シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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こないだ地上波でやってた実写版美女と野獣観ましたけど、エマ綺麗すぎねえか。こないだまであんなに小さかったのになあ(賢者の石を観つつ)


14.ブラッディ・デュエル

ある程度の休憩を取ると、シェリー達は次の扉を開く。

そこにあったのは、巨大な白黒の台座の上に鎮座している像の群れ。その像は、馬に乗った騎士や王冠を被った者など……見覚えのある形をしていた。

「これは……チェス盤?」

つまりは。

やる事はシンプル、チェスで勝て!という事だろう。ウィザードチェス、いわゆる魔法使いのチェスは駒が『文字通り』動き、高価なものだと多種類のエフェクトや爆発で勝負を盛り上げるのだが……ここまで巨大なものはロンでも見た事がない。駒だけでも、自分達の背丈の倍はあるだろう。

 

たぶんこれはマクゴナガルの試練だ、とはハーマイオニーの談。彼女はチェスの元英国チャンピオンだったらしく、その腕前は確かなものだ。チェスに組み込まれている魔法も、彼女の実力を反映したものだろう。コンピュータで行う無人チェスとは訳が違うのだ。

 

「これは、僕の出番みたいだぜ」

ロンは勇んで前に出る。この中で一番チェスがうまいのは彼だ。

シェリーはチェスどころかオセロやトランプにも触ったことがなく、駒の動かし方すらおぼつかない。彼女に友達がいなかったのもあるが、そもそもの問題として、ダーズリー家がそういった知的なゲームを愛息子ダドリーのために排除していたのも一因だろう。

 

ハーマイオニーは何というか、決して筋は悪くないのだが、彼女の頭でっかちが顕著に出てしまうのだ。型にはまったお手本戦術なので動きが読みやすい。というか戦術そのものが古い。

 

さてここで登場するのが我らがロン。一年生とはいえ、ロンのチェス・テクニックは本物だ。グリフィンドールどころかホグワーツの中でも五本の指に入るほどの実力者で、チェスの一年生大会の決勝でベガと数時間に及ぶ熱戦を繰り広げた事がある。

 

「ヒャハハハハァ!ここまで来たのは褒めてやるぜロナルド・ウィーズリー、だがこれはどうかなッ!!!」

「立て!立つのですロナルド!!!このマクゴナガルと決着をつけたいのならば立って勝つのですロナルド!!!!!」

「ああ、やってやるぜ先生!!そんな魂の入ってない攻撃、痛くも痒くも無いねッ!!それよか足下がお留守だぜベガ・レストレンジィィィィィ!!!」

「負けないで、ロン!その攻撃を凌ぎきれれば、ベガに勝てるんだから!!」

(※チェスの試合である)

 

セコンドのシェリーが椅子を出したり、同じくセコンドのハーマイオニーが喝を入れたり、双子がその勝負を焚きつけて、リーがその試合を実況し、ニックの首が取れそうになり、クィディッチと勘違いしたウッドが箒片手に飛び込んできたり、あわやマクゴナガルまでもが昔の血が騒いでその激闘に夢中になってしまい、翌日は皆談話室でぐったりしていたのは良い思い出だ。

後にこの戦いが、『ウィーズリーとレストレンジの死闘』として語り継がれていくのは、また別の話……。

 

さて、ロンはチェス盤を見てうーんと唸る。

ぶつぶつと考え事を纏めると、ロンは近くにあったナイトに疑問をぶつけた。

「これって、僕らがそれぞれ駒の代わりになるって事かい?」

「左様」

「うわっ喋れるんだ君……聞いたの僕だけどさ。僕らはどの駒と代わっても良いのかい」

「左様」

「それしか喋れないって事ないだろうな」

 

ことチェスにかけては、ロンの独壇場である。元々ロンは三人組の中ではミソっかすのような存在だと認識されていて、彼自身もそれを一番よく分かっていた。

勉学面ではハーマイオニーがダントツで、クィディッチではシェリーが大活躍。しかも二人とも自覚していないがフツーに可愛い。

それに引き換えロンはひょろ長いノッポのそばかす少年。決して劣等生ではないが、いまいちパッとしないのだ。しかもベガ・レストレンジという数十年に一度の天才(しかもモテる)の存在も大きかった。

 

出来の良い兄弟達にも、親友達にもコンプレックスを抱え、肩身の狭い思いをしてきた。だが今回は違う、今回だけはロンが主人公。彼は二人を守る騎士なのだ。

「よし、それじゃあもう一つだけ。先行は僕達で大丈夫かい」

「左様。然らば、汝らに試練を与えん」

その言葉に疑問符を浮かべた瞬間、部屋全体が大きく揺れた。

ロン達はバランスを崩し、その場に尻もちをつく。

一瞬、地震かと思ったが……ホグワーツはそういった災害対策は完璧なはずだ。ならば、スネイプが何か罠を仕掛けたとか?

いや、いくらあいつでもホグワーツ教師陣が創り上げた試練の間に細工を施すなど不可能であろう。

 

ならーーこれは元からのギミック。

このチェスの間において、元から存在していた『設定』という事だ。

「なッ、え………ッ!?」

ロンは愕然とした。当然だ。

元からそこにあったものとまったく同じ、巨大なチェス盤が並び立つかのように『二つ』せり上がってきたのだから。

勿論、駒の内容もまったく同じ。まさか、という疑念が冷や汗になって垂れる。

そんな彼等にもたらされるのは、彼等にとって絶望の宣告だ。

 

「挑戦者は三人。ならば当然、試練も三つである。『三つ同時にチェスを行い、全て完勝してみせよ』………これがこの試練の突破内容である」

ごくりと唾を飲んだ。

つまりそれは、三人がバラバラになるという事。チェス盤一つにつき、自分達が一人ずつつかなければならないという事になる。

(まずいぞ……僕はともかくとして、この二人が勝てるかどうか……)

相手が英国チャンプのマクゴナガルだということを考慮すると、ズブの素人であるシェリーとワンパターンの戦術しかできないハーマイオニーは、あからさまな足手まといだ。

だからロンが指揮を執る筈だった。しかしこれでは、仮にロンが勝てても二人は突破できない可能性がある。

 

(いや!違う。二人は足手まといなんかじゃない!考えろ、全員が突破できる可能性を!)

「この試練について質問するぞ!僕が、三人分の指示を出すのは可能なのか?」

「許可する。一つのチェス盤につき挑戦者は一人だが、違うチェス盤同士の相談は許可する。しかし代わる駒はそれぞれ違う種類でなければならん」

「ロン!?あなた何を考えているの!?」

 

ハーマイオニーの悲痛な声が聞こえた。

実際、これはロン側が相当不利な勝負だ。

チェスを同時に三つこなさなければならない上に、シェリーとハーマイオニーを取られてはいけないというハンデ付き。

相手はおそらく、いや確実に相当な実力者。できれば一つの盤面に集中したかったところだが……仕方ない、と彼は考える。

せめてもの強がりで、ロンは二人に不器用な笑みを浮かべた。

 

「………二人とも、僕の指示に従ってくれ。シェリーは右のチェス盤のビショップ、ハーマイオニーは左のチェス盤のルーク、僕は中央のチェス盤でナイトだ」

「無茶だよ、ロン!そんな………チェスの事はよく分からないけど、三つ同時に相手して、三つとも勝てだなんて、そんなのとても難しいって事くらい分かる!だから………」

「じゃあ君は、この勝負勝てるのか?前の対局で、僕にさんざっぱらやられてた君が、君達が!」

「っ、それは………」

「大丈夫だよ、二人とも。必ず勝ってみせる。必ずね!」

ロンはニヤリと笑った。

 

「本当に……本当にずるいわ、男の子って」

「ロン、お願い……無茶だけはしないで」

渋々、本当に渋々といった感じで二人は指示された場所に移った。

さて、いざゲームが始まってみれば、なんとまあ難しい事か。

それぞれの盤面で、戦局が大きく違う。

まさか、とは思ったが……、それぞれで『使ってくる戦術が全て違う』。

例えばシェリーの盤面では、早々に捨て駒を行い短期決戦を目論む攻撃的な指し方。

ハーマイオニーの盤面ではこちらに不要な手を打たせるのを誘うような指し方。

そしてロンの盤面では、中央に圧力をかけるセオリー通りの展開。しかしそれでいて盤石かつ王道の指し方だ。

その三種類の攻め方に、彼の脳はフル稼働を始める。三つの盤面を完璧に把握し、かつ違う戦略で挑まなければならない。これだけ脳を酷使するのは、人生で一度しかないだろう。

 

(この試合展開……僕が絶対に避けなくてはいけないのは『千日手(パペチュアル・チェック)』だ。引き分けで指し直しになれば相当な時間ロス。ならば反対に求めるべきは、最小手数で勝つこと!)

一手先、二手先、いやチェックになる手から逆算して駒の動きを計算。それを三人分行うだけのこと、たかがそれだけのことだ。

「ハーマイオニーの盤面のポーン、二つ前へ」

ロンの動かした駒が、敵の射程に入る。

マグルのチェスでは(面白くないことに)駒は全く動かないらしいのだが、魔法使いのチェスでは駒が直接動いて、直接壊す。

まさか、とは思うが………。

 

「ーーーーッ」

直後、轟音が起きた。

敵駒にポーンが壊された。とても巨大かつ頑丈そうな駒は、見るも無残に破壊し尽くされたのだ。

後に残ったのは静寂だけだ。その場の全員が青い顔をした。

「………跡形もなく、粉砕された。これがこの試練のルールなんだ。……よし、敢えてもう一度言うよ。君達は絶対に奪らせない」

 

激戦だった。

駒を取っては取られ、取られては取り返し。

鳴り響く破壊の音に集中を掻き乱されないように、尚且つ最善手を選択するように。

ロンの顔は、最早チェスプレーヤーのそれではなく、未熟だが誇り高き戦士のそれに変わっていた。

そしてーー、まず始めに、ハーマイオニーの盤面を制した。

「ハーマイオニー、前に三つ動いてくれ。………よし、チェックだ」

ハーマイオニーが安堵するのを見て、肩の荷が一つ降りる。ふぅ、と大きく息を吐いて、自分の盤面に戻りーー…

 

 

(…………あっ、やばい)

 

 

「………ポーン、二つ前に。……よし、これでシェリーの盤面も僕達の勝ちだ」

「やった!すごいよ、ロン!」

「ええ、本当に……!後は貴方の盤面だけだわ!」

「………ああ、そうだね」

「?」

なんだかロンの顔色が優れないな、とシェリーは感じた。そして、ふと……ふと、彼のチェスの盤面を見てみる。正直言って他の盤面を気にする余裕は無く、戦況がどうなっているかは分からなかったのだが………、

(………あれ?この駒の配置、どこかで見た事があるような……)

 

確か、この配置はロンがクリスマスに兄達とチェスをした時と似ている。

彼が熱心にチェスを勧めてくるので、ジョージと勝負しているところを、パーシーに解説されながら観戦していたんだったか。

あの時は、そうだ。

 

ロンは『ナイト』を『捨て駒』にして……

 

(……………!!!)

「ロン!まさか、自分を捨て駒にする気じゃないよね!?ナイトを囮にして、クイーンでチェックメイト!クリスマスの時にも、ジョージに同じ戦術を使ったよね!?」

「え?あ!」

「………やっぱ誤魔化せないか」

諦めたような声だった。

なんて事はない。『シェリーとハーマイオニーを取らせない』……それがロンにとっての最重要事項であったというだけ。

彼女達二人を優先するあまり、自分の盤面が疎かになっていたのだ。自分が捨て駒にならなくてはならない、そんな状況下にあることに先程まで気付かなかったのだ。

それでもしっかりチェックの形まで持っていくあたり、彼の実力は本物なのだが。

「そうだよ、スネイプを止めるためには、これしかない。ここで決めなきゃ時間をロスしちまう」

「だからって……!」

「……僕のホグワーツの初めての友達は、シェリーだ。けど、僕の初めての親友は、君達なんだ。……後は君達に託すよ」

 

シェリー達の制止の声も聞かず。

無慈悲にもロンは、敵のポーンによってチェス盤から弾き飛ばされた。

「ロオオオォォォォーーーーーンッ!!!」

「いやあああああアァーーーーーーッッ!」

 

不幸中の幸いと言うべきか、ロンはシェリー達の所へとぶっ飛ばされた。

彼の容態は酷い。元々前の試練で弱っていたところに、大きな鉄製の武器でズタボロにされたのだ。彼の身体はもう、リタイア寸前なのだ。

しかし彼の闘志はまだ消えていない。

まだ反逆の炎は燃えているのだ。

シェリーとハーマイオニーに支えられ、息も絶え絶えの、どこにだっている小僧。しかし彼は、ここにいる誰よりも騎士だった。

ロンの血に脈々と受け継がれている騎士道精神が、灼熱の光を放つ。

試練でも活躍するシェリーや、医療と知識でサポートするハーマイオニーを見て焦っていたのだ。自分だけ足手まといになってしまっているという現実に。だが、ここで漢を見せることができた。

(ああ、僕には最高の友達がいる。二人を護れたんだ。………やった、ぜ)

「ーーーチェック・メイトだ」

 

キングが剣を手放した。

それと同時、ロンも自分の意識を手放した。一瞬焦ったが、脈を確認しているハーマイオニー曰く、気絶しているだけで無事、との事だ。

しかし、もう無理だ。

騙し騙しここまでやってきたが、彼の傷口が開き始めている。ロンには申し訳ないが、ここに置いていくしかない。

「ロン、ナイスファイト」

眠っている彼の頰に、二人はキスを落とす。

心なしか、彼の口元が緩んだ気がした。

ハーマイオニーは頰を叩くと、気丈に次の扉へと向かう。

 

「次へ行きましょう、シェリー。ロンがここまで頑張ってくれたんだもの、私達が躓く訳にはいかないわ」

「………!うん。何が起きるか分からないから慎重にね」

「ええ。これまでの試練の傾向を見て、いきなり襲ってくるなんて事はないでしょうけど……」

 

中はとても薄暗かった。

そして、なんとも酷い匂いが充満していた。思わず口元を隠す。臭いだけならまだしも、有毒ガスだったら大変だ。

(………あれ?)

デジャヴだ。

この匂いは嗅いだ事のある匂いだ。先程のチェスといい今日はやけにデジャヴを感じる日だが、この匂いには覚えがある。

「これって……」

「ぶおおおおおおおおおお!!!」

「ッ」

轟音。まるで地獄の底から響き渡ってきそうな大声。

覚えがある。それどころか、同じシチュエーションで襲われた。

 

ひとりでに火が灯った。

そこにはーーやはりというべきか。

醜い顔の、巨大な、汚らしい異形どもが、ギラギラとした目で跋扈していた。

「トロール……!それも一匹や二匹って数じゃない!こんなに沢山……」

一匹一匹が巨大なため、その圧迫感は数以上の物がある。

しかも。

それよりも、もっと恐るるべきは。

「ぶ………『武装』してる!?知性の低いトロールが、武器を!?」

鎧兜に身を包み、その膂力を活かすために斧を持ち、さながらその様は城を守る兵士そのものである。

トロールは知性が低く野生的で、棍棒かもしくは己の身体を用いて敵を仕留めるというのが魔法界においての常識だ。

仮に彼等の前に鎧兜を置いてみても、彼等はそれを何に使うものか分からずに壊してしまうだろう。かつてのヴォルデモート全盛の時代においても、低い知性に巨人以下の図体、鈍重な動きから役立たず呼ばわりされた魔法生物ーーのはずだ。

 

しかし。

理性と本能だけで生きているはずのトロールが、かくや武装して襲いかかってくるなど、ありえない。

「ーーーーーそんな、嘘でしょう!?」

その言葉を嘲りと感じたのか。それとも敵の威嚇だと勘違いしたのか。

トロール達は斧を一斉に振り下ろす。その威力たるや、床を破壊し部屋中に破片が飛んでいくほどだ。爆発が起きたかのような炸裂音だ。

 

しかしシェリー達は既にその爆心地にはいなかった。トロールのそれは、良くも悪くもパワーに身を任せた戦い方なのだ。

誰がこいつらに武器を持たせたのかは分からないが、少なくともトロール自身の頭脳はさほど上がってはいないようだ。

そのまま二人は次へと進む扉の前まで向かってーー開かない。どうやらトロールを全員倒さなければ先へは進めないようだ。

その理不尽な試練に頭が痛くなるが、即座に二人は杖をトロール達へと向ける。奴等はまだ「あれ?今ので仕留めた筈なのになぁ」と斧の先っちょを不思議そうに見つめていた。

ーー好機。

 

シェリーとハーマイオニーはそれぞれ、赤い光を放つ。人間であれば即、気絶は間違いないであろう、遠慮無しのフルパワーのステューピファイ。だが無常なるかな、鎧の隙間を狙って放たれた赤い光は、トロールの皮膚の表面をほんの少し焦がすに留まった。それどころか奴等が気付いた。

 

(っ、やっぱり、私達の魔力じゃ火力が足りない!前戦った時みたいに、武器を奪って相手に直接ぶっつけるような物理攻撃じゃないと、とても気絶させられない!)

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!!」

シェリーの放った光が斧に当たり、ふわりと羽のように宙へと舞う。そしてトロールの脳天めがけて急降下していく。

 

「なッ、え!?」

しかしそれは他のトロールが斧を振り回して防いだ事により防がれた。暴れているのではない、仲間を守ったのだ。

これでハッキリした。このトロール達は、明らかに訓練されている。

知性こそ低いものの、戦闘中に仲間同士で喧嘩する事もないし、助け合うこともある。

さっきの斧の攻撃だって、仲間に当たらないように注意していたではないか。普通のトロールならこうはいかない。棍棒がお互いの身体に当たり、喧嘩が始まる。

 

「インセンディオ!!シェリー、とにかく火を!火が恐ろしいのはきっと変わってないはずよ!」

「!そっか、火で動きを制限すれば……!」

そうすればきっと、トロール達にもきっと対抗できるはずだ。トロールの体格を考慮してか、この部屋はかなり広いので、この部屋を全て焼き払うことはできない。

なのでまずは、こちらへ向かってくるトロール達を牽制するためにも、ハーマイオニーと協力して火の防壁を目の前に展開。まずはこれで身を守りーー

 

「ぶおおおああああッッッ!!!」

ーー自分達の甘さを知った。

斧を振りかざし、こちらへぶん投げた!

自分達は一度トロールを撃退したのだ、という密かな自信がぶち壊される。堪らず二人は身を屈めてその斧を回避するが、トロールの小隊はすぐそこまで迫ってきている。

「ぁ………コ、コンフリンゴ!!!」

シェリーの放った赤い爆発。

この時彼女は魔力を濃縮して、高密度の爆発を浴びせた。以前ベガがこれでトロールの肩を抉り取ったように、本来広範囲に展開するそれを小規模での爆発に抑えて威力を上げることを重視したもの。

魔力のコントロールが難しく、短距離でしか当たらなかったが……狙い通り、トロールの頭部は破裂した。ベガほどではないが、かなりの威力。そのまま床に身を沈めて、動かなくなった。

 

「やった、一匹倒しーーー」

「シェリー!トロールが、他にも!」

ハッとした。

見れば、トロール達が取り囲むように自分達の周りに群がっている。まずい。これでは避けることも逃げることも叶わない。

逃げ場が、ない。

勝ち目も、ない。

 

(やば、い………)

 

 

 

「『悪霊の火』」

「ごが、ごがあああああああああ!?」

蒼い炎。

ともすれば幻想的とも思えるその炎は、残酷にもトロール達を焼き殺していく。何匹かは逃げおおせたようだが、それでも半分以上は地に倒れる他無かった。

悪霊の火。

火炎系魔法において最上位の魔法だ。それはあらゆる魔法防御や封印を無視して対象を燃やすことができ、分霊箱という魂魄レベルで防護される品物であっても関係なく焼き尽くす恐ろしい魔法。

火は収束し、とある生物を形作る。制御された悪霊の火は生き物の姿をとることも特徴の一つではあるが……『彼』の場合、それは冥府より参上した六枚羽の悪魔の姿となる。

 

「うるせえんだよ、豚どもまだ両脚焼いてやっただけじゃねえか」

ーーー『グリフィンドールの悪魔』。

ーーー『百年に一度の天才』。

ーーー『神に愛された少年』。

「灰になるまで焼いてやるから、さっさとかかってこい。hurry!hurry!まだ死ぬんじゃねえ!もっと殺してやる!hurry!hurry!hurry!hurry!」

ベガ・レストレンジがそこにいた。

最強にして最恐にして最凶が牙を剥いた。




ロンが漢を見せて退場、代わりに一年生最強のベガが登場。お助けキャラに定評のあるベガ。

彼がシェリー達を追って行った理由については次回で。
以前トロールに不覚を取ったこともあり大暴れします。死なないでトロールズ!ここを乗り越えたら、ベガに勝てるんだから!
次回、『トロール死す』
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