話は変わりますがこのファンのめぐみんの星四がいつまでたっても来てくれません。
めぐみんさえ、いてくくれば星四で原作パーティー組めるのに...
「なんでよぉおお!私は、本当に女神なのっ!全世界一億人が崇める、女神アクアなのよぉぉ!」
取り調べが終わり、私が牢屋に戻されると、アクアがまた、一人泣きわめいていました。
「...一応、聞いてあげます。何があったんですか?」
「聞いて、聞いてカズハっ!あの魔道具おかしいの!私、本当に女神なの!鳴ったのぉお!
検察の人には、なんかかわいそうな子みたいにみられるしぃぃ!」
「ああ、当然ですね」
「なんでよぉおお!」
まあ、普通に考えれば、女神ってだけ言えばいいのに、この子が無駄に全世界一億人の信者がいるとか余計な装飾つけて、それに魔道具が反応したんでしょうね。
わざわざ、指摘してあげるつもりはないですけど。
この様子なら、お姉ちゃんのことはばれてないようですね。では、思い残すことはありません。
「何で、だれも信じてくれないのよぉ!私は本物の」
「アクア、ちょっと静かにしてくれますか」
「...どうしたのよ。ここから出るいい方でも思いついた?」
「いえ、もうダメっぽいので辞世の句を読もうかと」
「カズハ!諦めないで、カズハさん!カズハが諦めたらおしまいよ!?」
「露と落ち、露と消えし、我が身かな、異界のことも...」
「カズハさぁぁぁん!」
アクアが泣きわめきながら体をゆすってきますが、正直どうにもならないことはどうにもなりません。
詰みです。ここから逆転する目が思い浮かびません。本当、墓穴ほったなぁ...。
「ふっ、なさけねーな、カズハ」
「...なんですか、ゴミ」
「だから、俺の名はダストだっ!」
よほど、私が哀れに見えたのか隣の牢のダストが話しかけてきました。
正直、このチンピラの相手をする気分でもないのですが。
「いいか、冒険者なんてのは一度警察のお世話になるくらいで一人前ってもんだ。
俺なんて、警察の世話に何度なったか」
何を誇っているのでしょうか、このクズは。面倒を見させられているリーンが本当にかわいそうです。
まぁ、この男なりに励まそうとしているのでしょうけど...。
「そういえば、お前、明日が裁判だったな。よし、いいもの食わせてやる。ここの看守はごねるといいもの持ってくるからな。...おい、飯がクソまずいぞッ!女将だせやこらーッ!」
そうしてダストが、大声を出しながら騒ぎ始めます。最初は、無視していた職員たちも聞くに堪えなくなり、やがて、調子に乗るなとダストはぼこぼこにされ、しばらくサンドバッグにされていると静かになりました。
気絶したのかなと?様子をうかがうとどうやら気絶したふりをしていたらしく、看守がいなくなったのを見計らい、もぞもぞと動き出します。
「チッ、こちとら、善良な利用者だっていうのに何てことしやがる。まあ、財布掏れたしよしとするか」
...自分のことを利用者と形容する囚人を初めて見ましたよ、私。しかも、余罪を重ねてますし。
まあ、私もこれくらい図太くあるべきなのかもしれません。いえ、決してああはなりたくないですが。
明日もあることですし、さっさと寝ましょう。きっと明日になれば、明日の私が打開策を思いついてるはず、きっと、多分...。
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そして、深夜、私が寝静まっていると、かすかな振動とバカでかい爆音で目が覚めます。
まあ、考えるまでもありません。めぐみん達でしょう。
...あの子たち、よく捕まりませんね、とっくに犯人は特定されているはずなのですが?と、そんな事を考えていると、牢の窓から聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「アクア様、アクア様」
みると、昨日と同じように窓からアクシズ教徒のセシリーがこちらをのぞき込んでいました。
「助けに参りましたよ、アクア様!」
「いや、帰ってください」
「帰らないわよ!というか、また、あなたね!というか、聞いたわよ!貴方、勝手にめぐみんさんの姉を名乗っているそうね!何かってなことをしているのよ!めぐみんさんのお姉ちゃんは、この私だっていうのに!」
え?この人、めぐみんの知り合いというか、お姉さんなんです?いや、それにしては、髪は黒くないし、目も紅くないんですけど。そもそも、めぐみんは自分のことを長女だといっていたはずです。
「貴女、紅魔族にはとても見えませんが?それにめぐみんに姉がいるなんて話聞いてませんけど?」
「それは、そうよ。私とめぐみんさんは、魂の姉妹ですからっ!」
「そうですか、わかりました。頭がおかしいんですね」
「人の信者を頭のおかしい子扱いしないでくれるかしら。後、カズハも似たようなもんでしょう」
「うわっ!」
いつの間にか、目が覚めていたらしいアクアが急に私の後ろから話しかけてきます。
「なんですか、驚かせないでくださいよ、アクア。あとあれと一緒にしないでください」
「なんですかって、何よ。私の信者なんだから、私が相手にするのは当然でしょう」
正直、この二人を引き合わせたらとんでもない方向に暴走しそうなので、できればさっさとこのセシリーさんとやらには帰ってほしいのですけれども。
とはいえ、めぐみんの知り合いだというのであれば無下にするわけにもいきません。
「で、結局、あなた、めぐみんのなんなんですか。本当のことを言ってくださらないと信用できないんですが」
「勝手に話進めないで。私、大切な信者と勝手に話しないで」
なんか、めんどくさいことを言っている女神は無視しつつ。
「仕方ありませんね。そんなに聞きたいというのであれば、私とめぐみんさんの出会いについて語ってあげましょう!」
なぜ、この人はこんなににうざったいのでしょうか。アクアが二人に増えた気がします。…頭が痛いです。
「いや、いいです。貴女とめぐみんの関係だけ語ってください」
「仕方ありませんね。時間もないですし、まあ、以前、プリーストとしていろいろとめぐみんさんを助けてあげたのですよ」
うーん。まったく信じられませんが、めぐみんがこの場にいない以上、真偽を確かめることができません。
「まあ、いいです。ということは、今回、めぐみんをけしかけたのは貴女ですか?困りますよ、近所迷惑だからやめるように言っといてください」
「いいえ、私は、めぐみんさんが爆裂魔法を使う算段をギルドで話していたのでそれに乗じただけですよ」
え?
「当然ね!だって、めぐみんに私たちが脱獄できるまで、繰り返すようにお願いしといたもの!」
この駄女神は何を言っているのでしょうか。というか、犯人わかってるだろうに、止めない警察もどうかしています。
「馬鹿なことを考えるのは、この頭ですね?この頭なんですね!」
「痛っ、痛い!やめて、髪引っ張らないで!」
「貴女がバカなことばかりさせているからですよ!めぐみん達まで捕まったらどうするんですか!」
「アクア様に何をしているのよ!めぐみんさんに飽き足らず!」
「貴女もばかなこと言わないでくれますっ!?」
どいつもこいつも私を、そんなに幼女性愛者に仕立て上げたいのですか!?
ため息をつきつつ、アクアから手を放し冷静になります。
「で、結局あなたは何しに来たんですか?とても、あなたが脱獄を手助けできるようには思えないのですが」
「本当に失礼ですね、貴女。とはいえ、ギリ、私の守備範囲です。セシリーお姉ちゃんと呼んでくれてかまいませんよ」
「いやです」
なんなんですか、この人は本当に。
「つれないですね。まあ、いいです。今日はちゃんと脱獄の準備をしてきましたから。見てください、これを!」
セシリーが取り出したのは、巨大なペンチの様な工具でした。しかし、ペンチとは違い、先に鋭い刃がついており、鎖程度であれば壊せそうです。
「まあ、確かに、それなら鉄格子も壊せるかもしれませんが、こっちからその窓まで手が届きませんよ」
セシリーがのぞき込む窓は脱獄対策なのかこちらからは手も届かない高い位置にあります。
「それもぬかりありありません。脱出用のロープも用意してきました。これで完璧ですよ。...あれ、意外と固いわね、この鉄格子」
さすがに脱獄されないように特殊な金属を使っているのか、鉄格子はびくともしません。その様子を見てしびれを切らしたらしいアクアがセシリーに話しかけます。
「ちょっとセシリー、私に貸してみて、今度は私がやってみるわ!」
「はい、わかりました、アクア様!」
セシリーはアクアの言う通り、工具を牢屋に落とします。絶対に手が届かない高さに窓がある牢屋に。
「あれ、これどうやって窓に?え、えっと?」
「あなた、こうなることに気づかなったんですか…」
「な、なによ。わかってたなら、止めなさいよ!」
いや、私、脱獄しても逃げ切れる気がしないので、最初から手伝う気ないですし。
「いや、ま、まだよ。ロープで工具を回収してもらえば!」
「あっ、やばい看守が戻ってきました!ここでつかまるわけには!私にあったことはめぐみんさんには内密に!」
といって、セシリーは逃げ去っていきました。そして牢屋には工具を持ったアクアと私だけが残されました。
「...どうしようかしら、これ」
アクアは、手に持っていた工具を差し出してきました。
うーん、証拠隠滅しないと、まずいんですがここの窓は高くて私ではとても投げ入れることはできません。...あ、そうだ。
私は、看守がまだここには戻ってきていないことを確認すると、向かいのいびきがうるさい金髪のゴミが眠っている牢に工具を投げ入れます。
「よし、うまく入りましたね。これで私たちが疑われることはありません」
「あんた、本当によくやるわね...」
「大丈夫ですよ、あの男なら余罪増えてもどうってことないですって。さ、寝ましょ」
アクアは微妙な表情を浮かべつつも、こくんと頷き、そのまま私たちは牢獄生活二日目の眠りについたのでした。
翌朝、向かいの牢にいた屑が看守にどこかにつれていかれましたがそれは些細なことです。
目を覚ました私たちは、看守たちにつれられ、中央広場にある裁判所までつれられてきました。
法廷は、現代日本のものとそうちがいはなく、裁判官の席が正面にあり、左右に弁護側と検察側の席。
そして中央には証言台と偽証を防ぐためでしょう、あの嘘を判別する魔道具があります。ええ、一般的に想像する、裁判所のイメージと変わらないといっていいでしょう。
中央に証言台と一緒に処刑用のギロチンさえ置いていなければ。
この世界には三審制なんてものはもちろんなく、一回の公判で判決が決まれば即処刑らしいです。私の判決はほぼ決まったようなものだから、先に用意してくれてるらしいですよ。
優しいですね。
ははっ...。
畜生、私がなにしたって言うんです!
しかも、結構な見物客が集まってますし、まあ、娯楽が少ないこの世界じゃ裁判も死刑もいい見世物なんでしょうね。
ギロチンは絞首刑よりも楽だって聞きますけど本当かなー...。いたくないといいなー...。
「カズハ、諦めないで、女神が処刑されるとかあり得ないから!」
「そうですよ。私たちがついているのです何一つ心配することはありません!」
そう、めぐみんが弁護側の席からいいます。そうです、なぜだか私たちの弁護はパーティーメンバーが行うことになったのです。
そもそも、この世界、弁護士という仕事がないらしく、裁判の弁護は自分でやるか、被告人の知人か友人に頼むらしいです。
...ヨーロッパじゃローマの時代からいるらしいのになんで、そういうところだけ違うんですか、この世界。
「大丈夫です。紅魔族は知能が高いのです。そこらの検察官など簡単に論破してあげますよ」
めぐみんは目を煌めかせながら、自信満々にいいます。
「そうだカズハこの件についてはお前はなにも悪くない。もしもの時はわたしがなんとかしてやる」
そのとなりにいる、ダクネスもそんな頼もしいことをいってくれます。いつもの二人なら心配ですが今の二人なら何とかしてくれるのではないでしょうか。
ええ、そうです、こんなところは終わる私では――
「カズハ、今気づいたのだけど、よくよく、考えたら私、聖職者なのよ。それもアークプリースト。私の言葉にはかなりの説得力があるはず。
それに、私、昔、裁判で無罪を勝ち取るゲームとかよくやっていたの。そうよ、このアクア様に任せれば無罪は確定よ!」
「フッ、、任せろ主よ。俺にも冤罪かけられた経験がある。その経験に学んだ、この俺が無罪を勝ち取ってやろう」
あっ、ダメだこれ。
弁護側というか、被告側にどうしようもないのがいます。
「アクア、ベル、お願いしますから黙っててくださいね。私も手荒なことはしたくないので」
「なんでよ!私、女神よ!勝利に導くに決まっているじゃない!」
貴女に勝利に導かれたことなど一度もない気がしましすが。
「なぜだ、主よ。これでもだな、俺は裁判にかけられた経験が...」
「いや、ベルあなたの経験って、処刑されたときのですよね。しかも、冤罪じゃないですし」
「なっ、あれは冤罪のですー!いいか、あれには聞くも涙の話が」
「いいから、黙ってないと、無理矢理黙らせますよ?私にはそれができるってわかってますよね?」
「「あっ、はい」」
本当におとなしくしていてくれればいいんですが。やはり、ここは服従のスペルで無理矢理にでも――
「静粛に!」
その時、木槌の音ともに裁判長の声が法廷に響き渡ります。
「これより、被告人サトウカズハ及びアクアの裁判を始める」
ああ、ついに始まってしまいました。泣いても笑ってもこれですべてが決まります。本当、どうしてこうなった。
と、その時、検察側の席に座る偉そうなおじさんと目が合います。
「誰です、あの、薄い本の竿役やるしか能がなさそうな気持ち悪いおっさんは」
「おい、余計なことは言うな。あれが、領主のアルダープだ」
ダクネスがこっそりと耳打ちをして教えてくれます。
「へぇ、あれが...なんかこっちをめっちゃ見てません?」
なんだか、こちらを値踏みするようなねっとりとした視線で、かなり気持ち悪いんですが。
「そうですね、ベルが薄着のダクネスやアクアを見ているときのようです」
「みてないわ!...いや、すこしはみたかもしれんが!」
「そうね、なんだか邪なものを感じるわ。目を潰してきていい」
「やめなさい」
アクアが本当に目を潰しにいこうとするので無理やり、押さえつけます。
あとそこのメイドはあとで聴取と制裁が必要ですね。
と、私たちが騒いでると一人ダクネスだけはじっと領主の方をむいていました。
「どうかしました?ダクネス?」
「いや、なんでもない」
そう言うとダクネスはすぐに視線を戻してしまいました。そういえば、あの領主もこちらというよりダクネスを見ていたような?
「静粛に!被告側、私語を慎むように!」
裁判長の忠告ですぐに私はその考えを打ち消します。ダクネスのことは気にはなりますが今は裁判です。
「それでは、検察官、起訴状を読み上げなさい!」
「では、起訴状を読み上げさせていただきます。被告人、サトウカズハ及びアクアはアクセルへの機動要塞デストロイヤー襲撃時、冒険者を指揮し、これを討伐。
その際、爆発寸前であったコロナタイトの転送を行い、アルダープ候の屋敷に転送させました。これによって候の屋敷は消滅。候は宿住まいの生活を余儀なくされています。
これは明らかに候の命を狙った計画的犯行であり、さらに――」
「異議あり!」
その声が訴状を読み上げようとするセナの声を遮り、議場の視線を集めます。それは、片手を高々と掲げたアクアでした。まさか、この女神、窮地に立たされて覚醒したんじゃ――
「被告人、陳述の時間はまだですよ。また発言は許可を得てからするように。とはいえ、被告人は裁判に不慣れでしょう。発言を認めます」
「いえ、言ってみたかっただけなのでもう、むぐっ――」
「すいません、私が発言します」
私は、馬鹿なことを言おうとした、アクアを押さえつけます。一瞬でもこれに期待した私がバカでした。
さて何を言うべきか。とりあえず、あれは人命を救うためにやったということを強調しておきましょう。そうすれば多少は心象もよくなるでしょうし。
「あの時のテレポートは緊急措置でやむなくしたことであり、人命を救うためにしたことで、非難されるいわれはありませんし。
しかも、あの時、行ったのはランダムテレポートで、領主の屋敷を特定して狙うなんて不可能です」
裁判長は興味深そうにうなづきます。これはいい印象を与えられましたかね?
「お待ちください。まず、危険物のランダムテレポートは法によって禁じられています。
また、被告はランダムテレポートを使ったと主張していますが、それを見た物はおらず、いくらでも偽証が成り立ちます。さらに、被告人両名ははテレポートの技能を所持しておらず、 共犯者がいた可能性あります」
「ほう、どうなのですか、被告人?」
「...黙秘します」
共犯、つまり、お姉ちゃんのことを持ち出されてはここは黙るしかありません。気づいてはないんでしょうけど、何て手を使うんですかこの検察官!
「以上のことからも、私は被告人に領主暗殺未遂で、国家転覆罪の適用を求めます」
セナは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、それに裁判長の言葉が続きます。
「では、被告人陳述に移ります。被告人前に!」
「――というわけで、私はこのような機転と奇策をもって、二度もこの街を救ったのです。その私が国家転覆なんてありえません、以上」
私は計一時間にわたるこれまでの私の武勇伝を話し終えると、やり切った顔で席に戻りました。
「ふう、これで裁判長も私がどういう人間かよくわかったでしょう。この裁判、勝ったも同然ですね」
「いや、裁判長、長すぎてあきれたぞ。結構脚色入ってたし、俺が血も涙もない悪魔みたいな扱いだったんだが」
「冒険譚には脚色はつきものです。嘘はついてません」
ギリギリ、嘘にならなそうな表現を使いましたからね。ですから一度もあの魔道具はなっていません。
なんなら、自叙伝として発売したいくらいの出来栄えでしたとも。
「私の表現に異議があります。本来の私はもっとかっこよくってナイスバディな魔法使いです」
確実な虚偽が含まれているのですが。そんなこと言ったらあの魔道具がなってしまいますよ。
「今は異議は受け付けません。そんな事よりも次、アクアの番ですよ」
「ふふっ、見てなさい私の華麗なる供述ですぐに無罪を勝ち取ってくるわ」
そういって、アクアは颯爽と証言台へと向かいますが何一つ期待できません。
とにかく余計なことを言わないといいのですが…。
「待たせたわね。一千万人の信者がいるこの女神アクアが――チリーン。
「被告人、虚偽の発言は控えるように」
「なんでよぉおお!一億人は言い過ぎたかなって思って、なおしたのにぃぃ!」
一千万でも誇大広告にもほどがあります。アクアの信者なんて精々千人くらいがいいところです。やはりこの子を普通に証言させてたら不味いですね。
私はめぐみんに目配せをし、事前にいっておいたアクア対策を実行に移します。
「裁判長。アクアは昔、頭を打ったせいでおかしな言動が多い子でして、供述の免除をお願いします」
めぐみんが大きな声でそう発言します。めぐみんはアクアの女神、うんぬんは本当に頭がおかしいから言っていると思っていますからね。ですから、これで例の魔道具は一切作動しません。
「...な、なるほど。わかりました。被告人アクアを被告人席に戻すように」
「な、なにをするの!?私は、嘘なんて言ってないのよぉ!確かにちょっと盛ったけどぉ!」
アクアは、法廷職員に無理やり、席に戻されました。なんか、ずっと「ほんとうなのに」とか、ぶつぶ、つぶやいていますが、これでしばらくは大人しくなるでしょう。
「はぁ...。もう、いいでしょう。検察官、証拠の提出を!」
「では、これより証拠の提出を行います。では、まず証人の皆さんお願いします」
そのセナさんの合図とともに騎士たちが、証人らしき人たちを、引き連れてきます。
そこにいるのは冒険者達ばかりというか...見知った、顔ばかり。
「あはは、なんか呼び出されちゃった...」
そう言って、まず出てきたのは、銀髪の盗賊っ子、クリスでした。
不味いです、クリスに関してはいろいろと弁解できないことが...。
「クリスさんは、公衆の面前で下着を剥がれ、また、パットを取られ胸の大きさをばらされ、公衆の面前で辱められたと」
「いや、確かにそうだけど!あれは事故というか、特に後半のことは私も悪かったというか...」
「だそうですが、被告人?」
「いえ、全面的にパットの件は私に非があります。...本当にすみません」
あの件に関しては、クリスに八つ裂きにされても文句は言えないのです。本当に私はなんてことを…。
「ちょっ、何で謝るのさ!もう、本当に気にしてないから!というか、謝られると、むしろこっちが恥ずかしいから!」
「では、ありがとうございました」
セナさんは、早々とを質問を打ち切ると、部下の騎士たちに命じて早々と、クリスを法廷から退廷させます。
そして、次の証人が法廷へと姿を現します。
それは、以前私が魔剣を売り払って以来、何かと絡んでくるソードマスターの御剣でした。しかも、あの取り巻き付きです。
「では、ミツルギさん。貴方は魔剣を強奪されたうえ、売り払われ、さらに無実の罪で拘留されたと」
「異議ありです!この男は、 私達が借りてきた檻を破壊したうえ、いちゃもんをつけてきたんです。無実なんてとんでもないです!」
「被告人、発言は許可を得るように!で、どうなのですか、証人?」
「君って、奴はこういう時まで...。まあ、おおむねその通りです。僕もあの時は頭に血が上っていて――」
「待ってください!その女は、そのあと、私たちの下着を無理やり、はぎ取ったんです!」
「そうなんです、しかも、ノーパンの痴女がいるってこいつが大声で言ったせいで、私達はこの街じゃ、痴女扱いで、うっ、うっ」
取り巻き二人は示し合わせたかのようにそこで泣き始め、御剣はそんな二人の様子に 気圧され黙ってしまいました。
それを見ていた裁判長以下法廷の人々も私に冷たい視線を向けてきます。
うう...、私は自分の身を待るためにやっただけで別に悪いことしてませんもん。だから、そんな目で見ないでください。
それにどう考えても、あれウソ泣きですからね!今、みんなに見えないようこっちに舌突き出してるし!
あの魔道具、言葉にしか反応しないらしいですね。もう、この際、私をウソ泣きしてけなげ少女でも演じてやりましょうか?
そうすれば情状酌量くらいは勝ち取れるかもです。
そうこうしていると御剣が取り巻きにつれられ退廷し、セナさんが裁判長に向き直ります。
「今の彼らの証言で被告人の反社会性を証明できたと思います。そして、被告人は被害者に強い恨みを持っていました。
さらに、被告人自身の証言から、被告人が魔王軍と関係を持っていることが明らかになっています。
このことから被告人は魔王軍と共謀し、事故を装い、ランダムテレポートではなく通常のテレポートでコロナタイトをは被害者宅に――」
「まってください!今までの証拠は、何ら事件の計画性を立証してませんよ!こんなのはただのこじつけです!カズハが性格がひん曲がっている、天邪鬼なのはたしかですけど!」
めぐみん、反論してくれるのはいいですけど、後半の部分は余計ではないですかね!
しかし、確かにセナさんが言っていることはこじつけもいいところですし、こんなのまともな裁判官なら、取り合うわけも――
「弁護側、発言を慎みなさい。何度もいっていますが許可を得てから発言するように。それに検察側の発言は実に合理的で筋が通っていたように感じますが…?」
へ?何を言っているのですか、今の話のどこに筋が...あれ?えっと、確かに筋が通っていたような?
あれ、なんですこれ...。確実におかしいはずなのに、セナさんの言い分が正しいように思えます。
めぐみんも同じことに気づいたようで、どんどんと顔が青くなっていきます。
そんな私たちをしり目にセナさんは机から何かの紙を取り出しました。
「弁護側そういうのであれば、より確かな根拠をだしましょうか。一つ!被告人のパーティーは、はベルディアの討伐において、街に大量の水を召喚し多大な被害を負わせ!」
アクアは肩をビクッと震わせ、ベルは自分は関係ないとばかりに口笛を吹き始めます。
「二つ!共同墓地に巨大な結界を張り、墓地の悪霊の行き場をなくし、街に悪霊を溢れさせ!」
アクアは自分の耳を塞ごうとしますが、私は両手を押さえ無理やり、セナの陳述を聞かせます。
女神っていうんなら自分の行いをちゃんと顧みろっていうんです!
「さらには、連日、街の近くで爆裂魔法を放ち、地形や生態系をめちゃっくちゃにしたうえ、ここ数日は、警察署の近くの丘で夜間に爆裂魔法を撃ち、騒音被害等で厳重注意を受けています」
やっぱり、ばれてたんじゃないんですか。どうするんですか、これ!
と、めぐみんの方を向くと、めぐみんは耳をふさいでそっぽを向いていました。
貴女もですか、こいつら、ぶん殴ってやりましょうか。
もう、いいです。この弁護人には頼れません!自分で何とかしなければ。
「待ってください、それ私たちパーティーの話で、アクアはともかく私には関係ない――」
「また、サトウ被告は、幼女に対する、声掛け事案で度々、警察から注意を――」
ち、違います!あれはあくまで、妹を探してただけで!
あっ!子供を後ろに隠さないで、性犯罪者を見るような目で見ないでください!
「さらに、アンデッドしか使えないはずのドレインタッチを使ったとの情報が――耳をふさいでも聞こえなかったことにはなりませんよ!」
聞こえません!絶対になにも聞こえないたっら聞こえないんです!
「そして、サトウ被告は取り調べの時、魔王軍との交流を否定し魔道具がその虚偽を検知しました。それこそ彼女たちが魔王軍の手先である何よりの証拠です!」
「え~、それは何というか...。ははっ、なんでしょうね?」
やばい、何も思いつきません。とりあえず、愛想笑いしましたが...あっ、すごい睨まれました。
うん、終わりましたね、これ。本当に何も思いつかないですもん。
ごめんなさい、エリス様。できるだけ来ないようにといわれましたけど、今すぐにお会いすることになりそうです。
「それは違うわ!」
法廷に大きな声が響きます。それは、アクアの声でした。
アクアはまるで、推理小説の名探偵のように彼らの論理を論破しようというのでしょう。
まさか、こんなにもこの子が頼りになるなんて...。
「...アクア、私が道連れにしたのに、私のことを...」
「え?とりあえず言いたかったからいっただけよ?」
一瞬でも期待した私が愚かでした。とにかく、判決が下る前に何とかきちんとした反論を...!
と、かんがえていると、幼女メイドが自信に満ちた顔で靴を開きました、おお、さすが、精神的には最年長、駄女神と違って頼りに...
「裁判長、ここに告発します!被告人は確かに魔王軍と――」
「黙りましょうか!いったん黙りましょうか!?」
私は、ベルを羽交い絞めにして、無理やり黙らせます。
「おい、何で裏切った?ことの次第によっては貴女のこと全部、暴露しますよ?」
「いや、よくよく考えたら、お前が死んだ方が俺、自由になれるかなぁって」
こいつ!死刑になったら絶対に道連れにしますからね!と、私たちのやり取りに呆れたのか、偉そうに座っていた領主が立ち上がり――
「もういい!そいつらは、間違いなく魔王軍の手先だ!さっさと死刑にしろ!」
と私たちを怒鳴りちらします。
うるさいですね!そんなわけ――あっ、そうだそう言ってしまえばいいんです!私は、大きく口を開き叫びます!
「そんなわけないですよ!いいですか!よーく、聞くんです!私は、魔王軍の手先ではありませんし!コロナタイトをわざと領主の屋敷に送ったこともありません!」
法廷には、私の言葉だけが響き、そのあとには静寂がしばし続きます。裁判長も、検察官も、傍聴人達も魔道具のベルに視線を一点に集めます。
勿論、ベルが鳴ることはなく、領主は忌々し気に舌打ちをします。
助かりましたよ、貴方のおかげで。魔道具の証言が証拠になるなら今のも証拠になりますからね。いいきっかけをくれましたね。
裁判長はその様子をみて、ゆっくりと口を開きます。
「なるほど。やはり、この魔道具による嘘の判別は曖昧なものです。これを証拠として裁判所が認めることはできませんね。では、被告人両名を嫌疑不十分として」
やった!やりました!無罪です!勝訴です!と、おそらく、無罪の判決が出ようとした、その時。
「まて、その女どもは死刑だ。魔王軍の手先を無罪にするのか」
と、領主がまるで裁判長に命じるかのように言います。
「アルダープ候、私はあくまで国王の臣であり、貴公に指図を受けるいわれは...」
と裁判長はそこで口ごもったまま黙ってしまいます。
...一体どうしたんでしょうか?体調を崩されたのでしょうか?しかし、あの領主は本当にろくでなしですね。
自分の思い通りにいかないから権力で判決を捻じ曲げようなんて。まあ、失敗したようですけど。
「アルダープ候、今回の件は死傷者も出てないようですし、死刑はいささか...。それに国王の名において行われる裁判の判決に口を出すのは、いかに貴方様が大領主だといえども如何なものかと?」
さすがのセナさんも今の領主の行いは目に余ったようで、軽く注意を行います。
いいです、もっと言ってやれです。と、私がセナさんを応援していると、領主はじっとセナさんを見つめます。
すると、
「…いえ、そうですね。死刑が妥当です。検察は死刑をもとめます!」
まるで真逆のことをセナさんは言い始めました。
――は?おかしいですって、こんなのは...絶対に...?いや、えっと、?何がおかしいんですっけ?
あれ、考えがどうにもまとまりません。というか、死刑は妥当なような?...そうです、その方がつじつまが―――
「むむっ!邪悪な気配を感じるわ!何者かが悪しき力で、真実を捻じ曲げている気配がするわ!」
と、その声で、目が覚めます。...というか、今考えてたんでしょう、私?
なんかアクアが突拍子もないこと言ったせいで法廷が混乱してますね。
聖職者のアクアが言ったうえ、あの魔道具もならないとなるとこれは、本当に誰かが?
「間違いないわ!この全世界百万人の信者がいる子の女神アクア――チリーン
「すみません、この子のことは無視してください」
「そうですね。審理を進めます」
「なんでよぉお!チャンと最初より減らしたのにぃぃ!」
そりゃ、貴女の信者なんて千人いればいい方でしょうからね。うん?領主が震えてますがどうかしたんでしょうか?
まあ、そんな事よりも判決です。さっきの流れなら無罪のはず!
「えー、主文を後とし、まず判決理由から述べます。被告人両名は反社会的行為を度々――」
あれ?主文後回しって日本じゃ確か、いえ、ここは異世界、日本の裁判の慣例なんて関係あるはずがありません。
なんか、裁判長が読み上げている判決理由が無罪のものにとても聞こえないのもきっと気のせいです!
そうに違いありません!
そして裁判長からゆっくりと判決が述べられます。
「では、主文、被告人両名を死刑とする」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「いや、待ちましょう!いまのはどう考えてもおかしいですって!まって、淡々と私を処刑台に固定しないでください!無視しないで!話聞いて!というか、もうたすけて!」
「最後に言い残すことはあるか?」
ああ、問答無用って感じですか。そうですね、では最後にやるべきことをやりましょう。
「そこにいる、青い髪のプリーストを解放してあげてください。色々といいましたが彼女は今回のこととは無関係です」
「カ、カズハさぁ~ん!」
隣に一緒に固定されているアクアが、涙ながらに叫びます。ええ、アクアをこんなことにつき合わせるわけにはいきません。
「実は、そこにいるメイドは魔王軍の関係者ですので、あれを処刑してください」
「おい、まて!お前、道連れにする気か!ふざけるな!皆さん、犯罪者のデマに耳かしてはいけませんよ!」
「フハハハハハ!いいえ、貴女だけは絶対に道連れにします!さっき、裏切ったの忘れてませんからね!」
「もうさっさと処刑しろ!」
「こうなったら、わたしの爆裂魔法で裁判所ごと!」
「おい、だれかそこの頭のおかしい奴を止めろ!」
「警備兵!警備兵!」
「静粛に!静粛に言ってんだろうがぁああ!」
誰もかれもが口々に叫び、裁判所は渾沌の渦に叩き込まれます。もう、無茶苦茶です。
と、その時「裁判長!」と誰かがひときわ大きな声で叫びました.
その声は、裁判中、ずっと黙っていた、ダクネスのものでした。皆の視線が、集まると、ダクネスは黙って、胸元から恐らく金細工でできた何かの紋章をかたどったペンダントを出します。
「そ、それは...!あ、貴女様は...」
そのペンダントは、よほど、驚くべきものだったのか裁判長は大きく目を見開いています。
「申し訳ないが、この裁判、私にあずからせてもらえないだろうか?もちろん、なかったことにしてくれというわけではない。
時間さえもらえれば彼らが魔王軍の手先などではないと必ず証明して見せる。
少しだけでいい時間をもらえないだろうか?」
裁判長もセナさんも驚きのあまり声も発せない様で固まったままです。事態を把握できない私たちが困惑していると、領主がひるみながらも抗議の声を上げます。
「いくら、貴女でも裁判への...介入は越権ではないかな?...裁判権は陛下の大権の一つですぞ?」
このおっさん、自分のことは棚に上げてよく言えますね!厚顔無恥とはこのことです!
さすがに、むかっ腹が収まらず、何か言ってやろうとすると、ダクネスに制止されてしまいます。
そこにはいつも被虐的な妄想にふけっている変態女騎士の姿はなく、毅然とした聖騎士の姿だけがありました。
「アルダープ候。被害者である貴方には一つ借りを作ることになるな。私にできることならなんでもしよう。訴えを取り下げてくれというわけではない。ただ待ってほしい」
その言葉に、領主は強く反応し、しばし顎に手をやると、そのまま椅子に腰かけ、口を開きました。
「いいでしょう。貴方の頼みです、その案に賛成しましょう」
それを聞くと裁判長は木槌をたたき、新たな判決を述べました。
「では、被告人サトウカズハ、及びアクアの両名を保護観察処分とし、期間はおって伝えるものとする!」
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「やったわ!死刑じゃないってことはいいことよね!ね!」
「ふっ!これもすべて私の紅い脳細胞のおかげですね!」
「ま!俺は最初からこうなると思っていたがな」
あなた達はほとんど何もしてないと思うのですが。あと、そこの幼女メイド、貴方が裏切ったことは忘れてませんから。後で首以外生き埋めの刑です。
なんにしても、九死に一生を得ました。それもこれも...
「ダクネス...なんというか...ありがとうございます。私のために色々と」
私はダクネスに近づき、小さな声でお礼を言います。
「いいさ、仲間のためなら大したことでもない」
「大したことないって...あの領主、ダクネスのこと変な目で見てましたし、なにされるかわからないんですよ?」
「まあ、大丈夫だろう。…なにをされるのだろうか?」
「なんか変なこと期待してません?」
「していない」
...この変態騎士は全く、私の心配と感謝を返してほしいです。
「一応、本当、今回のことは感謝していますから。...まあ、だからこの借りはいつか絶対に返します」
「...仲間を助けただけだ。気にするな」
「私が納得できないんですよ。まあ、いつか、貴女が本当に困ったときにでも思い出してくださいよ。私はいつも貴女に困らされてますが」
「最後の一言は余計だと思うが...。私のことは聞かなくていいのか?」
ダクネスは、真剣な表情で尋ねます。まあ、ペンダントのこととか、領主の関係とかいろいろと聞いてみたいですが...
「前にも言ったでしょう。言いたいときに話してくれればいいんです。
それに私にとってダクネスはなにがあろうとダクネスですよ」
「そうか」
ダクネスはそれを聞くと、なぜか笑みを浮かべます。何かおかしなことを言いましたでしょうか。
いえ、まあ、自分でも今のはちょっとくさいなと思いましたけど。
「では、すまんが、これからしばらく留守にする。領主との約束があるのでな」
「本当に気を付けてくださいよ」
「まあ、心配するな。...むしろ、ふふ」
本当に大丈夫ですかこの子。と、私の心配をよそにダクネスは夕日の向こうへと消えていきました。
このすばではアルダープの貴族の階級などは一切出てきませんが、本作ではアルダープは侯爵ということにしています。
一応、親族に男爵がいたので、それよりは偉いと思うのですけれど、どうなんでしょう?