新勇者バーバラの冒険 未熟時代の外伝置き場 作:ランスロス・マッキ
その勇者は
――――大陸。そう、一つの大陸がある。
宇宙に球体の膜があり、その中でオーストラリア程のサイズの大陸が聖獣達に支えられた世界。それがルドラサウム世界、創造神ルドラサウムによって作られた大陸である。
その大陸上には人や魔物を始め様々な種族がいて、魔法があり、敵を倒すと経験値を得てレベルが上がって……ファンタジーそのものの世界だった。ただ、多くの世界とは違って、とんでもなくバランスが悪かった。
その大陸では数千年もの間、人間は魔物に一方的に虐げられていた。負け続けていた。
まず、基本的に魔物は人間より強い存在である。
下を見れば、最弱の魔物であるイカマンを倒そうとしても、武器を持った一般人では敵わない。
一般人が倒そうと思うならば、イカマン一匹に対して五人は欲しい。個人によって差は大きいが、基本的に単身で魔物に勝てる人間の方が少ないのだ。
そして上を見れば遥かに絶望的な存在、魔王がいる。
魔物達の王、魔王。
単身で地上を殲滅出来る力を持ち、人類に対して破壊と殺戮を繰り返す厄災。
これに人類は全く敵わなかった。それどころか魔王から血を与えられた配下である魔人にも敵わない。魔人から血を与えられた使徒になって、やっと、ようやく、何とか――ごく一握りの精鋭達が戦えるような状態だった。
人類は、悲惨で絶望的に生きるように求められたバランスの中で、苦しい生を強いられていた。
ただし、希望が無いわけではない。
RA15年8月。
新しい魔王である、魔王ランスとなって15年目の治世。
この時代でも人類は魔王討伐を目指していた。ある集団は都合18度もの魔王討伐隊を結成し、悉くが跳ね返されていた。
魔王を倒そうと思ったら広大な魔物界の森を抜け、世界最高峰である翔竜山を登り、山上に陣取る数多の魔軍を退けて、魔人を倒さなければ魔王に挑む事が出来ない。挑戦はされたが、到底無理な話であった。
そもそも最初の森を抜ける段階の野良魔物だって弱くない。才能ある精鋭が数十人集ってやっと安定して抜けられる程度に過酷な環境だ。
今も森の一角に、魔物達が集っている。
「キヒヒヒッ」
ガーター大統領、ノーススラッグ、NASU、クロメ……様々な魔物、総勢20体近くがいた。
彼等はこの近くにある広い水場に集まり、喉を潤したり、周囲を我が物顔で睥睨している。
このような魔物の群れを見つけたら一も二もなく逃げるのが賢明だ。優秀な冒険者のパーティでも全滅し得るだけの高位の魔物が混じっている。個人で挑むなど馬鹿げた戦力だった。
ところが、そこに少女は躊躇なく飛び込んだ。手には輝く剣がある。
「列車斬り!」
鋭い踏み込みと共に、複数の魔物の巨躯が両断された。クロメの半身が落ちる前に、少女は別の魔物へと肉薄している。
「ギギッ――――!?」
「あと14体」
驚きの声を上げようとした魔物が、喉を貫かれて黙り込む。次の一歩でまた血飛沫が舞い、複数の魔物が斬り殺される。
ただ速すぎて、強すぎる。魔物達が何か行動を起こそうとする前に少女の姿は掻き消えて、別の魔物が斬られている。生きる世界が違った。
ロクな攻撃すら敵わないまま、魔物達は次々に屍となり果てる。
「あと2」
ナメクジの巨体が四つに別れ、粘液が飛び散る。
一分もしない内に残るのはタンクのガーターと、イモムシに似たNASUだけになってしまった。
ここで初めて少女は足を緩め、勝ちを確信した笑みを浮かべて歩み寄っていく。
「オ、オオオオオオオッーーー!」
魔物としての本能か、ガーターはその巨体を揺らしてNASUを庇うように前に出て、腕を振り上げた。
岩のように堅く、重い体を活かした一撃が少女を襲うが――
「1!」
力任せの剣が跳ね上げられ、今までと同じように、ぞっとするような切れ味で魔物の体が裂かれていく。そのまま振りぬかれた後には、腕から頭までが綺麗に分かれた。
少女が握る剣はエスクードソード。
岩も鋼も断ち斬る剣の前では、魔物の堅さに意味はない。
「はいラストーーー!」
頭が半分になったガーダーを足場に跳躍し、最後の魔物の頭に剣を突き込んだ。
そのまま斬り降ろして、頭が開いたNASUを景気づけに蹴り上げる。200キロ以上ある巨体が吹き飛ぶ。くるくると回りつつ木々の幹に当たって軌道を変え、水場に落下して水柱が上がった。
「…………ふふ」
水が肩までかかる金髪にかかり、瑞々しく跳ねる。薄く青い瞳が細まり、口元が緩む。
「ふふふ…………ふふふふ……」
昨日までは逃げ回るしか無い日々だった。だが今は違う。
彼女は、選ばれたのだ。
「っぷ、あはははははは!!! あーっはっはっはっはっはっは!」
人の枠を遥かに超えた身体能力、右手に持つは伝説の剣。
彼女こそが魔王という絶望に対を為す希望。
勇者、その名は――――
「バーバラ、何を馬鹿笑いしてるんですか。気持ち悪いですよ」
フードを被った小柄な体躯が、ジト目で主を貶した。従者としては、この軽薄な姿は見ていられなかった。
「だってコーラ、これ強すぎない!? もう本当世界最強だってこの力!」
「当然です、貴方は勇者になったのですから」
溜息を吐き、コーラは勇者に近づいた。
「いいですか? 貴方は剣に選ばれた勇者です。勇者には数多の役目があります」
「この剣軽とっても軽いし良く斬れるよね。ガーダーもバッサリ!」
「……そんなもんじゃありませんよ。魔人の無敵結界すら斬れます。無敵結界のせいで全ての魔人は人類には手も足も出ない存在ですけど、貴方は別です」
勇者には旅のサポートをする従者がいる。コーラは勇者が神に与えられた特典の一つであり、旅を助ける存在、勇者としてあるべき姿を教える教導者でもあった。
勇者一日目、剣を遊ぶように振り回す馬鹿相手には毒舌にもなる。
「勇者は人類の希望です。人類は度重なる魔王の被害によって人口を大きく減らしています。それだけの危機だからこそ、バーバラに今の力が与えられているのです」
15年前、この大陸の人類は3億人程がいた。それが魔人との戦争や災害、魔王の蹂躙によって死に続け、今は2億1千万人を切っている。
神は人を見捨てない。危機に応じて勇者に与えられる力は増大している。バーバラは一日にして人類最強の力を手にしたのだ。
「貴方がするべき事は今の絶望的な世界を救うこと。今は力と技術をつけて使途を討ち、魔人を討ち、最後には魔王を討つ――――それが勇者に求められる役割です」
「…………」
「力を手に入れたからには、それ相応のやるべき事があるとは思いませんか?」
真剣な眼差しで役目を説くコーラにバーバラは下を指さして、
「そうねー。今やるべき事は、そこにいる死体からアイテムやgoldを漁ること――――それが従者に求められる役割よ」
血塗れとなった森の後始末を命じた。
「…………」
「勇者のサポートをするのが従者の役目でしょ? 助けてね」
「…………はぁ、そーですね」
従者は勇者の言う事に基本的に逆らえない。勇者誕生以来やっている性からか、コーラは魔物達に屈み、血に濡れた肉塊に手を突っ込んだ。
バーバラは空になった水筒に水場の水を満たしていく。
「私はこの力を利用してお金を稼いで、冒険者としての名声や地位を手に入れるのよ」
「ほんと、マジでそれ言い続けるつもりなんですね」
「魔王や魔人を倒してくれって任務はギルドに乗ってない。ま、あっても絶対に請けないけどね。命を張る気なんて全くないから」
一通り溜まった透き通るような水を眺めて、口に含む。
「んぐっ、んぐっ……私は勇者じゃなくて、冒険者。絶望的って程じゃないし、面白おかしく暮らせればいいのよ……!?」
「あ、馬鹿やった」
突然、バーバラの体が水場に突っ込んだ。
舌に痺れを感じると同時に、その痺れがたちまちの内に全身を支配して、バーバラは動けなくなってしまった。視界が極採色に染まり、体の内が焼け爛れるような感覚がある。
「もがもがもがもがもが!?」
「NASUって猛毒を持つ魔物なんですよ。水場に蹴り落として飲むとか死にたいんですかねー」
痙攣しか出来ない状態で、震えるばかりのバーバラに息を吸う術がない。勇者の力があろうが、この状況では為す術なく死ぬだろう。
「もがーーーーーっ」(助けてコーラああああ!!)
「多分助けて欲しいんでしょうけど、勇者は危機的状況は自分で脱出するものなので助けません」
コーラの作業の中、水泡ばかりが上がり、首の一部だけ暫くのたうち回り――やがて、バーバラの動きが完全に止まった。
「これで普通なら死亡なんですけど、勇者特典があります。勇者は決して死にませんから早く復活してくださいね」
と、思ったらまたバーバラはもがきだした。満足に動かない体を捩り、苦しみに足掻く。
「もがもがもがもがーーーーー!」(息息息息ーーーー!)
勇者には様々な特性が与えられている。
身体能力の強化に始まり、強運、見切り、異性に対する魅力……不死もその一つである。
例え毒の効果によって行動不能になり、溺死し続ける状況になっても勇者は生き続ける。
「……ま、どう考えても死んだのは自業自得ですよ。一日目にして自滅するのは勇者史上初じゃないですか」
コーラは空を見上げ、このポンコツな少女の世話係になる己の身分を憂いた。
RA15年現在、世界は荒れに荒れている。
魔王が世界に君臨し、人々は恐怖に慄き、魔王に対する立場の差で人類同士の内紛も絶えない。
リーザス王国王子ザンス・リーザス。ゼス王国王女スシヌ・ザ・ガンジー。japan国主山本乱義、次期カラー女王リセット・カラー。
主要国の元首、あるいは次代の王は皆が魔王の実子であり、戦わずして魔王に支配される未来が待っている。
神の加護は異変によって消え、食物の生産力や、治癒の奇跡も失われていく。
人類には希望が、勇者が必要だった。
だが、その勇者となった人物は……
とってもポンコツで、とっても俗物的で、とっても従者使いが荒くて。
とても勇者とは思えない少女だった。
これ以外は蛇足過ぎる本編部分を削除しただけのコピーです。スラルだけ残します。
それぞれのエピソードは当時の全力だったけど、読者に付き合わせてるエゴ外伝で、出来もばらつきがあり、長すぎました。
新turn0が書き上がったら交換します。
一回書くの辞めるとすっごく遅筆になるわ……
アンケート機能テスト。このまま再構成版turn0を見たい?
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書いてるのなら見せてくれ。
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別に要らない。勝手にやってて。
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いつまで更新止めてんだ。本編進めろ。
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再構成なんかよりエロを書け。エロはよ。