シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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24.蘇る伝説

 

 

 

「──お待たせ……皆んな!!」

 

 自分の身を巡る魔力の流れ。

──まだ戦えることに安堵する。そして、まだ生きられることに感謝する。

 

(死んだ方がいい存在、じゃない。

 皆んなのために生きなきゃいけない、でもない。

 私は自分のために生きる。どれだけの我儘だったとしても、それが私の生き方なんだ……!!)

 

「……?シェリーさん、無事だったんですか?

 死んでたみたいに顔色真っ青でしたけれど……」

「──うん。大丈夫だよ、リラ。色々あってね」

「そうですか?それじゃあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けてぇ〜〜〜〜〜!」

「っえ!?ちょっと!?リラ!?!?!?」

 

 リラが巨大な蛇の怪物に絞められていた。

 起きた早々とんでもない修羅場に巻き込まれている。

 やべぇ展開である。

 

「今、助けに……!」

 

 しかし、そこで自分の身体が動かないことに気付く。

 まさか……?と恐る恐る視線を下に向けると、何とまあシェリーの身体も巨大な蛇に纏わりつかれていた。

 ぷらぷらと宙に浮いて、何とも間抜けな格好だ。

 

「嘘でしょ!?ちょっと!?嘘ーっ!?」

 

 せめて杖、杖を出して応戦しなければ!

 ……無い!

 キョロキョロ辺りを見渡すと、ヒイラギの杖が地面に転がっていた。手の届かない位置である。割とピンチ、どうしようもない事態である。

 

「うわあああ死にたくなーい!!!」

「ぎゃあああ助けてええええ!!!」

 

 蛇の鱗をバンバン叩くシェリーとリラ。しかし怪物はビクともしなかった。

 ちなみに本当に余談ではあるが、この蛇の怪物は当然ナギニである。そしてリラの身体はドラゴンに噛み付かれても傷一つつかないので、ナギニに絞められようが別に大丈夫だし痛みも感じていない。

 つまりこの状況で死にそうになって苦しんでいるのはシェリーただ一人だけということになる。

 

(ど!?どうしよう!?杖なしでも使える魔法……そんなもの習ってないよ!!!私はホグワーツを無断で中退してるんだよ!!!!????)

 

──別に通ってようが使えるものではない。

 

(いや待て待って落ち着いて、……ふぅ〜よーしちょっと落ち着いた痛いのは慣れてるから!

 ほとんど飲まず食わずで過ごしてた時みたいに、体内の魔力の流れを鋭敏にして──そして、放つ!普段から使ってる魔法くらいなら使える筈……!)

 

 

 

「──紅い力、解放!!」

 

 

 

 髪が逆立ち、その魔力圧でナギニの拘束が緩む。

 地面に着地すると、凄まじい速さで杖を拾い、立て続けにお得意の早撃ち魔弾を放った。

 

「フリペンド!!」

 

 ばちゅんとナギニの頭部が千切れ、断末魔さえ上げることすら許さずに、蛇はべちゃりと倒れ伏した。

 ついでにリラも拘束から逃れることができた。

 

「っぷはぁー助かった……!!」

「大丈夫?」

「はい、何とか……あ、シェリーさん後ろ」

「後ろ? ワァ……」

 

 ナギニと瓜二つの大蛇が、群れをなして、たかるように此方を見つめていた。シェリーとリラは息を呑む。これだけの数が相手、まともに戦っていればそれなりに時間と体力と魔力を消耗するだろう。

 

「一匹ずつ急所を狙って、魔力消費を最小限にしないといけないな……リラ、離れてて!」

「は、はい!……うわぎゃぴっ!?」

「何っどしたのえっ何!?」

 

 見ると、先程倒したナギニの死体と、リラの身体が激しい光に包まれていた。凄まじい魔力……ナギニの死体とリラが共鳴しているのだ。

 いったい何故?ペティグリューのように、死後発動する魔法でもかけられていたのか……!?

 

「キシャァァアア!!!!」

「っ、くそ──」

 

 その謎の光を危険と見たか、ナギニの群れが一度に押し寄せてくる。

 何が起こっているかは分からないが、とにかく今はリラを守らなければ。しかしこの数……シェリーの早撃ちで一秒間に殺せるのはせいぜい三、よくて四匹程度。急所以外に当てればギリギリ命を繋ぐ可能性もある。

 ここは少々魔力消費は激しいがオルガン・フリペンドで一掃するしか──!

 

 

 

 

 

 その時。

 今しがた殺した筈の、ナギニの死体が。

 光を放ち──めこめこと人形に変わっていった。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

──同じ頃。

 奮戦を続けるネビル、チョウ、ルーナ、ドラコだったが、剣の力を以ってしてもじりじりと削られていく。

 チョウのハッフルパフの剣で持ち堪えられているけれども、だからといって根本的な解決とはいかない。魔法道具はあくまで魔法道具、使用者の助けになるもの。その使用者達の力も、強大な個には劣っている。

 

 だから彼等は、これまでの戦いは強大な個を相手に集団で行動し、サポートに徹していた。

 今回はその逆、数の暴力にジリ貧になる。単純に攻め手に欠けている。

 

(けど──泣き言ばかりも言っていられない……!!)

 

 援軍は望み薄。

 せめて生き延びられるよう、個々は考える。

 

(必ずどこかで仕掛けなきゃいけない……その時を見逃したら駄目だ……!僕に勇気を……!!)

 勇気の剣を固く握るネビル。

 

(シェリー達は必ず勝つ!それまで耐える……ここまで来たらやってやるわよ……!!)

 忍耐の剣に祈るチョウ。

 

(どんな生き物にだって弱点はある……考えるんだ、それが何かを……考え続けるんだ……)

 知恵の剣を持ち思考するルーナ。

 

(やってやる……どんな卑怯な手段だろうと、何が何でも生き延びるんだ……!!)

 狡猾の剣で簒奪せんとするドラコ。

 

 

 

 四人がそれぞれ決意を露わにした時、剣は、今まで見せたことのない反応を見せた。

 

「剣が……輝いて……!?」

 

 ふわりと浮く剣、それらが自らの手から離れて、ナギニの死体に突き刺さる。これまで信頼していた武器が、意味不明な挙動をしたことに四人は不可解な顔をした。

 一体、急に何がどうした?

 そしてこの光は何なのだ。

 

「ちょちょちょっと、剣さん?剣さーん!?」

「何が起きてるの……!?」

 

 ナギニの死体が光り輝く。

 そしてやはり、めこめこと形を変化させていった。

 

 

 

「キシャァァア!!!」

「っ、来る──!!」

 

 

 

 

 

 そしてバチリと稲妻が走ったような衝撃が起きて。

 死体は消えて──代わりに新たなる四人の魔法使いが召喚されていた。

 

 

 

 

 

「っ、え──?」

 

 

 

 彼等を庇うように立っていたのは、一目見ただけで分かる、尋常ならざる力を持った四人の魔法使い達。

 魔力云々の話ではない。その立ち姿──風格といったものが、他とは一線を画していた。

 そこにいるだけで、空気が変わる。痛いくらいのプレッシャーが立ち込めるのだ。けれども、彼等から感じるのは光のような眩い魔力。

 

 警戒しなくてはいけない。そう頭では理解しているけれども、無条件で味方だと思わせる何かがあった。

 

 

 

 

 

「──僕達が召喚された……ということは、相応に恐ろしい事態が起こっているようですね」

 

 青年はこの状況にあって、その穏やかな立ち振る舞いを崩さない。ゆるいセーターを身につけた、いかにも文学青年といった雰囲気の、眼鏡の男性。線が細くてふわふわとした柔和な印象を受けた。

 

「なるほど。特殊な力を持った……いや待たされた?化生の者が十二。これはいささか持て余しますか」

 

 しかし、醸し出す風格たるや生気と威厳、勇猛さに満ち溢れている。ライオンのように威風堂々と、しかし涼やかな声音で男は語る。その言の葉が、どこか安心と安堵を齎してくれる。揺籠の中にいるようだ。

──ああ、この人に任せれば大丈夫だと。

 初めて会ったばかりなのに、ネビルは、何故だかとても安心を覚えていた。

 

「それにしてもこの邪悪な魔力……悪の親玉が他にいるのか。いつの世も、闇と戦は絶えないな」

 

 燃えるような赤い髪が、柔らかに揺れていた。

 

 

 

 

 

「診せてみろパフ」

「えっ、何!?子供!?どうしてこんなところにあいだだだだだだだだ痛い痛い痛いちょっと!?」

「黙ってろパフ。……ふむ。魔力自体には問題はない。問題は魔力の流れパフね?」

 

 柔らかな栗毛の、白衣を纏った女の子だった。チョウの身体を無遠慮に触り、何やらブツブツと呟くと、少し考える素振りを見せた後に指をとん、とチョウの胸の辺りに当てた。

 

「この傷、誰が治したパフ?お前か?」

「えっ。い、いいえ、スーザン……友達が」

「対処法としては間違っていないパフが、経験が不足しているパフね。

 お前は強い衝撃を受けたことで、経絡系が圧迫され、骨と神経が傷ついている状態パフ。このまま放置すれば日常生活に支障を来たす恐れがあるパフ。具体的には、血中のカルシウム量が不足するなどの血管性由来の魔力疾患や……魔法を使っていないのに魔力が少しずつ漏れ出てしまう症状が考えられるパフ」

 

 具体的な症例を出されたことで、訝しげだったチョウの視線に動揺が走る。魔力の違和感は先程から感じていたが、剣の回復でも治らなかったので気のせいだろうと思っていたのだが……。

 

「すぐに症状が出ない分、厄介なんパフよね」

 ……いや。

 それを見抜くこの少女は何者だ?

 

「初期段階で気付けてよかった。

 スーザンに伝えておけパフ。次からは外傷だけでなく魔力器官の損耗も見ておけと。

 ああ、それと──…癒術(オペ)の腕自体は悪くない」

 

 お大事に。そう言って指を離すと、胸の中がスッと澄み渡る晴れやかな空のように軽かった。

 チョウにはその女の子が、まるで海千山千の経験を積んだ名医に見えた。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 腕を組み、難しい顔で黙りこくる女性。

 所作の一つ一つが美しい。ただ考えるだけの仕草が、まるで精緻な彫刻のように洗練されていて、持って生まれた品格や知性というものを思わせる。

 

「……ああ、ルーナ。こうして顔を合わせるのは初めてでございますね」

「……初めて?……それって」

 

 至高の海から脱却した彼女は、身震いする程の幻想的な冷たさを醸し出した。長い睫毛の下から刺さる視線は人を凍殺せるのではないかと思うほど。

 ややあって、ルーナは一つの回答に辿り着く。

 

「……貴方は……剣の、中の……」

「叡智に愛された貴方なら分かるでしょう?

──答えは貴方の胸の中にある」

 

 その瞳が全てを見通しているかに思えてならない。それだけのオーラを、妙齢の女は発していた。

 

 

 

 

 

「坊主、怪我はないか?……これ坊主、お主だお主。お前さんに聞いとるのだ」

 

 ドラコを庇うように立っていたのは禿頭の老人──そう、禿頭の老人、だった。

 けれども老いさらばえて痩せ細った体躯ではない。

 むしろ筋骨隆々で均整の取れた肉体で、たっぷりと髭をたくわえたメキシカンマフィアさながらの佇まいをしており──、見るからに只者ではない。

 というか、明らかにその筋の人だ。

 

「あ……や、うん。ああ。無事だけど……」

「ウム、それは重畳!運が良かったのォ!がははは!」

(態度と図体のデカい爺さんだ……)

 

 胸元から覗く刺青、長い耳に開いたゴテゴテとしたピアス、髑髏の指輪、鋭く黒い爪……仮に悪魔が人間に化けたら、こんな感じだろうか。蛇顔の時のヴォルデモートも大概だったが、こちらもかなり厳つい顔つきだ。

 

「がっはっは!そう警戒せんでも良いわ。別に取って食ったりはせんよ、なぁ?同胞よ」

「ど、同胞?」

 

 その顔面を豪快に破顔させ、老人は快活に笑う。

 

「うむ。この顔に心当たりはないか?おそらく最も肖像画や彫刻が残っているのはワシだと思うんじゃが」

「は?……は?…………んん?」

 

 まじまじと老人の顔を見つめる。言われてみると、はるか昔にこんな顔を見た気がする。

 強面の猿のような顔つき……どこかで……。

 

「…………あ」

 

 一つだけ、しかし明確な答えが浮かぶ。

 けれどそれは有り得ない……有り得ないけれども、現に今こうして、彼等は目の前に立っている。

 まさか、有り得るのか?こんなことが?

 ぱくぱくと口を開くしかできないドラコを満足そうに見ると、老人は髭をわしわしと撫でつけた。

 

「一度に四人全員が召喚されるなんざめっっったにない出来事じゃがのう。まあ、そういうこともあるわい。

 余程の邪智暴虐が相手なんじゃろ。安心せい、ワシら四人が味方になるぞい。のォ!?皆の衆よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が名はゴドリック・グリフィンドール」

「──ヘルガ・ハッフルパフ」

「ロウェナ・レイブンクローと申します」

「ワシはサラザール・スリザリン」

 

『我ら四剣の下に集う魔法の使い手なり』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……間一髪、だったな」

 

 眼前に迫っていた脅威が、音を立てて崩れ行く。

 ナギニの首から上が消滅したのだ。その事実を認識した頃には、既に生命活動は終わっていた。

 

(………な、え?)

「──嘘」

 

 呆然とするシェリーとリラ。無理もない。そこにいる筈のない者が、黒衣を纏って其処に確かに立っているというのだから。

 ならず者といった雰囲気だが、品のある大柄な男。見間違う筈もない。つい先日、彼とは死闘を繰り広げたばかりだ。

 

(有り得ない。この人はもう倒して、そして死んだ筈)

「ギィ……ガ………」

「あん?……フゥン、まだ生きてやがるか。しぶとい奴だな、トカゲの尻尾じゃあるめえし」

 

 男がパチンと大きく太い指を鳴らすと、僅かに動いていたナギニの胴体が、邪悪な魔炎に包まれて焼け焦げていく。強力な呪いが込められていたのか、ものの数秒でナギニは完全にこの世から姿を消した。

 男は燃えカスの上をじゃり、と踏み締めると、冷ややかな目で、吐き捨てるように言った。

 

 

 

「俺の娘に手ェ出すな」

「父さん……!?」

 

 ダンテ・ダームストラングが、そこにいた。

 

 

 




新キャラ追加パート。
次回、久しぶりに挿絵をつける予定です。

ゴド→穏やかな文学青年
パフ→白衣の子供
レイ→知的な理系美女
サラ→豪快な禿頭の老人

よくスリザリンは美形の苦労人の長髪銀髪青年として描かれますが、シェリポタだとベガやドラコとキャラ被りまくってるのでこうなりました。ごめんね。
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