シェリー・ポッターと神に愛された少年   作:悠魔

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私「私登場キャラクターのイメソンとかよく考えるんだけどこの四人がまだ決まってなくてさあ」
友「これとか良いんじゃない?(即出し)」
私「解釈一致」

有能か?
完結したらまとめてイメソン出すかもです。


26.殺戮の天秤 Ⅱ

 

「ダンテとシェリーを殺します」

「はっ……はあ!?」

 

 とんでもないことを言い出したロウェナだが、周囲からの様子などいざ知らずといったように、彼女はチラリと視線を飛ばした。

 

「都合が良いわね。ルーナ、その剣を渡しなさい。本来の所有者である私の方がそれを上手く扱える」

「……っ!待って、ロウェナ」

「何?まさかこの私に意見でもおありなの?」

 

 暴君かなにかのような言い草にも、ルーナは毅然とした態度を返す。

 彼女は唯一、剣を通してロウェナと対話した人物だ。だからこそ言う資格もあるし、言う必要があった。立ち塞がるようにロウェナの前に立ち、必要な言葉のみを算出した。

 

「……シェリーは例の……、ヴォッ、ヴォルデモートを倒すために必要な戦力の一人で、私達の大切な仲間。

 それにシェリーはこれまで何度も紅い力を使って敵と戦ってきた。彼女は能力も性格も信頼に足る人物。紅い力を持ったのだって敵の策略によるものだから、殺す必要は全くない」

「……何度も?紅い力を使って?それはどういう……」

「貴方は黙ってて、ゴド」

 

 ぴしゃりと、ロウェナは友の言葉を遮った。

 清々しいまでの暴挙……ロウェナからは、抑え切れないほどの憎悪が見て取れる。

 

「身に余る闇を振るった者は、須く闇に堕ちる。大いなる力に酩酊し、判断を狂わせてしまう。

 そのシェリーとやらもいずれそうなります。そうなる前にここで殺しておく必要がある」

 

 身勝手な暴論に、呆気に取られていたネビル達も段々と表情が変化していった。自分達の友人が、闇に?勝手なことを言ってくれる……。

 しかし、相手は“あの”レイブンクローである。

 創設者と言われても納得させられてしまう凄みを漂わせているのが彼女だ。迂闊には動けない。

 ……それにしても。

 あの理智公平で知られるロウェナ・レイブンクローがどこか、焦っているように見えるのは、気のせいか。

 

「いい加減にしろパフ、ロウェナ。後進達の前で何を喚いてるパフ。我らがホグワーツの愛する子供を手にかけるだと?私達はそんなことをするために魂を封印したんじゃない!

 第一、闇の魔術はあくまで人の振るうものパフ。その人間が悪だと決めつけるのは……」

「ヘレナがそうだったでしょう!」

 

 荒げた声は、びりびりと痺れるようだった。

 

「ダンテも!闇に憑かれた者はいずれ駄目になる。私が導いてあげるべきだったのに……もうあの時のような間違いは犯さない。ここで殺しておくべきなのよ」

(ヘレナ……?って誰?)

(ダンテともどういう関係なんだっけ……)

 

 

 

 

 

──ロウェナにはヘレナという娘がいた。

 

 ヘレナは天才の娘と言われることにコンプレックスを持っていたらしく、ある時母親から髪飾りを盗んで家を飛び出したのだ。

 

 この髪飾りは「装着した者に知恵を与える」という噂がある。物に頼ってでもロウェナや周囲の面々を見返したかったか、あるいは、違う地で知恵者として尊敬を集めたかったのか……。

 

 とにかくヘレナははるばるアルバニアまで逃げた。

 ロウェナは娘の愚かな行いに怒り、髪飾りを失ったことを親友三人にも秘密にしていた。

 

 そこで親子の関係は断絶したかに思えたが、ロウェナは娘が家を出て行ったショックからか、程なくして重い病にかかってしまう。

 心境の変化が起きたか、ロウェナは最後に娘の裏切りを許す、だからもう一度会いたいと願うようになり、ヘレナを好いていた男爵に彼女を捜索させた。

 

 しかしその人選がいけなかった。

 

 男爵はアルバニアの森でヘレナを見つけた。悲劇のヒロインを助ける王子様の気分だったのだろう、ヘレナを連れ帰り、そして結婚しようと手を差し伸べるものの、にべもなく断られ……自由奔放な彼女に嫉妬し、その事実に怒り狂ってしまう。

 

 男爵は、衝動的にヘレナを刺し殺した。

 

 返り血を浴びて我に帰った男爵は、自分の行いに絶望してすぐにヘレナの後を追った。そして皮肉にも、二人はゴーストとしてホグワーツで再会する。灰色のレディと、血みどろ男爵という新しい名を得て……。

 

 血みどろ男爵の身体には、今でもヘレナの返り血と、自分を戒めるための鎖が巻き付いているのだ。

 

 ルーナは灰色のレディと仲良くしていたのでこの過去も知っているが……基本は歴史に語られることのない、悲しい物語である。

 

 

 

 

 

──とまあ、これがロウェナとヘレナの過去である。

 聞くところによると、ヘレナが死んだと知ったロウェナはみるみる衰弱し、長くはなかったとか。当然だ、ヘレナの死亡時期は諸説あるがホグワーツをまだ卒業していない年頃の可能性もあるのだ。

 

 ちなみにダンテはホグワーツ創設者達に直々に指導を受けた生徒の一人で、元孤児ながら高い学習意欲で見る見るうちに力をつけていったという過去がある。

 彼の存在も、あるいは。ヘレナのコンプレックスを助長していたのかもしれない。

 

「そのシェリーも、どうせいずれヘレナやダンテのようになってしまう。失敗してしまう。そうなる前に殺してあげるのが、愛情だとは思いませんか?」

 

 ……いや、だからといって、その結論はあまりにも滅茶苦茶が過ぎているのではないか。

 

(こういうの何て言うんだっけ。毒親?)

(シッ!聞こえるぞ)

「シェリーがどういう人かも分からないのに、殺そうとするなんてどうかしてる」

「ルーナ。貴方はどういうものかも分からない生物を見たこともないのに好んでいるでしょう?それと同じよ。

 未知の邪悪を理解するだけの時間はない。だから取り敢えず排除しておく。それだけのことでございます」

 

 『子供を躾けるように』ロウェナは厳しく言った。

 高圧的な態度が、彼女の尊厳の在り方を物語る。

 ああ、もう、駄目だ。この人は、もう自分の意見を変えたりしない。

 

「剣を渡しなさい、ルーナ」

「……渡さない」

「私に二度言わせる気?

 いいから、渡しなさい。ルーナ。早くしなさい」

 

 

 

「──いつもそんな風にヘレナに接していたの?」

「……………………」

 

 

 

 ぎらり──猛禽類のように鋭い目が開く。

 青筋が浮かんでいるわけではないし、怒鳴っているわけでもない。ただそのひと睨みだけで場を萎縮させる程の怒りが伝わってくる。

 ただの瞳が、首筋に突きつけられたナイフのように思えてならなかった。直接彼女と対峙していないネビルやドラコ達でさえこれなのだ、彼女と向かい合っているルーナには、一体どれほどのプレッシャーがかけられているのか想像もつかない。

 

(怖っ)

(怖〜〜っ)

(怖ぁ)

(怖いのォ…)

(怖パフ)

(……レイ、君は……)

 

「……生意気な口を叩くのね。貴方は賢い子だけれど、聞き分けのない子供は嫌いよ。もう一度だけ言うわ、ルーナ。剣を渡しなさい」

「……嫌だと言ったら?」

「……仕方ないわ。腕が一本無くなろうと、脚が一本無くなろうと、その命が尽きるまで永遠に貴方を拷問し続ける。目と脳味噌さえ残っていればナーグルやしわしわ角スノーカックは見ることができるでしょ?」

「……!」

「正気か、レイ!」

 

 容赦のない宣言に戦慄が走る。

 冗談を言っているのではないとわかりきっていた。彼女が本気だと言うことくらい誰が聞いてもわかることだ。あの目は──そう、獲物の息の根を止めるまで止まらないだろう。

 だが、ルーナは退かなかった。

 

「おい待てよオバサン!……お姉さん!」

 

 それに同調するかのように。ネビル、チョウ、ドラコの三人は彼女を庇うように立ち塞がる。

 

「……何のつもり?」

「今、分かった。あんたは僕達の敵だ。ルーナは僕達の誇るべき友人なんだ。ルーナを殺すなら僕達を殺してからにしろ」

「貴方が伝説の魔法使いだろうが何だろうが、関係ないって言ってるのよ!」

「……そう」

 

 勝算はないではなかった。

 ロウェナには今、武器がない。杖も剣も、たった一つの魔法道具さえありはしない。

 魔法の達人は杖なし魔法を使って戦うというが、それでもやはり杖がないと実力を完全に発揮することはできないだろう。それにロウェナは今、魔力は制限されているという。相手が如何に伝説の存在といっても、逃げるくらいはできるだろう。

 

(というか、そのくらいできないと困る。僕達は元々あの闇の帝王を倒すためにここに来たんだし……)

「…………」

(正直、あの尊敬するレイブンクローが本気でこんなことするなんて、思えないけど……どうくる……?)

「残念だわ」

 

 ロウェナの腕の先に、蒼い稲妻が走る。

 蜘蛛の巣のように大気を走ったそれは一点に収束すると、一瞬眩い光を放ち──そして杖へと変わっていた。

 

(マジかよ……!?)

 

 ロウェナ・レイブンクローは杖があろうがなかろうが戦闘力の一切変わらない魔法使いのひとり。蒼い魔法使いは、人を殺せそうな眼で凄んだ。

 

「逆らうなら貴方達も……」

 

 

 

 

 

「──もうやめませんか、レイ。いや、ロウェナ」

 

 

 

 

 

 穏やかな青年は、あくまで冷静に話し合いの意思を見せた。ロウェナとネビル達の間に割って入る。……紅い剣はまだ握られたままだ。

 ロウェナは攻撃の動作を取り止め、苛立たしげにとんとんと指を叩いた。

 

「ゴド……!」

「君が過去のトラウマで闇の魔術に対して慎重になる気持ちは分かります。僕達も君の気持ちはよく理解しているつもりです。ヘレナもダンテも、僕達にとって大切な宝だった……それが、一時の欲で失われた。

 彼等を正しく導けなかったことは、僕達にとっても慚愧の念に耐えません。

 でもそのために、今ここにある宝を傷つけるのは違うでしょう?彼等はこれからの未来を築く宝だ。彼等の存在は、僕達が築き上げたホグワーツが未だ教育機関として成立していることの、何よりの証なんですよ?」

 

 

「しかし……!」

「それにここでそのシェリーという子を殺せば、それはまた新たな戦いの火種になりかねない。見てください、彼等の目を。僕達が望んでやまなかった魔法使い同士の結束が、ここにはある。

 それをまさか、貴方一人の個人的な感傷の大きく入った判断によって摘み取るというのなら、僕達も相応の態度を取らざるを得ない」

「っ、相変わらずずるい言い方をするのね、ゴド。貴方も大概性格が悪いこと……!」

「ふふ、今更ですよ。僕はこう見えても、貴方が知っている頃よりも大分老け込んだんです」

 

 ゴドリックの不敵な笑みを見て、ロウェナの頰が微かにひくつく。追従するようにして、サラザールとヘルガも口を開いた。

 

「そうだのォ。、ドの言う通りだの。儂等が四人揃って受肉することなど、まずないことよ。ちょっとした異常事態とも言っていい。

 となれば……まずは情報を識るところから始めても良かろうよ。敵は清濁合わせねば倒せん敵ということやもしれんぞ?」

「…………」

「そのシェリーという子は一旦置いておくとして、お前達はダンテを知っているようパフな?」

「あ……ああ」

「お前達から見てどうパフ?ダンテは倒すべき“敵”なのか、引き入れるべき“仲間”なのか。お前達の印象をヒアリングしておきたいパフ」

 

──シェリーはともかく、ダンテに関しては、情状酌量の余地がない悪人だ。ここは正直に全てを答えた方が良いだろうか……。

 

「……僕達もよくは知らないけど。ダンテは十数年前に封印が解けて復活して、その後は闇の帝王……今、僕達が倒そうとしてる悪人な。そいつと共謀して陰でコソコソやってたよ。一度倒した筈なんだけど、どういう訳かまた復活したみたいだ」

「…………そうパフか」

「……でも、最後はネロとリラ……子供を助けるために動いたって聞くぞ。闇の帝王とも仲間割れしたっていうし……」

「……誰に子供が、ですって?」

「えっ、いやだからダンテに」

「ダンテが!?あのダンテに子供!?あいつが……!」

 

 あいつ子供なんぞ作ってやがった!

 創設者達が色めき立つ。まさしく親戚に子供が産まれたくらいのテンションだ。威圧感はあるのに、威厳はあったりなかったり……これが創設者の姿か……?

 

「ええ……確かにダンテとシェリー氏の他に、もう一つ魔力がありますね。ダンテの魔力によく似ている……そうでしたか、彼に子供が……」

「がっはっは!どうやら儂らの知るダンテとはまるで別人のように変わっとるようじゃのォ!」

「歳は取るものパフなぁ……あの痩せっぽちで小さかったダンテが……ハニトラ対策に一生独り身でいると聞いていたパフが、考えが変わったパフか……」

「〜〜〜っ、で、どうなんだ!?

 殺すのか!?殺さないのか!?ハッキリしてくれ!」

「どうします、レイ?」

「…………」

 

 時間にして十秒にも満たない、僅かな間。

 しかしロウェナにとってはこれ以上ないくらいの長考であり、ネビル達にとってもそれは時間以上の長さに感じられた。

 やがて、重々しく口を開くと、

 

「……。……二人の処分は見送ります。妙な動きを見せれば、その時はまた彼等の様子を見ます。……頭を冷やします」

 

 そう言った彼女の表情は、明らかに疲弊していた。

 ほっと息を撫で下ろすネビル達。この短い間の中で、何となく理解していた。ロウェナは潔癖すぎるほど潔癖な性格なのだ。だから、自分の言うことにはきちんと責任を持つだろうことも。

 

「……少し、一人にさせて」

 

 重い息を隠そうともしないロウェナは、フロアの隅まで歩いて行くと、こめかみを抑えた。ルーナは複雑そうな顔で、その様子を伺っていた。

 

「我が友の非礼を詫びます。……友のために立ち向かう君達はとても勇敢でした。その勇気に敬服を。この時代の教育者はきっと素晴らしいのでしょうね」

「ああ……尊敬する先生だよ、皆んな」

「では、僕達も仕事をこなすとしましょう。僕はその闇の帝王とやらと戦います。パフは怪我人の所へ。サラ、君はどうします?」

「儂はレイの様子を見とるよ。遠くから眺める分には構わんじゃろ。また極端な考えに陥らんように監視する役目もあるしの」

「では、そのように。君達はパフを連れて怪我人の所へ向かってください。彼女は役に立ちますよ。ああ、サラの剣はそのまま君が持っていた方がいいかな」

「え……あ、はい」

 

 一度ゴドリックの手に舵が渡ると、とんとん拍子に事が進んでいく。そのことに少し安心感すら覚えながら、四人は再びやるべきことに向かって走り出す。

 

 若者達の行動を遠巻きに見ていたロウェナは、なんだかその光景が、とても眩しいものに感じられた。

 

(……ヘレナも、あんな風に……あんな子達が、周りにいてくれたら……闇に堕ちることも……いや……そうさせたのは私か……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『わたし、おかあさまみたいになりたい!』

 

『お母様、見てみてっ!びゅーん、ひょいって!もう浮遊呪文を使えるのよ?お母様みたいになるのも、そう遠い未来の話じゃないわね!』

 

『明日から私もホグワーツ!沢山勉強をして、お母様みたいに頭の良い、何でも魔法の使える素敵な魔女になります!』

 

『ホグワーツって、すごく頭の良い人が多いのね!私、びっくりしちゃった!でも頑張るね!』

 

『……大丈夫!大丈夫だよお母様!もっと勉強すれば良いだけの話!もう失敗しないから!大丈夫だから!』

 

『……お母様、私、部屋で勉強するから。おやすみ』

 

『うるさい!話しかけないで。……テストの点が悪いのは謝るから、出てってよ……!』

 

『……最近帰りが遅いって?……関係ないでしょ』

 

『……何?私が誰と何してようが勝手でしょ!?勉強時間じゃない時くらい好きにさせてよ!!』

 

『何よ……うるさい、うるさい!あんただって、私が邪魔なくせに!!私に失望してるくせに!私のことを落ちこぼれだと思ってるくせに!!』

 

『私なんて要らないんでしょ!!!』

 

『……その髪飾りさえあれば……もう……悩まなくて済むんだ……もう……』

 

 

 

 

 

「………………」

 

 ぼりぼり。

 ばりばり。

 何度も何度も、ロウェナは自分の頭を杖先でかき、そして思考の渦から脱却すると、単純な事実に気付く。

 

「あらま、いけない。私ったら。

  憂いの篩(ペンシーブ)はないのでした」

 




ロウェナは創設者組の中で一番キャラ付けに悩みました。言わずもがなキャラの濃いパフとサラ、話を進めてくれるゴド以外にどんなキャラを出すかなーと悩んでたんですね。毒親設定をつけたら物凄い勢いでキャラが定まりました。レイブンクローが好きな人は地雷かもしれません。この小説そんなキャラ多いな…。

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