この鬼畜姫に祝福を!   作:パイン村

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お久しぶりです。
大分、間が開いてしまい申し訳ありません。
少し、私生活がごたついていました。

とりあえずは月一ペースで投稿できると思います。
どうか、これからもよろしくお願いします。



第27話

 アクセルで名を轟かした冒険者である私達は、無茶苦茶な理屈で国家反逆罪に問われましたが、一計を案じ騎士の手を逃れました!

 

 しかし、身を隠した先で燻っているような私達ではありません!

金と安全さえ確保されればほどほどに頑張る私達、駆け出し冒険者Cチーム!!

 

 え?Cがなんの略ですかって?Crazy(頭おかしい)に決まってるでしょう。

 

 私は、何故かリーダーをやっている冒険者、佐藤和葉。通称、鬼畜...おい、誰です、この台本用意したの。

後で覚えておきなさい。

...取り直して、計略、策略の名人。

私のような天才的戦略家でないとあの変人達のリーダーはつとまりません。

 

こずるいのまちがいでは?

カズハのどこが天才なのかしら?

カズハ、お前は間違えなく鬼畜姫だ!

 

一回、黙りましょうか!というか次めぐみんですよ!

 

 あっ、はい!

我が名、めぐみん!二つ名を頭の...ちょっといいですか、この台本を用意した奴の家を吹っ飛ばしに...先に続き?

わかりましたよ。

我が必殺の爆裂魔法であらゆるものを滅ぼしてみせましょう!

 

 じゃあ、次は私ね。

待たせわね!私はアクア!女神(笑)ア...これアンタが用意したんじゃないでしょうね!

...まあ、いいわ、アークプリーストとしての腕は天下一品よ!

そしてその正体は...なんでみんな可哀想な子を見る目をするのよ!

 

 ダクネスだ。通称、変態...、くっ!自分で言わせるとはなかなかわかってるではないか!

後で、名前を...いいからつづきを?...わかった。頑丈さには自信がある、大抵の攻撃なら防ぎきってみせる!

剣術?...すまん。

 

 ベル...いや、ベルディアだ。 通称、おっさん幼女?...これ考えた奴、斬っていいか?

剣術には自信がある。切れる物ならすべて斬ってみせよう。紙装甲?当たらなければどうということはないっ!

 

 私達は、この理不尽で不条理な世界にあえて挑戦します。

アクセル近郊限定で、活動中、駆け出し冒険者Cチーム!

助けを借りたいときは、金額と内容によって考えさせてもらいます。

 

 

「ってなんです、これ!」

「うるさいぞ、さわぐと独房にうつすぞ!」

「...すみません」

 

 なんだ、夢ですか。こっちが夢ならよかったのに。

私は看守さんに謝罪すると再び、布団のなかに潜りました。

今、私は何本のも鉄格子に囲まれた暗く狭い空間に閉じ込められていました。

 ええ、そうですね。刑務所、正格にいえば警察署に備えられた拘置所ですね。

 はい、あのあの普通に捕まりました。本職相手に目潰しだけで乗り切ろうとか甘すぎましたね。直ぐ甲冑(かっちゅう)を着込んでるとは思えない早さで回り込まれましたよ。なんです、あれ? 本当に同じ人類なんですかね。

 

 ギルドのみんなに助けを求めたら、みんな最初こそ横暴だとかセナとか言うあの検察官につかかってくれましたが、共犯に問われる可能性があると手のひら返しでいつかやると思ってただの、好き勝手いい放題で、裏切りやがりました。…覚えてろよ、あいつら。

 

「おい、ちょっといいか?」

「なんですか、看守さん?私もう寝るんですが?」

「いや、寝るのはいいがその前にあれを何とかしろ。目について仕方ない」

と看守さんが指で指し示した先には三角座りでどんよりした空気をだしている、自称女神もといアクアがいました。

 

「なんで、カズハだけじゃなくわたじまでぇぇ」

 

 もちろん、私が道連れにしたからです。アクアだけは絶対に道連れにするって言いましたからね、私。有言実行です。

というか、こんな世界に送り込んだのだから責任とってあたりまえでは?

なんでも国家転覆罪は協力者も罪に問われるそうでアクアがいかに私と協力関係にあったか懇切丁寧に説明したらしっかりと連行してくれました。

 

「そのうち泣きつかれて寝るから大丈夫ですよ。じゃあ、私、寝るので」

「アンタねぇ!少しは気にしなさいよ!普通あそこは私を守るところでしょう!」

と私が眠ろうとするとアクアが大声でわめき始めました。

 ああ、もうこれだからこのかまってちゃん駄女神は。

 

「大体、テレポートを使ったのはウィ...もがぁ...!なんで急に口を塞ぐのよ!」

 

 あなたが余計なことを言おうとしたからですが。

私はわめき続けるアクアに看守に聞こえないようささやきます。

 

「お姉ちゃんのことは言っちゃだめです。調べられたらすぐにリッチーだってばれますよ。

 お姉ちゃんに隠し事とかできると思います?」

「できるわけないわね」

「幸い、冒険者連中は私以外、誰がデストロイヤーに残っていたか、把握していませんでした。

 あとは貴女さえ黙らしておけばお姉ちゃんに疑いの眼は向きません」

 

 アクアが何故か絶句します。姉のために尽くすのは妹としては当然でしょうに。

 

「...私は協力しないわよ。なんでアンデッドを守らなくちゃいけないのよ」

「でしょうね。ですから、こうします」

 

 そう言うと、私はアクアに刻まれた服従のスペルに触れます。

 アクアもさすがに気づいたようで顔が髪の毛と同じくらい真っ青になっています。

 

「アクア、取り調べの時、ウィズお姉ちゃんに言及するのを一切禁じます。私たち以外に誰かいたことも言っちゃだめですよ」

「...アンタ、いままでなんやかんや使わなかったのにウィズの事となると躊躇なく使ったわね」

 

 私とて好き好んで他人への絶対命令権とか使いたくないですからね。一応、女の子同士とはいえ犯罪臭しかしません。とはいえ、お姉ちゃんのこととなれば別です。私が使えるものすべてを使って守るのは当たり前でしょう。

 

「私、パーティーでの一番の危険人物はめぐみんだと思ってたけど、違ったうわ。カズハが断トツで一番ヤバイわ」

「ハイハイ、何でもいいですから。寝ますよ。明日から取り調べなんですから。本当に街を救った英雄にこの扱いあり得ないですよ」

 

 私は恨み言を連ねながら床につこうとするとアクアが何故か止めにはいってきます。

 

「ちょっと待ちなさい、もうすぐ時間なんだから」

「時間ってなんの話ですか?私は眠いんで、寝ます」

「ちょっと話くらい聞きなさいよ!」

 

 私は騒ぎ続ける、アクアを無視し布団を深く被ります。看守さんも完全に諦めたようでもはやなにも言ってきません。

そして、布団のなかに潜ると、ふと冷静になります。

 普通に考えてこれってヤバイ状況ですよね。お貴族様に害を加えた出身地不明、借金持ちの駆け出し冒険者。

うん、裁判で勝てる気がしません。死刑かな、死刑になっちゃうんですか私。

私が何をしたって言うんですか!ああ、本当に日本に帰りたいです...。

 

...つい、一人じゃ心配だからとアクアを道連れにしちゃいましたけど悪いことをしまし...違います、

私はあくまでもおしゃべりなアクアの口を確実に封じるために道連れにしたわけであって、アクアがいれば寂しくないとか、なんやかやあの子のバカみたいな明るさに助けられてるとかそんなことは全然思ってません。

 別にアクアとかいなくても平気です。寂しくなんて全然ありません。ほんとうです。ええ。

って私は誰に向かって説明してるんでしょうか?

と不安で私の思考が明後日の方向に飛んでいると、牢屋の外から複数の足音が聞こえてきます。

どうやら新たな犯罪者がつれられてきたようです。おそらく向かいにある牢屋に入れられるのでしょう。

 

「おい、こらもうちょっと丁寧に扱え!」

「うるさい、チンピラ!さっさと歩け!毎度毎度、問題をおこしおって!ここはお前の家ではないのだぞ!他の囚人にちょっかいを出すなよ」

「ハイハイわかってますって」

と、牢屋の閉まる音がすると足音のひとつがもとの道を引き返してい来ました。

 

どうやら、向いの牢獄に誰か来たようですが、聞こえてきた内容から察するに関わらない方がいいクズと見ました。

というか、どこかで聞き覚えのある声だったような…?

 

「おっ!カズハのところのアークプリーストの姉ちゃんじゃねーか、ということは隣にいるのはカズハか?」

 

 気のせいか、忌々しいチンピラの声が聞こえます。私は布団からを顔をだしアクアの方を向きます。

 

「アクア、あっちの牢屋だけ、クリエイトウォーターで沈めらません?

 魔法とか使えない素材らしいですけどアクアならいけますって」

「いきなり、喧嘩売るとはいい度胸じゃねーか、このくそアマぁ!」

 

 私のその言葉を聞いたチンピラがわめき散らします。

このセリフから、クズさしか感じないこの男は、ダストといいこの街で最低のチンピラ冒険者です。

 

「私が貴方程度に喧嘩うるわけないじゃないですか。これはごみ処理って言うんですよ」

「俺はごみじゃねー!」

 

 ダストは私に抗議しますが、ここに何度も入れられているこいつが何言っても説得力は皆無です。

 

「というか、どうしてここに?あ、やっぱりいいです。どうせ、下らない理由でしょうから」

「てめぇ、人の心がねえのか? 少しは心配するとかしないのか!」

 

 何を言っているのでしょうか、この男は?

 人間がごみの心配をするわけがないでしょう。大体、こいつのことです。

 文無しで簡易宿泊所がわりに使おうとわざと捕まったに違いありません。

 

「こちとら、お前がやらかしてくれたお陰で支払われるはずだった報償金がおじゃんになって、つけは払えないわ、借金取りに追われるわ、で、仕方なく無銭飲食してわざと捕まったんだぞ!どうしてくれるんだ!」

 

 うーん。ここまで、ひたすら非を他人に押し付ける言動ができるのはある意味才能かもしれません。

私は気晴らしにダストをしばらくいじくるとふたたび床につきました。

 

 

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 そうして、寝静まったあと、なにやら物音がするので目が覚めつぃまいます。

何事かと起きてみるとアクアが私の顔に水をかけようとしていたところでした。

 

「まって!違うの!いたずらとか、そういうのじゃないから!もう時間だから起こそうと!」

「ほう?それはどうもありがとうございます。お礼をしてあげますから、そこになおりなさい」

「カズハ、一旦落ち着きましょう!本当に誤解な」

 

 アクアが醜い言いわけを繰り広げている、そのときでした。

牢屋の窓から見える丘が一瞬強く光ったと思うと、それはすぐさま凄まじい閃光と爆発に変わりました。

 

「ちょ…!まさか、あれは!?」

 

 この爆発の大きさ爆風。見間違えるはずもありません、いやと言うほど見せられためぐみんの爆裂魔法です!

「さっき、時間がどうのこうのと言っていましたね!何をしたんです、言いなさい、言うんです!」

 私はアクアの胸ぐらをつかみ、まくし立てるように言います。

 

「落ちついてカズハ、これは作戦なの!」

「作戦?なんです、それは?」

「もちろん、脱獄計画のよ!」

 

 うーん?馬鹿なんですかね?馬鹿でしたね。脱獄なんてしたところで逃げ切れると本気で思っているのでしょうか。

大体、アクセルは壁に囲まれた城塞都市なので、街からにげるなど不可能にちかいんですが。

 

「…連行されるときに、めぐみんと話していたのはこれですか…」

「ええ、あれは、警察を引き付けるための囮よ!爆裂魔法を撃っためぐみんを今頃、ダクネスとベルが回収してる頃だわ!」

 

 ダクネス、ベル、なぜ止めてくれなかったのです。

 めぐみんの爆裂魔法なんてこの街の住民は見慣れてるのでもう、驚きもしないと言うのに...。

その証拠に、隣の牢獄の男はあの爆音でも平気で寝ています。

と、私がアクアにあきれていると、署員たちの詰め所から声が聞こえてきました。

 

「なんなんだ、これは!?」

「なんだと言われましても…、アクセルでは良くあることでして」

「あんな、爆発音が響くようなこと、よくあるわけないだろう!いいから今すぐ確認に行きなさい!」

 

 どうやらあのセナという、検察官が爆裂魔法に驚き署員たちに、捜査を命じてるようでした。

王都の人たちからすれ爆裂魔法が毎日のようにポンポンうたれてるなんて想像できないんでしょうね。

当然ですが...。渋々ながら署員たちが命令通り外へと出ていきます。

 

「陽動は成功ね。流石私の作戦。いいのよ、カズハ、私を褒め称えて、さあ?」

「じゃあ、自信満々の女神様?この後、の作戦は?」

「え?この後はカズハに何とかにしてもらおうと思っていたのだけど。こずるいこと考えるの得意だし」

 

 ノープラン、つまりノープランなんですね。呆れた私はふたたび布団に潜ります。

 

「まって!ねぇ、待っててば!脱獄のチャンスは今しかないのよ!」

「そんなこと言われても、準備や協力者もなしに脱獄なんて無理ですから。余罪をふやしたいんですか?」

 

私の言葉にアクアはわなわなと震え始めます。

 

「いいわよ!私、一人でもやるから、あれでしょ!協力者がいればいいのね!」

 

 アクアは涙目になりながら、そう言うと手を鉄格子のつけられた窓に向け始めました。

そして、目をつむり、ミョンミョンと言い始めます。

…ついに壊れちゃいましたか。女神をなのる電波系扱いされてましたが、本当の電波ちゃんになってしまうとは。

 

「アクア、ごめんなさい。貴女がこんなことになるまで追い詰めてしまたっんですね」

「ねぇ、なんか勘違いしていない? 正常だから私、正常だからね!?」

 

 いや、一人でミョンミョン言ってる人間がとても正常とは思えないんですが。

そんな、私の哀れむ様な視線が堪えたのかアクアは泣き叫びます。

 

「違うの!これは近くのアクシズ教徒に神託を下していたの!汝、捕らわれの女神を助けるべしってね!」

 

 え?じゃあ、この世でもっとも、はた迷惑な存在と言われている、アクシズ教徒がここに来るというんですか。

絶対にややこしいことにしか…。

 

「アクア様!アクア様!!アクシズ教一の美人プリースト、セシリーが、このセシリーが貴女様を助けに来ましたよ!!」

 

 ほら、変なのがきたましたよ!

私の身長より遥かに高い場所にある鉄格子の窓からおそらく台か何かを使っているのでしょう、金髪碧眼の青い修道服を来たセシリーとか言うらしい女性がこちらを覗いていました。

 

「すみません。間違いですのでお帰りください」

「いきなり拒否られた!?誰ですか貴女!?私はアクア様を救いに来たのです。邪魔立てするなら許さないわよ!」

 

 アクアに様付けするんなんて!この人とても正気とは思えません。

間違いなくこの女性は頭がおかしいと噂のアクシズ教徒にちがいありません。

 

「助けに来てくれたのね!さあ、早くここ助け出して!」

 

 牢屋で縮こまっていたアクアが私を払いのけ、必死に助けをもとめます。

 この子は自分の信者に助けてもらって恥じとかないんでしょうか?

 

「ええ、今すぐにでも!…あっ」

 

 それまでのりのりだったセシリーはは何かに気づいたようで固まってしまいます。まさか、この人…。

 

「貴女、もしかてなにも用意せずここに来たんじゃ、ありませんか?」

「ギック!…そ、そんなわけあるわけないじゃない!アクシズ教徒はやればできる子。

 そう聖典にも、書いてあります。ちょっと待ってください、今脱出の道具を」

と、それだけ言うとセシリーはすごい勢いで自分の服や荷物をまさぐり、なにかを探しはじめました。

おそらくは用意し忘れた脱出用の道具の代わりに成るものを探しているのでしょう。

 

「あ!これなら…!さあ!用意はできました!」

と彼女が自身満々に窓から投げ入れて、きたのは金属製のスプーンでした。

しかも、使用済みらしく固まったご飯粒がついています。

 

「いや、この汚ならしいスプーンで何をしろと?」

「汚ならしいとは失礼な!美少女の唾液のついたスプーンなのよ!銀製のスプーンよりはるかに価値があるわ!」

 

 美少女?私は自信満々にそういうセシリーの顔をまじまじと見ます。

 確かに顔のパーツは整っており、美しいと形容できるかもしれません。

が、しかし、それを相殺して余りある、とてつもない、アクアに匹敵するダメオーラを感じます。

この女性は間違いなく、アクアと同等かそれ以上のトラブルメーカです。

 

「アクア、やっぱ帰ってもらっていいです?私、この人と相容れそうにないです」

「私の大切な信者を勝手に帰そうとしないで!私の下僕が失礼したわね。で、えっと、貴女名前は?」

 

 おい、いつ私の下僕になったんですか。

むしろ下僕は貴女でしょう。

私は抗議の視線を送りますが二人は無視し会話を続けます。

 

「セシリー、セシリーです、アクア様!」

「いいわ、セシリー。貴女の作戦を聞かせてちょうだい!」

「いいですか、アクア様。そのスプーンを使い看守の目をくぐり抜けながら穴を掘るんです。そうすれば簡単に」

「ここの床、金属製で掘るどころかスプーンのほうが折れ曲がるんですが」

 

 私の指摘にそれまで自信満々に語っていたセシリーはそのまま固まります。

 

「それに、そもそもの方法だと下手したら年単位の時間かかりますよね?その前に私達処刑されちゃいますよ」

「もちろんわかっていたわ。これはほんのジョークよ。本番は明日。アクア様、まっていてくださいね!」

とセシリーはそれだけ言うと拘置所から逃げるよう去っていきました。

 

 時を同じくして、爆裂魔法の調査に駆りださられていた署員も戻ってきたので私は再び床についたのでした。

 アクアは一人なんとも言えない表情で一人たたずんでいましたが。

 

 

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「起きろ!さあ、一緒に来てもらおうか。今から取り調べを始める!」

 

 私が毛布にくるまり、ほどよい暖かさの中、安眠しているとあのセナとか言う検察官にたたき起こされました。

 

「何ですか、こんな朝早くに。私、朝は弱いんです。あと、一時間寝かしてください」

「もう午後だ!というか貴様さっきもそう言って寝てただろう!ふざけてるのか!」

 

 どうも二度寝をしていたらしいですね。

 というか、私のろくでもないお願いを聞いてくれるとか変なところで律儀ですねこの人。

 私は仕方なく毛布からでるとアクアを起こし、セナさんと騎士たちのの先導で取り調べ室に向かいます。

 

「さあ、それぞれ別室で取り調べを行う!先に貴様から中に入れ!

 貴様らの言い分を聞いてから起訴するか決める。

 発言はすべて記録され、裁判になった場合、証拠となることもある。発言はよーく、考えたうえですることだな!」

 

セナさんは刑事ドラマで聞くようなセリフをいうと私の手を引き、取り調べ室へと引き入れます。

アクアもアクアで涙目になりながら隣の部屋へと連れていかれました。...変なこと言わないといいんですけど。

 さて、取り調べ室の中は、中央に木製の机と小さな椅子があり、入り口の横には供述を記録するためか紙と鉛筆を持った騎士が小さな机と椅子に控えています。

 うん、刑事ドラマで見たまんまの風景です。違いと言えば椅子がパイプ椅子ではなく木製なことくらいですね。

 私はついてきた騎士に促され中央の机の前の席に座らせられます。

私が席につくと無言で騎士が背後にまわります。おそらくは暴れてもすぐ取り押さえられようにでしょう。

取り調べ室という非日常空間、重武装の騎士二人。

異様なプレッシャーで吐きそうです…。本当に私がなにしたっていうんですか。

と私が悲しみにくれているとセナさんが目の前の席につき、机の中央に小さなベルを置きました。

なんに使うのでしょうか?と、私が怪訝な目でベルを見ているとセナが口を開きます。

 

「これがなにか知らないようだな。これは嘘を見破る魔法具だ。便利なものでな、司法機関では重宝されている。

 この部屋に仕込まれている魔法と連動し、そのものの発言に虚偽があればすぐに音がなる。

 その事を頭において発言するがいい。…では、話を聞こうか」

 

 くっ!何でこういう技術は、現代社会を上回っているんですか!

 だから、この世界嫌いです。あせる私をセナさんは冷たい眼差しでこちらを見つめてプレッシャーを与えてきます。

そして、私のことがか書かれているらしい紙を手に取ると冷たい声で聴取を開始しました。

 

「ふむ、サトウカズハ、年齢16。職業は冒険者。…町で遊んでいた女児たちに不審な行動を繰り返し、補導されているな」

「あ、えっと、それは、違うんです!そう私は子供たちとただ遊びたくてですね」

 

 チリーン。

 

「ほう?ベルがなっているがそれでいいのか?」

「すみません、本当は可愛らしい子に私の妹になりませんかと声をかけていました。

 あとついでに愛らしい、童女と戯れかったんです」

「...あ、ああ、そうか」

 

 あれなんか、ドン引きされてません?可愛い子を妹にしたいというのは万人に共通する願いだと思うのですが。

 

「妄想癖に幼女性愛、同性愛の傾向ありと」

 

 供述をとっている騎士の手がうごきます。

 

「いや私はロリコンでもレズでもない――チリーン。

「とりあえず、もうそれでいいです…」

 

 何か言えば言うほどどツボにはまっていく気がします。

セナさんの目がすごく蔑んでるというか、引いているような目になっているのは気のせいでしょうか。

 

「…では、次だ。出身地とアクセルに来る前はなにをしていたかを聞こうか」

「出身地は日本で女子高生をしてまし

――チリーン。

「いえ、学生を

――チリーン。

「経歴、出身地詐称と」

「なんでですか!嘘はついていませんよ!」

 

 ちゃんと日本にいたころは女子高生をきちんとやって…やって…

 

「出身地は日本です。…毎日、引き込もって自堕落に暮らしていました」

 

 今度はベルはなりません。

セナさんはこちらをキッとみます。

 

「なぜ、学生など見栄をはった?」

「いえ、見栄をはっていた訳ではないんです…。ないんですよぉ…」

 

 ちゃんと籍はあったんです。いや、制服をきたのすら数える程度ですけども。

 

「出身地はニホン?聞いたことがないが、まあ、辺境なのだろう。では、なぜ、冒険者になったか動機を聞こう」

「それは当然、魔王軍に苦しまされている人々を救うために――チリーン。

「魔王を倒すとか冒険とかかっこ良さそうですし、楽にもうけられそうじゃないですか。それに、命をかけてモンスターと戦ってるって言えばみんなからちやほやされるんじゃないかなと」

「そ、そうか」

「何で引くんですか!世の中の冒険者なんて、大体こんなもんでしょう!」

 

 大体、冒険者なんて、家も継げず、かといって兵士とかにもなれそうもない、農家の次男坊とかが仕方なくなるような職業ですよ!

みんな大体クズです、アクセルの冒険者を見てればわかります!

 

「よし、では領主殿に恨みなどはなかったか?借金を背負った際に色々と愚痴っていたようだが?」

「いえ、デュラハンの討伐の件は経緯を考えれば仕方ないことですよ。町を守ったとはいえ、あそこまでの被害を出した以上、私達がその責を負うのは当然で――チリーン。

「…」

「…」

 

セナと私は無言でお互いを見つめ会います。

 

「まあ、最初はそんな感じの理屈で自分と仲間を説得しましたが、本音を言えば町を救った英雄にこの仕打ちですか?

 というか、街を守るのは領主の責任なんじゃないですかと、思いつつ、絶対、いつか復讐してやるとずっと思ってました」

「そ、そうか」

 

 セナは引きながらも後ろの騎士と目を合わせます。きっとこの供述を裁判の証拠とするつもりでしょう。

この供述はさすがにまずいです、早くなんとかうまくごまかさないと!

 

「いえ違うんです。確かに思ってましたけどそれ実行に移すかは別の話じゃないですか!

 それに私があんな証拠が残る手段をとる訳が」

「証拠が残らなければやっていたと?」

 

墓穴です、墓穴を掘りました!セナの目がどんどん厳しくなっている気がします!

 

「いえ、今のは言葉のあやで本心では―ーチリーン。

「いえ、確かに領主を恨んでいましたが復讐の計画なんてかんがえたことも――チリーン。

「いえ、少し、ほんの一瞬考えただけ――チリーン。

「ああ、もうっ!チリン、チリンうるさいですねッ!」

 

 私は激昂しつい、ベルを机の外になげてしまいます。

 セナはそれを動じることなく、ただ見ると、落ちたベルを拾いあげもとの場所に戻します。

 そして、再び私と再び向き合い、一言。

 

「では、気が済んだようだな。これで聴取を終わりに」

 

 ヤバイです!このままじゃ死刑まっしぐらです!何としても今までの供述をひっくり返さないと!

 

「待って!待ってください!もう、この際ストレートに聞いてください!

 私は魔王軍の手先か!とか、領主を狙ってやったことか!

 というか、もういいです、自分で言います!――私は!、魔王軍の手先でも、領主を暗殺しようとしたこともありません!

 今回のことは完全な潔白です――!」

 

 室内のすべて目が、ベルへと向きます。...当然ベルはなりません。

「ハァ、ハァ...。どうです...。これで...疑いは晴れましたか....」

 

 私は大声で叫んだことで酸欠なりながらもセナに尋ねます。

セナは先ほどまでの、険しい顔とはうって代わり、優しげな顔になり、そのまま深々と頭を下げました。

 

「...申し訳ありません。どうやら、私の思い込みだったようですね。

 気を悪くされるかもしれませんが、町で貴女の悪い噂を聞いていたもので。

 はぁ...アルカンレティアの一件もあって、先走らないように注意してたつもりなのに...。

 また、上司にどやされる...」

 

 セナはため息をつきながら、頭を抱えています。

どうやら、今までのは容疑者にたいする仮面だったようでこちらが素なのでしょう。

...強気だった人が急に、弱気になるとなんというか、いたずら心がくすぐられますね。ありもしない容疑で疑われた恨みもありますし、ここは...。

 

「検察とも、あろう人が、証拠ではなく噂で人を判断するのはいかがなものなんでしょうね。

 あくまで、犯罪者じゃない一般市民としての意見ですが」

「すみません、すみません!」

「いや、別に責めてる訳ではないですので。というか、ここ、お茶の一つもでないんですか?」

「失礼いたしましたっ!今すぐにっ!」

 

 セナさんは急いで立ち上がり、お茶の準備をしてくれます。

...これは気分がいいですね、疑いも晴れたことですし、あとは好きにさせてもらいましょう。

と、そこにセナさんが戻ってきました

 

「どうぞ...」

 

よほど、私に対して後ろめたく感じているのか、彼女はゆっくりと私にお茶を差し出します。

私は、それを一口すすると、

 

「ぬるいですね。検察官さんですし、別にお茶がうまく入れられなかろうと、関係ないでしょうが。

こんなこともできないと大変じゃないんですかね。

 彼氏さんとかも、そのキツそうな態度と相まって全然できないんじゃ?

 折角ですし、この魔道具使いましょうか?お付き合いとかされたことあるんですかぁ?」

「ありませんが」

 

その声はとても冷たく、身も凍えるようでした。

「ええ、性格が災いして、男性とのおつきあいなんてこれまでありませんとも。それがどうかしましたか?」

 

 セナさんは、無表情で淡々と語りかけてきます。ベルは一切なりません

 

「...ご、ごめんなさい」

「あまり、調子に乗らないでくださいね」

「はい...」

 

 場の空気は氷付き、セナさんもただ黙ったこちらを見つめてきます。き、気まずいです。なにか、話題を変えないと...!

 

「そ、そういえば、悪い噂ってなんですか?

 私が町の子に話しかけていたとかだけなら、ほんとうにいかがわしいことはしてないですからね」

「...いえ、ほかにも、パンツ脱がせ魔だの、...パーティーメンバーを奴隷にしているだとか、ダンジョンに置いてけぼりにただとか...人間性を疑うようなものばかりで...どうしたんですか?顔が青いですよ」

 

…。

セナさんは、不審な私の挙動を見て疑いの目を向けてきます。

「噂ですよね」

「ええ、もちろ――チリーン。

 

セナさんの表情が一気に険しくなります。

 

「...あくまで、私が調べているのは今回の事件についてですから、それにパーティー内のことですから深くは追及しませんが、

 ...もう少し自らの行いを顧みられるべきかと、巷ではあなた、鬼畜姫だの、カスハだの、クズハだのと...」

「なんですかそれ!?女の子につけるあだ名じゃないですよ!」

 

 絶対に広めたやつはとっちめってやります。ですが、思い当たる節はないではないので、ここで強く否定はできませんが! 

とはいえ、今回の件とは無関係、私の無罪は揺るぎません!

 

「まったく、念の為確認させていただきますが、本当に魔王軍とは関係はないんですね。魔王軍の関係者と知り合いだとか、仲間だということは」

「私にそんな、知り合い、いるわけ――チリーン。

 

 私は、そのベルの音を聞いて、ああ、そういえば、お姉ちゃんは現役魔王軍幹部だし、元幹部はうちのメイド兼パーティーメンバーだったなーと、思い出していました。

 

私、この魔道具嫌いです!

 




愚か者によれば、セシリーめぐみんと別れてからも、結構長い間、アクセルにいるっぽいんですよね。
まあ、セシリーなら結局、ずっとアクセルにいたってオチもさもありなんだと思い早めに登場させてもらいました。
え?愚か者の話を採用するなら、ダストは、ベルディア戦の時、拘置所じゃなく町にいたはずでしょって?
...世界線が違うってことで....。
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