この鬼畜姫に祝福を!   作:パイン村

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本当は昨日、投稿しようと思ったんですが間に合いませんでした。
時系列的には、本編より少し後のお話です。
エープリルフール記念短編だけど、特にエープリルフールとは関係ないお話です。
あと、前回このすばに爵位が登場しないなどとふざけたことを申しましたが、すみません。
普通に伯爵も男爵もいましたね、何言ってたんだしょう、私。


幕間

「もう、いやです!いくら借金を返しても、終わらない借金地獄!こんな世界捨てて、また、異世界転生したいです!」

 

 借金を返そうとして、クエストに挑めば、パーティーの誰かしらがやらかしてくれて、むしろ借金が膨らむ日々。

 おかしいです!こんなの私の思い描いてた異世界転生じゃありません!

異世界転生って、もっとちやほやされて、美少女奴隷にお姉さまとかよんでもらえるんです!

 

「まーた、カズハの愚痴が始まったわ。そんなこと言っても現実は変わらないじゃない。それよりもそこにあるせんべい取って」

「アクアの言う通りですよ。異世界…?とか変なこと言ってないでここは真面目に働いてお金を稼ぎましょう」

「そうだぞ、主。現実を見ろ、現実を。後、洗濯物たたむのに邪魔だからどいてくれ」

「悪いことはそう続かないものだ。真面目に生きていれば、そのうち道も開けるさ」

 

 屋敷の広間で、それぞれ休んでいるパーティーメンバーたちは口々に私に現実を見るように説いてきます。

 ええ、確かに、正論でしょう。私を悩ましている原因がこいつらじゃなければ!

 

「なにが道がひらけるですか!私はいつだって真面目に生きてます!というか、こうなったのもほとんど貴女たちのせいでしょうが!」

 

 私の怒声に、皆、顔をそむけ素知らぬ、振りをしてきます。こいつら、本当にぃぃ!

 

「まあまあ、落ち着け、カズハ。怒ってもいいことはないぞ」

「うるさいです!変態は黙っててください!」

「くっ、うぅぅん...できればもうちょっと強めに、雌豚とかもいれてだな」

「あああああああああああああああああああああ!」

 

 もういやです!この子たちになんて付き合いきれません!もう、家出です!家出してやります!

私は怒りに身をませ着の身着のまま、屋敷を飛び出し、街へと繰り出したのでした!

 

 

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「はあ、それで、うちに来たと?」

「ええ、そうですよ、ウィズお姉ちゃん。私は、私なりに頑張ってるんですよ?それなのにみんな私をちっとも慮ってくれないんです。それどころか、最近、皆、私を、レズのロリコン扱いするし」

「それ、は本当のことなんじゃ...」

「何か言いましたか、クリス?」

「いや、なんでもないよ、アハハ…」

 

 家出した私は、そのまま、ウィズお姉ちゃんの店に訪れていました。こういう時はお姉ちゃんに慰めてもらうのが一番です。

 クリスは、どうも、いつもひいきにしている店が休みらしく、それでお姉ちゃんの店でダンジョン探索用の装備を買いに来たらしいのですが...

「えっとですね、これがですね。アンデッド除けの香水になります。アンデッドが多いダンジョンでは、役に立つかと」

 

 アンデッドがアンデッド除けの道具を売るとはなかなかシュールな光景ですね。でも確かに、ダンジョンでは役立ちそうな道具です。買って損はないでしょう。

 

「へぇ、便利そうだね。じゃあ、一つ…」

「ただ、欠点がありまして、この香水、アンデッド以外のモンスターが好む匂いで、一度付けたら向こう一週間は匂いが取れないという...」

「いらない」

 

 ...さすがの、クリスも食い気味に断りましたね。意気消沈しているお姉ちゃんには悪いですけど、さすがにそれを買う人はいないでしょう。

というか、どこから、あんなもの仕入れてくるんでしょうか?仕入れるお姉ちゃんもたいがいですが、作る方も作る方です。

 

「しかたない、今ある手持ちで何とかしようか」

「待ってください!クリスさん、決して悪い商品じゃないんです!というか、これが売れないと、今日の御飯が砂糖水に...!」

 

 いくら、お姉ちゃんがアンデッドとはいえ、その食生活はまずいじゃないんでしょうか。うん…?そういえば...。

 

「あのう、クリスは悪魔とかアンデッドは大っ嫌いでしたよね?」

「もちろんだよ。見かけ次第根絶やしにしないとね」

 

 相変わらず、この話題になると性格変わりますね。よほど、アンデッドか悪魔にひどい目にあわされたことがあるんでしょうか?

 

「あのう、...お姉ちゃんを見て何か思ったりは?」

「なんで、お姉ちゃん呼びかは知らないけど、ウィズさんがどうかしたの?」

「いえ、何もないなら、何でもないです」

「...どうしたのかな?アンデッドについて何か知ってるのかな?...隠し立てしてると君でも容赦しないよ?」

 

 クリスは、厳しい目つきで、じりじりとこちらににじり寄ってきます。怖いんですけど!藪蛇でした、余計なこと言わなきゃよかったです!

 

「落ち着きましょう!何でもないですってば」

「…なら、いいんだけど。でも、本当、アンデッドか悪魔を見かけたら私かアクアさんに言ってね?」

 

「はい、勿論です!」

 

 クリスには絶対に、お姉ちゃんやベル、あの店のことは言っちゃだめですね。

 問答無用で、全員始末されかれません。お姉ちゃんも今のクリスの気迫で、部屋の隅で震えてますし。

 

「あれ?どうしたの、ウィズさんそんな部屋の隅で?」

「いえ、何でもないですよ!あっ、そうだ!カズハさん、異世界転生?というのをしたいって言ってましたね!ちょうどいいものがあるんですよ!」

 

 お姉ちゃんは慌てた様子で、店の奥から何やら懐中時計の様なものを持ち出してきます。

 

「なんです、これ?懐中時計の様ですけど」

 

 それは、一見時計のように見えましたが針はなぜか五つもあり、文字盤はこの世界の文字ですらない、いや文字かどうかも怪しい抽象的なもので、とても、まともに使えるものには見えません。壊れているのか、針も動きませんし。

 

「ウィズさん、これをどこで!?」

 

 なぜか、その時計のようなものを見てクリスが慌てた様子になります。

 

「いえ、この前、行商人さんから買ったものですけど...」

「...結局なんなんですそれ?」

「よくぞ、聞いてくれました。これは再異世界転生体験版です」

「...お姉ちゃんなんて言いました?」

「ですから、再異世界転生体験版です」

 

 …そっか、お姉ちゃん、極貧の生活がたたって、ついに頭が…。

 

「大丈夫です。お姉ちゃんがどんなことになってもちゃんと面倒を見ますから...」

「いや、カズハさん!?何言ってるんですか!?なんで泣いてらっしゃるんです!?」

 

 いや、そりゃあ、懐中時計もどきを、あんな名前で出されたら、頭の正気を疑うのが人間として正常な反応じゃないでしょうか。

 

「もう、まったく。真面目に聞いてください」

 

 私は十分まじめなつもりなのですが。もし、私がおかしいというのなら、この世界がおかしいんですよ。

 

「まあ、いいです。で、これはですね。異世界に転生が一日体験でき、その世界を気に入れば、本当に転生できるというとても珍しい道具なのですよ」

「へぇー、因みにいくらで仕入れたんです?」

「たしか、30万エリスほどだったかと。商人の方が気前がいい人でして300万のところを九割も値引きしてもらったんですよ!」

 

 ...お姉ちゃん、それ確実に詐欺です。300万を九割引きとかふつうあり得ないですよ...。

と、私がお姉ちゃんをだました詐欺師をどう八つ裂きにしようかと考えていると。クリスが真剣な表情で懐中時計もどきを見つめていることに気づきます。

 

「どうしたんです、クリス?」

「これ、多分本物だよ」

 

 え?このふざけた名前の道具が?

 

「クリス、本気で言ってます?」

「本気も本気だよ。この世界には時々神器っていうとんでもない力を持った道具が現れることがあるんだけどこれもその一つだね。この神器ってのは黒髪黒目の冒険者が持っていることが多いんだけど...」

 

 ああ...。わかりました、これ、転生者のチート道具ですか。きっとどこかの馬鹿がほかの異世界に転生できる能力が欲しいとか言って認められちゃったんでしょうね。

 まあ、女神だって持っていけるんですから、そういうこともあるんでしょう。というか、管理していたのがあの駄女神ですし。...しかし、これが本物だというのなら...。

 

「お姉ちゃん、これ買わせていただいていいですか?」

「いいですけど、...お金は大丈夫ですか?」

「...付けでお願いしていいですか?」

 

 

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「で、本気でそれで使うの?」

「もちろんですとも!私は、新たな世界に希望を見出すんです!もう、サンマが畑でとれるような世界は嫌なんです!」

 

 借金も何もかも、異世界転生でリセットです。きっと次の世界では私の輝かしい栄光と伝説が始まるはず!

 

「で、これ、どう使うんです?」

「ああ、それはですね、つまみを回せば転生できるそうでして、その五つの針が、一番上をさせば、体験時間終了だそうです。

 一応、つまみを回せば早く終わらせることもできますよ。...今、気づいたんですけど、カズハさんが転生してしまったら、付けも何もないんじゃ...」

「いざ、いかん新世界!」

 

 私が急ぎ、懐中時計もどきのつまみを回すと、いつぞやのように身体が輝き始めます。

 おお、これで本当にまた、異世界転生が...と、徐々にウィズやクリスの姿が薄れていき、周りが完全に真っ白な光に包まれます。

 そして、気が付くと、何もない、そう、某漫画の精神と時の...って、ここアクアと最初にあった、神様空間?じゃないですか。と、そこに翼をもった天使が現れます。

 

「汝、神との盟約に基づき、...って、貴女、いつぞや、アクア様を連れて行った悪...いえ、少女ですね」

「おい、いま、悪魔って言いかけたでしょう?私、そういうのは聞き逃しませんからね」

「気のせいです、少女よ。えー、何の因果かは知りませんが、貴女があの再異世界転生体験版をお使いになられたんですね」

「あのふざけた名前を真面目に言って悲しくなりません?」

「仕事ですので…」

 

...どこの世界も現場の下っ端は大変そうですね。まあ、私には一切関係ないですけど。

 

「では、とりあえずこれをお回しください」

 

 そう言って天使が出して来たのは巨大な福引のガラガラ抽選器でした。

 

「なんですかこれ?」

「見ての通り、抽選器ですよ。これで新たに転生する異世界を選んでもらいます」

「...自由にえらべないんですか?」

「そもそも、再転生というだけでも特例ですからね。いつぞや転生者がごねてごねまくって、アクア様が仕方なく許可されましたが」

 

 あのアクアを、手こずらせるだけの転生者って逆に気になりますね。まぁ、会いたくはないですけど。

 

「ちなみに、配分は70%が滅亡寸前の赤、29.9%が手遅れの青、残り0.1%がその他になります」

「おい、まて」

 

 おかしいでしょうが!ほとんどいったら罰ゲームにしかならない世界ばっかりじゃないですか。

というか、手遅れって何です!?死ねってか、行って死ねってことですか!!?

 

「色々といいたいことはあるでしょうが、そもそも、移民計画に反する神器ですから、再転生できるだけありがたい話なんですよ?」

 

 くっ、こいつ、私を希望も夢もない世界に送って、元の世界を相対的によく見せるつもりですね!

 そんな、悪辣なたくらみに乗るものですか!そうです、私は運だけはいいんです。白を、白さえ引いてしまえばいいのです!

 

「ふっ、私の運の良さをなめるんじゃないです!無課金で数々のソシャゲをコンプリートしてきたカズハさんですよ!0.1%なんて何のそのです!」

 私が力強く抽選器を回すと、その排出口から一つの丸い玉が転がり出ます、当然その色は――

 

「おおっ!おめでとうございます。白ですね。えっと、たしか、この世界は、っと。あぁ、この世界ですか...。うーん、まぁ、大丈夫ですか」

「なんですか、その心配になる言い方は。なんか、あるんですか!?」

「あー、説明したいのはやまやまなんですが、時間が――」

と、その天使の言葉で気づきます。自分の体が、光り輝き始めていることに。

 え、ちょっと早くないですか!?というか、チート能力は!?

 

「天使さん、いえ,天使様、チートを、チート能力をですね!」

「ああ、今回はそういうのはないんですよー」

 

 そんな、ただの女子高生の私に知識だけで何とかしろってのは無理が――と、そんなことを考 えているうちに、天使の姿薄れていき、ひときわ強い光のあと、私は豪奢な装飾で彩られた、荘厳な広間にいました。

 目の前には金細工が施された、椅子があり、そこになんか偉そうなおっさんが座っているのでたぶんここは玉座の間か何かでしょう。

 よく見ると、私がいる床にはなんか、魔法陣があるので召喚系の転生なのでしょうか。まあ、そんな事よりも、まず――

 

「よくぞ、参られた異界の勇者よ!うむ?どうした勇者よ、わしを物珍しげに見て?」

 

 何で、王様がパンツ一丁なんですか!

いや、よく見ると王様どころか兵士もパンツ一ですし、隣に座っている王女様はさすがに下着だけってことはないですが...何で、スカートはいてないんですか!?

あれか、パンツじゃないから恥ずかしくないっ!的な世界なんですか!?

 

「どうした勇者よ...?そういえば、奇妙な格好をしておるがどうした?」

 

 どうもこうも、どうかしているのは貴方たちの方なのですが。とはいえ、これがこの世界の常識というのなら確かにおかしいのは私の方ですし。

 ああ、ダメです、目の前が変なものだらけで考えがまとまりません。

 王様に至っては、冠の代わりか知りませんけどパンツかぶってますし!一瞬そういう帽子なのかなと思ったけど足通す穴が二つありますし、どうみてもパンツです。

しかも刺繍がきれいな女物!これ、笑ってはいけないとかそういう世界ですか!?

ツッコんでしまいたいですが、王様なんかに失礼なことをしてしまえば、間違いなく首を落とされてしまいます。

 

「...まあ、よい。勇者よこの世界は今、滅亡の危機にある。古の魔王が復活し、人々を苦しめている。異界の勇者よ、かつてこの世界を救った、古の勇者の武具を使いこの世界を救うがよい!」

 

 おお、チート能力をあの天使がくれなかったので、どうしようかと思案していましたが、これは助かりました。

 やはり、異世界転生とはこうではありませんと。伝説の武器で無双して、信頼できる仲間と冒険を繰り広げ、私の名を永遠にこの世界に刻み込むのです!

 

「お任せください、王様。魔王なんてこの私にかかれれば、あっという間ですよ!」

「おうなんと、頼もしい...!兵よ、この勇ましき者に武具を持ってまいれ!」

 

 王様がそう言うと、兵が何やら広間に大きな箱を持ってきます。恐らく、この中に入っているのが伝説の武具なのでしょう。

 私は好奇心を抱きながら、兵士が武具を取り出すのを見ていたのですが...

 

「えっと、これが本当に伝説の武器なんですか?」

「ああ、これがかつてこの世界を救った、古の勇者が使った伝説の武具だ。これを使い、魔王を倒すのだ!」

 

 そこにあったのはとても身を守るために存在するとは思えない、下着のような防具...倒すのだって、これ、あれですよね。いわゆる、ビキニアーマーってやつですよね。

 いや、さすがにこれは...。他人が着てるのを見るのはいいですけど、自分が着るのは...。

 というか、こういうのはダクネスの役割でしょう。って、もうあの子たちのことはいいんです。.

..しかし、どうしたものか。これ着ないと、無礼になるでしょうし...。ああ、そうです、別にわざわざこれだけ着ることないんです。上になにか、着込めば...。

 

「ああ、そうそう、その武具は、それのみ装備しないと効果はないし、それを使わないと魔王は、絶対に倒せんぞ」

 

 くそっ、退路断ってきやがりました。このままではこれを着て冒険をする羽目にそれだけは避けなければ!

 

「うん、どうかしたのか?早く着替えんのか?」

 

 やばい、はっぱかけてきやがりました、この王様。ああ、何かいい策よ、ひらめいてください、って!なんか、魔法陣が光輝き始めたんですが...!

 

「おお、これはもう一人の勇者が召喚される前兆!勇者が二人もいればこの国は安泰じゃ!」

 

 え?これ、まだ転生者いるんですか?...私の活躍の場が減るんでこないでほしいんですけど。いや、落ち着くんです、私!ここで、まともな、転生者が来れば、王様たちを説き伏せられるかもしれません。

 まあ、できなかったもう一人に武具を着てもらいましょう。チート武器は惜しいですが、あれはさすがにないです。いくら私でもないです。

と、そんなことを考えていると魔法陣の上に人影が形作られていきます。

 

「...一体、ここは...。私は戦場で死んだはず...」

 

 あれ、これ中世的な世界観の出身っぽいですね。剣のようなものをお持ちですし。あ、だんだんと姿がはっきりと...ん...んんん!?

 

「おお、よくぞ参られた、異界の勇者よ。この危機に二人も勇者が来るとは大変心強い。...むっ、どうかしたの、第一の勇者よ」

 

 どうもこうないのですが、そこの勇者二号なにも着てらっしゃらないのですが。

いや、正確に言うと、鎧のようなボディペインティングされていますが、筋肉隆々の体に絵の具が塗りたくられているのは余計に変態性を高めています。

 というか、何で誰も突っ込まないんですか!何より恐ろしいのは、あの勇者二号がその恰好を微塵に疑問に思っていないどころか、むしろ誇らしい恰好だと言わんばかりであるところですよ!

 何処の部族の文化なんですか、これ!?もう、帰りましょうかね、この世界でろくな目に遭う気がしません。

 いや、ここで諦めたら、あの世界というか、アクアたちに負けた様で癪です。...仕方ありません、もう少しだけ、もう少しだけ我慢しましょう。

 

「おお、そうか。私はこの世界で第二の生を得たのか。…わかりました、王よ。これも何かの縁、この戦士アレ・ガ・ソリタツの力がお役に立つというのなら存分にその力を振るいましょう」

 

 うん、ツッコミませんよ、絶対にツッコミませんからね!

 もう、嫌だこの世界、やっぱり帰ろうかなと懐中時計もどきを懐から取り出していると、何やら兵士がまた広間に大きな箱を運んできます。

 

「これは、古の勇者が使っていた武具の片割れ。これを使い、魔王を退治するがよい!」

 

 え、もう一つあるんなら、私そっちほしいんですけど...。まだ、男性者方だったらまともな可能性ありますし、と、私がアレ・ガの方に向き直ると、ビキニアーマーを着た筋肉隆々の男がいました。

 

「結局、おんなんじやつなんですかッッッ!?」

 

 あ、ついに、ツッコんでしまいました。ああ、なんか周りの人が奇異の目で見てきてますし、もう、いいです。帰ろう、もうこんなところたくさんです。

これなら認めるのは癪ですがあっちの世界の方がまだましというものですよ。というか、ビキニアーマーを着た筋肉隆々の男という忌まわしい記憶を消し去りたいです。

 耐えきれなくなった私が、懐中時計もどきのつまみを回そうとしたその時、誰かが広間に駆け込んできます。

 

「王よ!久々に転生者が来たというのは本当ですか!?今回はどんな方法で転生者をおちょくるの...ですか...すみません、間違えました」

 

 彼は焦った様子ですぐに広間から退出しようとします。ええ、焦りもするでしょうね。この方はごくごく普通の服をお召しになっているのですから。

 広間を見ると王様をはじめ兵士たち勇者二号こと、アレ・ガも冷や汗をかいています。なるほど、なるほど、貴方もグルですか。そうですか。

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁッ!」

 

私は、怒りのままこの邪知暴虐の王を倒さんと、こぶしを握り玉座へと駆け出したのでした。

 

 

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「で、それで兵士に切り殺されたと」

「ええ、あいつら、あんなことしといて普通に切りかかってきましたからね。悪辣にもほどがあるでしょうっ!なんなんですあの世界」

 

 私は気づくとあの天使がいる空間に戻されていました。どうも、この神器の体験時間中は死ん

でもこの空間に戻されるだけのようですね。

 

「いや、あの世界もですね、昔は魔王によって人類が滅ぼされようとしていて、こちらの世界と同じく移民計画がもちあがったのです。

 それから、ほどなく、我々が送った勇者候補の一人が魔王を倒し世界を救ったのですが、その後も戦争の人口減少を補うために転生による移民計画は続けられました。

 しかし、ある時、あの世界の高名な魔術師がこちら側の干渉に気づきまして、転生の術に介入されてしまい、今ではあの世界に行く転生者は王侯貴族の遊び道具に...」

「本当にろくでもないですね、あの世界!」

 

 一応、神様たちが遣わした転生者を遊び道具にって、いくら何でも天をも恐れぬ所業過ぎるでしょう。

 

「...まあ、天界に逆らう世界はそのうち、消されるでしょうけど」

 

「なんか、いま、さらっと怖いこと言いませんでした?」

「いえ、気のせいでしょう」

 ...まあ、この天使のことはどうでもいいのですよ。そんな事よりもこのままむざむざ帰るわけにはいかないんですよ。帰ったら借金苦で、そろそろ首をくくることも考えないといけないような状況ですからね!

 

「そんなことよりも、やり直し、やり直しを要求します!まだ、体験時間は残っているでしょう!別の世界に転生させてください!」

「わがままな人ですね、アクア様を思い出します」

「誰があの腐れ駄女神ですか!?」

 

 あの駄女神と同類扱いとか、屈辱以外のなにものでもありません。と、私が屈辱で身を震わせていると、天使は小さくため息をつきます。

 

「こう見えても、私だって忙しいんですよ。転生待ちの人もいっぱいいるんですから。...なんですか、それとも、貴女も私のやり方に文句があるんですか!?

 私はちゃんと真面目に説明してるだけじゃないですか!転生者が転生嫌がるのは内容に問題しかないからじゃないですか!」

「すみません!私が悪かったですから!落ち着いてください!」

 

 天使が狂乱しているのを何とかとめ、正気に戻します。

なんか転生がどうのこうの言ってましたが、私にはきっと関係ないでしょうからそれはどうでもいいとして。

 

「やっぱりさっきの世界はひどすぎますし、なんとか、やり直しをですね...」

「はぁ...わかりましたよ。もう、面倒ですから、なにか要望を言ってください。それに基づいて、さっきのからふさわしいのを選びますから」

「本当ですかっ!かわいい美少女がいっぱいいる世界がいいです!」

「もう、欲望を隠そうともしていませんね...。まあ、いいでしょう。...えっと、あ、この世界でいいでしょう、貴女がいた日本にも同じような世界観のゲームありましたし」

と、彼女が差し出してきたのは青い色の玉でした。

 

 ん?青ってなんかやばかったような?いえ、そんなことはどうでもいいのです。

待っててください、私の妹たち!私が、その玉を受け取ると再び、身体が光り輝き始めます。さあ、次こそ、理想の異世界転生を――

 

「欲望のままに身を亡ぼすって人間ってホント愚かですねえ」

「なんか、いま、不穏なこと言いました!?あっ、もう止ま――」

 

 

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「カズハさーん?ここにいるって聞いたんですけど」

「あ、アクア様。カズハさんならそこにいますが、今はちょっと...」

 

 私はもはや懐かしささえ覚えるその声の主に飛びつきます。

 

「あ、アクアああああああああ!私が、私が、悪かったです!帰りましょう!この世界は素晴らしいです!最高です!もう二度と異世界転生したいなんて言いません!」

 

「ど、どうしたんですか、カズハ!そんなに顔を泣きはらして...」

「泣いてなんていません!」

 

 どんな状況になろうと私は泣いてないたら、ないんです!

 

「いや、さすがに、それで泣いてないというのは無理があるぞ、主よ」

「あのカズハが、こんな風になってしまうなんて、一体どんな目に...はぁはぁ、想像しただけで...」

 

こ、この変態騎士は...!しかし、このやり取りにすら安堵覚えてしまいます。

 

「ひ、酷い世界でした…」

 

 確かに、美少女だらけの世界でしたけど...みんな、...みんな、ゾンビかアンデッドってどいうことですか!?

 しかも、みんな屍体のつぎはぎで出来てるうえ、もれなく人体改造されてましたし、目があるべきところに...あんなものが...あんなものが...。顔から下がキメラみたいになってた子もいました。

 外は黄色く重苦しい、重金属雲で包まれて青空なんて見えやしない、何処までも続く廃墟と赤茶色の大地。よくわからない化け物とか巨大な昆虫みたいのがうようよして、常人が生きていける環境ではとてもありませんでした。

 恐らく、私がとっさに懐中時計もどきのつまみを回さなければ、何かに殺されるよりも早く汚染による中毒症状で死んでいたでしょう。地獄、まさに地獄としか言いようのない世界でした...。

 

「本当にどうしたのかしら?あのカズハこうなるなんて」

「いやそれが、この神器を使ったらしくってさ」

 

 クリスが私の持っていた懐中時計もどきをさしだすと、アクアは思案顔になってすぐ何かを思い出した風に手をポンとたたきました。

 

 「うん?何か見覚えあるわね、その時計。あー、思い出したわ!いつぞや、私がごねまくる転生者に嫌がらせで渡した奴じゃない。 

 プークスクス、あいつもばかよね!使ったところでどれもこれも誰も転生したがらない最悪の世界にいくだけなのに!!ああ、おっかし!」

 

「ほー、では、今回、私がこんな目にあったのも元をたどれば貴女のせいなんですね?」

 

 アクアは私の声にガタガタと震えながら、ゆっくりと私の方に向き直ります。

 

「待ちましょう、カズハ!私は不届きものを懲らしめようとそれを転生者に与えただけで...」

「だったら、ちゃんと回収しておけっていうんですっーー!」

 

 こうして、私の異世界転生の夢は潰えました。結局、終わってみれば借金が増えただけ。

おかしい、絶対、こんな異世界転生間違ってるんです!こうなったら魔王を倒して、今度こそ、素晴らしい世界にいってやるんです!

 




カズハさんが最後に行ったのはゲームはゲームでも某終末系TRPGの世界でした。
わかる人にはわかると思います。

余談ですが、ついにこのすば最終巻17巻発売日が5月1日に決まりましたね。
一応、後日談もある予定だそうですが、ついにカズマ達の冒険に一つの区切りがつくわけですね。
これは、今すぐ予約ですよ!
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