シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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タイトル詐欺。


8.THIRD STAGE THUNDERBIRD

 三つの試練!

 魔法学校対抗試合は、毎回三つの試練を代表選手達に課してきた!

 シェリー達も当然、試練は三つあるものと考えていた!

 しかしリー・ジョーダンは言った!

 

『試練が三つだなんて誰が言った?今回は異例だから五つあるよバーカ』

 

 五大魔法学校の祭典に因んで、ということらしい。ダンブルドアは目を逸らした!

 ……いや、一応これも目的があっての取り決めだ。『魔法ゲーム・スポーツ部』の見解によると、試験の内容如何によっては相性が悪くあまり活躍できない代表選手も出てくるため、その救済措置として様々な内容の競技を用意したのだとか。

 例えばこの競技もそうである。

 

『自分の手に持ったボールを相手に当ててポイントを稼ぐ競技!』

『ステージは空中に広がった足場!ここから落ちた選手はリタイア扱いとなる!』

『ただし、相手に直接攻撃する魔法は使用禁止!準備と覚悟ができたら試合スタートだッッッ!!!』

 

 要するに、空中で行う雪合戦のようなものだ。空中戦といえば世界最高のシーカーであるクラムや自力で羽根を生やせるフラーが強すぎるので、彼達にはある程度能力に制限がかかっていたが。

 しかし、この競技は楽しかった。

 何せ殺される心配がない。ドラゴンとかクラーケンとか、そういう規格外の化物と対峙しなくて済むのだ。

 楽しくないわけがない。

 それに、意外な選手が意外なところで活躍するというのも面白いものだ。

 

「『破邪の法・奇動霊光四隅(はないちもんめ)』!タマモ、落ちているボールを拾ってきたぞ!使ってくれ!」

「『アルクス、弓よ!』ありがとうコージロー、そこ置いといて!」

「……俺は斬っちゃるぜえええ!!」

「ハヤトは引っ込んでなさい!!!」

 マホウトコロは、タマモが大活躍。唯一遠距離攻撃ができる彼女がボールを飛ばし、機動力に長けたコージローが落ちたボールを拾って渡す。

 基本、斬るしかできないハヤトは飛んでくるボールを叩き落とすくらいしかできていなかった。相性って大事だ。

 そんな彼達に攻めの姿勢を崩さないのが、意外や意外、ボーバトンの女子達。

 フラーの得意とする空中戦に、花が見せる幻惑が狙いを妨げる。ムキになって突っ込めば、薔薇の檻が展開されて身動きとれなくなってしまう。

 

「ふーふーん?私達は化物退治よりも対人戦が得意なんでーす。人と争うことが多かったもんですから」

「クソッ、遠距離からちょこまかと!全部叩っ斬ってやるわ!」

「あ、言い忘れてたけど、私達が投げたボールの中に植物爆弾混ざってるから」

「えっ?……うおおおおおマジじゃああああらあ!!???」

 

 ハヤトは地上へと落下していく。なまじ実力は高いため、突然の爆発も難なく防ぐが問題は足場もろともぶっ飛んでしまったということだ。

 面と向かっての真っ向勝負ならば彼に利があっただろうが、今回ばかりは相手と場所が悪すぎたのである。

 脱落したチームメンバーを後でぶっ飛ばしてやろうと思いつつ、コージローは次のボールを取ろうとして──脚が止まる。

 炎上網。

 炎の壁が道を塞いでいた。これでは自由に動くこともままならない──!

 

「お前達は厄介な相手だからな、ここで潰させてもらうぜ!」

「ベガ!後ろだ!『エクソパルソ』!」

「!クラムか……!」

 

 クラムの放ったボールを間一髪でセドリックが吹き飛ばした。何とか難を逃れたが、その猛追は留まるところを知らない。

 シーカーというポジションではあるが、クラムはプロのクィディッチ選手。ボール捌きは誰よりも上手い。仲が悪い筈のネロと素早いパス回しを行い、猛威を振るっていたフラー達でさえも彼達のボールからは逃れられなかった。

 

「ネロ!パスだ!」

「ビッキー!そこから狙え!!」

「え、えっと、私は……」

「リラ!!お前はじっとしてろ!!」

「す、すみま……ああっ」

「リラ!!頼むからじっとしてろ!!!」

 ただし運動神経の悪いリラは例外で、さっきからボールでボコボコにされていた。

 挙句の果てに頭部に当たったボールでバランスを崩して落ちていった。

 合掌。

 

「あーし達を忘れてもらったら困るッス!『爆音呪文』なら飛んで来るボールも打ち落とせるッスからねーっ!」

「くッ、音の防御壁か……!」

 

 こうなると手出しできなくなる。

 バーニィ達の音の魔法は、万象をぶち壊せるだけの破壊力がある。故に、それが攻撃にも防御にもなるのだ。

 攻撃は最大の防御。

 しかしホグワーツの代表選手達は、一つの対抗策を講じていた。

 シェリーの早撃ち。

 点での攻撃に特化した狙撃で、破壊を越える破壊を狙えるのではないか。

 シェリーの本気の早撃ちならば、あの音の防御も破れるのではないか──!?

 

(これは、賭けだ。シェリーの攻撃が音をも越える早さを出せるかどうか……)

(──いや、僕達はもうあの子を信じると決めた。なら後は、彼女の成功を祈るのみだ……!)

 

 バーニィ達の出現に合わせて、シェリーは魔力の充填を開始していた。

 全てはこの一撃のために。

 音をも越える最速の一撃を放つために。

 陰に身を潜めて、ずっとこの機を窺っていた。そしてついに来た!今、高速の紅き弾丸が去来する──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ」

 魔力を込めすぎてボールが弾けた。

 

「あほーーーっ!!」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 あれからボールを何度も魔法で飛ばそうと試みたが、シェリーの込める魔力が強すぎて全部破裂してしまった。

 ホグワーツの成績は最下位。

 ベガの回避能力やセドリックの対応力、シェリーの早撃ちでボールの被弾率は低かったものの、これはポイント制。

 つまりボールを当てられなければポイントは上がることはないのである。

 これまでの積み重ねがあるので総合順位は四位だが、厳しい順位であることに変わりはなかった。

 ……考えても仕方ない。

 シャワーでも浴びようと、シェリーは獅子寮の浴室に入った。

 

「はぁ。今日の競技は疲れたなぁ」

「ほんとほんと」

「いやー、大変だったー」

 

 ………んっ?

 この声はローズとブルーだ。

 一瞬耳を疑ったが、そちらに顔を向けると確かにそこには姉妹の姿があった。互いに身体の洗いっこをしているらしい。そんな彼女は健康的な身体をしていて……

 って。

 見るのはそこじゃない。

 

「なんで二人はここにいるの?」

「ああ、言ってなかったっけ?」

「マクゴナガル先生だっけ、あの人にお願いしてグリフィンドール寮で寝泊りさせてもらうことになったの」

「スパイ行為は絶対働きません、友達と一緒にいたいだけなんです、って言ったら折れてくれたわ」

 

 なんと。

 あのマクゴナガルを説得するとは、見上げた行動力だ。

 そして彼女達のいう友達とは、十中八九シェリーのことだろう。彼女は知る由もないが、ローズとブルーのフロランタン姉妹は悲惨な境遇で生きてきたため、他者を警戒し必要以上に距離を取っていた。

 そんな彼女達が唯一友人と呼べるのは、彼女達を何かと気にかけてくれるフラー・デラクールだけだった。

 しかしそんな二人もシェリーに絆され、今では友人と呼び慕っている。以前では考えられない変化なのだ。

 何はともあれよかったと、シェリーは一人ごちると、シャワールームを出て自分の部屋に向かう。

 姉妹もついてきた。

 ……部屋はこの方向なのだろうか?

 

「なによこの部屋、狭いわねー」

「んっ?……あれ?」

「あ、荷物ここ置くわね」

 

 フロランタン姉妹はシェリー達の部屋にずかずか入ると、遠慮なしに自分達の荷物をベッドに置く。荷物、とは、衣服とか歯ブラシとかそういう生活用品のことだ。

 ……なんで?

 

「なんでって、今日からここが私達の部屋になるからよ。ねーブルー」

「そうだよねーローズ」

「えっ!?」

「ここ四人部屋よ!?六人も入るスペースなんてないわよ!」

 

 ハーマイオニーやパーバティが抗議の声を上げる。当然だ。この部屋は到底七人も生活できるような広さはないのだから。

 しかし彼女達は予想外の答えを返した。

 

「あ、場所の心配はしなくて大丈夫。私達シェリーと一緒のベッドで寝るから」

「わ、私聞いてないけど!?」

「今言ったもん」

「め………っ、」

 滅茶苦茶だ!

 第二の課題で彼女達を助けてからというもの、シェリーは二人からやけに懐かれるようになった。シェリーの両脇はフロランタン姉妹で固められてしまった!

 

「シェリーと私達は友達だもんねー」

「ねー?」

「とっ、友達だけどっ。でもまさか部屋にまで来るなんて思ってなくて……」

「シェリーは私達のコト嫌い?」

「そ、そんなことないよ!」

「じゃあ好き?」

「うん、まあ、好きだけど」

「じゃあ一緒に寝よっか」

「うん…………あれー?」

「誘導尋問よ!!!」

 

 ハーマイオニーは激昂した。

 

「さっきから黙って聞いてれば!言わせてもらいますけどね、シェリーの親友ポジションは私なのよ!!」

「ハーマイオニー、そこじゃないわ」

「じゃあ、私達一応六年生だし、姉ポジションということで」

「そのポジションも私よ!!」

「それなら、成人してるし保護者ポジションってことで」

「残念ね!そのポジションも私よ!!!」

「皆んなは何の話をしているの……?」

 

 知らぬはシェリーばかりなり。

 目の前で自分を巡ってマウントの取り合いが行われているなど気付いてもいない。

 そしてその醜い口論に飛び入り参加した女子が一人。秘密の部屋以降、密かにシェリーの熱狂的なファンと化している、ジニー・ウィーズリーだ。

 

「私を差し置いて話を進めないで欲しいわね!確かにハーマイオニーは保護者兼親友兼姉かもしれないけど、シェリーの妹ポジションは私よ!そこは譲らないわ!!」

「いや誰よあんた」

「ジニー・ウィーズリーよ!!」

「いやどっから沸いたのあんた」

「いい!?忘れられがちだけど、シェリーが初めて二人っきりの夜を過ごしたのは私なのよ!!」

「いつのことを言っているの……?」

 

 ハーマイオニーやジニーやフロランタン姉妹が互いにシェリーの目の前で奇行を繰り広げるカオス空間が完成した。

 というか、フロランタン姉妹は元々ハッフルパフでフラーと寝ていた筈だ。

 フラーはどう思っているのだろうか。

 本人に聞いてみれば、

「友達ができてよかったでーす」

 だそうだ。呑気なもんだ。

 

「とにかく!このポジションは譲らないんだから!!」

「引く気はなさそうね……それならこれで決着つけようじゃない!」

「ま、枕投げ!」

「何か面白そうだし、私達もやるわ!」

 

 旅行の定番、枕投げ。

 しかも魔法使いの枕投げともなればそれは過激なものになると決まっている。魔法で枕を飛ばし、魔法で守る。しかも彼女達はこう見えてなまじ優秀な生徒である、シレンシオで防音もバッチリ、レパロで枕を直すのもお手の物。

 というわけで、マクゴナガルにバレない高度な枕投げが始まるわけである。

 激闘は夜遅くまで続いた。

 ハーマイオニーも、ジニーも、フロランタン姉妹も、そしてその場のノリで参加したパーバティもラベンダーも、よく分からないまま参加したシェリーも。

 皆が布団の上でぐったりとしていた。

 対抗試合の疲れを癒すどころではない。寧ろもっと疲れたような気もする。

 気がつけば朝だった。

 中々起きないシェリー達を起こしに、監督生のアンジェリーナとしっかり者のタマモが彼女達の部屋を覗くと、そこには、幸せそうに眠っている彼女達の姿が。

 

「ああ、もう……こんなにシーツをぐちゃぐちゃにして。仕方ないんだから」

「ふふっ、歳の近い妹達を持った気分♪」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 ホグズミード休暇。

 今年から堂々と行き来できるようになったシェリーは、明るい表情でホグズミードへと向かう。フィルチに微笑ましい(?)顔で送り出されると、例のフロランタン姉妹が物凄い勢いで追いかけてきた。

 

「私達もシェリーと買い物したいー!!」

「ホグズミードで一緒に遊びたいー!!」

「約束したのはこっちが先よ!」

「あー、ごめんね二人とも。今度また一緒に遊ぼうね」

「人気だなぁシェリーは」

 

 後ろ髪引かれる思いだったが、ホグズミードに来るとそれも吹き飛んだ。

 一通り買い物を済ませると三本の箒に入り、バタービールをいただく。と、馴染みのある人物が何やら騒いでいた。

 ルード・バグマン。

 元クィディッチ選手という肩書を活かして、魔法省の『ゲーム・スポーツ部』というポストを獲得した彼だが、染み付いた行き当たりばったりな生き方は変わっていないらしい。彼はギャンブルに興じていた。

 曰く、今回の魔法学校対抗試合では誰が勝つのか、とか。

 

「いやァ世間ではダームストラングとマホウトコロが優勝候補らしいが、私は断然ホグワーツ推しだね。勝負にはいつだってジャイアントキリングが付き物、そうだろう?」

「あー、応援してくれるのは嬉しいよ。でもその……バグマンさん」

「ん?何だい?」

「あんまりお金を賭けたりするのはやめた方が良いんじゃない…?」

「ぐッッッ」

 シェリーの、本気で心配した表情にバグマンの心が痛んだ。

 

「だ、だが、ギャンブルは私の一番の楽しみでね──」

「家族の人達は心配してないの?」

「ぐはッ」

「私、せっかくバグマンさんと仲良くなったんだから、貴方が身を滅ぼすところなんて見たくないよ……?」

「ごはッッ。ご、ごめんなさい……」

 

 バグマンはギャンブルをやめた。

 彼は賭け事で負け続けて(仮にも魔法省勤めなのに)無一文に陥ったこともあるらしい。趣味の範囲ならともかく、これから手を出すのは控えてほしいものである。

 さて、シェリー達が向かうのはホグズミード郊外のちょっとした山の麓だ。

 この時期は少し肌寒いが、気分はまさにハイキング。言われたところに到着した頃にはシャツが汗ばんでいた。

 透明マントを脱ぐと、一頭の大型犬が駆け寄ってくる。犬は一瞬にして変身すると、ハンサムな顔立ちの男に姿を変えて、シェリー達に笑顔を向けた。

 

「シリウス、ひさ──」

「チキン!!!!!」

「えっ」

「…………あー」

「……台無しだぜおじさん」

 

 シリウス・ブラック。

 一年ぶりの彼との再会の第一声は、それだった。……まあ、脱獄生活が長かったので何も食べれてない日があるのは予想がついていたのだが……。

 慌てて、シェリーは今日のために作ってきた弁当箱を開いた。

 

「あっ!」

 油で手が滑って、シェリーはチキンを掴み損なう。鶏肉が宙に舞った。

 しかしシリウスは鍛え抜かれた動体視力でそれを口でキャッチすると、咥えたままシェリーの下へと駆け寄った。

 彼女が「た、食べていいよ」というと、すぐさまがっつく。大した忠犬ぶりだ。

 ……しかしこれは全て人間の姿で行われた行動である。ロン毛の髭面のおっさんが親子ほど歳の離れた少女に餌を貰っているのだ。

 ロン達は恐怖した。

 人はここまで堕ちるものなのか…。

 犬に変身しすぎて染み付いた行動なのは分かる、分かるのだが……。怖い……。

 

(シリウスって犬に変身できる人間じゃなくて、人間に変身できる犬なんじゃ……)

「いやすまない、最近はネズミばかり食べていたものだから、思考が犬よりになってしまっていてね。わふん」

(大丈夫かしらこの人)

 

 仮にドッグフードを渡しても喜んで食べそうな勢いである。シェリーの作った、男性から見ても多めの量の弁当はあっという間に空になった。

 水筒の紅茶で一息つくと、シリウスは打って変わって真面目な顔つきに変わる。

 やはり腐っても大人だ、公私のケジメはつけるのだろう。

 

「ロン……君はシェリーとダンス・パーティに行ったそうだね?その時のことについて詳しく話してもらおうか」

「えっ」

「え?」

「頼むから真面目な話をしてちょうだいシリウス、いや大真面目なんでしょうけど」

 

 言われて、シリウスは殺気を収める。

 つーか仮にも十四歳の少年に向けるような視線ではなかった。親馬鹿というか、後見人馬鹿というか。

 咳払いすると、ようやく本題に入る。

 この五大魔法学校対抗試合のキナ臭さについてだ。

 

「第二の試練で、様子がおかしいグリンデローや、クラーケンに襲われた、か……」

「シェリーやベガの証言を聞くと、それは『錯乱の呪文』『服従の呪文』で間違いないわ。闇の勢力の仕業だとは思うけど……シェリーを対抗試合で殺す気かしら」

「それにしては回りくどいやり口だよな。闇の勢力をホグワーツに送り込んで暗殺させた方がよほど効率が良い」

 ロンの指摘はもっともだ。

 しかし闇の勢力とは頻繁に戦っている気もするが、今までそれがなかったのは何故か。去年までの例を思い出してみる。

 

 クィレル。

 賢者の石を盗むという目的があり、スネイプに睨みをきかされていた。

 トム・リドル。

 そもそも力を取り戻しておらず、バジリスクを使役しなければならなかった。

 ペティグリュー。

 その度胸がなかった。

 

 考えられる可能性としては、リドルのように力を取り戻しておらず、仕方なく回りくどい手段を取っているというパターンだろうか……?

 

「だが、クラーケンをも錯乱させられる力を持った人間がそんな真似するか?まあ、自分の手は汚さずに済むが……」

「犯人の目的が見えないね。私を対抗試合に参加させてどうするつもりなんだろう」

「ウーン、心なしか、シェリーに力をつけさせようというか……成長させようとしている気もするんだよな。ま、そんなわけないか」

 

 確かに、この対抗試合を経て、シェリーはたくさんの魔法を覚えたし、既存の魔法の強化も行った。

 けれどそれは闇の勢力側からしたら不本意なことのはず……なのに、この不自然なまでのレベルアップは何だろう。

 犯人の目的は分からない。

 だが、犯人の推測ならできる。シェリー達は今年出会った怪しい人物達の名前をピックアップしていく。

 

「シリウス、ダンテ・ダームストラングはどうだい?僕はあいつが怪しいと思う」

「中々良い着眼点じゃないか、ロン。ダンテは有能だが、同時に多くの相手を蹴落として今のポストに着いた男だ。

 だが、彼は証拠を残さない男でもある。あのリータ・スキーターでさえ、ダンテの弱みを握ることができず、煮湯を飲まされていたほどだ。奴が敵だという可能性はあるが、証拠は掴めないだろうな……」

 

 ダンテ・ダームストラング。

 北方魔法界において知らぬ者なし、とまで謳われる豪傑だ。彼は北方魔法界の発展に寄与した人物だが、同時に悪い噂もそこかしこで聞く男。

 例えば、彼の前任であるイゴール・カルカロフの辞任は突然だった。校長を辞めて余生を故郷で過ごすなどと言い出し、以降消息を絶っているとかなんとか。

 ネロとリラの存在もそうだ。彼達は対抗試合で、自分達の異常な戦闘力をまざまざと見せつけている。あの魔術は、なんだ?

 

「図書室の本は一通り調べたけど、『ダメージを肩代わりする魔法』に『ドラゴンに噛まれても平気な身体を手に入れる魔法』なんて載ってなかったわ。

 ……禁忌の、闇の魔術の類なのは間違いないでしょうけど」

(そういえばリラの背中の刺青、あれも何か関連があるのかなあ。本人が口止めしてたし、言うのはやめておこう……)

「クラムはともかくとして、ダームストラング校は闇の魔術を実際に教えていることに変わりはない。用心は必要だな……」

 

 聞けば、前任のカルカロフは元・死喰い人なんだとか。仮にダンテが闇に通じているのだとしたら、彼の校長就任は意味合いが変わってくる。カルカロフを社会的に抹殺して、校長の座に立ったのではないか、という意味に。

 それなら対抗試合を目前にしてカルカロフ氏が職を辞したのも頷ける。……あまり気分の良い話ではないが。

 

「シェリーにとってはあまり考えたくはないことでしょうけど、代表選手が犯人という可能性はあるかしら」

「……、その線は薄いと思うが、まあ可能性はなくもない、か……。校長の指示で妨害工作を働いているという線もあるしな。

 だが、ボーバトンはあのマクシームが治めている学校だ。彼女は闇の勢力に頭を垂れるような人間ではないし、生徒にもそれをさせるような人ではないよ」

 

 シリウスの評価は意外に高かった。

 マクシームは魔法生物飼育学の権威である一方、質の高い教育を徹底し続けた女傑でもある。勉学だけではない、健全な精神の育成をモットーに掲げる彼女はフランス魔法界の教育のシンボルなのだとか。

 マクゴナガルも彼女を尊敬しているといえば、その偉大さが分かるだろうか。

 

「マホウトコロは半々だな。あそこはまだ魔法使いを軍事力として扱う風潮が根強く残っている。それは、国を守る盾にも、外敵を滅ぼす牙にもなり得るということだ。

 あのオダ・ナギノとかいう校長も、元は前線で活躍していた人間だ」

 

 ハヤト達の誰かが犯人とは思いたくないが、つまりはそういうことだ。

 弱肉強食の世界で生きる彼達が、闇の勢力を『強者』として認めたらどうなるか。

 ホグワーツや、シェリーやベガを『敵』として認識したらどうなるか。

 ……想像したくもない。

 ハヤト達が一連の騒動に関与している可能性があるなどと。それに、あんな人外連中と戦うのは御免だ。

 

「イルヴァーモーニーは……そうだな、セイラムはあの通り気の良いおっちゃんだ。

 だがアメリカ魔法界はその影響力が弱まってきているし、そこにつけ込まれた生徒はいるかもしれないな」

 

 アメリカにはかつて、堕落した傭兵集団(スカウラー)と呼ばれる闇の魔法使い達がいた。

 アメリカ合衆国魔法議会(マクーザ)が彼達を取り締まっていたのだが、それでも全てを排除することはできなかった。排斥され、怨みを積み重ねた彼達の末裔が再び闇と抵触したとしたら。

 一九二〇年代にその議長を務めたセラフィーナ・ピッカリーの黄金時代から時は過ぎ、今のアメリカは不安定な環境にある。

 切っ掛けさえあれば、ダムが決壊するかのように全て壊れかねないのだ。

 

「こんなところか。ああ、そういえばいたな、もう一人怪しいのが」

「誰かいたっけ……?」

「バーティ・クラウチさ。ここ最近の奴の行動は、私の知るクラウチ像に全く当て嵌まらないんだよ。奴らしい行動といえば、屋敷しもべをクビにしたくらいか」

 

 ハーマイオニーが反応する。先のワールドカップでウインキーが仕事を辞めさせられたのは、余程堪えたらしい。

 しかしクラウチはそういう男だ、とシリウスは言う。なんせ彼は『疑わしきは罰せよ』を体現したかのような男で、人の身に余る正義を抱えているのだ、と。

 クラウチが頭角を現したのは先の魔法戦争の時だ。誰もが混乱し、恐怖し、毎日のように惨劇を告げるニュースが入ってくる悪夢のような時勢下で、彼は法を変え、闇祓いに権力を持たせた。

 『悪人は殺していい権利』『裁判無しにアズカバンに送っていい権利』……毒には毒を、暴力を持って暴力に対抗した。

 行き過ぎた正義も民衆にとっては希望に変わりない、支持は集まり、魔法省の次の大臣はクラウチに決まりかけていた。

 

「──そんな時だ。

 奴の息子が拘留されたのは」

 

 曰く、とある闇の魔法使いが自分の仲間を売った時に、彼の名前が出たのだとか。

 クラウチの息子は評判が良く、それは何かの間違いだ、運悪く巻き込まれてしまっただけだ、などと擁護された。

 しかし自分の評判を傷つけた者には、息子だろうと屋敷しもべだろうと容赦しないのがクラウチだ。彼は息子を庇うこともせず、アズカバンに送った。

 その時の、クラウチ・ジュニアの悲痛な声は今でも忘れられないと、シリウスは渋い顔で語る。

 ジュニアは死に、息子の死にショックを受けたクラウチの妻も間もなく息を引き取り、一人残されたクラウチには非難の声が集まった。クラウチには人の心がない、家庭を顧みない冷酷な男なのだ、と。

 

「……ちゃんと家族がいるのに、何で……そんなことができるんだろう……」

「たまには一緒に、家族にお茶目な悪戯でもしてやれば良かったんだ。そうすればレギュだって……

 それはいい。クラウチはあの頃のポジションを取り返そうと躍起になっている、だから闇の勢力を捕まえようと必死だ……

 とはいえ、あの陰険野郎の研究室に忍び込むのは流石におかしいと思うがね」

「クラウチは今、病欠って話だろ?でも話を聞くと病気なんかで休むようなタマには思えないなあ」

「今にして思えば、ワールドカップで欠席してたのも変だよね。あの時、あの人はどこに行ってたんだろう……」

 

 様々な謎を残したまま、シェリー達は城へと帰っていく。

 自室でフロランタン姉妹に抱きしめられながら、今日の出来事を漠然と頭の中で整理する。浮かぶのはやはり、バーティ・クラウチという男についてだ。

 クラウチへの疑念は強まっていく。

 彼の行動は謎だ。尽力していた対抗試合にも最近は顔を出さず、かと思えばスネイプの研究室の周りを彷徨いている。

 彼の過去を知ってからは、殊更にその行動が不自然なものと思えて仕方ない。

──彼の、過去。

──家族を蔑ろにした過去。

 彼の行動全てが愚かだとは思わない。世間に曇りなき正義を示し、強引なやり方かもしれないがそれで救われた人も大勢いるのは確かだ。

 けれど、妻や息子に対しての態度は、話を聞く限りでは冷酷そのものだ。

 もう諦めているとはいえ、家族に人一倍強い憧れを持っていたシェリーには、その感覚が分からない。

 

(なんだか、ロボットみたいだ。正義というシステムに従って、プログラムされた通りに罪を裁くだけの──)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ロボットは君だろう?

──他己愛というシステムに従って、プログラムされた通りに人を救う。

──人に優しくされればされるほど、その人のために死ななきゃいけないと思う。

──そんな人間が君だ。

 

(───ッ)

 頭の中にダイレクトに情報をぶち込まれたような感覚だった。飛び飛びの映像が流れて、脳回路がショートを起こす。

 頭の痛みは、舌を噛むことで和らげた。

 他人に余計な心配をかけてはいけない。

 自分に余計な感情はいらない。

 ただ、人のために生きて死ぬだけ。

 

──はは、くだらない。

──本当につまらない生き方だ。そんな生き方は身を滅ぼすだけだ

 

(………、君は誰なの?)

 

──君にとって、たった一人の家族と呼べる人間……それが僕さ

──⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎──

──それが僕の名前。

──それが僕の自己証明だ──

 

 黒髪の少年は妖しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 じゅう⬛︎年ま⬛︎⬛︎⬛︎生まれタ

 ⬛︎⬛︎⬛︎の⬛︎のが帝滅ぼ⬛︎⬛︎ヨゲン

 筈だ⬛︎りペテ⬛︎⬛︎⬛︎リューの秘密の守りが破れ⬛︎⬛︎の裏切り⬛︎の⬛︎⬛︎

 ゴドリッ⬛︎谷⬛︎デヴォ⬛︎⬛︎モートは

 ⬛︎りリー・ぽったー⬛︎愛⬛︎⬛︎⬛︎を⬛母

 仮初⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎死迎え⬛︎⬛︎⬛︎下僕

 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎オスカー⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

 しかシ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ハ⬛︎

 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎紅い力⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎器⬛︎⬛︎⬛︎

 感情⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎七つ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎大罪⬛︎

 ⬛︎⬛︎力ヲ⬛︎⬛︎⬛︎取り戻し⬛︎?⬛︎禁⬛︎

 ⬛︎生み⬛︎⬛︎⬛︎怒⬛︎⬛︎ト⬛︎暴⬛︎彼は

 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ェ⬛︎リー⬛︎⬛︎⬛︎ぽ⬛︎⬛︎

 ⬛︎⬛︎箱⬛︎箱⬛︎霊⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎箱⬛︎分

 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎神⬛︎愛⬛︎⬛︎呪⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

 

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼を神に愛された少年と呼ぶならば」

「君は神に呪われた少女だった」

 

「──君は生まれてきてはいけなかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ、………ハァ、ハァ………」

「ん〜?どうしたのシェリー、悪い夢でも見たの?」

「………、大丈夫、心配ないよ」

 

 理由は分からない。

 分からないが、精神を揺さぶられるような、不安になるような夢だった。

 いや夢……、なのか?

 疲れた末に見た妄想なのか?

 そもそも何を見たんだっけ?

 少年は家族の私が黒髪だった?

 あれ?

 あれあれあれ?

 ……きっと対抗試合で疲れているんだ、もう寝てしまおう。疲弊した脳を休めるようにして、

 シェリーは今度こそ眠りについた。

 




魔法界にはサンダーバードっていう鳥がいて、ファンタビだと大活躍するんです。それで今回も出そうと思いましたが似たような課題ばっかになるので名前だけ残しました。

フロランタン姉妹のデレ。
コルダ書いてた時も思ったけど、強気な女の子が主人公の真っ直ぐな言動に惹かれてデレるのって良いよね…。
因みに脱獄犯のシリウスが何でこんなに情報通なのかっていうと、家の事情でそういう知識を叩き込まれたのと、新聞くらいしか娯楽がなかったのが原因です。
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