父さん、母さん、私がそちらで死んでからそれなりの時か流れましたね。お元気でしょうか。元気であれば幸いです。貴方たちの娘は今――
「これだけは、これだけは許してください!!」
「うわぁぁん!やめて!それは私のよ!なんでもっていくの!」
「待ってください!その杖はまだ、買ったばかりなんです!」
「まて、やめろぉぉぉ!百年かけて集めたんだぞ!俺の刀剣コレクショぉぉぉん!」
借金の差し押さえにあっています。あの領主、裁判と借金とは別と言わんばかりに差し押さえという強行手段にでやがりました。
おかげで屋敷の家具はもちろん、食料までがほとんど押収され、もはや屋敷は空き家同然と化しました。
守れたのは、私の唯一の地球での思い出の品のジャージだけ。
他は本当にほとんどなにも残されていません。あいつら、鬼ですか?食料すらとっていくなんて…、死ねってか!?死ねってことですか!?差し押さえにきた、強面の人たちが去ったあと私たちは寒さに震えながら今後についての話し合いを始めます。
「どうするの!?借金10億ってどうやって返したらいいの!?」
「落ち着きしょう、アクア。こんなときは騒いだってどうにもなりません」
「そうだ、駄女神。こういうときは落ち着いて行動するのが大切だ。...我々のためにあの女騎士が犠牲になってくれたのだからな」
「いや、まだ犠牲なったと決まったわけじゃ...」
「いや、昨日から一晩帰ってきていないのだろう?それはもう...」
ベルは悲痛そうな面持ちで言います。いやいくらなんでもダクネスでも、そんな。...いや、ダクネスならむしろ望むところとか言いそうですね。ってことはやっぱり一晩帰ってこないのはそういうこなのでは...?
「あああああああ!」
「どうしたのカズハ!?急に奇声をあげて!?カズハがおかしいのはいつものことだけどいつも以上におかしいわよ!?」
「誰の頭がおかしいんですか!?めぐみんじゃないですよ!?」
「おい、待て、まるで私の頭がおかしいというもの言いはやめてもらおうか?」
頭がおかしくない子はそこで杖を構えて魔法を打つ準備とかしないんですよ。
ここ、屋内ですよ、自宅ですよ。撃ったら私も貴女も家なき子になっちゃうんですよ。
「めぐみん、落ち着きなさいよ。カズハの戯れ言にいちいち耳を傾けてたら身が持たないわよ」
めぐみんを諌めてくれるのはいいんですけど、余計なことばかり言ってるアクアにそう言われるのはイラッとするんですが。
「まあ、アクアの言う通りですね、ここは矛を収めるとしましょう」
なぜ、アクアの言葉で矛を収められるのか釈然としません。
「で、人とも何を騒いでたんです?ダクネスのことなら、子供でもないのですし一晩帰らなかった程度で騒ぐこともないでしょう。ちょむすけもそういってます」
「なーう」
めぐみんの飼い猫?ちょむすけが同意を示すように鳴きます。...前から思ってましたけどそれ絶対猫じゃないですよね?翼生えてますし、鳴き声も猫に似てるようで異なりますし、たまに火を噴くのを見た...ってそんなことはどうでもよいのです。この猫もどきも、めぐみんもダクネスという人間のことをちっともわかっていません。
「めぐみん?あのダクネスが領主に会いに行って一晩帰ってこなかったのですよ。もうそれは、...そういうことでしょう」
「たしかに、あの領主の悪い噂はよく聞きますが...ダクネスも一端の冒険者ですよ?そうやすやすとは...」
「めぐみん、なんだかんだ、貴女は子供ですね。...ダクネスは筋金入りの変態ですよ?あんないかにも領主のところにって見なさい。『くっ!私の体は自由にできても、心までは自由にできるなよ!』とかそんな感じなことを言って最終的には...うっ、うっ」
「!?」
私の言葉にめぐみんも事の重大さに気づいたようで、めぐみんが慌てた様子になります。
「ど、どど、どうしましょう!ダクネスが、ダクネスが!い、今からでも領主のところに乗り込みに行くべきでしょうか!?」
「落ち着きましょうめぐみん。残念ですが、もう一晩も立っているんですよ...。手遅れです。せめて、せめて、ダクネスが帰ってきたらいつもと変わらず優しくしてあげましょう」
「そうだな、昔、敵国の兵士にさらわれた、女性たちの介護をしたことがある。その経験から言わせてもらえば、そのことには触れず優しく接してやるのが一番だ...」
「わかったわ!大人になったダクネスには何も聞いちいけないってことね!ダクネスが帰ってきたらお赤飯をたかないと!」
「ダクネスが…、ダクネスが…」
この女神は本当にわかっているのでしょうか?めぐみんはうろたえすぎて、さっきから同じ言葉を繰り返しています。
確かにダクネスのことは心配ですが、私はダクネスに命を救われた身ですし、感謝こそすれ、ダクネスの行動何か言える立場ではありません。
. ..ありませんのですが、何でしょうか無性にイライラします。別にダクネスが誰とどうこうしようと、自由ですし、ダクネスは仲間というだけですし、勿論、それ以上の感情があるわけではないのです。だから、...いや、やっぱり、無理です。我慢できません。今からでも領主の宿に...。
「サトウカズハ、サトウカズハはいるかああああ!」
私がやや危ない思考を巡らしていると聞き覚えのある声が、玄関の外から。
バンっと声ともに勢いよく玄関の扉が開け放たれ、そこには真っ赤な顔をしたセナさんが。
「なんですか?まだ、観察期間中ですよ?それともこの国には勝手に民家にはいっていい法律でもあるんです?」
「うるさい!私には貴様の観察官として貴様を自由に見張る権利と義務がある!そんなことよりもだっ!やはり貴様魔王軍の手先だろう!またもやらかしてくれて!」
なんなんです、また言いがかり...いや、嫌な予感がします、ここは一回、素直に聞いてみましょう。
「あのう、一体、私たちが何をしたと...?」
「カエルだっ!冬眠中だったカエルが街周辺に這い出してきている」
「カ、カエルがどうしたっていうんですか!それがどうし―――」
「こちらの調査によると、カエル達は何かを恐れるように、地中から這い出てきたと。おや、確かここ最近、街の近くで毎晩爆裂魔法を撃った方が―――」
「申し訳ございませんでした、こちらで何とかさせていただきます」
私は、セナさんからその話を聞くと同時に頭を大地にこすりつけ、全力で謝罪の意を示します。
土下座です。日本最大の謝罪方法、これで少しでもセナさんの印象をよくするのです!
「カズハ、貴方にはプライドってものがないの?」
「これが仮初とはいえ、我が主か...」
「カズハ、頭はそうそう、下げるものではないですよ」
私がプライドを捨て、場を収めようとしているのにこいつら…!大体、大体ですよ!
「そもそも、貴方達のせいでしょうがあああああああああああ!!!もう、さっさと行って、後始末をしますよ!」
そう言うと、私は、三人をむりやり引っ掴み、急ぎ街の外へと走ったのでした。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「いやぁ、一面の銀世界、美しいですね。これこそ自然が生み出した美というものですよ」
私は、一面、雪に覆われた街の外の丘を見ながら、そう感想を漏らします。ええ、本当に心が洗われるようです。ここ最近ろくなことがなかったから余計にですよ。
「いやあああああああ!カエルは!カエルに食べられるのは嫌よおおおお!」
後ろからはカエルに追いかけられている、アクアの悲鳴が聞こえてきます、いつものことですね。
「貴女、仲間が大変な目にあっているのずいぶんと冷静ですね」
「まあ、いつものことですからね。というか、わざわざ、ついてこなくてもよかったのでは?セナさん、検察官ですよね?危なくないです?」
「心配はありがたいですが、あなた方を自由にさせた方が危険ですからね」
ああ、そうですか、当たり前だけど信用されていないですね、私…。
「しかし、この寒さでもあのカエルは元気ですね。初めて会ったときまるで動きが変わらないです。あのカエルといい動く野菜といい、どいつもこいつも逞し過ぎやしませんかねぇ」
「過酷な世界だからこそ、生き物はその時々を精一杯生きているのです。私たちも負けていられません。より強くなりこの世界を生き抜くのです!」
「いいこと言いますね、めぐみん。…ところで、めぐみん、頭から下飲まれてますけど、大丈夫です?助けましょうか?」
めぐみんは、いつもの通り、カエルの群れに爆裂魔法を撃ちこむと魔力切れで動けなくなり、そこをカエルに狙われ簡単に飲み込まれてしまいました。めぐみんも慣れた様子で特に抵抗もせず、なされるがままだというのに落ち着いています。
「いいのです、カズハ。アクアを先に助けてあげてください。外は寒いですし、カエルの中は意外と温いのです」
なるほど、よく見るめぐみんの体はそれ以上、飲み込まれる様子もありません。恐らく杖が中でつっかえているのでしょう。
「はい、わかりました」
「いや、いいんです!?」
セナさんが何か慌てていますがこんなのは私にとっては日常茶飯事、なんの驚きもありません。それに今日は、チャンと秘密兵器もあるのです!そう、この事前にかった弓矢が!!
この前のデストロイヤー戦で倒したゴーレム等で二つも、レベルが上がりましたからね。チャンと新スキルを習得したのです。そう、《弓》と《狙撃》を!
《弓》は素人の私でも簡単に弓があつかえるようになり、《狙撃》は飛び道具の飛距離が伸び、運がよいほど命中するという、私のためにあるかのようなスキルです。
このパーティにはダクネスという盾がいるのに実質、近距離攻撃しかできる人間しかいないですから、こうやって私が補わないと。...特にベルは防御が紙ですし、めぐみん?一発しか打てない子はカウントしません。...あれ、そういえば、ベルは...?
そう思い探すと、一匹のカエルの口から銀色に光る髪だけが出ています。
「あああ!危ないんなら早くいってください!」
私は、急ぎそのカエルの矢を撃ち放ちます。すると、勢いよく、カエルの口からベルが吐き出される、私の近くに転がってきます。
「ベル?生きてます?」
「…ああ、何とか。カエルを何匹も切り倒してたら、後ろから…不意打ちで…」
「もう、貴女は耐久が低いんですから、一人で先行しないでください」
「す、すまん…剣士としてのさがが...」
この子、本当にわかっているんですかね?と私が考えていると。
「カズハさぁん!助けてええ!もうだめ!たべられる!」
「わかりました!今助けますよ、アクア!」
と、弓を撃とうとした瞬間、ふと、もう少し追い込めそうだし、ちょっと遊ぼうかなと、いたずら心がわきましたが、恐らくそれに気づいたのでしょう。アクアがこちらに走って来たのでさっさと撃ちます。
あっ、ちょうどアクアの髪のわっかがカエルの頭を貫ける位置です。これはいい的ですね、と私が撃った矢はアクアの頭をかす目ながらカエルの頭を貫きました。
「よし、これでいいですね。めぐみん今助けますよー」
「ねえ、カズハ?今、私がカエルに追いかけられているの楽しんでなかった?というか、頭を矢をかすめたんですけど!?」
半泣きで私に駆け寄るアクアを無視しつつ、めぐみんの方を向くとセナさんがどこかあきれながら何かをつぶやていました。
「…...貴方達こんな戦い方をいつも?...こんなのが本当に魔王軍の協力者...?」
色々とひどいことを言われてる気がしますが、とりあえず今はめぐみんです。とりあえず、私はめぐみんを食べようとするカエルを撃ちぬこうとすると―――
「待ってください、カエルが…!」
「「へ?」」
めぐみんのその緊迫した声に、アクアと一緒に間の抜けた声をだすと、そのまま後ろを振り返ります。
そこには、新手のカエルさんが四匹。…計で五匹。やばいです。これでは生贄..ではなく囮の数が足りません。
とりあえず、倒れているベルを急ぎ背負い、距離を取る準備をします。至近距離じゃ弓は不利ですからね!
「アクア、囮は任せました。私は後ろから、貴女がひきつけたカエルを狙撃します」
しかし、アクアは泣きながら、しがみついてきます。
「いやよ!囮ならカズハがするべきだわ!もうカエルは嫌なのぉぉ!」
「貴女、あれに使えるスキル持ってないでしょうがっ!貴女とセナさんベルを囮にして、その間にカエルを倒せば、各個撃破できます!」
「あれっ!何で私まで、巻き込まれてるんですか!?私はただ貴方たちの監視を…」
「そんな事いいってる場合じゃないですよ、ここは生き延びるが先決...!そう誰か一人でも…!」
「あっ!本音が出たわね!あんた、一人だけで生き残るつもりね!」
「いや、今のは、言葉の綾というか...」
と、私たちが醜い言い争いをしているとめぐみんが
「あのー、すみません。飲み込まれ始めたので、私もそろそろ助けてもらえると…」
「あっ、今すぐに...」
しかし、弓を構えた瞬間、何か長い軟体生物のような物が素早く、私の手から弓を奪い去ります。
「あっ!私の弓、結構したのにっ!」
私の弓は正面のカエルの舌に絡み取られ、カエルの口の消えていきました。不味いです!遠距離武器がないうえ、こちらには動けない剣士が一人、これは本当に不味いです!
「カズハ、ここはにげましょう!もう、これは仕方――」と、アクアは最後までいう前に、カエルの口へと消えていきました。
落ち着きましょう!カズハ、ここはベルとセナを連れ、距離を取って体制を立て直すしか!
とにかくセナさんに声をかけないと――と、私がセナさんがいた方を見ると、そこにセナさんの姿はなく。その背後に入りカエルの口から、見覚えのある足が――
「セ、セナさーーーーん!」
あっ、これ本気で不味いです!とにかく逃げないと!ベルを背負いつつ、駈け出そうとすると、私の目の前には見覚えのある巨体が。
「...私、カエルって、とってもかわいいと思うんですよ?」
...まあ、そんな戯言をカエルが聞いてくれるはずもなく。私の体にカエルの長い舌が絡みつきます。
...これ、死にましたね。アクアもあんな感じだし、今度こそ、蘇生も無理です。神様、私の幸運ってどこに行ったんですか?私が死を覚悟し、走馬灯が頭によぎり始めていると―――
「『ライト・オブ・セイバー』ッッッ!」
そんな、透き通った声が聞こえ、その声とともに光でできた剣のようなものが、出現し、それが次々とカエルを真っ二つしていき、私もカエルの下から解放されます。
私はすぐさま、カエルにのまれたみんなを引っ張り出します。
落ち着いて周りを見ると、もうカエルはすべて倒され、その死体の中に一人の黒いローブをした女の子が立っています。おそらく、年は私とそうは変わらないはず。まさか、あの子が助けてくれたんでしょうか?...うん?あれ、あの子どっかで見たような?
「あれは上級魔法!?まさか、こんな駆け出しの街に使い手がいるなんて…」
何かセナさんが、少年漫画のモブみたいな驚き方をしていますが、なるほど確かに、あれだけのモンスターを一掃できるとは、どこかのなんちゃって魔法使いとは違い、本当の実力者なのでしょう。
とりあえず、何にしても俺言いませんと、私は少女の目の前に立ち、手を出して。
「たすかりました。誰かは知りませんが…あっ」
私が彼女の正面に立つとローブが風でめくれ、その下に隠された彼女の顔があらわになります。紅く輝く瞳、先ほどあれほどの魔法を使ったと思えない気の弱そうな表情、発育のよろしい身体、腰に付けられた銀色の
私はこの少女を知っています!そう、この子は私が、この世界に来た時に、お金をだまし取っ…いえ、お借りした子!
「いえ、助けたわけじゃ…?あ、あれ?あの貴女、いつかお金を貸してあげた…。めぐみんの知り合いだったんです?」
少女は自信なさげにぼそぼそとつぶやきます。め、めぐみんの知り合いなんですか、この子!?や、やばいです。めぐみんの知り合いをだましとなれば、めぐみんにどんな報復にあわされるか!
「あら、貴女はいつぞやの、子じゃない。あの時はごめんね。うちのカズハ、貴女のことをだま」
「あー!貴女はいつか友達なった!えーっと、名前なんでしたっけ?」
「え?友達...とも...だち?...友達!はい、私たち、友達ですよね!...あ、名前!私は...ゆんゆんっていいます」
なんか急にテンションが上がりましたね、この子。まあ、それはいいです。アクアが余計なことを言い、めぐみんが事に気づく前にこの子にはおかえり願いましょう!
「何をしているのですカズハ?」
「ひっ!め、めぐみん、もう元気になったんですね!よかった、よかった!さあ、では帰りましょう!」
いつの間にか、背後に立っていためぐみんに冷や汗が止まりません!なぜだか、いつもより顔が険しいような!
「ひ、久しぶりね!めぐみん、我が――」
「カズハ、どうしたんですか?そんな冷や汗をかいて?まるで悪いことをしたみたいじゃないですか?」
「いえ、そんなことはナイデスヨ?」
めぐみんはそんな私の心を見透かすように吐息を感じるほど近くのよってきます。
「へえ?ところでカズハはそのこと何処で知り合ったのですか?身内の恥のようで恥ずかしいのですが、その子はだまされやすいたちでしてね。故郷でも同級生からお金を巻き上げれて大変だったのですよ」
「えっ、何それかわいそ...ってなぜ、今そんな話を?」
「あのう、めぐみn」
「いえ、カズハのことは信頼してるので、そんなことはないと思うのですが...。この子からお金をだまし取ったりしていないかと心配になりまして」
...あれ、これ全部ばれてません?いえ、きっと久しぶりに会った、知り合いの心配をしているだけです!
「そ、そんな事するわけじゃないですか。めぐみんは、心配性ですね」
「なるほど、それならよかったのですが、...ところで、二人は何処で、どんな風に知り合ったんですか?やましいことがないというのなら勿論言えますよね?」
「すみませんでした。山賊に襲われたって言って、お金を借りました。…でも、ちゃんといつ返すつもりだったんです!信じてください!」
私は、めぐみんの追及に耐えきれず、大地に頭をこすりつけます。本日、2度目の土下座です。皆が侮蔑の目で見てきます。
「うわあ、引くわー、女子供から、金巻き上げるとか、引くわー、魔王軍でもやらんぞ。そんなこと」
「余罪に詐欺罪追加と」
「私は、見ていただけだから!関係ないから!全部、カズハが勝手にやったことよ!」
くっ、悔しいですが、自分が悪いので何の反論もできません!というか、そんな事よりも、まずゆんゆんさんに謝りませんと!
「ゆんゆんさん、申し訳ありませんでした。言い訳になりますが、本当にあの時はお金に困っていたのです!
ちゃんとあの時のお金は返済させていただきます。でも...今は、今は待ってください!お金が、お金がないんです!」
ゆんゆんは戸惑いながらも、私の方に近づき。
「い、いえ、いいんですよ!本当に困っていたというのなら、助けになれてよかったです。...それに私達、友達じゃないですか!」
な、なんていい人なんでしょうか。私が一法的に悪いことをしたというのに、それを攻めもせずむしろ私を気遣うような言動を...!後光が、後光がさして見えます!
「めぐみん?この子は聖女ですか...?」
「この子は、友達という言葉に浮かれてるだけですよ。ゆんゆんも、カズハを甘やかさないでください。この女は優しくすればするほどつけあがります」
「その言い方はひどくないです!?」
「人のお金をだまし取ったクズがひどくないと?」
「すみませんでした」
と、その様子を見ていたゆんゆんが横か私とめぐみんの間に入っていきます。
「め、めぐみん、ここで会ったらなんとやらよ!というかなんでさっきから無視するのよ!」
「え、だって、友達って言われただけで、お金をだまし取られる人と知り合いって言われたら恥ずかしいですし。大体、貴女のことを友達なんていきなりいう人は大体詐欺師です」
まあ、確かにちょっと騙されやすいとは思いますが、そこまで言うこともないのでは?いえ、だました本人の、私が言えることではないのですが。ゆんゆんは憤慨したのか、顔を真っ赤にして、腕をぶんぶんと振りながらめぐみんに反論します。
「な、なによ!大体、貴方だって勝負の代価だとか言って私からお弁当巻き上げてたじゃない!」
「めぐみん?」
私かジッーとめぐみんの方をみると、フィっと目をそらし、どこか言い訳がましい言葉を紡ぎます。
「い、いえ、わ、私だって当時、いろいろと事情があったのですよ!彼女のお弁当が生命線だったのです!」
巻き上げたお弁当が生命線ってどんな生活してたんですか、この子...。
「...カズハ、長引きそうなら私はギルドでカエルの運搬の手続してくるわ」
「なら、俺もついていこう。このプリーストだけだと心配だからな」
そう言って、アクアとベルはどこかうつろな瞳でそういうと、街の方に歩き出してしまいました。...あの子たち大丈夫でしょうか、カエルにまた、大分なトラウマを植え付けられているような...。と、その後ろからセナさんが話しかけてきます。
「では、私も今日のところはこれで...。今日の姿は...なんというか、...あんまりに、あんまりな姿でしたが、これが演技である可能も捨てきれません。…余罪も明らかになりましたしね」
そうきりっとした顔で、悠然とセナさんは歩いていきますが...カエルの粘液まみれ何ですよね...。あっ、こけた。
「で、お二人はどのような、お知り合いなんです?結構長いお付き合いのようですが」
「あっ、めぐみんと紅魔の里の学園で同期でして、成績はめぐみんが一番、私が二番で競い合う仲だったんです」
「あっ、どうも。私は、めぐみんの冒険者仲間のカズハです。本当にあの時も今回もありがとうございました。...え?今、めぐみんが学園で一番と言いました?」
めぐみんはその言葉を聞き、フッと笑います。
「カズハ、私は最初に言ったはずですよ。紅魔族随一の魔法の使い手であると」
そう言ってめぐみんは手を目にかざし、カッコつけてますが、カエルの粘液まみれのこの子がそう見えるという人の方がおかしいと思います。
「何か言いたいことがあるなら聞きますが?」
「...ナニモナイデスヨ。そんな事よりも積もる話もあるみたいですし、ゆんゆんさんと話したらどうです?」
「あっ、ゆんゆんでいいですよ!カズハさんとは友達ですから!」
「ああ、はい...」
なんか急にぐいぐい来ますねこの子。友達というものに何かこだわりでもあるでしょうか?と、めぐみんの方を見るとどこか不機嫌そうな顔で。
「積もる話なんて、ありませんよ。大体、ちゃんとした名乗りをしない紅魔族なんておかしいです。きっとこれは偽物に違いありません」
それだけ言うと、めぐみんは私の手を持って立ち去ろうとします。
「な、なによ!さっきちゃんと名乗ったじゃない!」
「いえ、紅魔族はあんな名乗り方はしません。やはりこれは偽物としかいうしかありません」
それを聞くとゆんゆんは顔を真っ赤にしながら、覚悟を決めた顔つきになり、そして大きく体を動かし。
「わ、分ったわ!紅魔族以外の人の前でやるのは、恥ずかしいけど...!我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、上級魔法を操りしもの!やがては、紅魔族の長となるもの...!」
と、マントを翻しながら、かっこよく決めたものの、ゆんゆんはかなり気恥ずかしいのか、プルプルと震えています。
「と、まあこの子はゆんゆん。紅魔族族長の娘で、いずれは族長になる、学園時代の、私のライバルです」
...めぐみんのあまりの所業に呆れているとゆんゆんは、めぐみんに顔を真っ赤にし恨めしそうな顔を向けます。
「ちゃんと、覚えているじゃない!…あれ、そういえば、カズハさん、私の名乗りや名前を聞いてもわらないんですね」
「まあ、名前何て、文化で変わるものですし、どんな名前でも笑うものではないでしょう。…名乗りについては私もちょっと、思うところがないでもありませんし…」
私も中学2年生くらいの時は、カッコいい名乗り方とかいろいろ研究してましたしね。人のことを笑うなんてとてもできるわけがありません。
「まあ、世の中には変わった名前をもっているのに、鬼畜姫何て不名誉な通り名を持っている方もいますがね」
「めぐみん、それ、私のことですか?鬼畜姫なんて、通り名なんて、私は認めていませんからね!?あと、私は変わった名前じゃないですから!確かに、この世界じゃ珍しいと思いますけど!」
「わ、わたしは、いいと思いますよ…?た、たぶん少なくとも、紅魔族には好まれるはずです」
ゆんゆん、それは遠回しに変な名前って言ってません?い、いえ、いいんですよ!ここ中世風のファンタジー世界ですし、日本語名が珍しいのは当たり前ですし!全然悲しくなんてありません!
「では、カズハ、帰りましょう?この寒さで、粘液まみれは身体に堪えます」
「ま、待ちなさいよ!めぐみんがおかしなことを言うから、こんなことになったけど...!私は、貴女と決着をつけに来たのよ!」
おお、なんだか熱い展開です。これが宿命のライバルという奴ですか。
「貴女との約束通り、私は上級魔法を習得したわ。あとはあなたに勝って、紅魔族一の座を手に入れる。もう誰にも家柄だけの子なんて言わせない!さあ、めぐみん。この私と勝負しなさい!!」
ゆんゆんは固い決意を瞳に宿し、そう宣言しますが、一方のめぐみんはというと...。
「嫌ですよ。さっきも言いましたが、体が冷えますし」
まあ、そうですよね。というか、私もカエルの唾液が服にしみこんで寒いのです。早く帰ってお風
呂にはいりたいです。
「そうですね、じゃあ、早く帰って、お風呂入りましょうといいたいのですけど...。その子、ほっといていいんですか?」
「そ、そうよ!待ちなさいよ!ねえ、何で?久しぶりに会ったのに、何でそんなに冷たくするの...?お願いよ、勝負してよ...!」
ゆんゆうんが涙目になってきてるんですけど。かわいそうになってきたんですが。
しかし、めぐみんはそれを意にも介していないようで、呆れるように深いため息をつきます。
「...しょうがないですね。では、こうしましょう。私は今日はもう魔法は使えませんし、勝負内容は貴女の得意だった体術でどうですか?今さら、筆記試験というのもなんですし。武器はなし、勝敗は、どちらかが、降参するまで。…どうです?」
ゆんゆんはそれを聞くと目を輝かせます。
「分ったわ、その勝負方法でいいわ。...そして、こういうんでしょ?勝負には対価が必要だって。チャンと、対価も用意したわ...マナタイト結晶、かなりの純度の一品よ!」
マナと名前が付くあたり、魔力がこもった鉱石なんか何でしょう。めぐみんは、それを見るとすごい悪い顔をしながら、満足そうにうなづきました。
「よろしい、受けて立ちましょう!何処からでもかかってきなさい!」
めぐみんは威嚇するようにそう宣言しますが、素人目でもわかるほど、そこに体術の心得は見いだせません。
一方のゆんゆんはというと、体術が得意というのは本当らしく、隙を感じさせない態勢です。体格もきんにくもバランスいいですし、これは、始まる前から勝負ついているのでは?…とはいえ、あのめぐみんが無策でこんな勝負を仕掛けるとも思えません。何をするつもりなのでしょうか?
と、私が考えていると、めぐみんはじりじりとゆんゆんの方ににじりよってきます。
...テラテラと粘液を輝かせながら両手を広げ、ゆんゆんを抱きしめるかのように。ゆんゆんもそれに気づいたようで、顔が青くなっていきます。
「ねぇ、めぐみん。ちょっと待って。...その、貴女の身体がてらてらしているのだけど...。それって...」
「そーですよ。これはカエルの粘液です」
その言葉に、ゆんゆんの顔が引きつり、小さく悲鳴を上げます。そんなゆんゆんを無視し、めぐみんは続けます。
「さあ、そんな事よりも、掛かってくるがいいです!近づいた瞬間、寝技に持ち込み。全身、ねっちょりさせてあげます」
「め、めぐみん?笑えない冗談はやめてよ?私の戦意をくじいて降参をねらう作戦なんでしょう?学園時代もよく同じようなことしてたし、...ね?」
ゆんゆんは許しを請うようにか細い声を出しましたが、それもむなしく、めぐみんは変わらずじりじりとにじり寄っていきます。
「私たち、友達ですよね?友人というのは苦難も分かち合うものだともいます」
めぐみんはとてもいい笑顔で言いました。...本当にろくでもないです、この子。ゆんゆんは、泣きながらめぐみんから逃げ、それを見てめぐみんはゆんゆんを追いかけます。
「降参!降参!降参するからこっち来ないで!」
しかし、その声を無視しめぐみんは、ゆんゆんに抱き着き、宣言通り寝技に持ち込むとそのまま、マナタイトを奪い取ります
「今日も私の勝ち!」
貴女はそれでいいのですか...?勝利とはいったい...。
ぬちょぬちょになった、ゆんゆんは泣きながらどこかへと立ち去り、私達も帰るのでした。
このすば三期こないかなぁ...。