友達とユニバ行ったり100ページの漫画描いたりしてました。年末にクソほど描くから許してほしいです。おねがぁい☆
「フリペンド!!」
強い魔力の高鳴りを察知した触腕は、攻撃する前に見るも無惨に叩き潰された。
痛みは感じない。だが第六感は未だ働いているのか、動ける屍は即座にシェリーに向けて大質量の肉塊を喰らわせんとする。
「フリペンド!!!」
当たらない。
肉が抉れ、バランスを失いよろける巨体は、ほんの一瞬ではあるが視界からシェリーを外した。
その一瞬はシェリーにとって、あまりに長すぎる時間といえた。
「フリペンド!!!」
ブチブチと、死肉は解体され飛び散っていく。
飛散する赤黒いそれは悲鳴にも似た声で叫ぶが、最早彼女の耳に断末魔は届かない。
「オルガン・フリペンドォオオオオオオ!!!!!」
怒涛の魔弾が弾け、炸裂する。
機関銃さながらに杖に展開された魔法陣から秒間何十発もの魔弾が飛び、力任せに肉を食い破る。
凄まじい勢い、そして凄まじい威力。
瞬きよりも早く着弾しては飛び散っていく。
シェリー本体を捉えようにも、彼女自身は人体の限界を越えた疾さで飛び回り、即死の魔弾を撃ち込む。全身の躍動した筋肉と紅い魔力が、彼女の人外の速度を生み出していた。
単純、故に、強力。
魔法使いとしての一つの完成形とも言うべき洗練され切った戦闘がそこにはある。力と速さ、その二つが両立されているということの何と恐ろしいことか。
シェリーが味方で良かったと、ハーマイオニーはつくづく思った。破壊力は、鬼神の如き……。
──そしてその攻撃を浴びてなお、未だ立ち上がるペティグリューの底知れぬ不死性に恐怖を覚える。
オスカーとは違う意味で攻撃が無効化されている。オスカーはそもそも攻撃が効かないが、ペティグリューの場合攻撃を腐肉という名のクッションで受け止めているのである。
オスカーのすり抜けがビデオの逆再生なら、こちらは早送りだ。植物の成長を超倍速で見ているような錯覚。もっとも、成長しているのは植物などという可愛らしいものではなく、赤黒く血生臭い肉のそれだが。
面白いようにペティグリューの巨体は四散し、吹き飛んでいくと同時に……急速な勢いで再生していく。どれだけシェリーが吹き飛ばそうとも、即座に無から肉が補填されるのだ。
イタチごっこも良いところ。
派手な技を使って奴を押し留めていようが、実のところ余裕がないのは撃っている側。何度も何度も肉を吹き飛ばしているのに……全く効いているように見えない。
これではシェリーが消耗していくだけだ。
「魔力の使いすぎじゃないのか!!!」
「大丈夫!!」
「お前の心配じゃない戦力の心配をしてるんだ!!お前は闇の帝王にぶつけなければならんのだぞ!!!聞いているのか粗忽者!!!」
「魔力なら必要な分しか使ってないよ!!」
コージローの心配を、シェリーは吹っ切った。
絶え間なく放たれる攻撃を止めてはいけないのだ。今はまだペティグリューが再生に力を使っているが、これが止まれば奴は表面積を広げて押し潰すだろう。
それはいけない。ゾウに踏まれるようなものだ。技も力も関係なく、圧死してしまう。
ペティグリューは、シェリーやルーピンを優先して攻撃するような素振りを見せている。信用していないわけではないが、他のメンバーが最高幹部を倒せるとは限らない……故にここでキチッと倒しておく必要もある。
「ペティグリューがあれだけの再生能力を有している以上、もしかしたらもうヴォルデモートを倒しても止まらない危険があるわ」
「闇の帝王の支配から外れていると?……できるのか」
「わからない。今のペティグリューは生命体として極めて特殊で、異常な状態にある……だからもうヴォルデモートですら止めることのできない爆弾になっている可能性は大いにある!
──だから多分、この怪物をここで放っておく方がリスクは高いわ!!」
「倒す方向で良いんだな!?」
問題なのは、倒し方。
ペティグリューの反則的な再生能力が、大きすぎる壁となって君臨する。普通に攻撃が通る相手なら、文字通り死ぬ気で相手の隙を作り、シェリーが必殺の一撃を決めれば、何とかはなる。
が……ペティグリューのタフさは異常だ。
しぶとさだけなら最高幹部随一ではなかろうか。
何か有効打はないか──弾幕の合間に、再び狼と化したルーピン、コージロー、トンクス、そしてハーマイオニーが攻撃を喰らわせる。
──判明するのは早かった。
炎だ。
火炎攻撃を喰らった箇所は、やや再生が遅い──!
「シェリーが削った端からひたすら焼いてきな!傷口に炎を塗りたくるんだ!『既に削られた状態』を覚えさせるんだよ!」
「あいわかった!焼けば良いんだな!」
「無理に行かないでね!少しずつでも削れれば、中から核が出てくる筈だからッ」
肉の鎧を剥がして剥がして、その中にある最も脆い部分に絶対破壊の一撃を喰らわせる。単純だが、実に面倒で難しい作業と言えよう。
だが、やるしかなかろう。
突破口はある。
ならば、いずれは倒せる──筈──。
(……ワームテール、鼠の君。こそ汚くずる賢く、誰より知恵の回るお前が、果たしてそんな目立つ位置に、心臓たる核を設置するだろうか)
違和感。
違和感。
違和感。
あの小男がそんな真似をするだろうか。
あいつはそんな、つけ込みやすい性格をしていない。
そうであれば仮にも悪戯仕掛け人など到底務まる筈もないのだ。あいつなら……きっと、『攻撃すること』それ自体を囮にする筈!
(本当に、このままでいいのか。本当に、このままダラダラ攻撃させていいものか。そんな訳がない!
血の匂いと、魔法無効化ガス特有の匂いで誤魔化されているが……微かに……ほんの微かに別の匂いが混入している気配を感じる!……
……匂いを──辿れ──)
幼少期より無意識に同胞を求めた故か、それとも正体がバレないよう気を遣っていたためか……ルーピンの嗅覚は、警察犬並の鼻を持つ人狼の中においてもとりわけ強く……そして、嗅ぎ分けに特化していた。
『匂い』から重さ、大きさ、状態、材質、魔力情報すらも得ることが可能なのだ。
その鼻が、小さな音で警告しているのだ。
何かある、と。
「オリオン・フリペンド!!」
魔力出力に特化した、横殴りの雨のような力任せの魔力砲弾は、とうとうペティグリューの肉体を半分ほど吹き飛ばした。
ぎらりと、濁っているくせに鈍く光る紅い石が、内より現れた。間髪入れずコージローが実体化する影で縛り身動きを取れなくさせる。
核──魔力心臓。
あれを壊せばペティグリューは止まる。
再生能力持ちが持つ、唯一にして最大の急所。
光明が見えた、と、誰もが喜色ばむ中で、むしろリーマス・ルーピンは不安が倍増した。
(……あからさますぎる!!!)
確信にも似た直感的閃きは、結果、正解を導いた。
ピーター・ペティグリュー、その本体は鼠になって地面に埋まっている。肉塊に混じって地中に埋まり、偽の核を用意して意識を逸らす。昔から死んだふりが得意なやつだ、このくらいのことはして当然。
うんざりするほどの周到さ、生き汚なさ。
ある意味で再生能力をこれ以上なく有効活用した戦術と言えようが……、しかし、ルーピンが敵になったのが運の尽き……!
「『狼化』……ぐぉぉるるるるぅぅううううああ!!」
人狼の巨腕が地面を抉り砕いた!
突然の行動に困惑するシェリー達だが、リーマス・ルーピンは突然気が狂ったわけではない。地中に埋まっていたペティグリューの本体を露わにしたのだ!
ほんの小さなネズミ。
それがペティグリューの本性だ……!本体のネズミが地中深くに埋まり、大質量の肉塊が地上で暴れ回る!敵は肉塊に気を取られて肉塊の魔力核を壊そうとするがそれはダミー、という……『大きなものに身を隠す』性質を殊更に表しているといえよう……!
「──ギャァァァアアアアアアス!!!!」
ペティグリューの悲鳴にも似た高音が、周囲の触腕を引き寄せ──そして襲う。偽の魔力核が肉塊に変化し、四方八方に飛び散った。どうやら相手も必死らしい。飛び散った肉から触腕が生成され、無差別に暴れていく。
それはつまり、追い詰められているということ。
あと少し、あと少しなのだ。
あとほんの少しで、トドメを刺せる。
「──『寄ォォォるゥゥゥなァァァア』!!!」
「クソ、またこいつ呪言を……!!」
「──『柳川源流文左衛門 白酒秋水“鬼門”』」
コージローの詠唱。
彼を起点として、黒より黒い暗澹が、界を支配する。
彼の得意とする魔術──それは魔力を『墨』のように展開し、その墨の中を移動したり、武器として使うというものだ。
だがそれは、魔力無効化ガスによって封じられている筈である。超人的な怪力と身体能力でかろうじて渡り合えていたものの、今の彼は魔法を使えない、その筈だ。
──その筈、であるが。
存在するものだ、例外というものは。
コージローはトンクスとハーマイオニーと手を繋いでいた。トンクスの魔力と“繋ぐ”ためである。
ご存知の通りトンクスは『七変化』の能力を持つ。
魔力とは個々人にそれぞれ特徴が──『色』というものが存在する。ポリジュース薬の色に個人差があるように、魔力にも色があるのだ。
普通は資質や性格──すなわち魂が、魔力の色を変えるとされている。魔法無効化ガスはその魔力の色を解析して相殺するというものだ。例えば、相手が赤い魔力の持ち主であれば、ペティグリューは赤い魔力を打ち消すガスを生成して放出する。
しかし七変化の場合はその色を自在に変化させることができるのだ。変幻自在、何色にもなれる絵の具。だから魔法無効化ガスの解析が追いつかないという現象が発生するというわけだ。
紅い力も似た原理で、どれだけ手を洗おうとこびりついた血の色は落とせはしないように、相殺などできよう筈もない力なのだ。
──その『無効化できない魔力』を魔法糸で自分の魔力と繋ぎ合わせる。
自分の魔力と七変化の魔力を共有する。
そうすれば理論上、誰でだろうとガスを突破することができる……互いに高度な技量が求められる、極めて難易度の高い攻略方法だが。その糸結びができるのは、発案者たるハーマイオニーとコージローだけだ。
「俺は魔法を使わなくてもそこそこ戦えるから、陣形を組んで肉塊の処理に回っていたが……ここからは速攻勝負だ!!挽肉にしてやる!!」
「
「
「
「
「
「
「鼠の肉は不味くて嫌いだ……往生し晒せ!!!」
黒色の墨が、肉塊全体へと広がっていく。
『影縫いの術』──影を縫い付けて動かなくさせる魔術は、使用者の肉体に軋むような負荷を与える。特異体質のコージローであっても、ただ押し留めるだけで無類の苦痛が襲うのだ。いや、コージローだから耐えられていると言った方が正しいか……!
しかしやはり!合点が入った。
ペティグリューの肉は筋力と再生能力に特化しすぎていて、魔術的防御力はほとんど皆無なのだ!全ての魔術的攻撃が効くし、搦手にも弱い!それ以上の生命力で誤魔化しているだけで……!
「寄ォオオオ、るぅぅうウウウウウ……ぁぎぃぎぎ」
「言の葉一つ、詠ませはせんぞ!!!」
骨が砕け、血管が千切れる。
激痛は灼熱そのもの。コージローの一八〇センチにも満たない身体はしかし、巨人族のそれに匹敵するほどの怪力と頑強さが同居した天性の躯体。それが無惨にも、およそ聞くことすら耐えられない程の異音を放ちながら破壊されていく。
「ペティグリューの呪言は、服従の呪文の類じゃないわ。豊富な魔力量に物を言わせて、魔力圧で吹き飛ばしたり動けなくさせてるだけ……!似た現象を引き起こしてるだけなのよ!今のペティグリューに精神系の呪文が使えるとも思えないし!
言葉さえ封じてしまえば、魔法は使えない……、けどコージロー、そんなやり方じゃあ、貴方の身体は絶対にもたないわ!!命が幾つあっても足りない……!!」
「気にするな所詮は傭兵の命だ!!いつ誰に怨みを買われて殺されるとも、任務の最中に死ぬとも分からん命なのだ……!!そんな金で換えられる命を、こうして世界のためとやらに使えることがどれほど嬉しいか……どれほど身に余る誉れか!
生まれ落ちた瞬間に生前葬が始まった!いい加減陰気な展開は懲り懲りだ、派手に行こう!
これくらい苦でもない!絶える命は惜しくなどない!誇りを寄越せ!俺という忌み子に!!」
「グギギ、ガガ………!!」
「──最高じゃんかコージロー!!その誇りは汚させはしないよ!ペティグリュー!汚い口は閉じてな!!」
尚も抵抗しようとする肉塊の表面が、斬撃魔法によりケバブのように肉を削ぎ落とされた。トンクスが目視できる範囲で口を潰しているのだ、気が利いている!
報わんとしているのだ、命懸けの行動に──!
本体のネズミは、一目散に逃走していた。
小柄な分狙い辛く、逃げ脚も早い。
逃走と撹乱で他の追随を許さないペティグリューが本気で逃げる体勢に入ってしまえば、ほんの僅かにも気を抜けばたとえ目の前からでも逃げおおせられる。三年生の時がそうだったように──
──そしてそんな失敗はもうない。
ルーピンの鼻が、それを許さない!
単純な俊敏さで人狼に敵う生物など存在しない!そうであるからこそ畏怖され、ドラゴンやバジリスクと並び立つ英国魔法界の霊長として君臨しているのだ!
肉塊はコージロー達が抑えてくれている。
チャンスはここだ!
(──捉えた──)
「ごぎぎ、ごごぉぁああああばららるるるる」
「……!?骨!?」
ごろごろと、鈍く重たい音がしたかと思えば、本体のネズミを護るようにして現れる三体の動物の骨。
魔力によって生み出された怨念の結晶、魔力の骸。
今までこの能力を隠していたのか──あるいはまさかこの土壇場で、力が更に拡張したのか。考えられない話ではない。ペティグリューは追い込まれるほどに力を発揮するタイプだった!
しかもこの動く骸……鹿に大犬に、狼とは……中々に皮肉が効いている。
目的は足止め、それ以外にない。
断言できるがここであの本体を逃せば、もう二度と、あいつが姿を見せることはない……!!魔法界の連合軍は意思すらない腐肉によって蹂躙される!そんな結末は到底許されざるもの!
(どけ──どけ!!待てペティグリュー!!待て!!)
親友に、これ以上の罪を重ねさせはしない。
骸を踏み越えて、魔月の狼は息咳切って疾走り、疾走り、疾走る。
──吹き荒れる一陣の風。
人狼を援護するかのようにして、牡鹿のように強く大きなツノを携えた牝鹿が、並いる亡者どもの狂骨を跳ね飛ばした。守護霊弾……すなわち追尾する弾。
感知した敵を魔力尽きるまで追う獣!付加された軌道変化の要素が極めて極悪な弾丸!
名付けて、アルテミス・フリペンドである!
もしも振り返る余裕があったなれば、ルークは万雷の拍手をシェリーに送っていただろう。喚き蠢く骨どもを容易く突破、ペティグリューの本体に迫る。
尚も追跡者を止めんとする骸どもに、無慈悲な迅撃が与えられた。
「──シリウス・フリペンド」
シェリーは──これまでの戦いの中で幾度も射撃呪文を使ってきた。それ故か、射撃呪文に対する魔術式を脳内で理解し、無言呪文にまで至り詰めた。
彼女は射撃呪文に限り、ノーモーションで魔弾を放つことができる。それがこの、シリウス・フリペンド。
魔弾は音を越え、弾痕だけが残る。
射程距離は短い上にかなりブレるが、着弾魔力の摩擦熱と圧力で、骨どもは焼け焦げる。
骨が軋み、折れる音は、とてもとても嫌な音だった。
何となしに、シリウスが死んだ時のことを思い出す。
(……ペティグリュー……あなたも目の前で……自分のせいで大切な人を失ってしまった……。あの時の決断に、今でも後悔と罪悪感が渦巻いている。
あなたのことは、少し分かるよ。仲間を裏切って、過去に囚われ続けて……それが仲間の死を招き、理想からは程遠い姿に成り下がって……でも……)
「──だからこそ、だ。
変わらなきゃ、いけないんだ……いけないんだよ!!
私は──私達は!!もう戻れないからこそ、後悔したままじゃいけないんだ!!そこから動かなきゃあ……!!
ピーター!!貴方にもしまだ意識があるのなら、耳を決して塞がないで!!彼がそっちに向かってる!!」
ルーピンは覚悟を決めていた。容赦はしない。心臓をひと思いに突き刺してやる。ペティグリューの死を後悔も悼みもすれど、ペティグリューの殺害を肯定しよう。
爪が真っ直ぐに振り下ろされる──その瞬間。
ペティグリューが、変身を、解いた。
戻る肉体。ネズミは醜い小男へと姿を変える。左手を犠牲にして、右の銀の手に杖を携えていた。
目からは正気が失われ、口元からはだらしなく涎が垂れて、亡者と見まごうほどの土気色の肌。動いているだけのただの死体。ペティグリューの成れの果てが、プログラムされた防衛本能によってリーマスに相対する。
「何にだって……なれる。
何だって……できる。
人間やろうと思えば何だってできるんだァアア」
(このタイミング、角度は!相討ちか……!?
だが……お前となら……、…………
………………テッド)
爪と杖が交差する一瞬。
リーマスは
ピーターは
「アクシオ!!ボタンよ来い!!」
ぴん、と、ピーターの
不意に来た衝撃に、小男は大きく体勢を崩した。
──今もここ一帯には、魔法無効化ガスが蔓延しており紅い力や七変化を使わなければ魔法は使えない。だから肉塊や骨を操ることで物理的防御に特化し、魔法的防御には気を配らなかったのだ。
故に今、ペティグリューは“魔法が効きやすい”。
それがどんな格下相手であろうとも──!
「──素晴らしい、ハーマイオニー!!
君は優秀な魔女だった……いつだって!!」
ぱきん。
ペティグリューの左胸を、人狼の巨腕が貫いた。
乾いた音とともに、魔力核が砕け散った。
▽▽▽▽▽▽
視界を埋め尽くさんばかりの肉が、灰となって空気中に霧散していく。あんなにも赤黒く濁っていた罪の色は消え失せ、白く、ぼろぼろと崩れていく。
強靭でしなる肉を錬成し、操作する力は使い果たされたのだと確信する。紅い力は消滅し、今度こそ決着がついたのだ。
全身から血を噴き出して頭から倒れるコージローを、ハーマイオニーが受け止めた。
(兵器として生まれ……忍として数多の人間を葬り……その最後の花道をこうして飾れるとは……な……
天魔の子には……粋な終だ……)
「……コージロー!!」
力尽き絶えたその男の身体を、ハーマイオニーは優しく床に横たわらせた。重く、冷たい。
よくぞここまで……、感謝の念は絶えない。
「本当に……、……言葉もないほど、……
……例のあの人は必ず倒す。待っていて」
世界に存在するどんな感謝の言葉よりも、戦稼業を生業とするニホンの者にとっては、決意の言葉こそが相応しいと、トンクスはそう思った。
少し離れたところで、シェリーとルーピンがペティグリューの死体の前に座っていた。……追悼だろうか。
「リーマス、だいじょう……」
「──来るな!!」
「?」
「いや、……いや、来てくれ!こいつ……本当に不死身になったのか!?ピーター!」
おぞましい、光景だった。
魔力核すら破壊され、もうどう足掻いても動くことのできない筈のペティグリューの死体は、ブツブツと高速で口元が動いていた。
血走ることすらない瞳には、狂気が見えた。
親友の遺体を蔑ろにされ、辛いものが込み上げるリーマスの代わりに、トンクスとハーマイオニーが封印術を男にかける。が──どうやらペティグリューは外的要因で痙攣しているのではなく、内的要因で変化しているようだった。
「何にだって──なれる。
何だって──やれるんだ。
何にでも、何だって、思い描いたことはすべて……」
「どうすればいいんだもう……いい加減にしろ……!」
「わたしは……すべてを……かなえる……」
──悪ふざけで、スネイプを殺しかけた。
(……私の……やりたい……こと……)
──『言い訳は聞きたくない。反省は態度で示せ』
(あの時……わた……しは………ぼくは)
──一体、なにがしたかったのだろう?
「……ごめん……」
死体は、ドロドロと溶けて。
代わりに小さな、少年の姿が現れた。
「謝らねば、と……償わなければと思っていた……もう遅いけれど……ずっと、そう思っていたんだ……。
僕……僕は、自分の弱さを認めるのが、こわくて……楽な方へと、行ってしまった……すまない……」
「………ッ」
ぴくりと、配下の心変わりを許さぬ銀の腕が、ペティグリューの首を絞め上げる。
だが──そんな行為に意味はない。
ペティグリューの魂はもう、その肉には宿ってない。
死体にほんの僅かにこびりついた魔力を介して、あの世から話しかけているのだ……信じ難いことだが。
闇の帝王に対する、最初で最後の叛逆だった。
「……ぁあ、ああ、シェリー!……そこにいたんだな。
そんなところに……君にも謝らねばと……」
(……?そんなところ?……)
「いや、もう、何を言っても弁明にしかならないか。
願いが、あるんだ……
生まれ変わったのなら……その時は……僕と友達にならないでくれ……僕と出逢わないでくれ……
僕などのために……素晴らしき友や……魔法使いや、未来の子供達が被害を被るなど、あってはいけないことだった……!
僕をまだ友だと呼んでくれるなら……こんなクズとは関わらず……愛する者と……幸せに、なってほしい……頼む……」
「………………」
傷の男は、万力のように強い力で、万感の想いを込めながら、ピーターの──左腕を強く握った。
「私をあまり舐めるなよ、ネズミ君。
──何度生まれ変わったって!何度人生をやり直したって君と友達になって、更生させてやる……!!
九生遂げても赦しはしない。君の罪を何年かけてでも償わせてやる。
魂に刻んでおけ──ピーター・ペティグリュー!!」
流れてすらいない冷血が、ほんの僅かに、激ったような気がした。ピーター・ペティグリューに救いがあったとするならば、それは、地獄へ堕ちる前に懺悔の機会を与えられたこと──。
そして骸は、ついぞ喋ることはなかった。
フウマ・コージロー 『死亡』
死因:ペティグリューの生み出した肉塊を足止めした。