シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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Chamber of Secrets

勝利の余韻に浸る暇もなく、ベガとドラコはシェリーに駆け寄った。

 

「ポッターは助かるのか!?」

「………無理だ。すまねえ、俺の力じゃシェリーを助けらんねえ」

「そ、そんな………!せっかくトム・リドルを倒したっていうのに、これじゃあ意味がない!こんな事って……!」

(………クソ……この傷を癒せる魔法使いなんて、世界中探してもいるかどうか…)

 

いや、可能性が全く無いという訳ではない。ダンブルドアに比肩するとされる偉大な魔法使いで、錬金術の父とされるニコラス・フラメルならーーもしかして、可能性はあるかもしれない。

だが、シェリーの命は最早秒読みの段階に入っている。無理だ。

頭の中を絶望がよぎった。しかし、それがやってきたのは突然だった。

「ーーどうやら、まだ天はこいつを見放してねえらしい」

巻き起こる真紅の風。

地下にある秘密の部屋においても、その鳥の周りだけは生命力と安らぎに満ち溢れているように思えた。

不死鳥だ。

美しい真紅の鳥は、シェリーの近くに降り立つと、彼女を憐れんでかーーぽろり、と涙を零した。そのあまりにも幻想的な光景に閉口する。絵画の中に入ったかのような錯覚だ。

 

「いや、でも、何だこの鳥急に現れて!こいつもトム・リドルの差し金か!?」

「大丈夫だドラコ。こいつは不死鳥、この鳥の涙は傷を癒す効果があるんだよ。ーーまさかバジリスクの毒にも有効とは思わなかったがな」

 

おそらくは、ダンブルドアの差し金か。

ともあれ、シェリーの呼吸は落ち着きを取り戻し、その眼にも光が射し込んだ。

シェリーは上体を起こすと、事情を理解したのかーー不死鳥に「ありがとう」と笑った。よかった、と安堵の声が漏れる。

それを見届けると、不死鳥はバジリスクへと向かいーーなんと、その蛇にも涙を流し始めたではないか。

 

「おいおいおいおいそいつは駄目だって!バジリスクだぞ!?やっぱりこいつリドルの差し金で動いてやがるーーッ!」

「だ、大丈夫じゃないかな。それなら私を治したりしないはずだし。たぶんその子が本当は悪い蛇じゃないって、ちゃんと分かってるんだよ」

「え?でも……」

「トムが蛇語で命令しているのを見て、まさかと思って私も話しかけてみたんだけどね、全然反応がなくって。今にして思えば、蛇語と服従の呪文の重ね掛けだったんだと思う」

「……蛇語は極めれば洗脳能力を持つとされる学説もあるくらいだ、強制的にバジリスクを操っていたとしてもおかしくは無いな」

 

シェリーがさんざん聞いた、『殺してやる』というバジリスクの囁き。あれも今にして思えばおかしかった。

バジリスクは凶悪な力こそ持つが、本質はただの蛇である。蛇は敵意や警戒心こそあれど、怨みを持って「殺してやる」などと言うだろうか。

ーーおそらくは、リドルがそのレベルから洗脳していたと言うことか。

 

『いやァ、お恥ずかしい。まさかそんな事を口走っていたとは』

「……………」

「………今、喋ったよな。こいつ」

「そうだな。蛇語使いじゃない僕にもちゃんと聞こえたぞ」

『はっはっは、幾百年も生きていれば、ヒトの話す言葉の一つ二つ覚えますとも』

「あー…なんかこう、驚くとかそういうの通り越して、何も考えらんないや……」

 

戦いの疲労と、驚愕の事実によるダブルパンチで、彼等の脳内は既にパンク状態に陥っていた。今日だけで驚愕の事実がどれだけあると思っているのだ。蛇の話す流暢な英語に頭が痛くなる。

凶悪な爬虫類の顔をしている癖に、なかなかダンディな性格のようで。低く渋く、それでいて落ち着いた声色は、有能な老執事のそれを思わせた。

ベガは面喰らいつつも、杖を構えたまま質問を行った。

 

「おい、てめえは俺達の敵か?味方か?」

『味方ですとも。私はホグワーツ生を守るためにあるのですから』

「さっき殺されかけたけど?」

『おっと、挨拶が遅れましたな。私の主人はサラザール・スリザリン。手前は蛇王バジリスクでございます。名前はーー好きなようにお呼びくださいませ。亡霊に操られていたようで……えぇ、誠に申し訳ありませぬ。なんと詫びれば良いか』

「べ、別にいいよ」

 

数十メートルはある蛇が恭しくお辞儀をするのを見る日が来ようとは。こんな経験をしている十二歳は他にいない。

 

「まぁ、ダンブルドアの不死鳥が治癒させている辺り、信用してよさそうだが……」

『えぇ、すぐには受け入れられぬのも無理からぬこと。…亡霊に取り憑かれて、まさか生徒に向けて眼を使わされていたとは。あの方々に合わせる顔がありませぬ」

「…………あの方々?」

『ホグワーツ創始者の四人でございます。聞いたことはありませぬか?スリザリン、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクローの四人を』

「そりゃあ知ってるが。お前、スリザリンのしもべだったんじゃねえのか」

『左様。ですが御三方にも変わらぬ忠誠を誓っておりました。蛇語が使えるのはサラザール様のみでしたので、彼との交流が深かったのは事実ですが。当時は英語喋れませんでしたし』

 

その割には、いやに流暢だ。

数百年ぶりに人と話すからか、どこかテンションが高いのは気のせいだろうか?

 

『そういえばパイプを通っている間、ずっとスリザリン様の悪い噂が聴こえてきたのですが』

「まあ、実際にマグルを迫害した闇の魔法使いって言われてるしな」

『………なんと』

「ドラコには悪いけれど、あまり良い話は聞かないよね」

『彼は偉大な魔法使いですとも!ホグワーツ四英傑は、数多くの魔法使い達に隔たりなく手を差し伸べたのです。彼等同士も本当に仲が良かった』

「だが、スリザリンはグリフィンドールと対立してホグワーツを去ったと……」

『それはあり得ませぬ。私はこの部屋にすっといましたから、対立の原因は分かりませぬが……。グリフィンドール様は、スリザリン様の純血主義にもきちんと理解を示しておりました』

「何だと?」

 

それは、俄かには信じがたい話だ。

ホグワーツで教えられる歴史と、この蛇の間とでの乖離が激しい。

まずい。さっきからもう頭も体力も限界に近い。これ以上何を詰め込めというのだ。

 

『では、一つだけ。今の獅子寮と蛇寮は仲違いをしているようですが……どうか今からでも仲良く、いえ、対立しないよう働きかけて欲しいのです。元々ホグワーツは迫害されていた魔法使いを護るための城。一致団結の為の城でございますので』

「……魔法使いを護る?何から?」

『マグルから。ええ、いくら魔法族が強くとも、数は何者をも滅ぼします。当時はそれが顕著でした……』

 

それはそうだろう。

人間は未知に恐怖し、そして迫害する。シェリーが良い例だ。何かあると彼女のせいにされ、いじめの対象になっていた。

だからこそ魔法使いは身を寄せ合い、自己防衛のための技術を磨くために学校というシステムを作った。

その先駆けとなったのがホグワーツだ。

四人の才能ある魔法使い達が、貴族や身分の違いといった枠組みを超え、お互いに協力し合って作りあげた魔法の城。

 

『魔法使いの学校というシステムは普及していき、創始者それぞれの血を引き継ぐ者がそれぞれの学校を創ったのです。グリフィンドール様の末裔がマホウトコロ、ハッフルパフ様の末裔がボーバトンを創設したというように』

「………そうなのか!?」

『ええ。代々行われる……今も行われているかは存じませぬが、魔法対抗試合もそういった昔からの繋がりを再確認するための催しでありまして』

 

なんともはや。

つまるところホグワーツは、世界中の魔法学校の原点と呼べる存在だったというわけだ。そう考えると自分の通っている学校の教育の質の高さも納得である。

世界最強のダンブルドアを始めとして、マクゴナガルやスネイプといった優秀な人材が揃っている。彼等は教育者にして高い技術を持った一流の魔法使いである、というわけだ。

教育面だけでなく、防衛という観点から見ても非常に高い水準にあると言っていいだろう。寧ろよくそんなところにロックハートが入れたものだ。

 

『だからーーだからどうか、違う寮であっても手を取り合ってほしいのです。我が主人達が目指した未来を創ってほしい。スリザリン様の純血主義も、間違った形で後世に伝わってしまった。元々は、純血に相応しい魔法使いになるための思想であって、決してマグルを下等だと見なすものではないのです』

「ーーーーー」

『どうかーーこの爺の頼みを聞いてほしいのです。喧嘩しても良い。競い合うのも良いでしょう。………ですが憎み合うのだけは、どうか……』

 

バジリスクの必死な念押しに、思わず首を振る。もっと昔の話を聞きたいところだったがーー流石に体力が限界なのと、コルダとジニーを医務室に運ばなければならない。不死鳥が涙を流してくれたので、大事ないとは思うが。

バジリスクは慣れ親しんだ秘密の部屋で余生を過ごすらしい。その事もダンブルドアに話しておかなくてはーー。

ーーああ、ダメだ。意識が飛ぶ。

 

 

 

目が覚めるとベッドだった。

粗方の事はベガ達が話してくれたらしい。

あれから大分時間が経っていたらしく、なんと丸五日も眠っていたらしい。シェリーは石化から戻ったハーマイオニーとジニーに泣きつかれた。

今回の一連の事件を聞いて、理事会はダンブルドアが校長であるべきだと判断したらしい。復職した校長が真っ先に決めたのは、学年末テストの取り止めだった。これに関してはとても有り難かった。何せ勉強する暇が全く無く、真剣に留年について悩んでいたところだったからだ。

 

そして現在は戦いの傷を癒すため、ベガ、ドラコ、コルダ、ネビル、ジニーと共に仲良くベッド行きである。医務室に気まずいものが流れまくりだ。

マダム・ポンフリー曰く、怪我人に寮は関係ない……のだとか。癒者として立派な考えだとは思うが、もう少し……こう……。

医務室の空気を明るいものとしたのは、ロン達の見舞いだった。

彼等がやって来たおかげで、スリザリンのドラコとコルダもぽつりぽつりと口を開くようになっていった。

 

「……ごめんなさい、コルダ。私が、あの日記に取り込まれなければ……!」

「………ああ、もう。そんな顔されたら怒るに怒れませんって、ジニー・ウィーズリー。私もあの継承者とやらには腹を立てていましたから」

「ンー、花、咲かないなぁ。あんたの周りって冷えるし、それが原因かもね」

「………あの、私のベッドの上でよく分からない植物を育てるのはやめてくれませんかねルーナ・ラブグッド!!??」

 

「ネビルお前……何であんな無茶した」

「……僕だけが動ける状況だったからさ。それに君も人の事は言えないだろう」

「……………」

「ああ、もう。そんな顔するなよ。僕を友達だって言うんなら、僕を守るばかりじゃなくて、もっと信頼してくれよ」

「………………悪い」

「………君、僕に隠してる事あるだろ。君の家庭の話、ロクに聞いた事ないよ」

「………………ネビル、次の夏休みだが…俺の…あー、実家に……来てくれねえか」

 

「じゃあ、ロックハート先生は……」

「残念ながらインチキ野郎だってさ。あんなに喧しかったのが、今じゃアレさ」

「すごぉい、物が浮いてる。まるで魔法みたいだ、あははははーーッ!」

「……記憶喪失、かぁ。聖マンゴで記憶が戻ればいいけど」

「いや、あいつの場合戻らない方が幸せなんじゃないかな。で、どうだいハーマイオニー、今の気分は」

「………最悪よ!」

 

見舞いにやって来たマクゴナガルからは抱擁された。彼女なりに色々と思うところがあったのだろう、涙こそ流さなかったものの、そのハグには様々な感情がこもっているように感じた。

そのマクゴナガルの話によると、秘密の部屋はの一部の人間だけが知る『秘密』となり、バジリスクは害がないと判断されひっそりと管理される事になるらしい。ただしハグリッドにだけは言わないようにと念押しされた。彼は信用無さすぎである。

 

「そっか……そっか!ハグリッド、戻ってくるんだ!」

「ええ、そうですよ。ダンブルドアも戻ってきましたし、いい事尽くめです」

「じゃあ……五〇年前の冤罪も晴れるんですか!?」

「いえ、残念ながら五〇年も前ですから、魔法省が今になって間違いを認めるという事はないでしょう」

「……そんな…………」

「ですが、彼はこの五〇年で掛け替えのないものを得た筈です。彼は冤罪の一つや二つでへこたれはしませんよ」

「…………!」

「………嬉しそうですね、シェ、こほん、ポッター」

「はい!ホグワーツにはハグリッドがいなきゃ!」

 

マクゴナガルはなんと帰り際にドラコ達にもハグをしており、彼等は目ん玉をひん剥いて困惑していた。ロンに言わせれば、「おったまげー」である。

そしてそのまま医務室でだらけていると、やってきたアーニー達にジャパニーズ・ドゲザを決められた。なんでも継承者だと決め付けていたから、らしい。

その様子を見て感化されたのか、コルダもロンに謝罪をしていた。そういえば彼女は数ヶ月前にクィディッチ・ピッチでロンにさんざん氷魔法を放っていたのである。

 

「あの時は……あー……私もやり過ぎてしまって………あー、本当に申し訳ないというか……ごめんなさ……」

「何だい?何か言うならもっとハッキリ言ってくれよなマーリンの髭!」

「…………お兄様あああーーん!!」

「ぶっ飛ばすぞウィーズリー貴様!!」

「は!?何でだよ急に!?」

「今のはロンが悪いわ」

『うんうん』

「ちょ、何で皆んな、あーーー!!!」

 

ちなみに今年もグリフィンドールとスリザリンの合同優勝だった。

 

 

 

 

 

ホグワーツ特急がもうすぐ出る。

シェリーはホグズミードの駅でバーノン夫妻にどう挨拶したものかと一人ごちていた。あの日、自分はほぼ脱走同然に出てきたのだったか。

……思い出した。その数日前、自分宛の手紙を読んでいたのだったか。罵詈雑言が書き殴られた、悪質極まりない手紙。しかもロンとハーマイオニーの名前で送られてきたものだから、そのショックはとても大きかった。

シェリーを学校に行かせないためのドビーの策謀だと知った後も、彼等が本当に自分の事を嫌っているのではないかとビクビクしていた。

 

(でもーーそれでいい。彼等がどう思っていようとも、私にとって大切な人を守れるのならーーそれでーー)

「シェリー・ポッター!」

 

甲高い声に吃驚して振り返ると、ぼろの枕カバーを身に纏った、子供の背丈ほどの生き物が駆け寄ってきていた。屋敷しもべ妖精の、ドビーだ。

そういえば、秘密の部屋について知ったのは彼からなのだった。ーー会うのは実に数ヶ月ぶりだ。

 

「ドビーッ!久しぶり、元気だった?」

「はいぃ!ああシェリー・ポッター、貴方はやはり最高でございます!秘密の部屋で継承者を倒したと聞いた時は小躍りしちゃいましたねェ!」

「ドビー、機嫌良さそうだね」

「それもそうです!なんせドビーは自由を得たのですから!」

「?よくわからないけど、よかったね!」

「ありがとうございます!あ、自由とはつまり、ドビーはクビになったのでございますね」

「………………えっ!!??」

 

聞くところによると、なんとドビーはマルフォイ家に憑いた屋敷しもべなのだとか。つまりは、この一年色々あったドラコやコルダが主人というわけだ。意外な繋がりもあったものである。

ジニーの荷物に日記を紛れ込ませたのはルシウス氏。ドビーはそれを知って、シェリーに警告をしていたのだとか。

 

「ドビーがシェリー・ポッターに肩入れしていたことを知ったルシウス様は私を『解雇』なさったのです!ヒャッホウ!ドビーは自由!」

「え……で、でも、ドビー。それって屋敷しもべ妖精にとって最大の屈辱なんじゃなかったの?いいの??」

「全然大丈夫っす」

「………ええー」

 

ドビーは屋敷しもべとしては変わり者もいいところらしい。生物の本能として、従属と服従が染み込まれている彼等にとって自由こそ屈辱……の、はずなのだが。

小躍りしているドビーを見ていると、そんな事情など些細なことか、と思えてくるのだった。

 

「ああ、それで、シェリー・ポッター。今日はこれを渡しに来たのです」

「…………?手紙?」

「はい!夏休み中、シェリー・ポッターに送られてきたご友人からの手紙です!」

「……………ッ!」

 

封を開けて、中身を見る。

暴言などではない。どこそこに出かけたとか、近況を知らせたりだとか、とりとめの無い話。後半の手紙になると、返事が返って来ない事への心配がつらつらと書かれてあった。

驚きと共に、嬉しさが沁みた。

 

「……アルバス・ダンブルドアから聞きました。今年はずっと、ご友人との仲に悩まれたとか。ご友人と話すのが怖くなった時があったとかーー。ドビーは考えました。三人の絆が本当だと証明する方法を」

 

歯の隙間から声が洩れる。

鼻の奥が痺れるような感覚に陥る。

ーー涙が、溢れそうだ。

 

「もう何ヶ月も経ってしまいましたがーーどうか、受け取ってください」

「ーーうん。ありがとう、本当にーーありがとう、ドビー」

 

疎外感があった。

自分がここにいてもいいのかと、悩んでもいた。居場所をーーいや、自分の大事な人の名前を呼ぶことが、憚られた。

この一年、無理矢理忘れようとして、それでも悩み続けていた事だった。

だけど、自分は。

 

彼等のことをーー

ーー友達と呼んでも、いいのだ。

 

「オーイ!そんなところで何やってるんだよ、シェリー!」

「早くしないと遅れるわよー!」

 

「ーー今、行くね!」

 

親友の下へと、駆け出したーー。

 

 

 

『Chamber of Secrets』、the endー

 

 

 

 

 

「すぅ、すぅーー」

「寝ちまったか、シェリー」

「無理もないさ。バジリスクの毒を喰らったんだからな」

「…………」

「…………ありがとうな、あー……ベガ。妹を助けるのに協力してくれて」

「ああ、別に………」

「……………」

「……………」

 

気まずい。

普段この男と何を喋っていたっけか。そうだ、憎まれ口を叩き合ってた。うん、まともな会話が出来るはずもない。

先に口を開いたのは、ドラコだった。

 

「あー、その……ベガ。そういえばコルダの秘密を話していなかったな」

「……秘密?」

「ああ。コルダが攫われたのは、人より魔力が多いからってあいつは言っていただろ?……この子の魔力が人より多いのは理由があるんだ」

「………いや、別に、話したくない事なら話さなくてもいいんだぞ。お前やこいつにも事情があるだろうし」

「いや、聞いてほしい。君達には妹の命を助けられた、だから話しておくべきだと思ったんだ」

「……………」

 

ベガは沈黙した。

彼も事情がある。自責と後悔で塗りたくられた、最低の過去を持っている。その過去は、未だ親友にも打ち明けられていない。言えば、自分がしでかした事へ直面しなければならないからだ。

だがーードラコは、その過去と正面から向き合うというのか。

 

「コルダがまだ幼い頃、例のあの人の残党に襲われた事があるんだ」

「………何?」

「僕の父が許せなかったのだろうな。闇の陣営の幹部でありながら、あの人が失脚した後はコネと地位を使って今度は魔法省の幹部だ。怨みを持つ者は多い」

ドラコは自嘲気味に言った。

「だがーー言っておくが、父上は生まれてくる僕達を守るために裏切り者の道を選んだんだ。決して保身の為じゃない」

「ーーだとしても、お前の父親の罪は変わらない」

「………、ああ、そうだな。兎も角、それでコルダは狙われた。彼女が一人でいる間を狙って、だ。魔法省の人間が駆け付けたおかげで一命は取り止めたんだが」

 

「そしてその時ーーコルダは噛まれた」

 

噛まれた、とは。魔法界にとってそれは、単に獣に攻撃されたとは別に、もう一つの意味を持つことになる。

魔法界の一部の生物は、対象を噛む事で生殖活動を行う存在がいるのだ。

例えば吸血鬼。

計り知れないほどの力を持つ代わりに太陽の下を歩けない生物である彼等は、ほぼ全ての生物が持つーー血に干渉することで今まで存続を続けてきた。そんな彼等は、主に自分の血液を受け渡す事で種を増やす。

己の爪や、牙によって。

吸血鬼の派生であるグールなども、傷をつける事で同族を増やしーー爆発的に、まるで病気のように広がっていく。

そしてーー、人を噛む事で増える最もポピュラーな生物が、もう一種存在する。彼等は強靭な肉体を持つ代わり、生物を弱らせる氷魔法に特に弱いとされるーー。

 

「……まさか」

「ーーああ。彼女は狼人間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

【登場人物紹介】

 

 

【挿絵表示】

 

 

◯シェリー・ポッター(Sherry Lilly Potter)

今作の主人公。赤い髪の少女。

スネイプの指導で射撃魔法を使い始めたことにより、ひたすら早く攻撃する早撃ち戦法が主な戦い方になる。

得意魔法はフリペンド。

 

◯ベガ・レストレンジ(Vega Lestrange)

生徒達のメイン戦力。ロックハートに色々言われて思うところがあったのか、ネビルに自分の過去を打ち明けようと決意。

得意魔法は悪霊の火。

 

◯ロナルド・ウィーズリー(Ronald Bilius "Ron" Weasley)

去年ほどの活躍はできなかった。魔法糸の扱いは上手いはずなので頑張ってもらいたい。

 

◯ハーマイオニー・グレンジャー(Hermione Jean Granger)

怪物の正体に気付いたり、新魔法作ったりした人。登場回数少ないくせに何気に貢献度がやばい。

 

◯ネビル・ロングボトム(Neville Longbottom)

ベガに感化されてか、相手がバジリスクでも勇敢に立ち向かうようになった。多分今の時点で帽子から剣抜ける。

 

◯ジニー・ウィーズリー(Ginevra Molly “geniee“ Weasley)

入学した年から大変な人。コルダというライバルがいるので伸びる可能性はある。友人が不思議ちゃんのいじめられっ子で、ライバルが金髪悪役令嬢……と、ちゃっかり主人公みたいなポジションにいる。

 

◯ドラコ・マルフォイ(Draco Lucius Malfoy)

去年に続いて二度も例のあの人に喧嘩売っちゃった人。今までの純血主義の価値観が壊された今、彼はどうするのか。

 

◯コルダ・マルフォイ(Corda Narcissa Malfoy)

今年から登場したドラコの妹。優秀な魔女だが、スリザリンらしく他者に対しては辛辣。その反面非常に家族想いで、特に兄のドラコに関してはブラコンと言っていいほどの愛情を注いでいる。扱いの難しい氷魔法を使うが、同学年の間では一番の彼女も未だ完璧に使いこなせていない。

幼い頃に噛まれ、狼人間となった。当時は脱狼薬が開発されていなかったため、ルシウスは生物の力を弱らせる氷魔法の術式を娘に埋め込んだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

◯ギルデロイ・ロックハート(Gilderoy Lockhart)

ヘタレのくせに使う呪文が全部チート。魔法戦士としての才は無いが不意打ちや諜報の能力はとても高く、正面からの戦いでなければかなりの強敵となり得る。(だが本人は勇敢に立ち向かう力を欲しがった)

 

◯ドビー(Dobby)

シェリーを精神的にも肉体的にも追い詰めたやべーやつ。アイドルの過激ファンみたいな妖精。

 

◯エミルと呼ばれた男性(A man called Emil)

女のような顔をした男。

闇祓い。

 

◯チャリタリと呼ばれた女性(A woman called Charitari)

男のような性格の女。

闇祓い。

 

◯バジリスク(Basilisk)

全長数十メートルの大蛇。スペックだけなら最高のチート蛇野郎。蛇語と服従の呪文の重ね掛けでリドルに操られていた。

本来は老獪な老執事のような性格で、結構おちゃめ。

 

◯トム・マールヴォロ・リドル(Tom Marvolo Riddle)

やがて世界に名を轟かせる事になる、未来のヴォルデモート卿。

余裕のある時はふざけた性格だが、ピンチになると口調が荒くなる。

闇の帝王の記憶に過ぎず、戦闘能力も当時のもの。しかし多くの創作魔法を持ち、その実力は本物。シェリー達が三人がかりで漸く倒せた相手である。

 

◯その他

 

『魔法糸』

ハーマイオニー考案の戦法。

見えるか見えないかぐらいの細い魔力の糸を伸ばして相手にひっつけて、呪文を唱えれば糸に沿って魔法が飛んでいく……というもの。

魔力が低い者ほど糸は細く扱いやすい、つまり魔力で劣る者のための必殺技。

糸を伸ばすのに時間がかかるのが欠点。

 

『プロテゴ・メンダシウム』

ロックハートが開発。

一回だけほぼ全ての魔法を完全無効化できる魔法。一対一の戦いでこれを使い、死んだフリをして背後からオブリビエイトを使うのがロックハート流。きたない

 

『紅い眼』

ヴォルデモートが(偶然)発現した能力。闇の魔術に精通した者が一定の条件を満たすと、肉体の一部が赤く変色し魔力を増幅させる事ができるようになる。死喰い人の中でも一部の人間しか使えない。




秘密の部屋終わりました。長かった…。
大体ノリで連載作品二つも増やしたらそら遅れるわ!すいません!そちらもよかったらどうぞ!
アズカバンの囚人は近日公開できると思います。
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