シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

48 / 145
正直なことを言うと、代表選手達って実際に書くまで全然キャラ固まってないやつとかいたんですよ。書いた後も全くキャラが掴めないやつもいたんです。
けどある程度書くと何となく分かってくるね…。楽しい…。
あ、でもハヤトは初期の構想から全く変わってません。あいつのキャラ被りようがねえ!!


6.BATH ROOM

 シェリー、ベガ、セドリックの三人は中庭に集まり作戦会議を行っていた。彼女達は違う寮であるが故に、ここに集まって話をするしかないのだ。

 とはいえ、他の学校に会話内容を悟られないよう魔法の防音壁は欠かさないが。

 今回話し合う内容は、先の課題で手に入れた卵について。これは次の課題のヒントを教えてくれるという話なのだが、その内容は訳がわからないものだった。

 セドリックがハッフルパフに持ち帰り、開閉スイッチがあることに気がついて押してみたところ、硝子を爪で引っ掻いたような酷い音が大音量で流れたのだとか。それ以来、この卵の謎を解こうと色んなことを試したらしいが、全て空振りに終わり。

 三人寄れば文殊の知恵、ということで急遽作戦会議を行うことになったのだ。

 

「僕が調べたところ、卵には防護魔法……というより、他全ての魔法を遮断する機能が備わっているみたいだ。持ち運びできる神殿とでも言うべきか……魔法で何か影響を与えるというわけではないと思うんだ」

「となると、考えるべきは音の方か?音に関連する魔法もあるわけだし、条件が整えば発する音も変わるかも……」

 

 ウンウンと唸っている男子二人に、自分も何か考えなければと、シェリーは必死に知恵を絞る。

「……水の中に入れてみるとか……」

「「それだぁー!!」」

 言ってみるもんである。

 

「よし、善は急げだ。シャワールームに行くとしようぜ。何か分かるかもしれねえ」

「それなら提案なんだけど、監督生しか入れない浴場があるんだ。もしよかったら二人も来ないか?」

「行ってみたい!」

「いいね、興味あるぜ」

 

 というわけで三人はシャワールームに行こうとして、防護壁を解除する。

 と。

 その瞬間を待っていたと言わんばかりに、セーラー服の少女がやって来る。

 ミカグラ・タマモ。マホウトコロの代表選手が、何やらぎこちなく笑みを浮かべながらやってきた。

 ……めっちゃ何か企んでる顔してる。

 

「ね、ね。共同戦線張りましょう?」

「……何のつもりだ」

 

 ベガは少し警戒の入った声を出すが、タマモは顔色一つ変えずに答えた。

 

「君達、卵の謎が解けそうなんでしょ?その顔を見れば分かるよ。……それでお願いなんだけど、謎を解決するヒントを私達に教えてくれないかな」

「はあ?」

「私達ね、戦うのは得意だけど、こういう謎解き系はてんで駄目なの!だからヒントだけでも教えて欲しいなって」

 

 まあ、先の戦闘を見れば、マホウトコロが直接戦闘に特化しすぎていて、こういう試練が苦手なのは分かる。

 このままでは何の対策も練れないまま次の試練を迎えることになる、それでは優勝が遠のいてしまうのだ、と。

 代わりに次の試練ではホグワーツの邪魔をしないことを約束してくれた。口約束だが、普段の態度を見ていればタマモ達が約束を破る性格ではないのは分かる。それに個人的なことをいえば、シェリーは友達としてタマモ達を助けてあげかった。

 

「ま、良いんじゃねえの」

「君にそう言われたら断れないな……」

「ありがと、助かる!ダームストラングはおっかないし、イルヴァーモーニーは真面目だし、ボーバトンは取り付く島もないしで、ホグワーツしか頼れる学校がなかったんだよね。

 もし君達の協力が得られなかったら、一か八か卵を切り裂いて中身を確認するところだったよ」

 

 物騒なことを。

 だが、マホウトコロならきっと本気でやるのだろう。先の試合はそのくらいのインパクトがあった。

 

「で、その卵をどうするの?」

「あー…実際にやった方が早いかな」

「じゃあタマモ、一緒にお風呂行こっ」

「え?………ええっ!?」

 

 困惑するタマモを連れて、大浴場へ。

 卵を水に浸けてみるというアイデアは、道すがらタマモに教えた。

 さて、ここはホグワーツの監督生用の浴場だが、別の学校の来賓ということで他の学校の生徒も入ることが可能らしい。浴場の隠し扉の前まで案内されると、ベガ達は男湯の方へ入っていく。

 タマモは温泉が好きらしく、ちょっとウキウキしながら浴場のドアを開いた。

 

「「あ」」

 先客がいたようだ。

「えーと、あなたは……ダームストラングのリラちゃんだっけ?」

「は、はい。どうも……」

 陰鬱な雰囲気の少女、リラ・ダームストラングは猫背気味の身体を更に下げた。

 

「そっか、リラもここに卵の謎を解きに来たんだね……」

「……え?卵?」

「隠さなくてもいいよ。水の中に卵を入れてみることにしたんでしょ?私達もそうだから、気にしないで」

「水の中……あっ、ああ……そういう…」

 リラは何かに納得したような顔をした。

 

(ど、どうしよう。本当は卵の謎の解明を兄さん達に押し付けられて、さっぱり分からないからお風呂でスッキリしようとしてただけなんて言えない)

「でもお風呂かー。私はあんまり発育の良い方じゃないし、裸を見られるのはちょっと恥ずかしいかも」

「私も、(ダドリーに殴られた痣があるから)あんまり行く方じゃないかな」

「リラちゃんが羨ましいなあ。身長高いし胸も大きいし………って」

 

 ぎょっとした。

 おどおどした黒髪の少女の背中には複雑な魔法式と思しき、複雑な紋様が彫られてあった。

 雌雄同体を表す二対の蛇、黄金と神々の力を表すトライフォースが砂時計型に刻まれており、六芒星の形を為している。魂と肉体の調和を意味していると同時に、不可侵の約定を身体に刻んでいるのだ。

 極め付けは魔法陣だ。十二連結の魔法陣はそのまま暦を示し、時属性の付与と秩序を構築し腐敗と病から身を守る。

 それらは密接に絡み合い、高度な結界の効果を成している……のだが、シェリーとタマモが見てもかっちょいいデザインのタトゥーにしか見えなかった。

 

「わっ、な、何それ?タトゥーってやつ?へー、外国じゃ珍しくないって聞いたけど、リラちゃんもしてるんだね」

「なんか意外……」

「タトゥー……あっ!こ、これは……家の事情で彫ったやつなんです。その、あまり聞かないでくれると助かります」

 

 ちょっと陰のある顔をしたので、それ以上その話題に触れるのはやめておいた。魔法界には親から子に、師匠から弟子に秘伝の魔法を託す時に刺青を用いるという話も聞くし、彼女にも色々とあるのだろう。

 浴場は広かった。

 セドリックが勧めるだけはある、内装も豪奢で色とりどりの泡が浴場全体に広がって幻想的な光景となっている。絵本の中に入ったかのようだ。

 

「あれ?代表選手の皆さんじゃないスか」

「あ、バーニィ」

 

 イルヴァーモーニーの代表選手、バーニィ・レオンベルガーが頭を流していた。

 すっぴんの彼女を見るのは初めてだが、割と綺麗な顔立ちだ。音楽活動は体力を使うからか、女性にしては肩幅が広く、がっしりした身体をしている。

 

「あー、この間は塩対応しちまってすみませんッス。せっかくドラゴンのこと教えてくれたのに……」

「いいよ、私も逆の立場だったらきっと信じられなかったと思うし」

(そうかな……?)

「!あんた、確かリラっちでしたっけ。そのタトゥー……」

「な、何ですか」

「めっちゃカッコいいっスね……」

「ど、どうも?」

「ん?じゃあこれで各校の代表選手達が一堂に会したってわけっスカ」

 

 ん?と思って風呂場の方を見ると、何とボーバトン代表のフラー、ローズベリー、ブルーベリーが湯船に浸かっていた。ベガが先日のダンスパーティーでフラーと踊っていたのは記憶に新しい。

 フラーはいつも通りの端正な顔を浮かべているだけだったが、フロランタンの双子は「げっ」と苦々しげな顔を浮かべた。余程嫌われたらしい。

 

「なんであんた達まで来るの……」

「ヒィッ!す、すみません。すぐに出て行きますから……」

「ちょ、出なくていいってネロちゃん。ブルーベリーちゃんだっけ?今のは流石に酷いんじゃないの?それにここはホグワーツの敷地内、施設を使わせてもらってる身でその態度はないでしょう」

「どこだって変わらないわよ……」

「?」

「……。馬っ鹿みたい。ローズ、お姉様。私達は先に上がりましょう」

 

 ローズベリーは「そうね」と返し、そこから立ち去ろうとするが、フラーは動かなかった。

「相手に合わせーて、行動を変えることもないでーしょう。わったーしはここにいまーす」

「……、お姉様がそう言うなら」

「………??」

 

 フロランタン姉妹は再び湯船に身を沈める。

 フラーの今の声色は、いつものボーバトンの女帝のような威圧するようなものではなく、どこか……憂慮というか、心配するようなものに聞こえたが、気のせいか?

 しかし流石にちょっと気まずい。

 フロランタン姉妹とタマモは相変わらず火花を散らしているし、その迫力に押されてリラが縮こまる。

 空気を読んだバーニィが、

「ここには全員、卵の謎を解きに来たんデショ?まずはそれを終わらせませんか。喧嘩なら試合でやればいい」

 と言わなければ、険悪なムードはずっと続いたままだったろう。グッジョブ。

 

「え、えと、それじゃあ卵開けますね」

「ちょっ、待っ」

『きぃぃやあああああああああ!!!』

「うるさっ!?」

「すげえ声量だ。ミュージシャンとして見習いたいくらいッスね」

「言ってる場合か!」

 リラが卵を開けてみると、話に聞いていた通りの劈くような金切り声。いや、想像以上の騒音だ。

「リラ、開けるのは水の中でって……!」

「ご、ごめんなさ………ああっ!?」

 

 泡でつるりと滑ったのか、リラが卵を湯船の中に落とす。それなりの重さを持った卵は底に鈍い音を立てて沈んだ。

 仕方ないので水の中に潜ると、先程までと打って変わって川のせせらぎのような澄み切った声が聞こえた。

 歌声──。

 害はない。録音した音が卵の中から再生されているだけのようだ。

 

「すげえ良い声だ。ミュージシャンとして見習いたいくらいッスね」

「しっ、静かに……これは」

 

『探せ声を頼りに

 地上では歌えない  〜♪

 探せよ一時間

 我らが捕らえし大切なもの  〜♪

 一時間のその後は

 もはや望みはありえない  〜♪

 遅すぎたならそのものは

 二度と戻らない ~~♪ 」

 

「……水中人語(マーミッシュ)ってやつかしら。水中人(マーピープル)がホグワーツにいたなんて」

 

 水中人は、その名の通り水の中を生業とする生物であり、口周りの器官が特殊な構造になっていて水の中でしか話すことができない種族なのだ。

 次の試練では彼達が立ちはだかることになるのだろうか……。

 

「要約すると『一時間以内に水中人が奪った大切なものを取り返せ』ってこと?

 ……でも私の大切なものなんて……

 ?あんた、どうしたのよ。震えて」

「どうしよう私──泳げない!!!」

 

 シェリーはカナヅチだった。

 

(どうしよう私も泳げない)

 リラもカナヅチだった。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 とは言ったものの、冷静に考えてみれば水の中でも動ける魔法を習得すればいいのである。

 風呂から上がってさっぱりしたシェリー達は、再度セドリック達と作戦会議。通りがかったハーマイオニーも参加しての会議である。彼女の知識は役に立つ。

 と。ここで一つの問題点が浮上した。

「水の中って、俺の火炎魔法の相性が最悪じゃねえかよ……」

 そう言ってベガは項垂れた。

 

「水の中でも魔法の火は出せるの?」

「ああ……そうか、シェリーはまだ四年生だから知らないのも当然か」

 

 この手の分野はハーマイオニーの独壇場だ。待ってましたと言わんばかりに、自前の知識を披露する。

 

「魔法によって生み出されたものは、魔力が切れれば消えてしまうものと、半永久的に残るものの二つに別れるのよ。ベガの属性魔法は前者……『魔法によって創られた炎』だから、魔力が続く限り消えることなく燃え続ける……けど」

「水中だと話は別だ。水中ってのは水属性の塊みたいな場所だから、どうしても火炎魔法の威力は下がる。出せはするが、それなら別の魔法を使った方がマシだ」

「つまりベガは足手纏いってことね」

「言い方」

 

 要するに、ベガの火炎魔法は水中でも使えはするが効果は半減ということだ。

 ちなみに属性魔法の効果の増減は、天候や環境に左右されることが多いが、普通の魔法も恩恵を受ける場合がある。

 大気中に流れる魔力、『大源の魔素(マナ)』。

 この魔素の濃淡が魔法に少なくない影響を与えるのだとか。

 日食や月食の日、オーロラ、流星群の夜などは、高い魔力濃度を観測することができるし、それが恒常的に垂れ流されているのが龍脈だったり、聖地だったりする。

 人狼が月のエネルギーで変身するのもこの理屈だ。この生物の『魂』という部分への訴えかけとも言うべき現象は、多くの学者達の解決すべき命題だが──

──その辺の話題は永遠に議論が尽きないので触れるのはやめておいた。

 

「ま、それならそれでやりようはある。お前達の脚だけは引っ張らないさ。それより問題は……二人とも、『泡頭呪文』は使えるか?」

「ああ、問題なく使えるよ」

「…………えっ、いや、無理……」

「やっぱりな。水の中に潜る方法がねえと話にならねえし、まずはシェリーの呪文の特訓からだな」

 

 しかしシェリーはこの呪文が爆裂に下手くそだった。

 彼女は直線的な攻撃系の魔法は得意なのだが、それ以外の呪文は得意というわけではない。ましてや、これは六年生以上の生徒向けの呪文だ。原理こそ単純だが維持が難しいのだ。

 せっかく風呂でさっぱりとしたのに、割れた泡でまたびしょびしょになっているシェリーは可哀想だった。

 

(どうしたもんかな。……つか、俺が火炎魔法が弱体化するのも痛手だし……)

「ベガ君、タマモお姉さんから一つアドバイスだよっ」

「え?何?」

「卵の謎解き手伝ってくれたし、そのお礼と思って。ベガ君、火炎魔法が水中で弱体化することに悩んでるんでしょ」

 

 心の中を見透かされた気分だった。

 開心術……ではなく、彼女の人生経験によるものだろう。

 

「わかるよ、私が変身する狐も火属性だからね。考えることは一緒ってわけ。

 で、ここでお姉さんからアドバイス。私は魔法の弓で攻撃するわけだけど、その利点は何だと思う?」

「?そんなの………………ああ、成程」

 

 ベガも方針が固まる。

 あとは、第二の試練が始まるまで、呪文の修練あるのみだ。

 

「そういえばロンは一緒じゃないの?」

「……あの後喧嘩して……仲直りできてないのよね……」

「ああ……」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

(動けない……これはまずいかも)

 

 シェリーは透明マントを被ったまま、ホグワーツの隠し階段のトラップに引っかかっていた。片足が沼に浸かっている、という状況なのである。

 何故こんなことになったのかと言えば、自主練からの帰り道にふと『秘密の地図』を開き、バーテミウス・クラウチの名前を見つけたからだ。

 最近知ったのだが、彼は最近職場に来ていないらしい。仕事の一切を手紙でやり取りするようになっのだと、パーシーが心配そうに言っていた。

 そんな人物が何故、スネイプの部屋の近くを彷徨いている?興味が湧いたシェリーが近くに行くと、足下を見てなかったので思いっきりトラップに引っかかり、卵が転がってけたたましい音を出してしまった。

 

(そして、その音でやって来たのが……)

「規則違反の生徒がいる!!どこだ!?」

「我輩の研究室の薬棚も荒らされていた!ポッターか!ポッターだろう!!出てこいポッターこの野郎!!!」

(フィルチさんとスネイプ先生……まずいなあ)

 

 怖い顔が沢山でちょっと怖い。

「何だ!何の騒ぎだ!え!?儂を殺す算段でも考えていたのか!?」

 怖い顔の人がもう一人来た。

 我達がアラスター・ムーディーの義眼は忙しなく動き、シェリーの所で止まって、また動き出す。

「……全く世話の焼ける。で?スネイプ教授の部屋に誰かが忍び込んだ、と?」

「おそらく生徒だろう。貴方の出る幕ではない」

「そうかな?君の過去を考えれば、むしろ儂の出番だと思うがね」

「……………」

 

 スネイプは苦々しい顔をした。

 

「おお、怖い怖い。さて、この卵は儂が預かっておこう。君もベッドに戻るのだな、スネイプ。儂の眼がやましい物を見つけてしまわないうちに」

「…………ッ、失礼する」

「ウーン、ノリスの反応を見ると何かいるような気がするのだが……まあいいか」

「…………さて」

 

「行ったぞ、ポッター」

「ありがとうございます、先生っ」

「いやなに、今のお前さんを見たらあの二人は面倒臭いことになるだろうと思っただけよ」

 

 シェリーは自分の格好を見た。沼に脚を取られて、あられもない姿を晒している。

 

「確かにこれじゃみっともないって怒られちゃうね……」

「いやそうではなく。まあいい、早く……何だ、その地図は?」

 

 いつも人を驚かせてきたムーディーだったが、彼の驚く顔を見るのは初めてだ。

 この地図は歴代トップレベルの闇祓いでさえ唸らせる代物らしく、暫くの間、彼は地図を見てウンウンと頷き、

 

「──もしや、これでスネイプの研究室に忍び込んだ人間の名前を見たか?」

「うん。バーテミウス・クラウチさんの名前が出てた。魔法省の人だよね」

「………………確かか?」

「うん。何であの人がこんな所を彷徨いていたんだろうって思って」

「ほう……、成程、成程。あいつはな、儂が可愛く見えるほどに闇の輩の逮捕に取り憑かれている男でな、野放しになっている死喰い人の存在が許せんのだろう」

「────それって」

 

 スネイプ先生が元・死喰い人ってこと?

 という言葉を、シェリーは呑み込んだ。

 

「まあいいさ。問題は……

 この地図を貸してくれんか?」

 

 断る理由はなかった。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 コルダ・マルフォイは、ミカグラ・タマモを人気のない教室に呼び出した。

 そればかりか、『防音呪文』『盾の呪文』『隠れん防止機』をフル活用して盗聴対策を施している。

 どこかでコガネムシが聞いているかもしれないので『虫除け魔法』まで使い始めた時はタマモもびびった。

 ……え?何の用?

 

「マホウトコロの、ミカグラ・タマモさんでしたね。私はホグワーツの三年生、コルダ・マルフォイと申します」

「ど、どーも」

「その……あー、不躾かもしれませんが、ちょっとお願いがありまして……」

 

 コルダはあー、とかうー、とか言い辛そうに言葉を何度も詰まらせた。面倒見の良いタマモが「深呼吸深呼吸!」と言って落ち着かせると、彼女は決心がついたのか、とうとう言った。

 

「──私は狼人間なんです」

「へぇー、そうなんだ」

 

 コルダにとっては一世一代の告白だが、タマモは割とあっさりした反応。

 とはいえこの反応は予想通りだ。

 日本魔法界には半妖やら鬼やらのハーフが沢山いて、亜人や異種族に対する偏見が無いのはリサーチ済み。

 むしろ、そういう種族を愛らしいという気持ちを『萌え』という草木の芽吹きに例えるような風流で雅な考えを持つ国が日本なのである。なんと寛容で、美術的着眼点を持つ国なのだろうか。

 そういう国の人間だからこそ、秘密を言える気になったとも言えるが。

──そして本題はここからだ。

 

「教えてくれませんか」

 

 狼としての自分が嫌いで、でも去年は狼の姿で戦うしかない状況だった。

 これから先、満月の夜に戦わねばならない日が幾度となく訪れるかもしれない。その度にあんな無様を晒して、脚を引っ張るわけにはいかない。

 

「もう一人の自分を……獣としての自分を制御する方法を。化物に変身しても自我を失わずにいる術を──」

 

 自分と向き合う日が来たのだ。

 だからコルダは教えを請う。

 同じく、化物の力をその身に秘めた少女に、化物の力の行使の力を。

 半身との向き合い方を。

 

「──内に眠る獣の制御の方法を!!」

 

 

 

──そして時は流れる。

 

「五大魔法学校対抗試合、第二の課題!!その開始を、今ここに宣言しますっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

『その頃の男子風呂』

 

「お前達も風呂入ってたのか……」

「応ッ!湯船はやっぱええのお!」

「気持ちいいッス」

「代表選手勢揃いだな」

 

「お、隣の女子風呂にも代表選手達が揃ってるみたいっスね」

「覗きするしかねえなこりゃ」

「浪漫じゃのう」

「行くぞビッキー」

「ヴぉくを巻き込むな!!」

「み、皆んな!覗きなんてそんな……!」

「好きな女の子一人誘えねえようなヘタレのセドリックはそこがお似合いだぜ」

「な!い、行くとも!!」

「この壁を登れば──」

 

『きぃぃやあああああああああ!!!』

 

「ぎゃあああ耳いてええええ!?」

「卵の音だ!!」

「この音うるせえ!!!」

「負けてらんねえッス!!」

「対抗心燃やして歌うな粗忽者!!!」

「ビッキー!作戦変更だ!お前の箒で窓から覗くぞ!!」

「黙れ!!!!」

(隣の浴室騒がしいな……)

 

おわり。

 

 

 




萌えってとっくに廃れた死語だとは思うんですが、時代設定的に使っててもおかしくないなーと思ったので使いました。
今でこそ一昔前のオタク用語ですけど、愛らしいものに対する感情を草木の芽生えに例えるなんて物凄く風流で雅な表現だと思いません?
詩人だよ詩人。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。