女は親しげに話しかけてきます。....私とお姉ちゃんの共通の知り合いで一人称が俺で私に恨みがある?
....いや、いや、ないですね。さすがにないです。どんなミラクルがあればあれの魂がホムンクルスのなかにはいるなんて....。
そういえばこの遺物ってあのときの戦いの被害で偶然発見されたとか言ってましたね。
つまり、あのときこれはあれの近くにあった可能性があるわけで。
....どうしましょう、当たってほしくない推測がどんどん補強されていきます。
あり得ないですが、絶対にあり得ないですが、一応聞いてみましょう。まあ、否定するでしょうが確認をとるというのは大切ですからね。
「あのう、もしかしてデュラハンのベルディア....さん?」
「....そうだが?なんだ気づいていなかったのか。ああ、確かにこの姿ではわからないのも無理はないか」
....間違いであってほしかったですね。中身おっさんの幼女とかどこに需要があるんですか。
色々突っ込みたいところだらけですが、本当にどうしたもんでしょ、これ?
「ねえ、カズハあの全裸幼女は何をいっているの?私の耳が確かならしばらく前にこの私が浄化したアンデッドだと名乗ったように聞こえたのだけど」
アクアも困惑を隠せないようでそんなことを言ってきます。無理もありません、自称元モンスター幼女とかいう不思議生物が目の前にいるのですから。
お姉ちゃんなんて昔から知り合いなのですから衝撃が大きかったのでしょう。しばらく前から固まったまま動きません。あまりに動かないのでちょっと心配です。
「残念ながら私の耳も貴女の耳もすこぶる好調ですよ。本当になんでこうなったかはわかりませんが、あれは間違いなくこの前倒したはずの魔王軍幹部ベルディアですよ」
私とアクアが呆然としながらベルディアを見ていると胸を張りだし私たちを睨みつけます。
「俺の姿などどうでもいいわ!さっきも言ったが俺は貴様らに復讐するために黄泉からよみがえったのだ!」
くだらないダジャレにアクアと私は呆れた表情になります。ベルディアは今更になって恥ずかしくなったのか赤面します。
クソっ、中身おっさんの癖に可愛いですねこいつ。
「そ、そういう意味で言ったのではない!...そんなことはどうでもいい、俺は貴様らに与えられた屈辱をはらすためにここにいるのだからな!」
「はあ、そんなこと言われましても。勝負してあなたが負けただけでしょうに。それなのに未練がましく化けて出てくるなんて魔王軍幹部の癖に器が小っさいですね」
「うるさい!大体な俺だってまともな勝負で負けたのならなんの文句もなかったわ!
それなのになんだ!人の首盗って、その間に攻撃って卑怯にもほどがあるだろう!幹部との勝負はなもっとこう正々堂々とだな......」
この負け犬は長々と何をいっているのでしょう?なんで、最弱職の私が魔王軍の幹部と対等に戦ってやらないといけないのですか。
「あのですね。言わせてもらいますけどね。魔王軍の幹部と対等に勝負したら最弱職の私が負けるに決まってるじゃないですか。
私のことを卑怯って言いますが弱者に強者と同じ土俵で戦うことをしいる方ががよほど卑怯じゃないんですか?」
「い、一理なくもないけどあんたよく自分をそこまで正当化できるわね。私だって少しは卑怯じゃないかなと思ったのに」
アクアまでそんなことをいいます。全く、私はあのとき使える力の全てを使っただけです。称賛されこそ卑怯なんて呼ばれる筋合いは全くありません。
「ええい、お前がどう思ってようとどうでもいいわ!今ここであの時の屈辱はらしてくれるわ!」
「ふん、いいんですか!こっちにはあなたと同じ魔王軍の幹部にして氷の魔女のウィズお姉ちゃんがいるんですよ!」
「....まよいなく虎の威を借りたわね。あんた恥ずかしくないの?」
アクアは若干引いた表情でこちらを見てきます。失礼ですね。
「ないですね、そもそも弱者に逆ギレして戦い挑んでくるあのオッサン幼女の方がよっぽど恥ずかしいと私は思います」
「貴様はほんとうに...というかお姉ちゃんってなんだ?いや、いい、言わなくていい頭が痛くなりそうな気がする」
ええ?せっかく私とお姉ちゃんとの出会い、わたしがいかにお姉ちゃんをどれほど敬い尊敬しているかをところあますことなく語ろうと思ったのに。
「貴様はウィズに期待しているようだが、残念だったな!ウィズはなんちゃって幹部とはいえ幹部は幹部。魔王軍に手出しはできんはずだ。そうだったな、ウィズ?」
え、そうなんです?さすがにお姉ちゃんがいないとなるとまずい気が...
「...あっ!はい、なんでしょうか?オススメの魔法具はですね...」
ベルディアに話しかけられようやく、再起動したお姉ちゃんですが、ショックで前後の記憶が飛んでいるようです。
「そんな話はしとらんわ!お前と魔王軍との間の中立協定の話だ!お前は魔王軍の行動に対して、邪魔をしない、中立を保つと約定を結んだはずだ!」
お姉ちゃんは一瞬きょとんとしましたが、お姉ちゃんは頷きます。
「ハイ、確かにその通りですが...それを知っているとは本当にベルディアさんなんですね。いや、こんなことあるものなんですね...」
お姉ちゃんはよほど信じられないのかベルディアを繁々と見ます。
一方のベルディアは倉庫にあった剣を手に取り構えます。あれ、お姉ちゃんが味方じゃないってことは地味に、これピンチなのでは?
「自らが窮地にいることがわかったようだな。ではまず貴様に呪いを与えてやろう。一週間後に貴様は死ぬ!」
ベルディアが私を指差し、死の宣告を行います。
その指先から黒い光が私に向かって....来ませんね?
「あっ、あれ?おかしいな?もう一度だ!一週間後に貴様は死ぬ!....あれ、なんで発動しない!?あれっ―――!?」
ベルディアは腕を振りながら何度もこちらを指差し死の宣告を行いますが、全く発動する様子はありません。よし、なんか知りませんけどチャンスです!
「今ですアクア、奴を黄泉に送り返すのです!」
「任せなさい!大体私の浄化を受けて未練がましく地上に残るなんて生意気なのよ!今度こそおとなしく成仏するがいいわ!『ターン・アンデッド』ッ!」
アクアの魔法がベルディアに直撃します。恐らくあのベルディアはアクアに完全に浄化される前に近くにあったあのホムンクルスに魂だけにげこんだ存在なのでしょう。
であるなら魔王の加護もなにもないはずです。なのでこれで消滅するはずです。再生怪人とか一撃でやられるのがお約束なのです。
しかし....
「きかんなあ!腕が落ちたのではないか、そこのアークプリーストよ!ダメージをくらうどころかむしろ元気が出てきたわ!」
「そ、そんな....!私の『ターン・アンデッド』が全く効かないなんて!」
アクアはよほどショックだったのか膝から崩れ落ちます。ヤバいです。ピンチです。頼みの綱のアクアが役に立たないとなると対抗する手段が思い浮かびません。
お姉ちゃんは中立ですし、ここは一か八かで突貫して、エナジードレインであいつの体力を吸うくらいしか....。私ではたどり着く前にベルディアに輪切りにされる未来しか見えません。
「ベルディアさん、あの時の件は心から謝罪しますので許してもらえないでしょうか?」
私は心のそこからの謝意を示すため膝をつき、額を地面におろしました、そう日本古来からの謝罪方法DOGEZAです。
「さすがに引くんですけど。勝てないからってプライドも見栄も全て捨て去るカズハにドン引きなんですけど」
アクアはあきれた表情でこちらを見てきます。生きるためならプライドだろうがなんだろうが捨ててやります!
大体、冬将軍の時に真っ先に土下座した貴女に言われたくありません!
私は頭を少し上にあげちらりと前を覗くとベルディアがこちらに近づいてくるのがみえます。
「...不様にもほどがある。俺の怒りはそんなものでは消えん。俺の怒りが収まるの貴様らの息の根が止まったときだけだ!」
そういって剣をこちらに振り下ろそうとしてます。不様とか幼女にまでなって生き残っているあなたに言われたくないんですが。
剣が迫るなか私は必死に叫びます。
「やめましょう!きっと私達は話し合えばなかよくできるはずです!まず剣を捨てなさい、そして会話するのです、そうすれば私達はお互いを....」
私はそこで言葉を止めます。何故なら急にベルディアが止まり、剣を床に投げたからです。
「な、なぜだ?からだが勝手に....いったいどうなっている!?」
どうやらそれはベルディアの意思ではないようでベルディアは混乱であたふたしていました。
そして、私のなかにさっきの日記の内容がよみがえります『初めに見た人間を主人として設定する』、...あのオッサン幼女は出てきたとき私を見つめていたわけで....。
「よし、三回回ってワンっていってください」
私がそういうとあたふたしていたベルディアがピタッと止まったと思うと三回転します。
「ワン!」
「「「........」」」
倉庫を静寂が支配します。私はにこりとしてベルディアを見つめます。
「さて、形勢逆転のようですね。その体にいる限りあなたは私に逆らうことはできないようですね」
「クソっ、手近にあったからと逃げ込んだのが間違いだったか!こんな体捨ててやる...あれでれない!?」
ベルディアは自分の魂を何とか出そうとしているのか体をくねらしていますが成功する様子はありません。
なぜか効かないターンアンデッド、チート能力で創られたホムンクルス、浄化されかけたアンデッド、いくつかの要素が頭を駆け巡り私は一つの仮説に思い至ります。
「アクア、アクア、ちょっといいですか?」
「なによ?アンデッドも浄化できない、だめアークプリーストってばかにしたいの?」
「ちがいますよ。ちょっと浄化の仕組みについて聞きたいんですよ」
「はあ?」
アクアは何言ってんのこいつといった顔でこちらを見てきます。ぶん殴ってやりたいですが今は我慢です。
「...なんでそんなこと聞くのよ?まあいいわ。あれはね、霊をこの世に縛っている業だとか未練だとか恨み辛みやらを無理やり吹き飛ばして強制的にあちら側に送ってるのよ」
改めて聞くと割とひどいことをやっている気もしますが今はそれは関係ないです。問題は浄化された魂がどういう状態にあるかです。
「ということはですよ、アクア?浄化された魂って生まれたばかりの魂に近い無垢な魂といえるんじゃないんです?」
「まあ、そうね。あくまでこの世から消し去るために一時的にこの世との関連を断っているだけだからあっちに行けばそうしたものも徐々に戻っていくでしょうけど。
後は神々の手によって魂の洗浄が行われて転生されるから問題はないわ」
「じゃあですよ?もし神様の力で創った魂のない人間の体にその浄化された無垢に近い魂が入ったら死者蘇生もあり得るんじゃ......?」
私の言葉を聞いたアクアは絶句し、完全に静止します。どうやら、この様子を見るに私の推測は当っていたようです。
恐らく、ベルディアが死の宣告が使えなかったのも浄化と蘇生によってアンデッドととしての特性を完全に失ってしまったためでしょう。
つまり私達の前にいるのはもはやただの幼女でしかありません。しばらくするとアクアははっとした様子になり、そして半泣きの半狂乱状態で私に掴みかかってきます。
「どう、どうしようカズハ!?こんなの上にバレたら確実に処罰ものよ!チート能力わたしたのも私だし、アイツにターンアンデッドをかけたのも私だし、どうやっても言い訳できないわ!」
アクアの様子から察するに神様的によほどまずい事態らしいですね。
私の制約を超えた蘇生だってかなりまずいのに大昔に死んだしかも、アンデッドだった人物の蘇生など到底許されるものではないのでしょう。
「落ち着きましょう、アクア。最悪、また再び黄泉に送り返してやればいいのでは?」
しかし、流石に私も幼女を手にかけるとか絶対やりたくはないのですけども。
「だめよ!天界に送ってなんて見なさい、魂の遍歴見られて一発でバレるわ!隠蔽よ、隠ぺいするしかないわ!
どうせ、上の連中何て
女神としてはどうかと思いますがアクアは取りあえず放置することに決めたようです。とはいえ、魔王軍の幹部をこのままにしておくのもさすがに気が引けます。
「ひっ!」
話を聞いていたらしいベルディアは自分がもはやただの幼女でしかないことに気づき私達に完全に怯えています。
まあ、魔力や身体能力は常人を超えているらしいですけれども。
まあ、本人の知るところではないですからね。
「た、助けてくれウィズ!仲間のよしみだ、な、な!」
進退窮まったベルディアはお姉ちゃんに助けを求めますが...。
「といわれましても、私はなんちゃって幹部で人類と魔王軍の戦いには基本的中立ですし、特にベルディアさんに恩があるわけでもないですし...」
とバッサリ断られます。まあ、スカート覗き魔ですし、当たり前ですね。人間普段の行いでこういう時助けてもらえるか決まりますよね。まさに自業自得です。
「まあ、落ち着きましょうベルディア?私はなぜかあなたの主人になって、あなたの生殺与奪を握っていますがひどいことなんてしませんから」
「ほ、本当か?」
ベルディアは半泣きになりながら言葉を返します。...泣き顔もすらかわいいとかズルいです。中身が変態騎士でさえなければ妹にしたいところなのに...!
「ただ、そうですね。ここのまま自由の身というわけにもいきません。一応、私も冒険者の端くれ。魔王軍幹部をほっとくわけにはいきませんからね」
「ウィズのことは全力で見逃したくせによく言えるわね」
外野が余計なことを言っていますが無視です。
「ということでうちで働きませんか?丁度メイドさんが欲しかったところなんですよ。それにあなたならパーティーメンバーとしても使えるかもしれませんし」
日記によればベルディアの体には強大な魔力と身体能力が備わっているらしいですからね。
それにデュラハンとして能力がなくなろうとベルディアの剣技は優れたものですし、安定的な火力がかけている私達には悪くない人材です。
「ちょっ!カズハ、本気!?蘇生したといっても元アンデッドの上魔王軍の幹部なのよ!何をするかわかったもんじゃないわ!」
「大丈夫ですよ、ベルディアは私には逆らえませんし、アクアにしても手元で監視しておくのが一番でしょう?」
「それは確かにそうだけど...」
アクアは不満を示しながらもしぶしぶ納得します。しかし一方のベルディア本人とはいうと。
「ふざけるな!これでも元は騎士の端くれ、魔王様への忠義を捨て貴様らの奴隷同然の存在に身をやつせなど...」
「では仕方ありませんね。あなたの存在のことをギルドに報告しましょう。後のことはギルドに任せましょう」
「へ?」
ベルディアは困惑からか間の抜けた声を出します。
「強制しないのか?」
「ええ、そんな非人道的なことをこの私がするわけないじゃないですか!あくまでも私はあなたの自由意志を尊重しますよ」
「ああ、そうか...」
ベルディアは困惑しながらも安堵したようでぺたりと座り込みます。私はそこで畳みかけます。
「しかし、残念です。魔王軍の幹部ともなれば幼女の身とはいえど凄惨な拷問にかけられしかるのちに処刑されることでしょう。
私達の下に来るのであればギルドには報告せず匿って上げようと思っていたのですが...仕方ありません、ここはあなたの意思を尊重し断腸の思いでギルドに報告すると...」
「なります...」
私が悲しい決断をしようとしたとき、小さなつぶやきが聞こえました。見れば、ベルディアが頭を俯かせています。
「ベルディアさん?なんです?言いたいことははっきりといわないと聞こえませんよ」
「メイドにでも何でもなるから許してくれえええ!」
ベルディアは泣きながらに私に懇願してきます。そこには騎士のプライドも魔王への忠義も何もありませんでした。
「嫌ですねえ?まるで私が無理強いしてるみたいじゃないですか。これはあくまであなたが自分の意思で選んだ結果ですよね?」
ベルディアは私の言葉に半泣きになりながらも強く頷きます。
「は、はい!」
「では、今日からあなたは私達の仲間です!よろしくお願いしますね」
仲間にするにしてもしっかりと最初に心を折っときませんといつ反逆されるか、わかったもんじゃありませんからね。
「「......」」
後ろを見るとなぜか絶句したアクアとお姉ちゃんがすさまじく恐ろしいものを見たかのような表情をしていました。
「どうかしたのですか。二人とも?」
「い、いえ、カズハさんは素晴らしくできた妹だとおもいまして。義理とは言え姉として鼻が高いです...」
「わ、私もカズハって前々からすごいっておもっていたのよ!本当に本当だから!」
「ありがとうございます、お姉ちゃん!」
私は妹といわれたこととほめられたことがうれしくお姉ちゃんに抱き着きます。
今日は新しいスキルも覚えられ、メイド兼新メンバーも手に入りお姉ちゃんにも褒められ本当に最良の日です!
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「遅くなりましたが、只今帰りました」
「すまん、クリスが心配でこんな遅くになってしまった」
日が沈み、街に夜のとばりが下りたころ、ようやくめぐみん、ダクネスの二人が屋敷に戻ってきました。
「ああ、お帰りなさいです。二人ともよい一日は過ごせましたか?」
「...勝手に出かけて怒っているかと思ったのですが、気持ち悪いくらい上機嫌ですね、何か悪いものでも食べました?」
「怒っているなら素直に言ってくれればいいのだぞ。仲間同士率直に言ってくれた方がうれしい、それにお前の罵声を浴びれると思うと...ン...クッ」
失礼な子たちですね。私だって機嫌いい時ぐらいあります。
「ダクネスは相変わらずですね。全く悪いものも何も食べてませんよ」
「本当に何があったんです?よく見れば屋敷も大分片付いてますし」
「いいところに気づきましたねめぐみん!なんと我が家にメイドさんが来たのです、では来なさい!」
私は屋敷にあった使用人を呼ぶためのベルを鳴らします。すると、大広間の方からメイド服を身に着けた白髪の幼女が現れました。
「ご、御用でしょうか主様?」
下唇を噛みながら挨拶と会釈をするメイド姿のベルディア。いや、やっぱりメイドさんといえばメイド服、衣装入れに残っていて助かりました。
幼女姿のベルディアにぴったりのサイズがあったのが疑問といえば疑問ですが怖いので考えないようにしましょう。
人形性愛者は傾向として幼女性愛者でもあることが多いといいますが...。
「か、カズハ?自首するなら今のうちですよ。流石に幼女誘拐は...」
「今なら私もついて行って弁明してやる!だから、な。出頭しよう!」
「貴女達、私を何だと思っているのですか」
いつもならここで怒るところですが今日の私は機嫌がいいので見逃してあげます。
「ちゃんとこの子が自分の意思でなりたいと言ったんですよ、ねえ?ベルディア?」
「は、はい」
「いや、待て今何といった?ベルディア?いや、そんなはずはないか....たしかに、このいやらしい目つき、あのデュラハンにそっくりなのだが」
「言いがかりをやめろ!少なくとも貴様みたいな変態騎士をいやらしい目など見たことなど、ただの一度もないわ!」
「「へ?」」
ベルディアの魂からの叫びで二人もこれがベルディアのなれの果てだと察したようで私とアクアは事いきさつを話します。
「...というわけなのよ」
「なるほど、そんなことがあるものなのですね、ギルドにはどう説明したのですか?」
「何もわからなかったといいました。幸い遺物も元の形に戻せましたし。おそらく、正体不明の遺物として放置されるでしょうね」
まあ、ルナさんには悪いですが、ギルドには言わない約束でしたしね。まあ、それにこんな冗談みたいな事態を知れば昏倒しかねませんし。
「納得がいかん」
静かに話を聞いていた、ダクネスがつぶやきました。流石に民を守る騎士として、魔王軍幹部をパーティーに入れるなど認めることができないのでしょう。
ダクネスは変なところで頑固ですからね。説得できるかどうか。
「ダクネス、憤るのも分かりますが、これもパーティーのた」
「性別を変えられた上にかつての敵に仕えさせられるなどいう、そんな、そんな恥辱にまみれたうらやましい目になんでお前があわせられるのだ!ズルい!ズルいぞ!」
...相変わらずうちの変態は高度な変態さんですね。
本当どうしようもありません。この世界に精神科医がいないのが悔やまれます。
「取りあえず、ダクネスはベルディア加入に文句ないようですね、めぐみんは何かあります?」
「まあ、思うところはないでもないですが、今のベルディアはカズハには逆らえないようですし、反対はしませんよ」
「私も、元アンデッドが仲間なんて死ぬほどいやだけど今回だけは我慢してあげるわ」
「では決まりですね、ベルディ...この名前だと疑いが向けられるかもしれませんね」
流石に元の名前のままだとそのうち感づかれないとも限りません。そう考えていると私の目に先ほど使ったベルが目に入ります。
「そうですね、今日からあなたはベルです」
「なんだ、その安直な名前は。大体俺はだな、メイドになることを承諾したといっても何でもかんでもお前たちのいうことを聞くと思ったら大間違いだからな」
ベルディア改めベルは不機嫌そうに言います。やはり現状に納得していないようで眉間に死を寄せ愛らしい顔を台無しにしています。まあ、それはそれで可愛いのですが。
「めぐみん、めぐみん、ベルが名前を気に入らないみたいですので何か別の名前を...」
「ベル、とても良い名だ。不満などまったくないな!」
ベルディアは大声で叫びます。何はともあれ、これで拠点やパーティーの問題もある程度は解決しました。これでこのろくでもない異世界生活も楽になるといいのですが...
「カズハ、今のはどういうことでしょうか?私の命名センスになにか問題があるとでも?」
「どうすればそんなみじめな目にあえるのだ!教えてくれ師匠!」
「師匠いうな!というか、近づくな!」
「やっぱり、なんとかして浄化できないかしら...」
うん、無理ですね。
私の安定した平和な生活はいつ手に入るんでしょう...?
ベルディアが仲間になるこのすば二次小説は数あれど幼女にするとかいう狂った発想をしたのは私が初めてだと思います。
というか、ほかにあったら教えてください、参考にします。
このベルさんは原作では絶対にありえない展開だろうということでなぜか見た目がきまっていたりします。
私は本当に何をやっているのでしょうか...