シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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8.悲鳴飛び交う叫びの屋敷

「──行きますよ!!」

「ええ!!」

──部屋の中に突入した。

 しかしその瞬間、誰か男の無骨な手に、肩をガッチリと掴まれた。

 

「そうはいかないな」

 

 そう言ってその男は部屋の中へコルダとハーマイオニーを放り込んだ。意識外からの不意の強襲に思考が停止した。床を転がって立ち上がると、もう杖は無い。

 まさか。今の一瞬で武装解除を行ったというのか?早業すぎる。

 その男は、余裕そうにぼうぼうの髪をかき上げる。……最近までずっとアズカバン暮らしだったくせに、肉体の衰えは殆ど無さそうだ。いや、もしくは衰えてこのキレなのか。

 技量が高すぎる……!

 

「君は、シェリーの友達だね。学校で一緒にいるのを何度か見た。そして君は………あぁ、マルフォイ家の……」

「ハーマイオニー!コルダ!まさか貴方達まで……!」

「平気か?」

「え、ええ」

「大丈夫よ、ロン」

 

 奇襲は失敗に終わり杖も奪われたが、ひとまずは、ロンとシェリーが無事だったのを喜ぶ。よかった、まだ誰も殺されているわけではなさそうだ。

 どうする、とコルダは考える。

 シリウス・ブラックはまだ誰も殺す気ではないようだし、隙を見計らって一か八か体当たりでもしてみるか……。

 

「やめておいた方がいい」

「………ッ!へえ、噂に聞く開心術ってやつですか?そんな見た目の割に意外と繊細な魔法を使うじゃないですか。さっき私達の背後から攻撃できたのも、似たような魔法を使ったってわけですか?」

「違う。人の杖で繊細な魔法コントロールなどできんよ。……私は『動物もどき』でね、犬に変身する事ができる。おかげで鼻が効くようになってね……ここは少しカビ臭いから、気付くのには少し遅れたが」

 

 動物もどき。

 数年以上の修行期間を経てようやく習得できると言われている、変身術において最難関と言われている魔法だ。

 杖を使わずして自分を変身させられるという利便性から、その危険度は高く、悪用される可能性もあるので習得した際には魔法省に届け出が必要になるのだが……どうやらブラックは未報告の動物もどきに該当するらしい。

 ちなみにミネルバ・マクゴナガルでもこの魔法を習得するのに三年の月日を費やした事からも、習得の難易度は恐ろしく高い事が窺えるし、それだけブラックが優秀な魔法使いである事の証左になる。

 

「動物もどきになると、視覚や嗅覚などが強化される事があるのよ。それで、私達の匂いに気が付いて……」

「その通りだ。二人とも、良い香水を使っているな」

「……………ッ。音もなく背後に立っていたのは、どういうわけです」

「あれも動物もどきの能力だ。私が動物もどきになった時、『影に隠れる』能力を身につけたというわけだ」

 もっとも、身に付けた物も影に入ってしまうので、手錠は鎖は外せなかったが、と付け足した。

 しかし……凶悪な殺人犯と聞いていたシリウス・ブラックだったが、その立ち振る舞いは近所のお兄さんその物だ。

 普通すぎる。

 普通だからこそ、怖い。

 しかしその普通の中に、一点だけ、異常と言っていい程の憎悪が混じっていた。

 

「……私を殺さないの、ブラックさん」

「……そうだ……殺す………今日は、ただ一人だけを殺す………私はそのために来たんだ……そのためだけに、十年余りもの間アズカバンに………」

「あなたがシェリーを殺すとしたら、私達も殺す事になるわよ!」

「わ、私は貴方達に巻き込まれて死ぬのはまっぴらですからね!?手助けくらいはしますけど、命までは懸けませんよ!?」

「……そうか、私は世間ではそういう風に思われているのか」

 

 どこかしょんぼりしたブラックに、シェリーは一つの提案を持ちかけた。

 

「ブラックさん、今日は私一人を殺せたら良いんだよね。だったら、私以外の三人は逃してあげてほしい」

「!?な、何言ってんだよシェリー!?」

「あなたが殺したいのは私でしょう?私は残るから、皆んなを解放してあげて」

「……似てるな……そういうところは、君のお父さんそっくりだ。いや、リリーにもそういうところはあったか……」

 

「何を思い出に耽っているのやら。長いこと待たされたのは私も同じだ、早く終わらせてしまおう。パッドフット」

 

 そう言って入ってきたのは、傷だらけの顔によれよれの服を着た男、リーマス・ルーピンだ。

 一瞬、頼れる援軍が来たと喜ぶが、すぐに間違いだとシェリー達は察した。

 ルーピンの、ブラックを見る目が殺人鬼を見るではないのだ。もっと親しみのある……まるで、友人を見るような。

 何より、ブラックが警戒していない。

 人より鼻が効く筈のブラックが、ルーピンの来訪には無反応だった。来るのが分かっていたような……。

 不安は的中した。してしまった。

 ルーピンとブラックが、お互いに笑うとガッチリと肩を組んだのだ。

 絶望したような声を上げた。

 

「う……裏切ったのね!あ、あなたを、信じていたのに!先生が、シリウス・ブラックを手引きしたのよ!」

「……そう思われても仕方ない、が、君達の認識には多分に誤解が含まれている。どうか話を聞いて欲しい」

「………話を聞いたら、何か変わるの?」

「シェリー、聞いちゃ駄目!黙っていたけれど、この人は、狼人間なんだから!」

「……………………ッ」

 

 狼人間。

 噛まれることで増殖し、月に一度、理性なき狼に変身する凶悪な魔法生物だ。

 満月の夜に変身してしまう彼が、その事実を巧妙に隠す事ができたのは何故か。それは、闇の魔術に対する防衛術のコマ数を減らすことで月に一度のXデーを隠していたからだ。(そのせいで防衛術の授業は遅れ気味になっているのだが……)

 しかしハーマイオニーは、ルーピンの休むタイミング、スネイプが防衛術を担当した時に嫌がらせ気味に出した宿題、そしてボガートが月に変身した事から、彼が狼人間だと見抜いたのだ。

 それを報告しなかったのは、温和な性格のルーピンはきっと信用できるだろう……という、彼女なりの信頼だった。

 去年ロックハートに騙されたくせに、また根拠のない信頼をしたことにハーマイオニー自身呆れていたが、それでも彼は立派な大人に見えたのだ。

 なのにリーマス・ルーピンは、その信頼を最も最悪の形で裏切った。狼人間だが信じられるかもしれない、信じてみてもいいかもしれない、そんな少女の信頼は、瞬く間に崩れ去った。

 だから、信じるに値しないのだと。

 しかし知らずのうちに、ハーマイオニーの発言はルーピンと、『もう一人』を傷つけていた。

 コルダ・マルフォイ。

 彼女もまた、望まずに狼人間となった少女であった。

 コルダはずっと顔を伏せていた。

 ──ずっと、伏せていた。

 狼人間どうしは長く付き合っていればその正体がなんとなく分かる、という特性故にコルダが狼人間だと気付いていたルーピンだったが、彼女の苦しみにも、彼は心を痛めていた。

 

「頼む。聞いてくれ。これから話すこと全てに偽りはない。……シリウスと顔を合わせるのも十二年ぶりだし、こいつと共謀して君のお父さんとお母さんを殺したわけでもない。断言するよ、そんな事をするくらいなら死を選ぶと。君の両親と、彼達の友情に誓う」

「…………信じろ、たって。……じゃあ、誰が、私のお父さんとお母さんを殺すのを手引きしたっていうの?ねえ……」

「………シェリー?」

 

 ロンとハーマイオニーは心配そうに友人の顔を見る。彼女に余裕がない。いつも窮地に陥るほど頼りになる筈のシェリーが、今回ばかりは全く余裕が無いのだ。

 シェリー自身、自分の精神状態が全く安定していない事に気付いていた。

 先程から、頭がズキズキと痛むのだ。

 脳髄の中に植物の種が埋め込まれて、無理矢理『成長』させられたように。

 脳の中を虫が這いずっているように。

 何故か、尋常じゃない程の痛みが、シェリーを苦しめさせていた。

 

「ここで問答してても仕方ない。話を先に進めよう……ルーピン、先生。先生がこのタイミングで現れたという事は、忍びの地図を見ていたんだよね。それはブラックさんがここに来るのを見計らっていたの?」

「それもあるが……私は、ハグリッドの小屋から出てくる君達の名前の中にあり得ない名前を見たんだ。ピーター・ペティグリュー、私達の親友だった男の名だ」

「……え?は?ピーター何とかってのは、十二年前に死んだ人の名前だろ?あー、そこのブラックにさ」

「殺していない。断じて。もっとも今からそうなるが……」

 

 話が見えない。

 見えないが、その真っ直ぐな瞳は、はぐらかしているようには見えない。

 見た目に反して理性的なブラックを見て認識は変わりつつあった。

 この男の、話くらいは聞いてみてもいいかもしれない、と。

 

「ロン、そのネズミはウィーズリー家で長いこと飼われてるね?君のお兄さんから譲ってもらっと聞いたよ。……そのネズミをいつ拾った?十二年前じゃないか?かのピーター・ペティグリューも、その年に死んだ事になった」

「……まさか。動物もどき、ですか?」

「そうだ。そもそも私とジェームズ、そしてピーターは全員が動物もどきなのだ。人狼だったリーマスは満月の夜にここを訪れ独りで過ごしていた。以来、ここは叫びの屋敷と呼ばれるようになった」

「ダンブルドアが校長で良かったよ、本当に。暴れ柳もここへ繋がる抜け穴を隠すための措置だよ。だが、僕達の友人は見捨てなかった。動物もどきになって、狼の僕と友人になっちまったんだ。……僕は救われたんだ。独りの夜は、もう来ないのだと」

 

 万感の想いが込められていた。

 恐れた満月を、孤独の夜を、ぶち壊してくれる友人がいた。それだけで、彼の心はどれだけ救われたのだろう。

 そして、彼達が動物もどきだったなら。

 果たしてピーター・ペティグリューは何の動物に変身していたのだ?

 『ワームテール』とは、どういった意味でつけられた名前なのだ?

 ……仮説が真実味を帯びてきた。

 ロンの手の中で暴れるネズミを見て、まさか、と思う。しかし、魔法界は有り得ないことばかりなのも事実。

 

「ロン……お願い。思うところはあるだろうけど、スキャバーズをこの人達に差し出してほしい。お願い」

「……、分かったよ。こいつを殺したら許さないからな」

「『スキャバーズ』は殺さないさ。さあ、見せてやる。こいつの本性を──」

「──『エクスペリアームスッ』!!!」

「なっ!?」

 

 ブラックが振り上げた杖は、何者かによって武装解除された。対応しようとしたルーピンも同様だ。

 ──早撃ちの達人。こんな芸当ができる人間は、闇祓いを含めてもホグワーツには一人しかいない。(ダンブルドアは例外)

 

「ス、スネイプ先生!!」

「ふふふ、ははは。ついに追い詰めたぞ殺人犯め。観念するがいい!とうとう、とうとうこの日がやってきたのだ!『復讐は蜜より甘い』!はははは──ッ、この日をどれだけ待ち侘びた事か!」

 

 妙なテンションでスネイプが入ってきた。いつもの陰気ぶりが嘘のようなテンションの上がりように、一堂は唖然とする。

 スネイプはシリウスを仇でも見るかのような目で睨みつけた。シリウスもまた、敵を見る目で睨み返した。……犬猿の仲どころか、不倶戴天の敵らしい。

 

「あー、セブルス。どこまで聞いてた」

「叫びの屋敷がどうこうの辺りですかな」

「よりにもよってピーターの話が出てないじゃないか畜生め。セブルス、話を……」

「黙れお前には失望したぞ内通者が!」

「あ、あの、スネイプ先生?いや別にこの人達を庇う訳じゃないですけど、話くらいは聞いてあげても良さげな雰囲気で……」

「大丈夫だミス・マルフォイ!事態はすぐに収束する!ここに吸魂鬼を呼びこいつにキスをさせてやる!」

「あっ駄目だ聞いてないやこれ」

 

 聞けば、ドラコから話を聞いて駆けつけて来たのだとか。確かに彼からしたらスネイプは頼れる大人なのだろうが、いかんせん人選ミスが過ぎた。

 なんと学生時代、スネイプとジェームズ一味は顔を合わせるたびに度を越えた喧嘩をしていたらしいのだ。最悪だ…。

「ふ、はははは。十二年待ったぞ、貴様に復讐してやれるこの日を!おおっと動くなよブラック、お前の影に隠れる能力は知っているのだからな!」

「チッ……」

「お前もだリーマス・ルーピン!学生時代に散々手を焼かされたが、お前達の手の内は全て筒抜けだ!ははは──」

「スネイプ先生」

「えっ何リリッぶほへぇあ!?」

 

 いつの間に拾っていたのだろう、シェリーが杖を持ってスネイプを壁までぶっ飛ばして『失神』させた。彼女としてはほんの少し魔力を流して話を聞いてもらうよう拘束するつもりだったのだが、思ったよりも魔力が強すぎたようだ。白目を剥いて完全にノビている。

 シェリーは後悔したが、シリウスは「よくやった!」とガッツポーズしていた。

 先程から何故か、思うように魔力が練れない。精神を落ち着かせねば……。

 

「……やりすぎちゃったな……ごめんスネイプ先生」

「スネイプは一先ず放っておこう。まずはあいつからだ。杖を渡してくれるかい」

 

 ルーピンが自分の杖を受け取ると、ロンが捕まえているスキャバーズに魔法をかける。種明かしをするマジシャンのように。

 するり、と手から溢れる水のように、スキャバーズは逃げ出した。家具の隙間を縫って逃げ出すつもりだ。しかし、ルーピン達が追撃をかける前に、それは起きた。

 ネズミは瞬く間に大きくなり、その骨格はヒト属のものとなっていった。

 ネズミの代わりに現れたのは、禿げ上がった、一人の中年男性だった。

 

「──こいつが、ワームテール。こいつがピーター・ペティグリューだ!」

 

 コルダはひくついた声を出した。

 自分のペットが小男に変身するのを見て何を思っただろう。ロンは、おぞましいものを見るような目をした。そんなロンの手をハーマイオニーが優しく握った。

 シェリーはといえば、何の感情も見せないまま、ただ、彼を見つめていた。

 蹲って震える禿げた小男が身体を震わせるさまは、とても惨めだった。

 

「ひぃいいいいい!や、やめてくれ、シリウス!ルーピン!無二の友だろう!」

「やめてほしいのはこっちの方だ!この十三年間、悪夢のような人生だった!」

「君に役割を押し付けすぎた我々にも責任はある。だが、ヴォルデモート卿に何度も立ち向かっていったジェームズの姿を見ておきながら裏切りという選択を取ったこと、私には理解しかねる」

 

 十三年前のこと。

 かのヴォルデモートさえも騙す、忠誠の魔法によって、ジェームズとリリー、そして生まれたばかりのシェリーは手厚く護られていた。

 そして当初、その秘密の守り人に選ばれたのはシリウス・ブラックだった。友情に厚い彼ならば、絶対に口を割ることはないだろうと皆が言った。

 しかしシリウスはここで一計を案じた。

 秘密の守り人を、ピーター・ペティグリューに変えてはどうかと提案したのだ。

 結果は──燦々たるものだった。

 彼はあっさり裏切り、二人の居場所を密告した。そしてヴォルデモートが滅びてからは、責任を追及する死喰い人からも逃げる羽目になる。そして逃げた先のマグル街で、シリウスと出会った。

 仮にもホグワーツで友情を育み、七年も友と呼んだ相手である。彼の裏切りを信じられず、シリウスは事情を聞き出そうとした。……だがピーターの狡猾さは度を越えていた。

 「シリウス、よくもジェームズとリリーを!」そう言ってシリウスに罪を擦り付けて、マグルを巻き込む大爆発。自身は指を切り落として死んだフリをして、ネズミに変身し、何処かへ逃げたというわけだ。

 

「ピーター・ペティグリューの遺体は左手の小指一本だけ。スキャバーズの指も一本欠けてた………ブラックさんは友人に裏切られて絶望のあまり発狂しながら笑って………そうなんだ………そういうことだったんだね」

 全てが繋がった。

 パズルが組み立てられていく感覚。

 ペティグリューは生徒達がブラックの話を信じたのを悟り、命乞いを始めた。

 

「シリウス!私達は友人だろう!?」

「黙れ。十二年溜まったツケを払う時が来ただけだ」

「そんな……た、頼むリーマス!見逃してくれ!そんなつもりじゃなかったんだ!」

「……僕は君だけが悪いとは思わない。だがそれでも、君がこのままじゃああの二人は永遠に報われない」

 ペティグリューは絶望の表情を浮かべると、ロン達の方へと駆け寄る。もはや誰にでも媚びるという腹積りらしい。

 

「ロン、ロン!頼む、二人を説得してくれ!私は君のペットだった、君なら愛するネズミを殺させやしないだろう…?」

「……そうだな、愛するペットのよしみで止めないでおいてやる。だけど、僕がやるのはそれだけだ」

「ッ。お、お嬢さん。君は賢い子だ、君は惨めな弱いもの苛めなんて許しはしない、そうでしょう?」

「ひっ……」

 怯えるハーマイオニーを守るように。無言でロンが抱き寄せた。

 ペティグリューはコルダの方を見た。

「……あー」

「いや私とは何の接点も無いですよね」

「だよね……」

 取りつく島もなかった。

 関係性があまりにも薄すぎた……。

 

「シェリー!き、君は、リリーそっくりだ。だが、瞳だけはジェームズ譲りだ…」

「……………ありがとう」

「シェリーに話しかけるとは何事か!」

「ヒイッ!頼む、シェリー、私を救ってくれ!赦してくれえッ!」

「──だめ。あなたのした事は赦さない」

 

 シェリーのその迫力は、シリウスやルーピンまでもが気圧される程だった。

 葛藤。

 怒りから、悩みから隔絶された筈の少女は、今まさに怒り悩んでいた。

 ペティグリューの所業を考えると、沸騰しそうなくらい血が煮え滾って、血管の中で暴れる。そして頭蓋骨を鑢で削られているようにズキズキと痛むのだ。

 クィレルの時も、ロックハートの時も、二度戦ったヴォルデモート卿の時も、こんな感覚には陥らなかったというのに。

 おそらくは、父母を殺されて憎い、という感情が、シェリーにも人並みにあって、それが目覚めたというだけ。

 シェリーは彼を赦せない。

 だが彼女は、クィレルにもロックハートにも罪と向き合うよう説得した。ペティグリューが罪と向き合わないまま死ぬのは嫌だと考えていた。

 無論、シリウスやルーピンの復讐心も痛いほど理解している。だから。

 

「ごめん、ブラックさ……シリウス。この人のした事は赦せないけれど、殺したくないって気持ちもあるの」

「こっ殺さないでくれ!」

「……どの道あなたは罪と向き合わなければならないんだよ。向き合う場所が牢獄か地獄かは知らないけど。……だから」

 これはシェリーにとって最低の折衷案。

 

「シリウス、あなたに杖を預ける」

 残された選択肢は、たった二つ。

 

「ここでシリウスが復讐すれば、誇りは取り戻せるかもしれないけど未来を失う」

 ピーターが死骸になってしまえば、もう言い逃れはできない。子供達や狼人間のルーピンが彼の無罪を主張したところで、世間はそれを信じない。何より、スネイプがあることないこと言いふらすだろう。

 

「復讐しなければ人生は取り戻せるかもしれないけど永遠に過去に囚われる」

 そうすれば、シリウスの無罪は証明できるだろう。ピーターの身柄を魔法省に引き渡せば彼の潔白は晴らせる。

 が、殺せなかったという後悔は心に深く突き刺さるだろう。過去の因縁を断ち切るのが復讐なのだ、否定などできない。

 

「辛い二択だと思う。だけどそれを決めるのは、やっぱり、貴方自身じゃないと駄目だと思う」

「…………………」

 

 渡された杖は、とても重かった。

 シリウスは困惑した。この時を何年も待ち侘びて、ようやく訪れた機会なのに。ひと思いに殺すつもりだったのに。

 何故今、躊躇しているのだろう?

 瞋恚の焔は消えたわけではない。

 何故今になって……。

 ……殺したくないと思っているのか?友を裏切った、この男を?

 

(しっかりしろ、シリウス・ブラック!復讐の正当性だとか、かつての友を殺すべきかどうかだとか、そんなのはアズカバンで散々悩んだだろう!俺は、今ここで!こいつを殺す為に生きてきたのだ!!)

 

 過去を断ち切るのが復讐なのだ。

 ジェームズを、ピーターを、完全に過ぎ去った思い出として葬り去るのだ!

 赦す事など到底できはしない。

 自分の友を貶められたのを忘れて生きていくなど、真っ平御免なのだ!

 こいつは友を殺した男なのだ!

 十二年の、いや、ホグワーツで初めて会った時からの因果の決着をここで着ける!

 

「────アバダ────」

 

 シリウスは緑の閃光を、ペティグリューに放とうとして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シリウス、お前はいつも優しいな』

 浮かぶ記憶に翻弄される。

 何だ?何を思い出してる?

 

『何だよ急に、柄でもない。おだてたって何も出ないぞ?』

『本心さ。お前は、いつも俺達のために、友達のためを思って行動してくれるだろ』

 思い出すのは、かつての友の言葉。

 くだらない雑談の中から、ふと出てきたような話だった気がする。

 あの時はさして重要だとも思っていなかった言葉を、何故今になって思い出す?

 

『ジェームズ、俺は生まれてからずっと最低な家族と共に過ごしてきた。誰かの為に生きようなどと考えた事もなかった。だから無二の友ができて嬉しいんだ。これからもずっとそうして生きていくつもりだ』

『その気持ちは嬉しい。だが、お前は十分良くやってくれただろう?お前にもいつか所帯を持ってもらって、子供を作って。人並みに幸せに生きて欲しいと思ってる』

 

 何故そんな事を言う?

 俺は、お前達の為なら、命だって、人生だって、投げ打てられるというのに。

 

『──自分のために生きてくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………駄目だ。私には、殺せない」

 

 出てきた言葉に、自分自身驚愕した。

 復讐のための人生だった筈なのに、今になって命が惜しくなる。

 この身を焦がす怒りは消えない。

 悪夢に永遠に苦しめられるだろう。

 だが、生きる責務が、彼にはある。

 ──こいつが友でなく、下衆な死喰い人であったなら、ここまで苦しまずに済んだのだろうか?

 ここでこいつを殺しても、迷いの霧は、死ぬまで……いや、死んだ後も晴れない気がするのだ。

 

「………シリウス、いいのか?」

「いいんだ。……子供達に、こんな大人の愚かな姿を、これ以上見せる訳にはいかないだろう」

「最も復讐を望んでいたのは君だ。君がその怒りを引っ込めるのなら、私も手は出さない。だが……これでは、君は永遠に過去に捕われ続けたままじゃないのかい」

「殺したい、という気持ちはある。だが殺したら何もかも終わってしまう。私は本当に『友達殺し』になるところだった」

「……!」

「復讐が愚かなんじゃない。復讐を経ても尚、過去に捕われ続けるのが愚かなのだ。

 シェリー、君が選択肢を提示してくれなければ永遠に気付けなかった」

「……ううん。決めたのはシリウスだよ」

 

 シェリーは淡く微笑んだ。

 二人にそっくりだ。

 ジェームズとリリーは死んだが、その魂は消えたわけではない。彼女の心の中に未だ宿っていた。

 それを知れただけで、十分だ。

 

「こいつをホグワーツまで連行しよう。伸びてるスネイプも運ばにゃならんな。手伝ってもらえるか?」

「え、ええ。『浮遊呪文』で浮かせて行きましょう」

「あー、僕も手伝うよ」

「ありがとう。……すまない、少し、少しだけ、時間をくれ……」

 

 シリウス・ブラックは背を向けた。

 彼は暫し身体を震わせて……そして、思い出を、過去を、涙と共に流し去った。

 

(さらばだ、ジェームズ、リリー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やや気まずいものを感じながら、シェリー達はホグワーツへのトンネルの中を歩いていった。

 試験が終わり夕方過ぎだった筈が、時計を見ると既に夜のようだった。門限を気にしたが、まあ、今日は色々と特殊な事情があったのだ。許してくれるだろう。

「…………」

「?ねえ、どうしたの?」

「……いえ……何かとんでもなく大切なことを忘れてるような……」

 コルダの疑念をよそに、シェリー達は進んでいく。

 

「……あー、シェリー。ペティグリューを引き渡すという事は、私が自由の身になるという事だ。それでなのだが……もしよければ、君さえよければ、来年、おじさん達の所で暮らすのが嫌じゃなければなのだが、わ、私と一緒に暮らさないか………?

 そのだね、後見人として!」

「……!ほんと!?シリウスの迷惑じゃなければ、私は全然大丈夫!おじさん達もきっと了承してくれる筈!」

「……そうか、そうか!はっは!君に理解のある、優しい人達なのだな!」

「これからよろしくね、シリウスおじさん!」

「おじ………ッ!?」

「シリウス、現実を見ろ。僕達はもう大人になったんだ。十二年の歳月は戻って来ないんだよ……」

「うわああああああ!!!??」

 

 自分がもうアラサーだというのを思い出して絶望するシリウスだったが、その脚をふと止めた。

 雲の切れ間から覗く、蒼く光る月。

 その月の形が、いやに丸いことに。

 

「……リーマス、今日は満月のようだが、『脱狼薬』は飲んだんだよな……?」

「────」

「先生?先生!!」

「リーマス!気を確かにもて!本当の君はここにいる!心の中にいる!!」

 シリウスは必死の形相でルーピンを羽交い締めにするが、彼の変化は止まらない。

 服が破れ、巨大化し、毛が生え、理性なき獣と化してゆく。

 ルーピンの意識が飛び、ペティグリューの拘束が解けてしまった。

 まずい。奴に逃げられる!だがルーピンを放っておくわけにもいかない!

 

(──そうだ、氷魔法を使えるコルダなら二人の動きを同時に止められる……!)

「コルダ、二人を凍らせ………ッ!?」

「う、あああああ………!!」

 コルダは苦悶に満ちた声を出すと、その場に倒れ伏せた。何か魔法をかけられた様子はない。何故このタイミングで……?

 

(……ッ、ごめんコルダ、先生!ひとまずペティグリューさんを『失神』させる!)

「ステューピファイ!」

 シェリーの早撃ちが炸裂した。

 しかしペティグリューはいつの間にか杖を手にして、盾を形成していた。あれは、ルーピンの杖だ!狼化した隙に奪ったというのか……!?

 ペティグリューはぶつぶつと、独り言を繰り返していた。

 

「昔、ジェームズが言ってたなあ……『人間やろうと思えば何だってできる』って。彼の言う通りだった。ネズミに変身できると思ったら変身できたし、苦手な魔法だってできると思ったらできるようになった」

 奴の感情が高まっている。

 魔力が昂まっていく!

「だから私が無実だと思えばもうそれは無実なのだ!!はははははは────ッ!」

 

 最低の結論。

 最悪の吹っ切れ方だ。

 心に少しでも罪悪感があったり、躊躇いがあれば魔力の出力は弱くなる。心が無意識のうちにブレーキを踏むのだ。

 しかし今の彼にはそれがない。迸る魔力が、ペティグリューの歪んだ覚醒を物語っていた。醜い小男は、小汚いドブネズミへと化けていく!

 

「そして、ここから逃げられると思えば逃げられる!私は行くぞ、あの御方の下へなあーッ!できると思えば、人は何でもできるのだから!」

「待て────ッ!!!」

「シェ、シェリー!駄目だ追うな!そっちにルーピン先生が……!」

『ぐるぅあああああああああああ!!!』

 

 歪んだ体躯の狼がシェリーに迫る。

 ルーピンの、ペティグリューを逃すまいという本能がネズミを追い、結果としてその軌道上にいたシェリーへと攻撃を繰り出してしまっていたのだ。

 それを阻止するは、黒く巨大な犬。

 ルーピンの影に潜行し、彼の下から不意の攻撃を喰らわせる。対して効いている訳ではなさそうだが、それでも、シェリーへの攻撃は逸らせた。肩に擦りはしたが、致命傷ではない!

 闘志全開でルーピンを睨むシリウスだったが、内心では冷や汗を掻いていた。学生時代にジェームズ達と協力してルーピンを鎮めていたものの、彼には何度も手を焼かされたのだ。(今の彼に手はないが)

 人狼の身体能力は、彼達の予想の遥か先を行くのだから!

 

「ポッタァーッ!先程の攻撃はどういう事か説明してもらうぞ!そしてブラックめは今どこに……」

『ぐるぅおおおおあああああ!!!』

「!!『プロテゴ、盾よ』!……ミス・マルフォイを連れて下がっていたまえ!」

 

 スネイプが参戦し、早撃ち魔法の数々を浴びせていく。その殆どを尽く躱し、狼は吠える。それに喰らいつくのは黒い犬。

 目まぐるしく変わる戦況に、シェリーの脳は焼き切れそうだった。ああ、今になってルーピンにつけられた傷が痛む。

 シェリーの意識は、飛んだ。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

「あれからルーピン先生は増援の闇祓い達に抑えられ、シリウスも捕まってしもうた。ミス・マルフォイは……過度なストレスのせいで倒れて、今は寝込んでおる。ミスター・ウィーズリーも怪我を負っておるようじゃ。暫くは絶対安静じゃの」

「……私のせいで……ッ、シリウスは?」

「彼の無実を訴えたい所じゃが、ピーターが逃げた上にスネイプ先生の証言があるので厳しいじゃろうな……もうまもなく、処刑が始まってしまうじゃろう」

「………そんな」

 

 医務室で目覚め、隣に腰掛けていたダンブルドアに話を聞いて、シェリーは沈んだ気持ちになった。

 自分のせいだ……。

 自分がシリウスにあんな二択を持ちかけなければ、彼はペティグリューを殺せていたかもしれない。そうすれば、最後の心残りを消せたかもしれない。

 それに、ロンやハーマイオニー、コルダまで巻き込んでしまった。

 自分はまた、間違えたのか……?

 

「いいや、あれはシリウス自身が望んだ選択じゃ。君のせいではない。そして、シリウスの責でもないのじゃ。運命だったと言う他あるまい」

「先生、でも──」

「落ち着きなさい、シェリー。彼の運命はまだ終わっておらん。彼の無実の証明は今は不可能じゃが、彼を逃がすのはまだ可能なのじゃ」

「────えっ?」

「ほっほ。……来なさい」

「は、はい」

 

 カーテンの向こうからやって来たのは、ハーマイオニーだ。手には金色に光る懐中時計が握られている。

 

「無事だったんだね、ハーマイオニー……それは?」

「『逆転時計』じゃ。詳しい説明は省くが要するに過去にだけ行けるタイムマシンみたいなもんじゃ」

「タイム………えっ、ええ!?」

「グレンジャー嬢の無茶な時間割は、これで解決していたというわけじゃ。……この時計を使ってシリウスを救って欲しい」

 

 要するに、こうだ。

 シェリー達はこれを使い、シリウスを助けられる時間まで巻き戻る。そして彼を逃して、またこの医務室に戻って来い、というわけだ。しかしタイムパラドックスを避けるため、その間は誰にも姿を見られてはいけない。

 ……少々、荷が重すぎないか?あのアレン達の監視を掻い潜ってシリウスを逃がすなど、早々できる事ではない。

 

「大丈夫じゃ、闇祓い達の目がシリウスに行かんように細工しておる。儂の権力全てを使ってシリウスを救えるように細工をしとるよ。それに、援軍も呼んできた」

「……おう」

「……うん」

「……どーも」

「!ベガ、ネビル、ドラコ!」

 どこか微妙そうな顔をした援軍が来た。

 ベガとネビルはシェリー達がシリウスと出くわしたと聞き、ドラコはコルダの様子を見にそれぞれ医務室にやって来ていたのだった。

 ダンブルドアから事情は聞いたものの、ちょっと複雑そうな顔をしている。殺人犯だと思ってた男がシロだったり、そいつを逃がせと言われたり、色々と情報が入って来て混乱してるのだ。無理もない。

 

「シリウスを逃す役目はシェリー達に任せる。ベガ、ネビル、ドラコ。君達には別の任務を頼みたいのじゃ」

「別の任務……?」

「ネズミになって逃走したピーター・ペティグリューの捜索を頼みたい」

「ペティグリューの?でもそれは……」

「分かっておる。万全を期すためには、シリウスの逃走に注力した方が良いと。じゃが彼の名誉を晴らすには、ペティグリューの拿捕が必須条件でもある。……やってくれんかの」

「……てめえ。ハナから巻き込む気満々だったんじゃねえか」

 

 ベガは悪態をついた。

 ネビルも微妙そうな顔をしているし、ドラコもまた、乗り気ではないようだ。

 シリウス・ブラックのことは気の毒とは思うが、それだけだ。手伝う理由がない。

 一応彼達は純血の名家の出身なので、シリウスと親戚といえば親戚だが、本当にそれだけだ。会ったことすらない。

 いくらベガ達がお人好しとはいえ、見ず知らずの人間のために危険な行動を取るまではしない。

 それにシリウスを逃がす事ができれば御の字だが、それ以上を望み、誰か一人でもしくじれば全て終わる。

 そもそもペティグリューを見つけられるという保証すらない。

 ……だから、これは、お願いだ。

 

「……お願いします、三人とも。相手は何をしてくるか分からない。だから後をつけるだけで良いの。……彼は私の家族なの。

 彼への疑いを晴らしてほしい」

「……………お前にそういう風に頼まれるのは初めてだな……」

「僕は行くよ。どうせ僕達はずっと談話室にいたんだ、タイムパラドックスの危険性は薄いしね」

「……ま、断る理由もねえしな」

「二人とも……!」

「……、僕は、君達に付き合う義理はないし、妹の看病をしたい気持ちもある…が、このままじゃあコルダが何のために君達についていったか分からない。去年の借りも返したいしな」

「ありがとう、ドラコ!」

「!か、勘違いするなよな!別にお前のためじゃないんだからなッ!」

「すごくテンプレートな台詞ね」

「何なんだろうね」

「そこうるさいぞ!」

 

 ……良い友になった……。

 その様子をダンブルドアは微笑ましそうに見守ると、すぐさま表情を引き締めた。

「儂はシリウスが本当に裏切ったのだと思っておった。それは他の者も同様じゃ。頼む、不甲斐ない大人達の勘違いを君達の手で正してくれ」

「俺達はペティグリューを捕まえる」

「私達はシリウスを助ける」

「どちらかが成功すればシリウスを助けられる。……やってやる!」

「……行ってくるわね、ロン」

「すまないコルダ、必ず帰ってくる…!」

 

 ハーマイオニーは時計をひっくり返す。

 世界が巻き戻った────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

(ここで、終わりなのか)

 

 何の意味もない人生だった。

 友を守れず、敵討ちもできず、子孫を残す事もなく。何も為す事ができなかった。

 後悔だらけの人生だ。

 一人だけなら良い。だが、リーマスに迷惑をかけて、シェリー達の心に暗い影を落としてしまった。

 こんな事なら、最初から脱獄なんてしなければ良かったのか?

 他者の人生に介入して掻き乱してしまうくらいなら、いっそあの家からずっと出なければ良かったのではないか?

 ……ネガティブな思考をしてしまうのは、吸魂鬼のせいだけだろうか。死を前にして、己の罪深さを漸く自覚したのか…?

 

(……こんな時、ジェームズならなんて言うだろうか。はは、過去を忘れようと思っても、そう上手くできるもんじゃないな)

 

 そうだ、奴は。

 私を家から連れ出す時、何かの言葉を投げかけてくれたのだ────

 

 

 

 

 

『シリウス、この家から出ようぜ。お前にそこは似合わねえだろう?』

 

 

 

 

 

──紅い少女がやってきた。

 ジェームズそっくりの瞳を浮かべて。

 

「シリウス、この牢から出よう。あなたにここは似合わないよ」

 

 

 




◯ペティグリュー捜索チーム
 【ベガ、ネビル、ドラコ】
 逃げたペティグリューを捕まえる役目。
 彼等が捕まえないとシリウスの無罪は証明できない。ペティグリューが逃げた時、近くにシェリー達もいたため、本人同士が会ってタイムパラドックスを起こさないために、その場にいなかったメンバーが選ばれた。

◯シリウス救助チーム
 【シェリー、ハーマイオニー】
 シリウスを牢から逃がす役目。
 例えペティグリューを見つけてもその間に吸魂鬼にキスされたら意味ないので、ひとまずシリウスを逃がさなければならない。もしペティグリューが見つからなくてもシリウスの命は助けられる。

◯待機組
 【ロン、コルダ】
 ロンは怪我をしたため、コルダは満月の夜のため戦闘が不可能な状態。
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