シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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腕の骨がなくなったくらいならマダム・ポンフリーが何とかして生やしてくれるけど、耳に呪いで穴が空いたらモリーが止血するくらいしかできなかったので、ハリポタ世界の呪いって想像以上に殺意高いんですわ。


15.色欲のフェンリール・グレイバック Ⅱ

 

「ぅぎぃ、あっ、あっ、あああ……!!」

 

 顔を歪めて苦悶に震えるコルダ。

 脂汗がだらだらと流れて、膝をつく。右腕を失った痛みは尋常ではなく、芯の強い彼女が悶えている姿から、その痛みを想像するのは容易いだろう。

 だが、まさかこんなことが……。

 コルダは優秀な魔女だ。戦力の一員として期待されていた。それがこうもあっさりと、その力を削がれる。削がれてしまう。

 ドラコは呆然としていたが、しかし胸の内では激しい怒りが渦巻いていた。

 

「ヒャハハァア!」

 

 隙だらけだと言わんばかりに、グレイバックは今度はドラコへと紅い爪を振るった。

 ドラコの視線は緩慢に、しかし条件反射で腕は素早く防御の姿勢を取っていた。彼の手に光の粒子が凝縮し、一つのカタチと為す。

 

「スリザリンの剣……」

 

 エメラルドが嵌め込まれた、銀色に淡く輝くフランベルジュ。炎のような特殊な刀身が、グレイバックの直線的な攻撃の軌道を折り曲げる。

「うおッ!?」

 

 ぐにゃり──

 破壊的な一撃を生むはずの突進は、横方向へと受け流される。面白い能力だ、とグレイバックはその興味を剣の方へと移した。

 ホグワーツの四剣の一振りに、人狼が意識を向けた瞬間、コルダは自分の杖を手にしていた。

 

「──ッ、グレイシアス・ニクス……!!」

 

 氷が炸裂し、舞い散ったかと思えば、氷の粒が勢いを増して嵐のように吹き荒れた。視界が悪くなり、たちまちの内に冷気が伝播する。

 目眩しして、身を隠すつもりか。

 グレイバックは舌打ちして、氷霰を切り裂くが、既にそこには二人の姿はなかった。

 

「……面白い展開じゃあねえな」

 

 人狼は鼻が効く。普通、この程度の目眩しをしたところで相手を見失うことはない。が……氷魔法を使われたとなると話は別。

 スンスンと嗅いでみるが、いつものように上手く臭いを感じ取ることができない。

 人狼の唯一の弱点は氷魔法なのだ。

 鼻の効きは悪くなり、身体能力は損なわれる。氷の魔力そのものが人狼にとって有害ともされているくらいには、氷魔法は明確な弱点だ。

 グレイバックくらいになればある程度は克服も対策もしているものの、今回は少し位置が悪かった。氷を近くで喰らってしまい、少ないながらも影響を受けたか。

 

(まぁ、よっぽどデカい攻撃じゃなきゃ、あの嬢ちゃんの氷魔法は何とかなるレベルだ。さて今は、どうやってあいつらを追ったもんか……)

「──丁度良い、あいつらを使おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柱の影に隠れるように、ドラコ達は身を寄せ合ってもたれていた。

 

「はっ、はっ、はぁあ……、ふーっ、……ふーっ」

 

 氷で止血をして、何とか意識を保つ。

 断面が荒い……腕をくっつけるのは、今のドラコの癒術では無理だろう。失血死しないように努めるのがせいぜいだ。

 

「コルダ!大丈夫だ……全部終わったら聖マンゴで治してもらおう!大丈夫だからな……!」

 

 ドラコの声がけで、コルダは飛びそうな意識を何とか繋ぐことができた。

 ここまではいい……問題は、グレイバックをどう対処するべきか。正直、戦線離脱も十分視野に入る怪我だ。

 ベガの蒼炎があれば回復できるかもしれない……が、彼には彼の役割がある。敵だらけの城の中、ベガを探し回るのはナンセンスだ。

 にっちもさっちも行かない状況……!

 

「だい、じょうぶ。です。私なら大丈夫。

 ……グレイバックと戦いましょう。私の得意な氷魔法は足止めに向いてます。そうでしょう?お兄様」

「っ……、それは……」

 

──コルダという駒を活かすなら、それが一番良い。

 氷魔法を扱い、また自らも人狼であるコルダは、まさしくグレイバックの天敵となり得る。『自分がされて嫌なこと』を理解しているので、奴の一番嫌がることを実行できる。

 だがコルダという人間を想うなら、それは最悪だ。

 体力を大きく消耗する氷魔法を今使うのは、自らの寿命を削る行為に等しい。後々になって後遺症が出る可能性だってある。

 

(僕達はマホウトコロの連中みたいに、命をかけて当然なんて恐ろしくてとても言えないぞ……ましてや妹に)

「……コルダ、僕の考えは──」

「助けてくれェエエエ!!!」

 

 悲鳴のした方を見ると、よたよたとした足取りでこちらに歩いてくる人影。ボロ切れのようなローブを引っ掛けた、恐怖に顔が引き攣った男。

 

「やみっ、闇祓いだろう!?俺ァオスカーの野郎に酷い目に遭わされて、連れて来られたんだァ!助けて、俺を助けてくれよォ、頼むよお!」

(巻き込まれた一般人……!?)

 

 まさか死喰い人だけではなく、一般人までもが連れて来られていたとは……。有り得ない話ではない。死喰い人の中には、殺戮を快楽と捉える者もいる。

 であればこの人は、戦いに備える間の楽しみとして連れて来られたのだろう。

 

(今はグレイバックとの戦いに集中したかったが、放っておくわけにもいかないな……)

「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」

「ああ、ああ。すまない。ありがとう。こんな俺に、こんなに親切にしてもらえるなんて……

 

 

 

……本ッ当にありがとよォ〜〜〜!!!!」

「──!?コルダ!!!」

「えっ……」

 

 ドラコがコルダの襟を掴んで引く。

 だが遅い。すぱりと、魔法が彼女の薄皮を切った。

 

「痛ッ……!」

「貴様!!僕の妹に何を!!」

「ひっ!そ、そう怒んなよォ。何だよぉ、ちょっとしたおふざけだろ?へへへっ」

 

 悪びれもせず、ヘラヘラと浅薄に笑う男に、侮蔑を含んだ怒りを覚える。この男……さては、グレイバックの手下か何かか……!?

 と思いきや、男は情けない叫び声を上げて逃げ出す。

 追うか……?いや、何が目的か知らないが、あんな奴に構っている暇も……。

 

 

 

「ガキどもがいたぞおおおおおおおっ!!」

 

 

 

 一瞬、呆ける。

 何を言っているのかと。

 

「おっ!あのオッサンが見つけたか!」

「お前らあっちだってよ!行くぞぉーっ!」

 

 祭囃子に誘われるように、現れたのは多数の人影。

 死喰い人──ではない。蛇と髑髏の紋章も、折目正しいローブも、彼等は着ていやしない。

 足運びは素人のそれ、紡ぐ魔力は平々凡々。

 ただの一般人、ただの人間。無辜の民が、徒党を組んで浮かれ歩く。ただ、マルフォイ兄妹の二人のもとへ。

 

「な、何でこんなに……!?」

「脚を動かせコルダ!多分グレイバックの部下だ、部下と協力して僕達を襲うつもりなんだ!!」

「は?誰があんな男の部下ですって!?」

 

 投げつけられたナイフを、ドラコの剣は寸前の所で防御して、叩き落とす。カァン、という独特の金属音。

 目を向けた先には、またしても新手の姿があった。

 

「貴族の坊ちゃん方をぶっ殺すだけで金が貰えるって聞いたから、私達スクイブにも一攫千金のチャンスが来たって大喜びで参加したら……あんた、強いじゃない!さっさとやられなさいよ!もう恵まれてんでしょ!?」

 

 キンキンとした金切り声が、いやに耳に残った。

 大勢の人の中には、女子供の姿もいくつかある。

 ただ、その誰もが武器を携えている。鉄パイプや木の棒、中にはナイフを構えた少女さえいた。

 身なりは皆粗末で、垢じみている。

 まともな家ではない、貧乏な家から仕事を求めて這い出してきた者達だろう。

 しかし彼等は一様に痩せこけた見窄らしい体をしていたが、目はギラつき、その実欲望に燃えていた。飢えた獣の目だった。

 

(気圧されるな……ああいった子供は、今まで何人も見てきたでしょうに……!)

 

 そう己を律するが、戦慄は止められない。彼らのような者には出会った事があるが、あんな目をして武器を振り回す人間を見た事はなかった。

 彼等は知らない。戦争において人を殺すのは兵士だけではないということを知らない。武器を持たない相手も平気で殺せる人間だけが戦士と呼ばれるのだと、知る由もない。

 マルフォイ兄妹は原始的なレベルの闘争を知らない。

 分かってはいても──目にすると、キツい。

 

「寄越せ、あんた達の全部を寄越せ!!

 どうせ持ち腐ってんだろうが!!」

 

 ウゥーフゥー!

 高らかなラッパのような、狼の鳴き声。

 グレイバックが、高い所からゲラゲラと笑う。

 

「オラオラァ!ちゃっちゃか働けお前らァ!闇祓い一人につき500ガリオン*1!コルダは『特筆戦力』だからもっと上がるぞォ!」

「旦那、ドラコの野郎ももっと値上げしてくれよ!あの剣が厄介だ」

「あ?仕方ねえな、じゃ600 ガリオン*2でどうだ。俺が上に交渉してやるから」

「ひゃっほー!話が分かるぜぇ旦那!」

「っ、あの馬鹿犬……!私達を賞金首か何かみたいに」

 

 そこはかとない、気持ち悪さ。

 自身の命の価値を相手が決めるという、嫌らしさ。

 そう憤慨するコルダには構わずに、人の群れは押し寄せる。杖と武器と飢えた者特有のギラついた目つきで以て自分達に襲いかかる。

 彼等には躊躇いがない──否、そもそも覚悟も何もない。

 ただ、今を生き抜く為に武器を持っただけ。

 その暴力的な力の波が押し寄せる様子は、波濤の津波を思わせた。

 

「しっかしよぉ、何であんたくらいの人がわざわざ他の奴に手柄を譲るようなことをすんだよ?魔法界の一大決戦なわけだろ、もっと積極的に動いた方がよくねえ?

 いや、俺達は儲かるからいいんだけどよ」

「ん〜…ベラとかは他の死喰い人に舐められるのが嫌だから積極的に参加しそうだけどよ。俺にはそういうこだわりはねえのよ」

「……あんた女子供を殺すのが好きじゃなかった?」

「それは性癖。いくら酒が好きだからって毒入りの美酒を呑もうとはしないだろ?」

「酒呑まないから分からん」

「ものの例えだろうが殺すぞ。

 だからさ……、俺はいっときの快楽のために死んでやる気は早々ないの。生き残って、より多くの人間から搾取する。そういう生き方をしたいのよ。

 ドラコやコルダは強くなって、万が一にも俺を殺せる力を身に付けた。その万が一を潰すために、今こうして雑魚どもで消耗させてるんだわ。

 俺は戦うのも殺すのも好きだけど、別に死んでもいい訳じゃねえんだよ」

 

 グレイバックと、ドラコとコルダの距離は一◯◯メートルはないくらいか。

 ここからでは、グレイバックに攻撃が届くかどうか微妙な距離。仮に運良く攻撃が届いたとして、誰かにその隙を突かれてしまうだろう。

 かといって、グレイバックを完全に無視して戦うこともできない。いつ気が変わって、奴が参戦してくるか分からないからだ。

 グレイバックが連れて来た人員は五十人弱。それだけの数をいなしながら、向こうの最大戦力(グレイバック)にも気を遣わねばならず、逃げるのも難しい……ときた。

 体力と、神経が、削られる……!!

 

「っぱさあ……紅い力の原動力は感情だから、何かに執着したりこだわった分だけ強くなれる、とは思うんだけどよ……どれだけ『こだわらずにいられるか』ってのも大事だと思うワケ」

 

「ベラ・ハリーは良い意味でも悪い意味でもプライドが高いんだコリャ。ダンテの野郎もそうかもな。基本的に舐められるのが嫌いで、『まともに戦えば』早々崩れることはねえ鉄壁の牙城だが、逆に一度崩れるとすぐブレちまう。何事も、考えすぎは良くねえってな」

 

「ペティグリューは一見誰よりもこだわってないように見えて、昔の友達?だっけ?に未練タラッタラだろ?あれじゃあ長生きしたって楽しくないわなぁ?

 そういう意味じゃグリンデルバルドの爺さんも相当執着してたよなァ。あいつの場合、ダンブルドア限定で強くなる能力だからこだわった方がいいんだけどよ。まァ楽しくはないよな」

 

「オスカーの野郎は気が合うが、肝心なとこで意見が合わないんだよな〜!別にさ、直接自分で殺して、相手の不幸を味わいたい、って気持ちは分かるけどよ?

 『相手が自分を復讐や私怨のために殺したら、自分と同じ外道に堕ちる。その様子を死に際に見れたら最高に面白いだろうな。人殺し、そう耳元で囁くのさ』

 ……って言ってたんだけどさ、そこまでやるのは流石にやりすぎだと思わねえ?俺は死にそうになったら普通に逃げるし?」

 

「ま・そういう訳でさ、あんまりゴチャゴチャ考えるのは精神衛生上良くねえよな。俺より数段強い奴が、つまらん自意識過剰のせいで損をするんだ。

──最強なんて勝手にやってろ、ってなァ!」

 

 グレイバックはあくまで“狡猾”。

 紅い力に選ばれていながら、狂い過ぎていないのだ。

 傲慢すぎず、怠惰すぎず、暴食しすぎず、強欲すぎず、憤怒すぎず、嫉妬しすぎず、色欲すぎない。

 欲はあっても、“仕方ないな”で諦めることができる。

 何事も程々に──…そりゃあ普通に遊び過ぎて痛い目に遭うこともあるが、それでもこうして生きているのは、『ヤバい時にはさっさと逃げる』というのが徹底されているからだ。

 グレイバックがぺらぺらと喋っている間にも、扇動されたスクイブや魔法使いどもが増えていく。

 

「おっ?例のマルフォイどもか?」

「え!?ちっちゃいぞ!?」

「女の子だ!」

「何でこんな所にいるんだ?」

「構やしねえ、殺っちまえ!!」

 

 血の匂いを撒き散らして、彼らは次々と湧き出る。

 その多くがマルフォイ兄妹より遥かに大きな体軀をしており、一癖も二癖もありそうな面構えをしていた。

 

「ひっ……、グ、グレイシアス!!氷河よ!!」

 

 熱狂に呑まれそうになるも、コルダは氷を地面に走らせて彼等の機動力を奪わんとする。が──、 氷が地表を滑り出した時には既に彼等の半数以上はその魔法のモーションを取っていた。

 

「「「インセンディオォオオオ!!」」」

「うおっ!?この嬢ちゃんの魔力強すぎだろ!?こっちが押されてんぞぉ!」

「うるっせぇ、いいからガンガン魔法使え!」

(っ、数が多すぎる……!!)

 

 ヴォルデモートの魔力源に選ばれるくらいには魔力の多いコルダだが、この状況は、いくら相手が素人とはいえ多勢に無勢。敵の全員を凍らすまでには至らない。

 もう少し威力を出せば、完全に無力化できるかもしれないが……多分、それ自体がグレイバックにとって美味しい流れなのだろう。

 これだけの数を捌くとなると、魔力を食い過ぎる。

 ここで全力を出して消耗したところを、グレイバックが狙う気なのだろう。

 

(とはいえ、この雑魚どもにいつまでも構っていたら、それこそ相手の思う壺……!)

「仕方ない──グレイシアス・フリペンド!!」

「ぎゃあああああっ!!痛え!痛えよおおおっ!」

(っ、うるさい、そっちから仕掛けてきておいて……!)

「耳を貸すな、コルダ!」

「分かってます!!」

 

 ドラコの声に怒鳴り返し、コルダは杖を振るった。

 焦りで苛立つ心を何とか無にしなければ……次のタイミングで、全体に向けて氷結を決める。

 あまり消耗はしたくないが、うだうだ戦っていても仕方がない……!!

 

 

 

「──お、兄様?」

 

 

 

 人の群れの中に紛れた、見間違う筈もない顔。

 背中に本物の熱を感じている筈なのに、心臓の時間(こどう)がピタリと止まった気がした。

 

(違う!ポリジュース薬……盾の呪文を……!!)

「──が、ああっ!?」

「ひゃっほー!大当たりィー!」

「コルダ!?」

 

 呪いの籠った釘を肩に喰らった。

 オスカー・フィッツジェラルドが制作し、生前愛用していた『告解』と呼ばれる呪具で、刺した者に怨嗟と悲鳴を聞かせるものだ。

 今の落ち込んだメンタルには覿面に効く。ずぐん、と重たい辛さがずっしりと。片膝を突かなかっただけでも褒め称えられるべきコルダの精神力。

 が──できる、隙が……!

 

「俺が一番乗りだああああ!!!」

「死んだか……」

「コルダしっかりしろ!!!攻撃が……!!!」

「──ッ!!こんなところで……!!!」

 

 

 

 

 

「ごぇ?」

 

 男の顔面に、蹴りの痕が残される。

 それを食らわせたスーツ姿の女性は、流れるように、印を結んで杖を振る。

 鎖、針、鎌──具象化した鉄が、グレイバックの集めた者どもを絡め取り、拘束あるいは無力化する。それはあまりにも早業で、驚いている内に形勢が強引に傾かされた感覚だった。

 

「は?」

 

 グレイバックは、思わず前のめりに身を乗り出した。

 瞬間。

 ぱん──という、風を切る鋭い弾丸が、自身の頬の先をすれ違ったのを理解した。

 

「うおッわっやっべっば」

 

 今、偶然顔を動かさなければ、あの弾丸は確実に自身の頭蓋に命中していただろう。顔周りの毛がはらりと落ちる。狙撃魔法……それも、グレイバックの鼻に引っ掛からないくらい遠くから……!

 

(……いや、それってどんだけ遠くだよ?

 匂いを消す魔法を使ったとして、ちょっと有り得ねえ距離だろうがよ……!)

 

 この場にはいない、エミル・ガードナーの射線を切るように動き、グレイバックは本物の狼のような前傾姿勢で地を駆けた。

 白い人狼はそこで、新たなる獲物の姿を見る。

 褐色の肌をした、男勝りの魔女……チャリタリ・テナの姿を、その目に捉える。チャリタリは、ドラコとコルダを庇うように立っていた。

 

「そこから動かないことを勧めるよ」

「へへ……そうかい、ご忠告ありがとうよ嬢ちゃん!」

 

 古来より、魔法使いマグル問わず、獣を狩る者達が生業としていたのは“狙撃”と“罠”だ。

 さしずめグレイバックは狩られる狼というところか。

 だが……頭の良い狼は、そんな人間の知恵や小細工など躱してしまえるだけの嗅覚と経験があるというのも、古来からの真理である。

 

「へへハハ……お前がどんな罠を仕掛けてあるのか知らねえが、それで俺は倒せねえよ!」

「試してみる?」

「そしたら死ぬがね、お前は。ちょいと好みとは外れるが、偶にはテメェみてえなのもオツなもんだ」

「それもいいけど……その前に一つ質問」

 

 チャリタリは、無表情で問いかける。

 

「クリシュナ・テナを殺した時……どんな気持ちだったか覚えてる?」

「クリシュナ。…………、………?誰だっけ」

「そっか。質問終わり。もういいよ」

 

 ドラコとコルダは、僅かに冷や汗を滲ませる。

 彼女の空気が張り詰めたのを肌で悟った。

──チャリタリは、姉を、グレイバックに──。

 

「ドラコ、コルダ。あんた達は三歩後ろに。罠魔法の邪魔になる」

「……!はい」

「オイオイ可哀想によぉ!戦力外通告かァ!?」

 

──否。これは符牒だ。

 『三歩後ろに』は、罠魔法の有効範囲は三十メートル以内、という意味。『罠魔法の邪魔になる』は、強襲を頼むぞ、というものだ。

 指示通りに、脚を動かす。今、罠魔法のブラフのお陰で魔法使いやスクイブ達はその場から様子を伺っていることしかできていない。中にはヒソヒソと陰で殺しの算段を立てているものもいるが。

 

「お、おい…お前、行けよ」

「やだよ!だってここ、罠があるんだろ!?俺達もさっきの連中みたいに……!」

「…………。あ〜あ!!せっかく戦ってくれるってのにな〜!一人で大丈夫かよ〜!?罠魔法は仕掛けた本人の魔力にしか反応しないんだろ〜!?」

「え……そ、そうなのか……?」

「じゃ、じゃあ俺達があのスーツの女をフクロにすれば罠は意味なくなるのか……!」

(おうおう動け動け木偶ども。お前らの価値なんざ動いて掻き回すことしかねえんだ、鉄砲玉の役割くらいキチンと果たせってんだ)

 

 言いつつ、グレイバックもその紅く染まった爪先に魔力を溜めていた。グレイバックの紅い力はシンプルに身体能力を強化するというものだが、その副次作用で爪から風の刃をほぼノーモーションで放つことができる。

 わざわざ罠魔法を踏むリスクを侵して殺さなくとも、一歩も動かずに殺せる力が彼にはある!

 

(盾の呪文ごと裂いて殺すだけの威力はあるが、流石に元アレン隊の精鋭相手に、真正面から撃つのはどうかなって思ったけど……雑魚どもが気になり出しただろ?俺相手にそれは命取りだぜ!)

 

 爪から空気を弾く──たったそれで終わる。

 

「今だ──食らえがぎゃっ!?」

 

 脚部に超長距離狙撃が直撃し、隙ができる。

 なぜ?射線は切っていた筈なのに!

 人狼は憤慨する。この狙撃は……間違いない、エミル・ガードナーのものだ!

 数々の長距離対策も、エミル相手では意味がない。

 

「クソ、この俺が一撃を貰うとは……!マジでどこから撃ってきてやがんだァ!」

「ステューピファイ!」

「あ!?効くかァ!」

 

 チャリタリの追い弾丸を、いともたやすく切り裂くグレイバック。裂帛の咆哮とともに、その女体を両断せんとして、しかし──弾丸が飛んでくる。

 血飛沫が上がり、筋繊維の表層が千切れた。

 その程度の傷ならばすぐに修復できる。しかし問題は一瞬、動きが硬直してしまうこと。

 必殺の衝撃波が出るまでの『振り』ができなくなる。

 

「チィッ……」

 

 尚も攻撃を続けようとするグレイバックは、手指の痺れを感じて距離を取った。

 今、チャリタリが放った麻痺呪文。妙な感触だなと思ったが、どうやら爪に触れる寸前に弾けたらしい。どんな呪文も切り裂くグレイバックの赤い爪だが、逆に言えば爪にさえ当たらなければ爪に当てなければ魔法は無効化できない。

 小賢しいことに、チャリタリは腕に当ててグレイバックの腕を痺れさせたらしい。ぶんぶんと腕を振り、いつもの正常な感覚を思い出す。

 すると、グレイバックはその腕部分に、何やら奇妙なマークがつけられていることに気付いた。

 

(いつの間に……何だこれ)

 

 スンスンと匂ってみるが、どうも害のある攻撃的な魔力のようなものは感じられない。

 害ある呪いの類ではないが……、かといって、一歩間違えれば死ぬ戦いの中で、無駄にこういう印をつける意味がない。何かある。何かある筈だが、それが何かまでは分からない。

 ……考えても無駄なものだろう。ならばと、グレイバックはいつも通りにチャリタリに切迫せんと踏み込みの姿勢を見せた。

 瞬間、飛来する弾丸。印をつけられた位置に正確無比に放たれたそれが、またしてもグレイバックの肉を抉り殺す。攻撃の余波が風刃を生むも、狙いがズレて彼女の服の端を切るに留まり、殺すまでは至らなかった。

 

(俺に印をつけて、そこに魔弾が着弾するようになっているのか?

 ……っていう風に考えるのは思考が誘導されてねえ?

 だってあのエミルだぞ、普通に狙撃の腕が神ってるしマーキングはブラフかもな。印のある位置に狙撃しておいて、ここぞというところで全然関係ないところを撃つくらいはするだろ)

 

 長距離から放たれる狙撃魔法……防ぐのは困難だが、耐えれはするくらいのダメージ。瞬間的に筋肉と魔力を凝縮すれば軽傷で済む。

 エミルの弾丸は脅威だろうが、意識をし過ぎるのもよくない。

 

(とにかく、印は無視。『エミルの弾丸はどこからでもどこにでも届く』。それさえ分かってればいい。あとは着弾の瞬間に体勢をズラすことだな、そうすりゃまぁ即死はないだろう)

(あ、やばい)

 

 チャリタリの狙いは『狙撃と罠を警戒して動きを鈍らせること』だったので、グレイバックの『狙撃も罠もある程度は仕方ない』という割り切り方は正直、とても困る展開だ。

 

「あ〜あひでぇことしやがる!クソッ、細けえことを考えるのは良くなかったな」

 

 色々やったが、結局グレイバックが『普通に』攻撃してきたらひとたまりもない。

 ベラトリックスやハリーの攻撃は、魔法で発生させた炎や毒であり、同じ魔法で干渉する余地が一応ある。極端な話、魔法を全て反射する盾みたいなのがあったら、彼女達は不利な戦いを強いられることになる。

 反面、グレイバックやゾンビ状態のペティグリューの武器は単純な暴力、物理攻撃だ。

 普通に鋭く、普通に硬く、普通に疾く、普通に強い。

 搦手がメインのチャリタリは元より、ドラコもエミルもコルダでさえも、コンパクトかつシンプルな攻めに、受けで回れば命はない。

──グレイバックは、腕の一振りで人を殺せる!

 

「攻撃来るよ!!」

「はい!!」

「うお……っ!?」

 

 グレイバックが腕を振り下ろそうとした瞬間、彼の体勢が大きく崩れる。いつの間にか罠魔法が発動しており、鎖が彼の脚を絡め取ったのだ。

 チャリタリは『魔力が届く範囲なら』罠の位置を自由自在に変えることができる!

 大きく空振った手から数多の衝撃波が生まれ、地面を切り裂き、抉るも、それはチャリタリ達には着弾することはなかった。

 

「っ、危ない……!!」

「分かってると思うけど喰らったら終わりだ、アンタら絶対当たんなよ!!」

「いつの間に罠を……?まァいいか!」

 

 すぐさま鎖を切り、駆けるグレイバック。

 まずは厄介な罠を使うチャリタリから……、

 

「……、あん……!?」

 

 チャリタリの杖の動きには注目していた。

 彼女の罠魔法を使うタイミングを把握しておけば、不意のトラップはないと……。

 なのに──、チャリタリは罠の起動を仄めかせる素振りすら見せなかったというのに、地面が槍となり、グレイバックの脇腹を僅かに抉っていた。

 

(ドンピシャのタイミングだったのに、何で今のを躱せるんだよこのクソ狼……!)

(何で罠魔法が発動してんだ?罠魔法にも無言呪文ってあんのか?)

 

 まあ一応なくはない。が、それではない。

 今、罠魔法を起動したのはドラコだ。

 

(罠魔法は、仕掛けた本人の魔力にしか反応しない。つまりコルダが仕掛けた罠魔法を、ドラコが起動する、なんて芸当はできない。

 ただしそれは『普通の罠魔法』の話。『私の罠魔法』は誰でも使える)

 

 ちなみに、安全性のために闇祓い以外は使えないようロックがかかっているので、凶悪犯罪者がチャリタリの罠魔法を使うなどといったことはできない。

 トンクスのような『七変化』と、ヴォルデモートやフラメルのような『魔眼』があれば可能かもしれないね、くらいのレベルだ。

 グレイバックの脳裏には、既に、罠魔法の存在が印象付いている。腰が及んだ!

 

「あァ〜やり辛ェ。どうするかな」

(でも何となく分かってきた。整理しよう。

 ①エミルの狙撃は止められない。止める必要はない

 ②チャリタリの罠の位置は自由に動かせる

 で、多分だけど、

 ③チャリタリの罠はチャリタリじゃなくても起動できるっぽい?

 優先度高い順に並べるとこんな感じか)

 

 ドラコ、コルダ、チャリタリ、どっかにいるエミルの戦い方は粗方知られた。本番はむしろここから……。

 戦闘はまた、膠着状態。

 グレイバックのダメージは大したものではない……!

 

(火力が圧倒的に足りない)

 

 コルダの氷の弾丸でも当てられれば、それが致命打に繋がるだろうが、リスク(worse)は踏んでも最悪(worst)を避けるグレイバックは当然警戒しているだろう。

 とはいえ罠魔法やエミルの弾丸では『崩し』にはなっても『崩した後』は効果が薄い。

 どうするか……!?

 

 グレイバックの脚が、前に重心がかかる。

 先程のコルダの腕切断は、前に体重のかかった状態でフリーにしたからやられた。

 奴がどれほど優れた生物であっても、生物である以上奴の脚の動きを読めば、対応できなくはない。身を以て経験したコルダなどはむしろ落ち着いていた。

──が、フェイント。

 グレイバックは後ろに飛びながら衝撃波を出した!

 

「避、」

 

 けろ、と思った時には既に切り払われていて、斬撃の衝撃波はコルダの頬を掠めた。

 一瞬遅れて、血が冷たい床に飛び散る。

 周回遅れの恐怖を噛み殺す暇さえ与えられない。

 

(今、腕を振るモーションが、見えなかった……!)

「っ、グレバの動きを追いな!!」

「二人とも、僕の後ろに!!」

 

 スリザリンの剣は物理防御に優れている。ドラコが前に出てチャリタリ達を守るように立つが、グレイバックは三人でもエミルでもなく、すっかり罠に怯えてしまった部下達の方へと向かっていた。

 呆ける部下達の肩を組み、馴れ馴れしく、応業に、グレイバックは恐怖だけの言葉をかける。

 

「なっ……グ、グレイバックさん??」

「お前らさ〜、何やってるわけ?数の暴力で消耗させるって話だったじゃん。やる気出させるために金もやるって言ったじゃん。それを、何?罠にビビって動けませんじゃ話にならねえのよ」

「あ……いや……私達は、」

「俺からは逃げられても、空に浮かぶ城からはどーせ逃げようがない。だからいずれ死ぬしかなくなるし、だからもう前に進むしかない。それすら分かってなかったんなら、もう要らねえよ」

 

 無慈悲な声と共に──グレイバックは男を“投げた”。

 純粋な質量攻撃。唖然とするより前に、コルダは氷の防御壁で身を守る。ぶちゅり、という、トマトでも撒き散らしたような音が、いやに耳に残った。

 

「ひゃはははは!血の目潰しよォ!」

 

 グレイバックは動き回る。走り回る。

 そして部下達を三人の所に投げる。罠や氷魔法で質量攻撃を防いでいくが、血が、飛び散る肉片が、三六〇度ありとあらゆる方向から須く飛来する。

 

「こんな、卑劣な……非道な……!!」

「オイオイ褒め言葉かよォ〜〜!?」

 

 こうなってはもう、何もかも滅茶苦茶だ。

 元々金目当てで動いていた者どもは逃げ出すし、恐怖の悲鳴を上げる。『そういう者から優先して』グレイバックは人間砲弾にしていく。

 視界が紅で染まり、聴界は金切り声ばかり。そして精神は、あまりの惨状に疲弊する。苦悶が、彼等の感覚を満たしていく……!

 エミルは、すぐにグレイバックが部下を“掴む”瞬間に狙撃を実行する。だがそれはほんの一秒攻撃を歪めるだけで、質量爆弾が降り注ぐのには変わりはない。

 グレイバックは手段を選ばない。

 どんな卑怯も、どんな卑劣も、彼は笑って肯定する。

 強くなりたいんじゃない。勝ちたいわけじゃない。

 ただ、愉しみ(殺し)たいだけだ──!

 

「最強決定戦なんて、勝手にやってろよ!!

 俺ァ気ままに楽しませてもらうからよォ〜!!」

 

 グレイバックの最大の強みは、身体能力ではない。

 ここまで楽しんでいながらも、逃げ退きべきと感じたならば簡単に引いてしまえるしたたかさ。

 最強の一角でありながら、『最強』という称号に興味がないから故の、ある種の合理的な狡猾さ。

 ベラトリックスやハリーとは真逆の強さが、彼にはあるのだ──!

 

「チャリタリ!!右■■■■■■」

「は!?何!?何て……、」

 

 違和感にハッと気付き、右耳を触るチャリタリ。そこにはある筈のものがなかった。視線を走らせると、十字模様のイヤリングがついた右耳が転がっている。

 

(いつの間に……聴覚には頼れないか!)

 

 サッと癒しの呪文を自身にかけるチャリタリ。頭部の血がなくなるのは避けたい。思考が纏まらなくなる。

 奴は、グレイバックは。人間砲弾の合間に斬撃を走らせてきている……!

 山勘で罠魔法を発動する。どこかでグレイバックが蹴躓きでもしたか?その間に距離を置き、体勢を整えようとする……が、コルダは、不意の脚の衝撃で転ぶ。

 息も絶え絶えの男……スクイブが、コルダの脚を掴んで、引っ張っていた。

 

「な、ちょ、何を……!?」

「500ガリオン、俺の家族のために……!!」

 

 家族、そう聞いて、コルダはどうしようもなく、硬直してしまう。それが命取り。グレイバックはその僅かな隙を見逃さず、弾丸が如きスピードで、コルダを標的と認めて──走る!

 このタイミングなら、エミルも反応できない。

 ドラコとチャリタリが焦ったような声を上げているがもうどうしようもない位置だ!

 斬撃など生ぬるい。直接、心臓を抉り抜く!!

 

「……ッ、貴方の狙いは分かってる!!

 終点は、ここだ……ッ!!」

 

 コルダはしかし、反撃(カウンター)の為の盾を作っていた。

 尖った槍が表面に装着された氷の盾。グレイバックのスピードで突っ込めば、人狼の肉をも槍は貫通して、内部から氷魔法が入り込む……!

 来るなら、来てみろ。そんな心積もりでコルダは臨み、そして、奴はその上を言った。

 グレイバックは衝突の瞬間、引き絞られた弓のような姿勢で渾身の力を込めていた。

 貫く、その瞬間──姿勢が美しければ!

 それは全てを貫く矛になる!!

 

「アレンで学んでんだよ!!

 最大の防御は、硬さで決まらねえ!タイミング!!

 腕や脚を振るばかりが脳じゃねえ。腕を回転させながら突くとな、こんくらいの貫通力を生むんだよ!」

 

 螺旋に風巻く、不可避な不可防御。

 一点に力が凝縮された突きは、人狼の筋力から織りなされる無比のパワーでさえ、想像の遥かに追いやった。

 盾は、捻れて歪んで貫通する。

 範囲は短いが、その威力たるや、シェリーの最大火力にも匹敵する!

 風がコルダの脇腹を貫いて、地面に叩きつけた。

 コルダに非があるとすれば、運と相手。杖腕ではない方で杖を使ったことで、ほんの僅かにタイミングがズレた上に、そのタイミングに必殺を捩じ込める絶技を、奴が持っていたという悲劇。

 

「がッ……は」

 

 だん、という熱い衝撃が背中に来る。地面にぶつかったのだとそこで知る。視界は左の脇腹が抉れたと告げているのに、あまりの鋭さに痛みが伴わないせいで、イマイチ状況が掴めない。

 覆い被さるような姿勢で、グレイバックが頭を貫こうとしている。コルダは、ドラコとチャリタリの焦ったような声が遠くに聞こえて、放たれた弾丸がやけにスローモーなことに疑問を持った。

 

──ああ。走馬灯だ、これ。

 

 

 

 

 

『教えてくれませんか、化物に変身しても自我を失わずにいる術を──内に眠る獣の制御の方法を』

 

『ほうほう、タマモお姉さんにそんな相談を。可愛い女の子の頼みなら断れないねー。

 うーん、あくまで私のイメージだけど……獣の姿に変身するんじゃなくて、獣の姿も自分の武器の一つ、数ある魔法の一つなんだって意識すること、かな?』

 

『武器の一つ……ですか』

 

『結局、体質を変えるなんて、今の魔法じゃ不可能な訳じゃんかさ?だったらばさー、もう割り切っちゃうしかないじゃない。

 どんだけコンプレックスでも、戦ってたら、それに頼らなきゃいけなくなる日は来るからさ』

 

 

 

 

 

「──ぁぁあぁあああああぁああ!!!!!」

 

 破れかぶれに放つ、コルダの弧を描くような軌道で振られた左腕!それは人間でなく、ヘドロのような色をした筋肉……すなわちコルダの狼の時の腕をしていた!

 身体の一部分だけを、狼に……!!

 リーマス・ルーピンと幾度も繰り返し練習した、気の遠くなるような鍛錬の下に作り上げた理想の渾身!

 

(土壇場の窮地を乗り越えられないで、どうしてグレイバックを倒せるだなんて言えるんです?

 私はコルダ・マルフォイ!!誇り高い女!!!)

 

 グレイバックの顔面が、俄かに切り裂かれる──!

 

「痛えじゃねえか、ガキ」

 

 当たった。ダメージもあった。

 ただ、コルダの腕力では、相当に恵まれたタイミングでないと利かないというだけ。相手は人狼として鍛えてウン十年の傑物だ。

 エミルの弾丸は切り裂かれる。罠魔法もここからだとコルダを巻き込んでしまう!とはいえ悔しいことに──

──グレイバックは未だ顕在で……!!

 

 

 

 

 

「──居合」

 

 全力の防御体勢。

 それでも尚、グレイバックは吹き飛ばされた。

 (チャリタリ)はいる。

 防御(ドラコ)もいる。

 狙撃(エミル)もいる。

 決め手の氷魔法(コルダ)もいる。

 ならば後は、捷さ(ハヤト)がいる!

 

「応ッ!よう引きもはんど。よか戦いっぷりじゃのう。

 後は(おい)がぶっ殺せば()えだけじゃ。

 切り裂いてやりもはん、そん首寄越せやァア!!!」

 

 人狼に対抗するは、戦餓鬼の山犬が如し男。

 人か、獣か。はたまた化け物か。

 健全な肉体に意志が宿るのではない。

 殺意に四肢が生えたのが、その男。

 

「はぁああ……、ほんっと、貴方は変わりませんね」

「重畳ッ!!こん城には首級(手柄)ずばあ(沢山)転がっちょる!

 人狼殿(おおかみどん)!!(だい)ぞ知らんが切り裂いてやっど!!!」

「何か言いたいなら分かるように喋れよな〜!?」

 

 サツマハヤト、参ッッッ!!!

 

*1
約41万円

*2
約49万円




おまけ

『ヴォルデモートの好感度』

ベラトリックス→お気に入り。忠実で積極的に動く。
グレイバック→普通。
ハリー→お気に入り。貪欲な性格を評価。
シェリー→猪。
ペティグリュー→壊れかけのオモチャ。
オスカー→そういう習性の羽虫。話が面白い
グリンデルバルド→ビジネスパートナー
ダンテ→嫌い。
ベガ→部下になってほしい。

多分こんな感じです。
原作基準でも割とこんな感じではなかろうかと思います。
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