評価ゲージがオレンジになっていて、ビビっておりました、本当にこのようなつたない作品に過大な評価をありがとうございます。
評価に合うよう精進させていただきます。
一応、八月中には2巻までは終わらせる予定です。
あのサキュバス騒ぎから数日。
私にしては珍しく、今日は早朝に目が覚めてしまいました。
二度寝を決め込む気分でもなかったため、うろおぼえなラジオ体操でもしてみようかと庭に出ることにしました。
すると庭ではメイドと女騎士が木刀を打ち合ってました。
「朝から精がでますね」
ダクネスとベルは私のその言葉でこちらに気づいたようで、挨拶してきます。
「おはようカズハ。お前が朝早く起きるなんて珍しいな」
「ふっ、我が主のことだ。どうせ昨日、二日酔いかなにかでおとなしくせざるを得なかったんだろうよ」
こいつら、私をなんだと思ってるんですか。
昨日は確かにおとなしくしてましたけどそれは...あれのせいですから...。
「なんだ、図星か?」
「違います!昨日は確かに家にいましたけどそれは....その、あれですよ、あれ」
さすがにはっきりいうのは恥ずかしいので私は言い淀みます。
ベルは首をかしげ、しばらくすると思い出した様に手を叩いて言いました。
「ああ、お前も一応、女だったな。あの日という奴....」
「ハラスメントキック!」
「ぐえっ!」
私は気遣いが足りない、メイドに思いきっり蹴りを食わせます。全く、このメイドには人の恥じらいというものを理解してほしいです。
ええ、これでも私だって女子なんですよ。....望むと望まざるとに関わらず。
「どうしたカズハ?」
とダクネスが私の顔を覗きこんでんいました。自分の世界に入り込んでいたようですね、気をつけませんと。
「いえ、なんでもないですよ、寝起きなのでちょっとぼっーとしちゃいまして」
「なら、よかったが。ベルには私からも言っておくからな」
「いや、いいですよ。今のでチャラしておきます」
あいつも生物学上女子になった以上あの苦しみからは逃れませんからね。その時に、好き放題おちょくってやります。
「で貴方達二人は何してるんです?」
「....みてわかるだろう、....剣術の鍛練だ。クソッ、本気でやりやがって、手加減をしろ手加減を」
ベルが息も絶え絶えになりながら立ち上がり言います。どうやら思った以上に効いたらしくふらふらです。そんなに力は込めなかったのですがやりすぎましたかね?
「私の方からベルに願い出たのだ。....まあ、ほら私はなんというかだな」
「そうですね、貴女は超絶不器用で素人の私の方が剣の扱いうまいですもんね」
「ヒグッ!」
ダクネスは自分の不器用さを以外と気にしていたようで変な声をあげてのけぞります。しかし、それすらもこの変態には悦楽のひとつのようで。
「ふっ、さすがだ。カズハ、お前の蔑んだその視線!いいぞ、もっとこい!」
「ベル、成果はどんなもんです?」
私はいつも通りの変態は無視し、ベルに鍛練の成果を聞きます。この手の変態は無視に限ります。
「うん....まぁ、見ていればわかる。おいそこの変態騎士、打ちあいするぞ!」
ベルはダクネスの方に木刀を投げます。しかし、ダクネスはそれには興味も示さず、私たちを見つめ、顔を紅潮させ言います。
「お前達その長くて太いもので私をどうする気だ!」
「「どうもするか!」」
いつもとなにも変わらない変態に私とベルは思わず一緒に突っ込んでしまいます。剣の腕よりこの性格を本当なんとかしてほしいです。
「ふざけてないでやるぞ!」
ダクネスはどこか不満そうながらも木刀を握ります。
さて、二人の木刀での打ち合いはそれはそれは見事なものでした。ダクネスの攻撃は最早、不器用とかでなく呪いかなにかなのではないかと思わせるほど、当たりません。もう、一種の芸術性すら感じさせます。もう一方のベルはというと小柄な体を最大限利用し、すばやく動き、目にも見えぬ速さで剣撃を繰り出しています。が、ほとんどがダクネスに防がれるか、当たってもまともに効いてなさそうでした。相変わらず化け物じみた防御力です。
私は乾いた拍手を二人におくります。
「で、これどういう成果があったんですか?」
「相手の剣を防ぐのが格段にうまくなったぞ!」
ダクネスは嬉しそうに言いますが本来の目的であった貴女の剣の腕前の向上が全くみられないんですが。
「で、元騎士団長殿、なにか弁明はありますか?」
「いや、なにもない....。生前、俺は団長として数多の騎士の指導してきた。魔王軍幹部であったときも部下の育成は欠かさなかった。
だから、その辺の子供でも時間さえあればそれなりの剣士にできるという自負が、自負がああああ!」
ベルは地に手をつけ慟哭します。ダクネスの不器用さは某国元近衛騎士団長にして、元魔王軍幹部のベルですらどうにもできない代物のようです。
「あのクソ王子にだってそれなりの剣技を身に付けさせたこの俺が....。ヤバイ、本気で心折れそう」
ダクネスの存在はベルの教育者としてのプライドを粉々に砕くは十分だったようで、マジ泣き寸前です。
正直、あどけない幼女の泣き顔はなにかこう来るものがあります。中身、オッサンですけど。
「...もうさあ、お前、クルセイダーやめて、プリーストとかモンク目指せよ。そっちの方が向いてるぞ。
正直、お前からは剣より格闘技の才能を感じる」
「なっ!」
あ、ついに言っちゃったました。みんなわかってたけど、あえて言わなかったことを。
ぶっちゃけダクネス剣よりも拳の方が攻撃力ありますし、剣よりはまだ当たるんですよね。
「カ、カズハ、そんなことはないよな?私は騎士として立派に役目を果たしているよな?」
ダクネスが震える声で私に尋ねます。今にも泣きだしそうです。私も鬼ではないのでダクネスが求める答えを言ってあげます。
「いや、とくには。いつも貴女、モンスターに突っ込んでるだけですし。何より、強力なアタッカーであるベルが加入した今、ダクネスの存在価値って....」
「....う、うわーん!かじゅはがいっちゃいけないこといったー!」
余程私の言葉が堪えたのか、ダクネスはアクアのように泣き叫び、どこかに走り去っていってしまいました。
「お前、あそこまではっきり言うか?....これはこじれるぞ。どうするんだ、主?」
「私、ダクネスが聞いて来たから正直に答えただけなんですけども。ああいうのはその場しのぎで褒めたってろくなことにはならないんです」
「だとしても、もう少しオブラートにつつめよ」
えっ、なにこれ、私が悪い流れですか?そもそもの発端はベルだと思うんですが。
「そうです。あのダクネスが喜びもせず走り去るなんてよっぽどですよ。早く、謝ってきた方がいいですよ」
「うぉ!急に出てこないでくださいよ、めぐみん。ビックリするじゃないですか」
そこにいたのは、爆裂魔導師めぐみんでした。ちょむすけをかかえているところをみると朝の散歩のようなものでしょうか。
「いつもの日課に誘おうとカズハを起こしにいこうとしたら庭にいたのを見かけたもので」
ああ、いつもの爆裂魔法の練習ですか。そう言えば、ここ最近はご無沙汰ぎみでしたね。
「何?お前ら、まだひとんちに爆裂魔法打ちこんでんの?本当になんの恨みがあんの?
折角、あの城をダンジョンとして整備したベルディアさんをかわいそうだと思わないの?」
「いや、思いませんけど。というか貴女が勝手に不法占拠しただけで別に貴女の家じゃないでしょ」
ベルが魔王軍幹部時代に根城にしていたあの廃城はいまだ、めぐみんの爆裂魔法練習の的となっていました。
余程、強力な結界でも張ってあるのか、まだ原型をとどめてるんですよね。あれを完全に消滅させることが最近のめぐみんの目標らしいです。
「お前らなあ。....もういい、お前らに付き合ってるとろくな目に....まて、今からあの城に行くんだな?」
「ええ、まあ。最近、ご無沙汰でしたし。....ダクネスなら探しませんよ。しばらくしたら戻ってくるでしょうし、これを機に少しは自分を見つめ直してほしいです」
「いや、あの変態騎士のことはもうどうでもいい」
ダクネスのことは眼中にもないようです。いくらなんでもダクネスがかわいそうだと思え....あの子むしろぞんざいに扱われて喜びそうですね....。
「実はあそこには魔王城から持ってきた俺の刀剣コレクションと軍資金が....」
「その話詳しく!!」
降ってわいたもうけ話に私は一も二もなく飛び付きました。
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「おっ宝、おっ宝、らんらん♪」
「すさまじく上機嫌ですね、カズハ....」
「まさに金の亡者ね」
「黙っとけばよかったな」
軍資金の話を聞いた私たちは、部屋で寝ていたアクアも引き連れベルの拠点であった廃城へと向かっていました。
「当たり前です!お金ですよ!お宝ですよ!テンションが上がらない人間いますか!?いませんとも!」
何より、借金持ちの身の上としては少しでもお金がほしいんです。この世は金です!
「まあ、お金があるのに越したことはないわね。それはいいんだけどダクネスはどうしたの今朝から見かけないけど?」
アクアは目を擦りながら尋ねてきます。私と同じで基本、昼まで寝ているこの子はまだ眠いようで時々あくびまでしています。
「あの子なら諸事情でちょっと修行の旅へと出ました」
あの後、さすがにちょっと言いすぎたかなと思った私はダクネスを探しました。しかし、見つけたのは
『しばらくの間、自分を見つめ直すため、修行の旅に出ます。捜さないでください。 ダクネス』
と書かれた書き置きだけでした。
「誘った私がいうのもなんですが本当にダクネスを探さなくていいんですか?
ダクネスもあれで頑固ですから、剣がうまくなるまで帰ってこないかもしれませんよ」
「いいんですよ。大体なんですか、みんなして私が悪いみたいに。私は聞かれたから本当のことを言っただけです。
大体私が普段どれだけ迷惑をかけられているか。一つ一つ列挙してあげましょうか!?」
「わかりました、わかりましたから落ちいてください!」
めぐみんがあまりに慌てるので私はそこまでで押さえます。
「まあ、大丈夫ですって、お腹が空いたら帰ってきますって」
「いやそんな、アクアじゃないんですから」
と、名前を出したせいか、無意味に先頭を走っていたアクアがこちらを振り向きます。
どうやら自分の話をしていたと勘違いしたようです。
「なになに?私の話?」
「ええ、貴女は悩みもなくて何時も幸せそうだなあという話ですよ」
「そりゃあ、そうよ。この完全無欠の女神様に悩みなんてあるはずがないじゃない」
アクアは実に誇らしげですが、これ皮肉ですからね。こういうところが悩みのない秘訣なんでしょうけども。アホの子は最強ということですか。
「何よ、じっと見つめて?悪いけど私にそっちの趣味はないわよ?」
「私もないですよ!大体、そうだとしても貴女だけは絶対ないです!」
アクアは私の言葉に「なんですって!」と怒り心頭の御様子ですが付き合いきれないので、私はめぐみんの方へと振り向きます。
めぐみんはめぐみんでなぜかこっちをじっと見つめてきます。
「なんですか?言いたいことがあるんなら聞きますよ?」
「いえ、やはり少し薄情ではないかと思いまして。大体、あの置手紙だって本当は探してほしいから置いていったんでしょうしやっぱり探した方が...」
「めぐみん?いいですか、ああいう置手紙にほだされるのは大きな間違いです。そもそも誰かに探してほしいんなら家出なんてするべきじゃないですし、わざわざ書き置きを残して人の興味引こうという行為そのもの自体、自分に注目を集めようとする自己顕示的な行為といえます。そんなのにわざわざ付き合う道理はありません!」
私昔からこの手のヒロインとか大嫌いですからね。本当に探してほしくなければ書き置き何て残すなって話です。
それでどれだけひとが心配すると思ってるですか。
「貴女、本当にひねくれものね。だからモテないのよ」
「うっさいですね!私に探してほしければ探してくださいとでもちゃんと書くことですね。それで、気が向けば探してあげますよ」
大体、モテるとか女子力ゼロの駄女神にいわれたくないです。
でもこの子容姿だけはいいですからね、本性知らない人間からはモテるんですよね、ミツルギとか。
「いない奴の心配しても仕方がない。それはともかく、あの城には本当に誰も入っていないんだな?」
やはり、元とはいえ自分の拠点であった場所の様子が心配なのかベルは不安そうな顔で聞いてきます。
「ええ、今やあそこはめぐみんの爆裂魔法の練習場と知れわたってますからね。入るのはよほどのバカか命知らずだけですよ」
「そうか、それならいい。ふふ~ん♪」
とベルは装備していた大剣を嬉しそうに振り回し始めました。最近、こいつ精神まで幼女化してません?
今日のベルは冒険にでかけてるという事でメイド服の上に革製の簡易的な鎧。ダクネスの予備の大剣を装備してます。
まさに武装メイドといった風です。昔のようにちゃんとした鎧はいいのですかと聞いたのですが
「この姿だと素早さを武器にしたほうがいいからな。重い鎧など逆に邪魔になるだけだ」
と言われてしまいました。姿こそ今やただの幼女ですけど。なんやかんやこいつも歴戦の武人なんですよね。経験の差を感じます。
「やはり、剣はいいな。みろ、この美しさを。刀身は鏡のごとく、刃は紙を剥げるほど薄い。なかなかの刀匠の作とみた!」
ベルは剣を振りながら上機嫌で言います。目が爛々として若干の狂気を感じます。
そう、これは爆裂魔法の話題を振った時のめぐみんと同じ目です。
「ベルは剣が好きなのですか?」
あっ、めぐみんのばか。こういう時にそんな質問は!
「ベルディアだといっておろうが!まあ、だがそんなことはどうでもいい!紅魔の小娘、剣が好きかと聞いたな!
好きに決まっているだろうが!剣それは人類が持つ武具のなかでも最古のもののひとつ!
切るという一念をもってのみ作られたそれらは人類が持つ武という側面の象徴に等しい!
美しさ、有効性、これらをこれほどに兼ね備えた武具がほかにあろうか!いやない!」
やっぱり、妙なスイッチが入ったようで、ベルは止まることなく、剣についての熱弁をふるいます。
その様子にめぐみんとアクアは若干引いています。 めぐみんには人の振りみて我が振りを直してもらいたいところですが。
「剣とは俺にとって身体の一部であり、人生のかけがえのない思い出なのだ。特に主よ、その辺よく理解しておけよ。
もしあの城に残っているコレクションを一本でも売ってみろ、その瞬間に貴様を剣の錆びにしてやる」
「わかってますよ、それが軍資金の隠し場所に案内してもらう、交換条件ですからね」
守らないと、本当に切られそうです。
最初に話が出たとき、剣も売れば借金返済と私が言った時のベルのキレようは表現のしようがなかったですからね。
今回は軍資金だけで満足するしかありませんか。
「しかし、わざわざ冒険者カードまで作る意味あったのか?結構、注目されていたぞ」
そりゃあ、レベル1なのにソードスキルをやまほど取得している幼女がいればあんな騒ぎになります。
どうやらベルはアンデッドスキル以外はベルディアだったころのスキルを受け継いでいるらしく、ステータスも私より上です。
....悔しくなんて別にないですよ、ええ。
ちなみにベルの職業はソードマスターです。
騎士職ではなく、剣士を選んだのは、生前では極めることができなかった剣の道を今生で極めるためだそうです。
「私が普通に貴女をつれまわしてたら、変な誤解を受けますからね。
ちゃんと貴女が冒険者だと証明しておく必要があったんですよ。人を幼女誘拐犯だのと、全くあの街の警察は失礼ですよ」
「街を出るときに、衛兵さんにベルの冒険者カードを見せて必死に説明していたのはそういうことだったんですね」
めぐみんは頷きながら勝手に納得します。
あの衛兵達、私が本当にベルとパーティーメンバーなのか証拠見せないと通さないと言って聞きませんでしたからね。
本当に私をなんだと思っているのか。
「私は正しい判断だと思うけど。だって、カズハってロリコンで引きこもりの犯罪者予備軍だし」
「アクア!そういう偏見やめてください!あと私はロリコンじゃないです!大体何度もいってますが私はノーマル....」
「じゃあ、ここにカズハさんのことをお姉ちゃんと呼んでくれる愛らしい幼女がいます。どうしますか?」
「もちろん、その場で私の妹として迎えて家に連れて帰るに決まっているじゃないですか!」
そんな運命の出会いがあれば、私はすぐさまその子の手を握り家に駆け出します。そして、なかむつまじくくらし、姉妹愛を永久に育むのです。
「みなさい、めぐみん、ベル。これが真性の変態よ」
私に手を向けアクアはとんでもないことを言ってくれます。ベルとめぐみんは私から数歩ほど後ずさります。
「こいつ、早く警察につきだした方がいいんじゃないか?」
「すみません、カズハ。しばらくちかづかないでください。ちょっと危険を感じるので」
「二人までなんですか!あとめぐみんその引きかたは本気で傷つくからやめてください!」
なんですか、ちょっと姉妹に憧れている位でとやかくと。大体、貴女達だって、永久中二病の爆裂魔に巨乳好きのオッサン幼女じゃないですか。
「もし、カズハがお縄になるようなことがあったらちゃんと新聞の取材ではこう答えておくわ『何時かやると思ってました』って!」
「アクア、もし私が捕まるようなことがあれば絶対にどんな手段を使ってでも道連れにしますからね。おぼえておいてください」
私はやると言ったらやる女。私が例え地獄に落ちることになったとしてもこの駄女神だけは一緒に引きずり込んでやります。
「ねぇ、カズハ?もしかして怒ってる?気のせいか出会ったときと同じ目をしている気がするんだけど?気のせいよね」
「アクアがそう思うならそうですよー。....いつか覚えてなさい」
「今ボソッと怖いこといった!?」
アクアへの意趣返しもすんだ私は気分も一転させ一路、あの廃城へと向かいました。
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「しばらく、みないうちにまたボロボロになってないか、この城....」
ベルは、城のあまりの変わり様に呆然としていました。
かつて、何者をも寄せ付けぬ堅牢さを感じさせた整然とした城壁はひびだらけでもはや一部は崩れ去っています。
何個かあった見張り台も今にも崩壊寸前のものが残るのみ。
とはいえ、城本体の部分はまだ原型をとどめており建物として機能はまだ維持されているといっていいでしょう。
「まあ、アクセルの街がクレーターになるくらいは打ち込んだはずですからね。むしろなぜあれだけの原型をとどめているかの方が謎です」
「私としては、爆裂魔法で消し去れないものがあるとか耐えられないんですが。今すぐ、消し去ってやりましょう!」
めぐみんが杖を城に向け構え始めたので、羽交い締めにして私は急いで止めにかかります。
「やめなさい!もし、本当に消え去ったらどうするんですか。まだ、中に軍資金が残ってるんですよ!やるんなら洗いざらい持っていったあとです」
「わかってたけど、最終的には撃つんだな。俺、複雑な気持ちなんだけど」
ベルは苦笑いしながら自嘲気味に言います。幼女になって生き延びている方がよっぽど複雑だと思いますが。
まあ、それは言わぬが花というやつですね。
めぐみんが落ち着いてから私達は城内の探索をはじめました。
城内は意外にもそれほど崩れておらず、なんの危険もなく私達は進むことができました。
「しかし、あれだけ打ち込んだのに内部はこんなにも正常に保ててるなんて異常です。ベルの結界ってそんなに強力なんですか?」
「何をいっている?俺は結界なんぞ仕掛けてないぞ。元々強力なのがあったからな」
えっ?爆裂魔法を何十発も耐えられる結界がもとからあった?なんですかそれ、怖いんですが。
「成る程、もしかしたら建国戦争の時、我々の先祖が作ったものかもしれませんね」
私が結界について考えていると後ろのめぐみんが気になることをいい始めます。
「なんですか、建国戦争って?」
「知らないんですか?そう言えばカズハはどこか遠い国から来たんでしたっけ。
建国戦争とは、その名の通り、このベルゼルク王国が建国に至った戦争のことを言います」
私、この国の名前初めて知ったんですけど、そんな怖い名前だったんですか。
「古代魔導大国であったノイズが滅びた後、ノイズの本国があったこの地域は長らく、魔王の領土でした。
しかし、ある時アーサーという騎士がこの地にやって来て魔王軍の砦の一つを一人で落としたのです」
一人で要塞落とすって、それ何て言う化け物ですか?普通に考えればアクアが送り込んだチート持ちさんでしょうか。
「何でも千の松明を集めたかのような輝きをはなつ、どんなものさえ切り裂く剣を持っていたとか。
アーサーの噂は瞬く間に大陸中の国々知れ渡ります。アーサーはそれを利用し領土奪還を各国に宣言し、各国から志願兵を集め軍を組織。
まるでどこかで王様をやっていたかの様な手際のよさだったそうです」
へえ。どこにでも天才っていうのはいるもんですねぇ。そのチート剣のお陰というのも大いにありそうですけど。
....しかし、なんかどっかで聞いたことのあるような剣ですね?どこでしたっけ?
そんな私の疑問もありつつもめぐみんのお話は続きます。
「瞬く間に、アーサーの軍はこの地を人間の手に取り戻しました。
その姿は狂戦士のごとしと称えられ、当時のエリス教法皇からベルゼルクの名とこの地を封じられ、今のこの国があるのです」
「面白かったですけど、紅魔族と何の関係があるんです、その話?」
「実は大いにあるのです!紅魔族、生誕の地も実は旧ノイズ領内にあり、祖先の土地を取り戻すために紅魔族はアーサーに大いに協力したのです」
なるほど、紅魔族は民族離散しかつての土地を取り戻すために戦ったのですね。
面白種族と思っていましたがそんな悲惨な歴史があったとは考えを改めなければいけませんね。
「まあ、先祖は特に生誕の地とか興味なかったらしいですが。かつての土地を取り戻すために戦う自分達カッコイイと立ち上がったそうです。
この城も、その名残でしょう。使いもしないのにこれだけの強力な結界をノリで貼るなんて我々しかしませんから」
...私、紅魔族って嫌いです!
あれ、そう言えばアーサーって....。そうです!アーサーに千の松明を集めたかのような輝きをもつ剣と言ったらエクスカリバーですよ!
え、まさか本物が?待ちなさいチート剣を手にいれた日本人が適当に名乗っているだけの可能性もあります。
そもそも、伝説では本物は湖の乙女に返還されたはずですし。
「アーサー君かー、懐かしいわね」
駄女神がポツリとなにかを懐かしむようにそんなことを言いました。
「あの、アクア?アーサー君ってまるで知り合いみたいですけれど?」
「あら、カズハ。私のコネクションに興味津々のようね。いいわ、教えてあげましょう。
アーサー君は私が見習い時代に初めてチートをあげた子なの」
「ははは、面白い冗談ですね、アクア。それだとまるで貴女がエクスカリバーを授けた湖の乙女じゃないですか」
「ああ、そうそう。見習いの時はそんな風に名乗っていたわね」
否定してくださいよ!大体、神様の見習いってなんですか!認めない、認めないですよ!
これがアーサー王伝説の湖の乙女とか、絶対に認めてなるものですか!
「チートをあげたのはいいのだけど、ちょっと色々とかわいそうなことになっちゃってね。
しかも、当時の同僚が人間に手をだしちゃったり、マーリンとか言う魔法使いが夢魔だって気づいて捕まえたりと色々とあってね。
あんまりだから、またチートあげてこの世界に転生させてあげたの!」
「認めませんよ!そんな話、嘘です、嘘だと言いなさい!」
「嘘じゃないわよ、全部本当よ本当」
嘘です、嘘だといってください!私の中のアーサー王伝説像が崩れます!こんな、アホが湖の乙女とかあってたまりますか!
「なんですか、じゃあここはアヴァロンだとでも言うんですか!」
「そうですよ」
私がアクアのあまりの妄言に反論しているとめぐみんが唐突にそんなことを言いました。
「何を言い合ってるのかは知りませんが、アヴァロンというのはこの大陸の名前です。知らなかったんですか?」
あまりの現実に私は気を失いかけます。みるとアクアは胸を張り見なさいった通りでしょと言わんばかりの態度です。
...よし、忘れよう。今の話なかったことにしましょう。
「城の来歴とかの話はもういいです!今はお宝です!お宝!ベル、軍資金やらがかくしてある部屋にいくにはどうしたらいいんですか!?」
「そう大声を出すな、....えっと、まず、そこにある花瓶に入っている赤い石を通路の右にある石像にいれる」
なんか、RPGによくあるギミックのやつですね。
「それをいれたら隣の塔にある絵画を逆向きにしろ、そうすれば上への道が開ける」
「....なんか、めんどくさいんですけど。他に道ないんですか?」
「こんなのでめんどくさがってたら後が辛いぞ。これはあくまで上へいくための通路を開く仕組みだからな」
「は?ベルさん、軍資金が隠してある部屋はちなみにどこに?」
私の疑問にベルは幼女らしい屈託のない笑みで答えます。
「もちろん、最上階に決まっているだろう?」
......
「アホですか!アホなんですね!なんで自分が住むところにこんなめんどくさいギミック仕掛けるんですか!
いちいち、あがる度こんなバカやことしないといけなんですか!」
RPGではよくありますけれども、こんなの実在したら邪魔でしかありません。上いくためだけになんで城中をかけずり回るはめになるんですか!
「仕方ないだろうが!これが魔王の幹部のダンジョンのお約束なんだからな!
大体、わざわざ作ったのに一度も使われなかった俺の哀しみがわかるか!折角、お前達が来ると備え、凝りに凝ったのだぞ!」
確かに、折角作ったゲームのギミックがプレイヤーに使われないことぼど悲しいことはないでしょうけど。あまりにも面倒すぎるんですが。
「本来であれば、仕掛けにあわせ部下のアンデッド達が襲ってくるとか色々仕掛けていたんだ、それを、それを....!」
ベルは本気で悔しかったらしく、突然その紅い瞳からボロボロと涙をこぼし始めます。
「あっー!わかりました!わかりましたから、ちゃんと真面目に攻略しますから落ち着いてください!」
「本当か?」
ベルは瞳を涙で濡らしながら上目遣いで聞いてきます。ヤバイです、幼女の上目遣いって破壊力が強すぎます。
コイツ、分かっててやってるんじゃないでしょうね?
「はい、ほんとうですから」
「よし、やったー!」
何がそんなに嬉しいのかベルは跳び跳ねて喜びます。その姿は、幼女にしかみえません。
気づいてるか知りませんが大分精神汚染されてますね、この元デュラハン。
そして、私達は石像を動かしたり、絵を特定の順番にならべたり、特定の方向にしか行けない床の部屋から脱出したりと様々なギミックをクリアしていきました。
「ハァハァ....。いつもとは別方向に疲れます。なんか、動かしたりするギミック多すぎません?大分疲れるんですけど」
「大がかりな方がそれっぽいだろ」
同意はしますが、もう少しどうにかしてほしかったんですが。
しかも本人はギミックの内容は部下に考えさせたとかでほとんど解き方知りませんし。
「カズハ、このダンジョンはいいですね!私、初めて爆裂魔法以外で皆の役にたった気がします!」
という訳で、ギミックの謎解きは知力が高いめぐみんと知力は平均だけど発想力の豊かな私の役目になっています。
めぐみんは魔法以外で役に立てると大喜びですが気にしてるんなら他の魔法も覚えてください。
「私、ここつまんなーい、早く帰りましょうよ」
アクアはギミックの謎解きを早々に諦め、一人で遊んでましたが飽きたらしく、駄々をこね始めています。
「後もうちょっとなんですから我慢してください....ここのつまみを引けばっと」
私が隠し扉のスイッチを押すと壁の一部が沈み込んでいき、最上階への道がひらけます。
入ってみるとそこは玉座だけが置かれた殺風景な大広間でした。
きっとここでデュラハンだったベルが待ち構え、最終決戦を始める算段だったんでしょう。
「しかし、他の場所よりも瓦礫やらひび割れがひどいですね?最上階なのにどうしてでしょう?」
広間は天井から落ちた瓦礫や倒れた柱などでひどい有り様でした。
壁の一部にはちょっと力を加えれば崩れ去ってしまいそうな場所もありました。
「ああ、恐らくこの部屋に手を入れすぎたためだろうな....。大広間にするために部屋やら柱やらとっぱらったからな。
こうしたほうがボスの間っぽいし闘いやすいだろう?」
成る程、この玉座の間自体、ベルのお手製なんですね。この城、確かに王族とか領主が住むためのものじゃなくて完全に戦闘用の要塞ですもんね。
こんな、無駄に広い玉座の間があるわけないですね。
「しかし、まあ、みないうちに大分汚れたなぁ。住んでいたとき毎日、掃除を欠かさなかったというのに」
「幹部みずから掃除してたんですか?」
「勿論だ。これだけの広い城だといくら手があっても足りなかったしな。
それにこういう雑事を一緒にやることで部下との絆も深まるというものだ。
....まあ、どこかの頭のおかしい奴のせいで毎日掃除してもすぐ散らかったんだがな」
ベルはめぐみんの方を恨めしそうにみます。
「な、なんですか?私は悪くありませんよ、あくまで魔王軍幹部討伐のためにやっただけで....」
「別に今さらなにも言わん。ただ、どこかの誰かのせいで毎日、毎日、仕事を台無しにされた奴がいるというだけの話だ」
全然なにも言ってなくないですね。バッチリ恨み言いってます。しかも、なにもを言わずにめぐみんをジッーとみているのがたち悪いです。
めぐみんもさすがに罪悪感を感じたのちょっと震えてますね。
「ねえねえ、みてみてカズハ。う◯こよ、う◯こ!」
コイツはコイツで小学生みたいなこといってますし。
「アクア、一応は貴女も女子なんですからもう少し言動は慎んだ方がいいですよ?」
「だって本当にあるんだから仕方ないじゃない」
と、アクアが指差す方をみると確かに立派なう◯こが。
「....ベルまさか貴女達....」
「バカなこと言うな!アンデッドが糞などするわけなかろう!」
じゃあこれは誰のなんです?ここにあるということは私達以外になにかがいる?
そこまで考えたとき、玉座の裏から黒い影が出てきました。きっと玉座の裏を寝床にでもしていたのでしょう。
大きくあくびをしたそれはこちらを向き私たちを視界にとらえます。黒い毛に包まれた大きなからだに口から飛び出した鋭く長い二本の牙。
そう、そいつは
「しょ、初心者ごろし!?な、なんでこんなとこに!?」
「恐らく、ゴブリンの住みかにするための下見だろう!人のいない廃墟などやつらの絶好の住みかだからな」
「ちょっと止まってください、ここはあのギミックを解かないとはいれないはずじゃあ?」
いくら知能が高いといっても、獣にあの仕掛けを解けるとは思えません。
「いや、日常生活用の仕掛けのない裏口があるから恐らくそっちから来たんだろう。....おい、待てなぜ襟をつかむ?」
「おい、じゃねーよ。え?何、裏口あるんですか」
「ああ、あるぞ。そうじゃないとこんなめんどくさい城すめるか」
「それ、私がさっきいった奴です!私たちの努力はなんだったんですか!というか、他に道があるか聞いた時言ったことは嘘だったんですか!」
「人聞きの悪いことを言うな。俺はほかに道があるかと訊かれたときはぐらかしただけで嘘などついておらん」
あっ、確かに今、思い出すと上手くはぐらかされています。
「確かに黙っていたことは悪かった。だが、だが血と汗であるこのギミック達をどうしても誰かにといてほしかったのだ!」
どうしよう、児童虐待をしてしまいそうなんですが。
「まて、落ち着け。まずは目前の敵をどうにかするべきだろう」
確かに、目の前にいる初心者殺しは今にも襲いかかってきそうです。
仕方ないので私はベルを解放します。
「ここは俺にまかせておけ。獣の一匹や二匹、わが敵にあらず!」
そう言ってベルは剣を片手に初心者殺しに向かって飛びかかります。
向こうもそれを察したらしく、初心者殺しもその巨体からは想像もできない速さでベルへとその牙を向けます。
そして、ベルと初心者殺しは空中で交わり、カキンという音が大広間に響きました。
ベルと初心者殺しが地に着いた時、カランと初心者殺しの牙が床に転がりました。
「ふん、たわいない」とうしろをふりむき追撃を仕掛けようとするベルの足元に。
とめるまもなく見事にベルは牙を踏みつけスッ転びます。
「なああああ!」
そして、ベルは動かなくなりました。...えっ?
「ちょっ!なにやってるですか!早く立ち上がってください!」
残ってるメンバーではとてもじゃありませんが初心者殺しなどの相手はできません。特にめぐみんは論外ですし。
「フッ、俺はここまでのようだあとは任せたぞ」
「転んだだけでしょうに何を大袈裟な!」
一応、アクアが応急処置のために駆け寄ります。初心者殺しはベルに警戒してか今はこちらを威嚇するだけにとどまっています。
「あら、これ結構、瀕死ね。回復にはしばらくかかるわ」
「転んだだけですよね!スラペ○カーかなにかなんですか、貴女は!」
「カズハ、カズハ、これをみてください。」
後ろからめぐみんがなにかを手渡してきます。どうやらベルの冒険者カードのようですが。
「これがどうしたんですか?別に変わったところは....はあぁぁ!?耐久値が一桁ってこれ!」
私はあまりの内容に驚愕の声をあげます。しかも、ソードスキルばっかで防御スキルはゼロ。ダクネスとは真逆の構成です。
「貴女もマゾだったんですか....?」
私はドン引きしながら目の前のメイド幼女に聞きます。
「違うわ!剣の道を極めるためには防御など不要。一撃必殺、相手の攻撃を見極める目、それさえできれば防御など不要なのだ!」
あっ、わかりました。コイツもダグネスやめぐみんと同じタイプのバカなんですね。
クソッ、私の仲間になるのはこんなのばっかりなんですか!
というか、そろそろ初心者殺しがこっちに襲いかかってきそうなんですが。ヤバイです、マジヤバイです。
いったいどうすれば、そうです!ここはダクネスに時間稼ぎをしてもらって....ってダクネスはいないんでした!
よくよく考えるといつもダクネスが敵を引き付けてくれていたおかげで策をたてたり、建て直しをすることができたんですよね。
いなくなって初めてあの子の大切さがわかるなんて。
そんなことを考えているあいだに初心者殺しは完全に臨戦モードに戻り、こちらに飛びかかってきます!
「あああ!もうだめです!私が悪かった、悪かったですから!....助けてダクネス!」
私は混乱し、いもしない仲間へとつい助けを求めてしまいます。迫る牙と口を見ながらここまでかと諦め、目を閉じます。
しかし、私の体を初心者殺しの牙が貫くことはいつまでたってもありませんでした。
疑問に思い、私が恐る恐る目を開けるとそこにいたのは。そこにいたのは金髪碧眼の凛とした女騎士。
彼女が剣で初心者殺しを押し止めていました。
「な、なんでここにダクネスが....?」
私の疑問にダクネスは何でもないことのように、当然のことのようにいいます。
「前にも言っただろう?姫を守るのは騎士の当然の勤めだ」
そんな、歯の浮くような台詞を必死に初心者殺しを押し止めながら言うダクネスは悔しいですが、本当に悔しいですが、お伽噺に出てくる騎士のようで。
見惚れてしまうくらい綺麗で格好いいと感じてしまいました。
「実を言うとだな。ここでこっそり修行をしていたらお前の声が聞こえてな。....しかし、しかし、こんな、こんな獣に迫られるとはずるいぞカズハ!」
ああもう、なんでこの子は一瞬ですべてを台無しにするんですかね!しかし、時間稼ぎにはなりましたよ。
「ダクネスっ!私にデコイをかけてください!」
「な、何をいっている!?そんなことをしたら!」
「そうですよ、カズハでは初心者殺しはとても....まさかカズハもマゾヒズムにめざめました?」
めぐみんがあまりにもバカなことを言うので食い気味に叫びます。
「違います!作戦です、作戦!いいからダクネスは早くかけてください、あとアクアは俊敏性をあげる支援魔法をお願いします」
「え?わかったわ!」
デコイと支援魔法を受けた私はダンジョン探索のために持ってきていたロープの片方を自分にもう片方を柱の一本に巻き付けます。
そして、ダクネスに初心者殺しを解放する様に指示します。
「一、二、の三でそいつを離してください!」
「本当に大丈夫なんだな!?」
「ええ、大丈夫です!私を信じてください!」
「わかったいくぞ....一、二、の三っ!」
私はその言葉を聞くと一斉に駆け出します、今にも崩れそうな壁の方へと。
もちろん、初心者殺しも一目散にこちらへと私を追いかけ駆け出してくれます。
そのまま、私は初心者殺しと一緒に壁に激突し、私の思惑どおり壁は崩れ私と初心者殺しは一緒に落下します。
「「「カズハッ!?」」」
三人が突然のことに驚愕し、走ってくるのを見ながら私は落ちました。
そして
「ぐえっ!」
体に巻き付けていたロープのお陰で、私は空中で止まります。
これ予想以上にかなり痛いです、中身が出るかと思いましたよ、絶対二度とやりません...。
地面を見ると初心者殺しのなれの果てと思われるぐちゃぐちゃの肉のかたまりがありました、グロいです。
「おーい、カズハー!大丈夫かー!」
上から私の無事を確認しようとダクネスの声が聞こえます。
「大丈夫ですから!このまま引き上げてください!ゆっくりでおねがいしますよー、これ結構お腹に食い込んで痛いんで!」
「ああ、わかった!今から引き上げるぞ!」
その言葉とともにロープが少しずつ引き上げられ私の体も少しずつ上がっていきます。
「うんっ、くっ!...カズハ、お前、結構重た」
「それ以上言ったら本気で怒りますよ?」
デカイ脂肪のかたまり2つもつけている、ダクネスに言われたくありません。
私がそんな太ったわけ...ちょっと肉ついたかもしれませんね、最近出かけてなかったですからね...ちょっと運動しよう...。
と、考えている間にもロープは巻き取られていき無事に私は皆のもとに帰ってきました。
「お前は臆病者の癖に時々考えられないくらいのムチャをするな...」
ダクネスが責めるような視線を向けてきます。
めぐみんもその後ろで、同意ですとうなずいています 。
「さすがに、自分が助かるとわかってなかったらやりませんよ。あんなこと。かなり丈夫なロープでしたし、本当に最悪の場合はアクアに蘇生してもらおうかと」
「言っとくけど、こんな高さから落ちてたら、体が原型とどめてないからできないわよ」
「マジですか」
「マジよ」
アクアの言葉に私はさきほどの初心者殺しの肉塊が頭に浮かび震えます。
こういうのは一時のテンションとノリでやるもんじゃないですね…本当、気を付けよう…。
と、その時ダクネスと目が合います。すると後ろからはじっーと私をみる、めぐみんとベルの視線が。
...わかってますよ!言えばいいんでしょう!
「...ダクネス...今朝はひどいこといってごめんなさい。...それから...助けてくれてありがとう...でも、いつも私も迷惑かけられているんです!ですから、おあいこです!おあいこ!」
何でか知りませんが、無性に恥ずかしいんですが!
「珍しく、ツンデレのカズハがデレたわ!明日はデストロイヤーでもくるんじゃないかしら!?」
そんな気持ちも露知らず、アクアはいつものように茶化してきます。
「誰がツンデレですか!?バカなこといっているとひぱったたきますよ!後、結局デストロイヤーて何なんです!?」
私がアホなことを言うアクアの顔を塞ごうとしていると、ダクネスは顔を赤くしてどこか恥ずかしそうに頬をかきます。
「...私も色々と悪かった。勝手に出ていったことは本当すまない。わざわざ探しに来てくれたのだろう?」
あー、ダクネス視点だとそう見えるんですね。どうしよう、ベルの軍資金を取りに来たを言いにくい雰囲気です。
と、私が困っているとアクアのヒールで回復したらしいベルがひょこひょこと玉座のうらに歩いていきます。
「いでよ、我が財宝よ!」
その声とともに、ゴゴゴと玉座の周りの床が競り上がっていきます。
「さすがに時間かけただけあって我ながら惚れ惚れする、壮観な仕掛けだな!」
ベルは自慢げに胸を張ります、これを造っていたベルやアンデッド軍団を創造するとなかなかシュールなものがありますね
「ちなみにこれなんのために作った仕掛けなんです」
「もしも、ここで俺が倒された時、倒した者たちへの褒美として出てくるようにな...魔王の幹部を倒した勇者は褒美を得る、お約束だろう?」
うん、そうですけど何で魔王の幹部がそれをわざわざ用意しているのかがなぞなんですが...。
ベルは当然といった風ですし、これがこの世界の常識なんでしょうか?
「カズハ、これは一体何なのだ?お前達はわたしを探しに来たのでは...?」
「あー、あとで説明するので、ちょっと待ってください」
「お前がそういうのなら待つが...」
凄くダクネスが不審そうな目でこっちをみています。真相が明らかになるのが怖いです。
「何をくっちゃべっている?そんなことよりも見ろ美しくも恐ろしい刀剣の数々を...ああ、素晴らしきかな!」
ベルはへんなテンションになってますしほっておきましょう。しかし、軍資金とやらは結構な量がありますね。
これなら借金返済も?...ようやく、ようやく、借金から解放され、自由を手にいれるときが来ちゃいましたか!?
崩れた壁から見える夕日も私を祝福してくれているかのようです!
うん?なんか夕日の向こうに影みたいのが見えますね?
こう言うときは千里眼、千里眼っと。...なんです、これ?でっかい金属製の蜘蛛に乗ったお城?
形はかなり違いますがハ◯ルの動く城みたいですね。あちらは鳥でしたけど。ファンタジー世界ですし、割りと良くあるものなのでしょうか?
「ねー、アクア向こうにでっかい蜘蛛の形をした動く城みたいのがいるんですけど。ああいうのってよくいるのですか? 」
その言葉を発した瞬間、明らかに場の空気が変わりました。アクアは唖然とした顔で口を金魚のようにパクパク動かし、めぐみんは天を仰ぎ始めベルは顔面蒼白になっています。
ダクネスに至っては覚悟を決めたようにも、何かに歓喜してるかのような謎の表情をしています。というか、その顔どうなってるんです?
とても表現のしようがない凄まじい表情なんですが。
「デ、デ...」
口をパクパクしかさせていなかったアクアが意味のある言葉を発し始めました。何か変な電波でも受信しましたかね?
「デストロイヤーよ!!」
アクアのその恐怖が混じった叫び声が広間を包みます。
だからデストロイヤーって何なんですか!?
16巻最高過ぎたんですが暁先生。このすばの真骨頂を見せていただきました。