漏れ鍋までの移動は
どんな狭い隙間も通り抜け、通常のバスより圧倒的に速く走る。おまけに下手な防衛魔法よりも強力な装甲が施されているため、襲撃の心配もない。
……とは、ニキビ顔のお調子者なバスガイド、スタン・シャンパイクの談である。
ロンドンの下町なまりで話す彼は少し前までホグワーツに通っていたそうで、闇祓いの何人かと親しげに話していた。
しかし……、魔法界のバスというのがこういうスリリングな物だったとは。
シェリーとしては初めて乗るジェットコースターのような感覚で非常に楽しかったのだが、初めてでそれは凄いと黒人の魔法使いから驚かれた。
さて。
漏れ鍋の一室を借りて、何十にして何重もの魔法結界を張り、闇祓いがそれぞれの持ち場について、ようやくひと段落。
何だかくたびれてソファに座ると、どこか挙動不審気味の若い闇祓いが目に入った。
夜の騎士バスでも気持ち悪そうにしていたし、大丈夫だろうか。
「………、………」
「えっと……あの、大丈夫ですか?」
「うおっ!?あ、が、も、問題ねえ」
長身の闇祓いはしどろもどろに答える。短い黒髪を刈り上げており、目付きは悪い。だから一見怖そうなイメージだったのだが、どうやらそうでもないらしい。
黒人の闇祓いは苦笑しながら彼を紹介した。
「こいつはジキル・ブラックバーン。悪人面だが、これでも実力は確かだ。気を悪くしないでくれ……ただ、ジキルは女性に対する免疫が全くなくてね」
「キ、キングズリーさん!」
「くくっ。このように、顔を真っ赤にしてしまうんだよ、面白いことに。仕事の時は相手が女性でもちゃんと割り切って戦うから、心配しなくていい」
要するにいじられキャラだ。
シェリーが一歩近付くと、ジキルは三歩離れる。ただ、嫌われているわけではないので一安心といったところか。見た目はベガよりも不良なのに。
そういえばシェリーを庇って盾の呪文を使っていたのもこの男だったか。見た目とのギャップが激しすぎる。
ジキルが赤面していると、どたどたと二人分の靴の音。
先程グレイバックを追っていたメンバーの中にいた二人だ。
「戻ったか、アレン、チャリタリ」
「お疲れ様です!先輩方!」
「おう、帰ったぞジキル!そしてすまんキングズリー!逃した!」
長い金髪の男性は大きな声で言った。
ぱっちりと開いた眼は明朗快活な印象を受ける。……さっき土や岩の魔法でグレイバックを追い詰めた男だ。
あれだけの規模の広範囲魔法を使い手、彼は相当な実力者のはず。闇祓いのローブからのぞく岩石のように隆起した肉体には、いくつもの傷がつけられていた。
「……まぁ、相手は死喰い人の中でも最強格のグレイバックだ。件のシリウス・ブラックや、現在服役中のベラトリックスに並ぶほどの実力者。捕らえられなくても、無理はない」
「いや!俺は自分が許せない!」
「マグルに被害が出なかっただけ、良しとしようよ」
そう言ったのは、褐色肌の短髪の女性。
しなやかで猫のような身体は、鍛え抜かれた証。スポーツマンのように均整の取れている肉体に、短く切り揃えられた髪。戦士としての雄々しさがあった。
黒人の闇祓いは自分の頭を抑えると、暫く思考を巡らせた。アレンを隊長とするなら、この男が闇祓い達のブレーン的存在なのだろうか?
「仕方がない、アレン、チャリタリ。お前達もシェリーの護衛に当たってくれ」
「承知した!……君が件のポッター少女か!顔色が悪いな、飯はちゃんと食ってるか!?」
「あ、は、はい。マージおばさんに貰ったドッグフードとか……」
「ちょっとアレン隊長?シェリーがあんたのハイテンションについてけてないよ」
「むぅ、そうか。すまん!」
「……ひとまず自己紹介といこうか」
こほん、と調子を取り直した。
「私の名前はキングズリー・シャックルボルトだ。数ある魔法犯罪の中でも、主に闇の魔術に深く関わる人間を取り締まる闇祓い局の一員だ。よろしくな、シェリー」
大柄だが知的な雰囲気を感じさせる男は、和かに微笑んだ。ダンディな、落ち着いた大人の男性だ。
次に紹介されたのは溌剌とした褐色肌の女性だ。
「アタシはチャリタリ・テナ。自分で言うのもなんだけど、魔法道具の知識と運用が得意だよ。マグルふうに言うなら、いわゆる『工作員』って奴だね。魔法でできた罠や爆発物を探し出すのが仕事さ」
「たしか一昨年にはホグワーツにみぞの鏡の点検をしてたんだっけか?」
「そうそう。それでムーディーに魔道具の才能があるって言われたんだよ。調子に乗るなとも言われたけど。トンクス元気にしてるかな……」
どこか遠い目をするチャリタリ。
簡単に言うが、魔道具は複雑な魔法がかけられているのが普通で、それに精通しているというだけでも彼女の優秀っぷりが垣間見える。
キングズリーによれば純粋な戦闘力も非常に高く、期待のホープなんだとか。
「レックス・アレンだ!よろしく、ポッター少女よ!好きな言葉は熱血!君のお父さんとは先輩後輩の関係だったぜ!」
「えっ、そうなんですか?」
「アレンは実力派の魔法使いでね、闇祓いの中では間違いなく一番の実力者。今、世界最強に最も近い男だ。まあグレイバックは逃したが」
「面目ない!」
なんと、世界最強とは。
イギリス魔法界は昔から魔法戦闘のレベルが高く、強者達が集まる傾向にある。その辺の主婦が凶悪犯罪者相手に石化呪文を当てて粉々に砕けるくらい、個々人の能力が高いのだ。
サムライやニンジャなる戦闘の達人が数多く揃った日本魔法界や、闇の魔術が発展しているドイツなどといった強豪と並び称されるレベルなのだから、相当に高い。
現・世界最強のアルバス・ダンブルドア、闇の帝王ヴォルデモートといった英傑達に最も近いとは……。
滅茶苦茶強いのでは、この男。
「で、さっきも言ったが、ジキル・ブラックバーンだ。この中じゃ一番下っ端だ、可愛がってやってくれ」
「う、うす」
「他にも沢山いるんだが、おいおいな。ここでの生活中は困ったことがあれば私でも皆んなでもいい、何でも聞きなさい。皆んな気の良い奴達さ。……さて、もうそろそろエミル達が帰って来てもいい時間なんだが……おっと」
「やあやあ皆さん、お揃いで」
「戻ったか、エミル」
「よう、シェリー」
「あ、ベガ!」
黒髪の中性的な男性に連れられて、自分のよく知る顔が入ってきた。ベガだ!
魔法界の友人と再会できた事に顔を綻ばせるが、何故彼がここに?
「ブラックから身を守るためですよ。……やぁどうも、シェリー。エミル・ガードナーと申します。特技は遠方からの長距離射撃ですよろしく」
「あっ、よろしくお願いします」
「…あれ?僕達、どこかで会いました?」
「え?……………あっ」
そういえば去年、ハグリッド樽の中でこんな顔を見た気がする。狭くてよく見えなかったが、もしや、彼があの時の。
あの出来事は一応内緒という事になっているので、口外しない方がいいだろう。
「………え、えーと、初めてですよー…」
「そう?まあいいや。……君達二人は、今世間を騒がせているシリウス・ブラックから狙われる可能性が高いんだよね」
「ブラックは例のあの人に最も忠実な部下の一人!奴が脱走すればどうなるか!?」
「生き残った女の子のシェリーは勿論のこと、自分の親戚で、かつ親マグル派の親を持つベガを狙うっすね。血を裏切る者とか何とか言って」
「あー、言いそうだね」
「嘆かわしい事だ。まあ、あいつの場合はそれ以外にも………っと」
「?」
「いや、何でもない。ともあれ、そういう訳だ。すまないが夏休みの間じゅうはここで過ごしてくれるか」
「まぁ、俺は構わねえが」
「勿論大丈夫です」
「そう言って貰えると助かるよ」
シェリーはロクな説明もないまま何やかんやで漏れ鍋まで連れて来られたので、むしろ有難い限りだった。
それにシリウスだけではない、グレイバックといった危険人物までもが野放しの現状では、こうして護衛するというのもやむなしというもの。
さて、扉が開いたかと思えば、ややセンスは古いが上等なローブを見に纏った壮年の男性が立っていた。魔法省大臣、コーネリウス・ファッジ。イギリスで一番偉い人、である。
「やあや、シェリー、ベガ。初めまして、大臣のコーネリウス・ファッジだ。夏休み中はここで過ごしてもらう事に……えっもう話した?そう……ともかく、申し訳ないが休みの間はあの家に帰れないものと思ってくれ」
「あ、その事なんですけど、……その、私ここに来る途中でおばさんに魔法をかけてしまって……」
(何やってんだこいつ……)
「いやいや!あれに関しては自己防衛という扱いになっている!おばさんのアフターケアもばっちりだ、忘却術士達が出向いて記憶は『忘却』してあるよ。それにしても記憶を覗いた術士達がしきりに『小さな女の子になんて酷い事を』……とか言っていたが、ありゃ何だったのか……まあそういう訳だ!」
「ありがとうございます」
「うんうん、素直な良い子だ。では、私はこれで失礼するよ。
「でぃめん……?」
ファッジのそのひとことで、シェリー以外の全員が渋い顔をした。いや、アレン氏はすん……と無表情になったが。いつも笑顔の彼が急に表情をなくすとちょっと怖い。
「大臣、正気ですか?あんな連中をホグワーツに配備するなどと……」
「あれは本能で動いてるだけで、制御できる代物じゃないっすよ」
「ああ、うん、まあ、致し方あるまい。シリウス・ブラックに対する抑止力として、ある意味最も効果的な連中なのだ」
「しかし……」
闇祓い連中からダメ出しを食らうファッジだったが、キングズリーの「反対意見はここで出すもんじゃない」という一言でひとまずその場は収まった。
ファッジは帰った。
吸魂鬼?
聞き慣れない単語だ。吸血鬼ではないのか?疑問に思っていると、若干顔を赤くさせながらジキルが説明してくれた。
「でぃ、吸魂鬼ってのは……人間の幸福を糧にして生きる生物だ。魔法省の管理に置かれてはいるが、その特性上、誰も近寄りたがらない。最も恐ろしい生き物だよ」
「最も恐ろしい……」
「ああそうだ。あんな連中を城の守りに使うなんて、大臣は一体何を考えているのやら……」
「何も考えていないんでしょ、あの様子じゃあさ。困ったね、いくらダンブルドアや私達が防衛するとはいえ、城の内側にあんなのがいちゃたまったもんじゃない」
闇祓い達が揃いも揃って深刻な顔をしているとは、それだけ危険な生物という事か。
しかしそんな生物を、制御し切れていないとはいえよくもまあ従えているものだ。
「守護霊の呪文ってのがあるからな。一応聞いとくがシェリー、お前は使えるか?」
「……?ううん、使えないよ。何それ?」
「守護霊の呪文ってのは、まあ、その名の通り守護霊を呼び出す呪文だ。自分を護ってくれる霊を呼び出す。現状吸魂鬼を討ち払う唯一の手段だ。……その代わり習得難易度は恐ろしく高いがな」
「そうなんだ………私、その呪文を覚えたいな」
「くくく、お前ならそう言うと思ったぜ」
闇祓い一同が驚いた顔をした。
守護霊の呪文は恐ろしく難易度の高い呪文であり、自分達も習得にかなり苦労した経験があるからだ。
「私が呪文を覚えたら皆んなを守れるし、教えられるかもだしね」
「キングズリー!!キングズリーいい子だよこの子!!」
「いくらでも教えてやらあ!!」
▽▽▽▽▽▽
見た目の割に意外に教えるのが上手いジキルに魔法理論を教わり、守護霊構築の図式を頭に叩き込む。ジキルは元々勉強ができる方ではなく、この呪文も滅茶苦茶苦労してようやくできたものらしい。
息を整えコンディションを万全にすると、外でチャリタリと合流しいよいよ実践だ。
自分の魂情報を基に構築するため形状は意識せずにむしろ内面の複雑な循環をどれだけコントロールできるかが問題なのだとか。よく分からないが、取り敢えずやってみるしかない。
「コツは自分が幸せだと思う記憶だよ!頑張れ頑張れできるできる!」
「エクスペクト・パトローナァーム!!」
「そう!心を落ち着かせるんだ!でもこっちは見ないでくれシェリー!」
「守護霊よ来たれェーーッッ!!」
チャリタリとジキルによる熱血指導を側から見守る男性陣。ベガは天才肌、エミルは感覚派で、アレンは守護霊を出すのが苦手らしい。
つまり教えるのが苦手な連中である。
ジキル達の指導を横目に優雅に紅茶を飲んでいると、アレンがウズウズし始めた。……混ざれないのが残念なようだ。
「むぅ!見たら燃えてきたな!どれ、エミル!いっちょやるか!」
「あ、僕は忙しいのでパスで。レストレンジ君どうです?」
「じゃあこの紅茶を飲んでから……」
「よし!こっちだ!来い!」
「ちょっ」
無理矢理引き摺られた。
地形をぶっ壊しながら飛来する岩石を躱しつつ負けじとベガは応戦するが、変幻自在の地形の上でアクロバティックに動き回るため、中々攻撃が当たらない。攻撃は最大の防御ということか。
一応これでも手加減している方らしいが、それでこの超火力と広範囲。ベガの年齢で応戦できているだけでも凄まじいのだが、それでも両者の間には高い高い壁があった。これが最強に最も近い男の力か。
「俺の専門は土・岩・砂、その他諸々その辺だ!周囲の地理や地形は自由に変形できるし、鉱物だって自由自在!火炎を混ぜたら溶岩!風を吹かせたら砂嵐!あと拘束や封印ができる植物も操れる!頑張れば重力を操る事もできなくはないぜ!」
「……へぇ!闇祓い最強の名は伊達じゃーーー」
「そしてその魔法の源となるのはやはり魔力!そして魔力がどこから来るかってなるとやはり筋肉!日頃の鍛錬の賜物というわけだ!」
「……ほぉ!魔法だけじゃなく身体も鍛えているのはーー」
「少年も中々良い筋肉をしているな!将来が楽しみだ!俺と一緒にトレーニングしようぜ!」
「話聞けってんだよ!!」
限りなく実戦に近い模擬戦を終えて、クタクタになって眠りにつく。
あれ、これってブラックやグレイバックよりも恐ろしいのでは?
疑問に思ったが口には出さなかった。
守護霊の訓練が始まってから、およそ二週間が過ぎた。
チャリタリ曰く、シェリーは魔法の構築自体は形になっているらしい。後はそれに魔力を流し込めばいいのだが、感情と魔力を同時にコントロールするのがかなり難しい。
これは、まだまだ時間がかかりそうだ。
そもそもシェリーの年齢でこの呪文を覚える事自体が異常なのだが。(ベガは普通に出せる。大きな山羊を出して教えていた)
シェリーが疲れ切ってベッドに腰掛けると、大人しいノックの音。
「守護霊の訓練お疲れ様。はいこれ、ホットチョコレート。よく冷まして飲みな」
「チャリタリ!ありがとう」
「気にしないでいいよ。……ほんとは、吸魂鬼やボガートで練習するのが一番良いんだけどね。トムさんがこの店を開く時、そういうのは入れないようにしたからねぇ」
トムと聞いてぎくりとする。
去年激戦を繰り広げたトム・リドルの印象はかなり大きい。バジリスクの牙を撃ってきたし。
………それにしても。
「ど、どうしたんだい」
「………私の気のせいなら、良いんだけど……何か、無理してない?」
「…………え?」
「去年、すごい大嘘つきの人と出会って、それでほんの少し人の嘘が解るようになったんだよね。…今のチャリタリからは、何だか、無理して着飾っているような……そんな気配がするの」
「………そっか」
チャリタリは苦笑すると、どこか悲しげな顔をした。
それはいつもの、強がっているような顔ではない。歳よりずっと幼い……、それでいて優しい顔だ。
ぽつり、と。
話し出したーーというより、言葉が溢れ落ちたような始まりだった。
「昔のアタシは……、人より臆病でね。大きな声も出した事がなかった。声を出したら殴られるような家庭だった。ある日を境に父親は家に帰らなくなって、私は捨てられて、けど行くあてはなくて。道の隅っこで丸くなってたら、アタシより少し歳上の女の子に声をかけられた」
「運の良い事に、その子はアタシみたいな子供を預かる孤児院の院長の娘だったんだ」
魔法界の孤児院。
そう珍しい話ではない。虐待ないしは親を失った子供達を預かる受け皿はいつの時代も必要なのだ。
そういう恵まれない子供はマグルにも必ず一定数存在するし、魔法界においても、闇の帝王が台頭した時代に親や親戚を失った人間は少なくない。
シェリー自身がそうだし、ベガやロン、ネビルもそうだったと聞いている。それほど闇の魔法使いが暴れた時代なのだ。
「その子の名前は、クリシュナ。孤児院のお姉ちゃんみたいな存在だった。クリシュナ姉さん達はアタシみたいな子供を引き取って育ててたんだよ」
最初はロクに口も聞かず、隅っこでずっと体育座りしているような子供だったが、クリシュナが積極的に話をする事で次第に心を開くようになったのだとか。
そして次第に彼女の周りには不思議な事が起こるようになった。欲しいと思った物がすぐ近くに置いてあったりーー。その事をクリシュナに相談すると、驚くべき事実を告げられた。ーー『チャリタリは魔女で、アタシも魔女なんだ』、と。
この事実は周りの孤児達への混乱を避けるために、彼女達だけの秘密となった。
11歳になると、ホグワーツに入学。
「楽しかったよ、ホグワーツの七年は。今からでもやり直したいくらい。姉さんはすぐに卒業して闇祓いになったけど、それでも楽しかった。………あの事件が起きるまでは」
「事件?」
「とあるマグルの一家の息子達を死喰い人の残党が誘拐する事件が起きてね。クリシュナ姉さんの班は主犯を追ってたんだけど……返り討ちに遭って。殉職した」
クリシュナは優れた魔法使いだった。
だが、そんな人間であっても儚く散る。それほどまでに、魔法界の均衡は歪なのだ。
当時の死喰い人の残党は、未だ全てが拿捕された訳ではない。狡猾に逃亡し、潜伏して虎視眈々と機会を伺っている。グレイバックやブラックが良い例だ。
そして当然、クリシュナを殺した死喰い人も捕まっていない。
世界はまだ、平和になどなっていない。
「闇祓いで忙しいくせに、孤児院にも顔を出していたからね。子供達は当然不安がった。だから……、その時からずっと、あの子達を安心させるために、いや、アタシ自身が安心するために、アタシは姉さんの真似をし続けた。今もずっと姉さんの影を追い続けてる。長かった髪も切って、弱い自分と決別して。大切な人達を守るために」
「………チャリタリ……」
「……、つまらない話したね。アタシの話はここまで!明日に備えて寝な?……明日は守護霊が出るといいね」
▽▽▽▽▽▽
「レストレンジ君はオリジナルスペルの開発とかはしないんですか?」
漏れ鍋の一階で、酒をあおる魔法使いが何人かいる中で、ジキルの作ったというお菓子を摘みながらエミルはにこやかに言った。
それにしても唐突な話である。
オリジナルスペルとは、要するに創作魔法のことだ。魔法を学ぶ者が一度は考えるであろう自分だけの魔法。といっても余程の魔法使いでなければ、大した魔法はできないのだが。
「僕と、僕の少し上の世代で流行ってたんですよね。例のあの人全盛の時代でしたから、自衛のために色んな魔法を覚えて、極めて。そして自分だけの必殺技とか考えたりしたもんですよ。大抵がもう開発されていたり、お座なりな魔法だったんですが」
「まぁ男なら一度は考えるよな」
「僕とすれ違いに卒業しちゃいましたが、悪戯好きの四人組がその手の創作魔法に長けていたそうです。……レストレンジ君なら、そういうのもできるんじゃないですか?」
エミルは若干期待を込めた目で言った。見た目や立ち振る舞いは完全に女子だが、根っこは意外と男の浪漫に溢れている。
しかしベガは、うーんと唸った。
「俺だけが使える魔法があっても、意味がねえんだ。俺の魔法を継いでくれる人間がいないと意味がねえ。去年、俺の友達が『魔法糸』っつう魔力が弱い奴ほど効果のある魔法を考えたんだが……作るんならそういう、誰でも使えるような利便性のあるものじゃねえとな」
「……身につまされる話ですね」
「まぁ、そういうのは他の奴に任せるとするわ」
そう言ってベガはファイア・ウイスキーを飲み干した。エミルが残念そうな顔をするが無視する。
「勿体ないのォー」
老人の声だった。
隣を見ると、ミステリアスな白髪の老人。
顔の皺は多いが背筋はぴんと伸びており、黒い琥珀の瞳からは生気を感じさせた。
老い先短い人間の顔ではない。
人を落ち着かせるような優しい音で、老人は言葉を紡いだ。
「お前しかできない魔法ということは、お前にしかできない役割があるということ。誰しもが使える魔法だけが意味を持つわけではないんじゃよ」
「……………」
「どんな魔法だっていいんじゃ。それに今はお前しか使えなくとも、いつか必ずお前の意志を継ぐ者が現れて、お前の魔法を継いでいく。今こうしている間にもお前を凌ぐ才覚の持ち主が生まれ落ちているかもしれんぞ?」
「……………爺さん、誰だ?」
「婆さんやー、飯はまだかのう」
「僕は婆さんじゃないですよ」
女顔のエミルを妻と間違えているらしい。
いい事を言っているふうだったが、とんだボケじじいである。
どこか見覚えのある気もするが……。
「……って、え?いや、まさか……」
「………!じ、爺さん!あんた名前は何て言うんだ?」
魔法史の本に、必ずと言っていいほど載ってある有名な偉人。
その活躍と名声は世界中に轟き、マグルにも一部の伝承が伝わっているほどの天才。
その規格外っぷりは、未だ賢者の石をゼロから創れるのが彼だけという時点で十分に伝わるだろう。
ーー彼の名前は。
「わしゃーニコラス・フラメルじゃよー。六〇〇年前に賢者の石作ったちょっとすごい人なんじゃよわしー」
新キャラが沢山出たので紹介をば。
◯レックス・アレン
土魔法に長けた熱血漢。太陽に輝く金髪が特徴。ダンブルドアを除けば世界一の現役最強闇祓い。
常にハイテンションで人を振り回し、笑顔を浮かべているが、彼が何を考えているのかは誰も知らない。
グリフィンドール出身。
◯エミル・ガードナー
女性のような長い髪と中性的な顔をした長距離狙撃魔法の使い手。
飄々とした享楽的な性格のミステリアスな男性。しかし根っこは意外と普通の男の子だったりする。
レイブンクロー出身。
◯チャリタリ・テナ
男勝りの褐色肌の女性。
魔道具の扱いに長けた工作員。
元は大人しい気弱な性格の女性だったが、姉が殉職して以降、妹達を安心させるために姉の真似をしている。トンクスは同期。
ハッフルパフ出身。
◯ジキル・ブラックバーン
刈り上げた髪の、高身長の男性。
いかつい顔の割に女性に全く免疫がなく、話す時はいつも赤面してしまう。(小さな子供相手だと大丈夫らしい)
医療や補助に長けたサポート要員。
スリザリン出身。
◯ニコラス・フラメル
少し前まで実質上の不老不死状態だったが、賢者の石を壊した事によってあと数年の命になる。それに伴いボケも進行。
あらゆる魔法を考案し、賢者の石を創っちゃう天才。しかし研究者タイプなので戦闘力はダンブルドアほどではない。(それでも十分すぎるほど強い)
というわけで最強候補がいっぱい出てきた話でした。
当然闇陣営もアホほど強化されてるので皆んなには頑張ってほしいですね。