1.グリモールド・プレイス
奴達を殺す。
私が殺す。
ヴォルデモート卿とその従僕どもを、私が駆除しなければならない。私一人でやらなければならない。私なんかに良くしてくれる優しい人達の手を、あんな害虫に触れて汚させるわけにはいかないから。
他の人達を巻き込んではならない。
殺して、殺して、殺し尽くす。
そして奴達を殺した後、私も死ぬ。
それでやっと、腐った塵虫はいなくなり美しい世界が完成する──。
▽▽▽▽▽▽
(…………ッ)
シェリーは微睡みから覚めた。
ダーズリー家の庭、植え込みの陰で眠るのが夏休みの彼女の日課だったのだが、その優雅なひとときは最低の悪夢によって妨げられる。
ローズが水魔法で溺死した光景。ブルーが魔法の槍を何本も突き立てられた姿。セドリックをナイフで刺した時の感触。
忘れることなどできない。あの惨劇からまだ一月と経っていないのだから。
「…………ハァ………」
知らず、溜息を吐いていた。
あの日以降、眠ってもあの時の悪夢ですぐに目が覚めるようになったし、食事も喉を通らなくなっていった。
睡眠不足に栄養不全。
大人と子供の境界線に立つシェリーの貌には、可愛らしさの他に美しさが混ざるようになっていったが、目元の隈と病人のように白い肌が彼女の美貌に陰を落としていた。
まあ食事に関してはダーズリー家では元々大したものを食べてはいないし、顔についても別段こだわりはない。だが、これではヴォルデモート卿を殺すどころではない。生ゴミでもいい、何か栄養のあるものはないかと街へ出ることにした。
しかしまあ、間が悪いと言うべきか。辺り一帯では美化キャンペーンなるものが行われているらしく、目ぼしいものは見つからなかった。しょぼくれて、近くの公園で一息つくことにした。
あれから魔法界からの連絡はない。
ダンブルドアからの緘口令でも敷かれているのか、シリウスからの手紙が届く以外は何も送られてこない。似たようなことは二年時にもあったが、ドビーがまた同じことをすることはないだろう。
シェリーはそれが歯痒かった。
魔法界から断絶されたような気分だ。それ自体は別にいいのだが、有益な情報が何も入ってこないというのは、堪える。
しかもマグル界では魔法の練習をすることができない。今こうしている間にも闇の勢力は増長を続けているのに、自分はただ一日をボーッと過ごすだけ。
(私は何を……)
「オイオイオイ、シェリーッ。何してんだお前何してんだオイ」
「ダドリーに、ピアーズ?他にもたくさんいるね……」
「さっきまで遊んでたんだよ。おい、ちょっと来いよ。可愛がってやる」
彼達の瞳に何やら妖しいものを感じたが、断る理由もないし、いざとなれば魔法でどうとでもなると判断。シェリーはベンチから立ち上がって──
「………?おい、何か寒くないか?」
「……シェリー!?お前何かしたか!?」
「いや、私は何も……でも、この気配は、まさか吸魂鬼!?」
シェリーの疑惑に答えるように、黒い霞のような生物、吸魂鬼が現れる。空気が冷えて恐怖が訪れ、絶望をもって支配する。
しかし、吸魂鬼がいくらまだまだ謎の多い生物とはいえ、マグルの街のど真ん中に現れるなどあまりに非常識だ。何者かの意思を感じる──。
「何故ここに……!?エクスペクト・パトローナム!!」
シェリーは銀色の鹿を呼び出した。
彼女の守護霊は、三年生の時に百体近くの吸魂鬼に囲まれながらも顕現した、という経緯もあってとりわけ強力だ。
公園内を縦横無尽に駆け回っては、吸魂鬼達をたちまち殲滅する。
(あれ?姿が変わってる……)
以前出した守護霊は、『牡鹿のツノが生えた牝鹿』だった筈だ。小柄な身体に不釣り合いな大きなツノが生えた鹿こそが、彼女の守護霊だった。
それが今では、小柄な牝鹿には変わりはないが、ツノの代わりに蛇が生えて毒々しい見た目に変わっているではないか。
以前の守護霊は川のせせらぎを思わせる静謐さがあり、見る者に安らぎを与えていた。しかし今はどうだ?廃水まみれのドブ川の如き醜悪な見た目、面影などどこにもない。
守護霊は部分的な魂の発露。魔法使いの精神状態で姿を変えることもあるというが、こうまで様変わりするものか。
おそらくは、先日の出来事がシェリーの精神に影響しているのだろう。
(まあ、どうでもいいか)
そうだ、それは問題ではない。
ダドリー達の方をチラリと見やる。吸魂鬼にやられて気絶しているようだ。
無理もない、魔法力のないマグルがあれに遭遇すればその苦痛もその非ではない。気絶で済んだだけまだマシな方だ。
そう、問題は──。
「フリペンド!!」
「ッ!くっ………!!」
シェリーは射撃魔法でダドリー達の少し近くの空間に攻撃する。すると、何もなかった所からくぐもった声が。
あれは透明マントだ。吸魂鬼で感覚が鈍った隙にダドリー達を人質にするつもりだったのだろうが、ここ最近の悪夢で吸魂鬼の恐怖にも若干の耐性を得ていたシェリーには通じなかった。
見渡せば、公園中を取り囲むように立つ死喰い人達が。
「来たか。いずれ来るとは思っていたが、意外と早かったな」
「やだねー、最近の若い子はすーぐ感情的になっちゃうんだから。オジサンを見習ってもっと落ち着きを持ちなよね」
死喰い人達の数は目立つのを避けるためか十人程度。しかし少数精鋭なのか、その立ち回りは強者の空気を感じさせる。
とりわけ注意すべきは、あの男。
中年のすらりとした男性で、口元にニヤニヤ笑いを浮かべてはいるが……瞳だけが全く笑っていない。
「我達が帝王の指示でねー、帝王のところに君を連れてこなきゃいけないのよ。
だからシェリーちゃん、このドロホフおじさんに倒されてくれなよね」
「………ドロホフ………?アントニン・ドロホフか?奴はアズカバンの筈……」
「やだなー、あれは影武者だよ。魔法を使えばいくらでも影武者はできるよん。ま、それ相応の金と手間はかかるけどね」
アントニン・ドロホフ。
聖28族に属していないにも関わらず、純血を重用する傾向のある死喰い人の中でも幹部の座を得ている人物であり、その実力と策謀を以ってして成り上がったイレギュラーでもある。
たしかドロホフという名前は北方の姓のはずだが、ダームストラングからはるばるヴォルデモートを訪ねてきたらしい。先見の明があるというか、勝ち馬を見定める能力が高いというか。
──関係、ない。
今から死ぬ男の身の上話などいらない。
殺してやる、殺してやる、と殺意を昂らせて、怒りのままにその力を解き放つ。
「──『紅い力』、解放!!」
シェリーの赤い髪は、禍々しい紅へと変貌を遂げる。人相が変わり、吊り上がった瞳は昏い闇を思わせるように変貌する。
次いで、シェリーの杖先に五つの魔法陣が固定される。これは魔法砲台──!
「『オルガン・フリペンド』!!」
シェリーの得意とする破壊攻撃。
追加効果で、シェリーの魔法にはレダクトが付与される。一度の攻撃で二回分のダメージがあるということだ。
それが何砲もの魔法陣から発射されるとなれば、その破壊力は計り知れない。遊具は軒並み壊され、後に残るのは灰塵のみ。
今のシェリーを前にして防御などあり得ない。一度でも攻撃を喰らえばたちまちやられてしまう。
「やだやだ、怖いねえ」
「随分としぶといな、害虫どもが」
死喰い人達は姿あらわしを多用してその銃撃の嵐を避ける。シェリーの魔力が切れるのを待っているのだろう。
かくいうシェリーも、ダドリー達を守りながら戦う必要があるためその行動には制限がかかってしまう。仕方なしに、守護霊にダドリー達を任せることにした。
紅い力で身体能力も向上しているのか、数メートルもの高さを跳び上がると、シェリーは得意とする早撃ちを放つ。
しかしそれを読んでいたと言わんばかりにドロホフは同じタイミングで魔法を放ち、それを相殺する。
「オジサンもこう見えてバトルには自信があってね、若い頃はブイブイ言わせてたんだよね。前の魔法大戦では『強欲』の力を持たされてたのね」
背後から気配を感じ、咄嗟にフリペンドを放つと、死喰い人達が同時に放った魔法を相殺した。
しかしその衝撃までもを消し去れるわけではなく、シェリーの矮躯は吹き飛ばされる。それを閉じ込めるように球形の盾の魔法が彼女を包む。
「でもねー、オジサンってば自分が前線に出るタイプじゃないし、どっちかてーと知略タイプなのよね。だからオジサン、新入りの子にあげちゃった。
オジサンの武器は、魔法の力じゃなくてこの頭脳だからねえ!!」
球形の盾の魔法の中に放り込まれたのは、コンフリンゴ。濃縮された爆発が盾の中で何倍にも増幅されて彼女を襲う。
間一髪、シェリーの破壊力が盾を破る。
ごろごろと地面を転がり、キッとドロホフを睨む。強い。
パワーや魔法力ではない。その強さの本質は『強かさ』だ。
「糞どもが……!!一掃してやる、『オルガン』……」
放つ寸前に気付く。
この立ち位置からでは、ダドリー達を巻き込んでしまうことに。
一瞬の躊躇の後、魔法を切り替え、ステューピファイを放つ。しかしそれは死喰い人の呼び寄せた瓦礫によって防御された。
「人間ってねー、相手が多いとついつい近くにいる人間から攻撃しちゃうものなのよ!」
「猪口才な手を使いやがって……!!」
「ほらほら、そんな体たらくだとうっかり殺しちゃうよ?アバダケダブラ!!」
「!!………!?な、何で!?」
放たれた緑の閃光をシェリーは難なく躱すものの、遊具に衝突すると巨大な魚へと形を変え、獰猛にシェリーへと飛来する。
確かにアバダケダブラと発音した筈なのに、杖から放たれたのは変化の呪文。どういうトリックだ?
(……まさか、口ではアバダケダブラと言っておきながら、『無言呪文』で変化の呪文を唱えていたということ!?
まずい──どんな攻撃で、何をしてくるかが読めない!!)
ハーマイオニーと同じく、技量が高いタイプの魔法使い。魔法の強さではなく、魔法の使い方を重視する魔法使い!
飄々としている好々爺だが、単純な戦闘技術ではシェリーより数段優っている。
悪寒がしてダドリー達の方を見ると、変化させた魚はダドリー達のところへと向かっている!
「糞がッ、フリペンド!!」
シェリーは慌てて魔法の魚を消滅させる。
だが、それこそがドロホフにとっての絶好の機会だ。
「はい隙ができましたよっと!」
「がッ………!!」
後頭部に走る衝撃。直撃こそ避けたものの、ステューピファイで身体が痺れてしまう。
「ンッンー、シェリーちゃん、まだまだ力の使い方がなっちゃいないねェ。紅い力を使う幹部はこんなもんじゃないよ。その調子じゃ君、紅い力をどう伸ばしていくか聞いてないでしょ」
「くッ、………、………伸ばすだと?」
「ま、それはおいおい帝王に聞いてねン。じゃっ、連行を──」
言いかけて、ドロホフはその違和感に気付く。
小型化した『敵鏡』に人影が映っていたのだ。
内心で懸念していた、闇祓い達がシェリーの護衛をしているという可能性。その懸念から、ドロホフは攻撃ではなく回避を選んだ。
空気が揺らぐ。
先程までドロホフがいた空間がねじ切れた。
現れたのは褐色の女闇祓い、チャリタリ・テナ。そして派手な髪の女性に、闇祓い達が十人ほど。
「まさか、あんた達が出張ってくるとはね」
「……邪魔しやがって、ガキどもが。
まっ、いいよん。オジサン達はここで帰るとするよ。得られた情報は大なり!皆んなー、引き上げるよー」
「っ、待て!!まだ私は──」
「その身体じゃ無茶だよ、下がってて!追うよ!!」
「ぐ……」
チャリタリ達はドロホフ率いる闇の勢力を追っていく。
何だ、このザマは。
闇の勢力を皆殺しにすると言いながら、たかだか十人程度の死喰い人すら殺せないとは。
(糞、糞、糞ッ!こんな筈じゃ……!!もっと、もっと力が要る……!!)
駆け抜ける焦燥がシェリーを襲う。
この世界で傷つくべきは、自分と、無辜の民を傷つける悪党どもだけであるべきなのに。あろうことか他者の手を煩わせてしまうとは……!
四の五の言ってられない、紅い少女は早急に力を得るという断固たる決意を掲げる。
もう誰も殺させないために。
シェリーは邁進し続ける。
たとえその先に破滅が待っていようとも。
「シェリー、シェリー?聞こえてる?」
「……あなたは?」
「初めまして、だね!私はニンファドーラ・トンクス!トンクスって呼んで!つーかニン……名前の方で呼ばないで!」
「そう、よろしくね」
「実はシェリーとは一年だけホグワーツの在学期間が被ってたんだけどね。まっ、それはチャリタリも同じか!ああチャリタリと私は同期で…ってそれはいいか。
ダドリー?だっけ?のお父さんへのフォローは任せてよ!これでも社会人だからさ!」
(大丈夫かなあ……)
「帰ってきたダドリーが気絶して貴様ッおい貴様ッ殺すぞダドリー貴様殺すぞダドリー!!」
「あー、お父さん、落ち着いて話を……」
「お前にお父さんと呼ばれる筋合いなはいんですけどおおおおお!?」
(やっぱり……)
溺愛する息子が酷い状態で帰ってきたとあって、バーノン氏は大層怒り狂っていた。
そりゃそうだ。
「気持ちは分かるけどさ、これはね……」
「わしの純情で繊細な気持ちが貴様達なんぞに分かってたまるか!!!」
(乙女かよ)
「可愛いダッダーを傷つけた貴様達にナイフぶっ刺してやりたいわ!!!」
(メンヘラかよ)
「そうよ!!早く出て行って!!!」
「あ、ペチュニアさんだっけ?ダンブルドアからの伝言。『わしの最後のあれを思い出せ』だって」
「………!!」
「?」
ペチュニアは青白い顔を更に青くさせた。
それからしばらく考え込んで、
「………バーノン、やはりこの子をここに置いておきましょう」
「!?何を!?……弱みでも握られているのか!?」
「この子を追放したとあらば、そう、ご近所から何て言われるか分かったものじゃないわ」
「し、しかしだな」
「パパ、今回の件に限っては、シェリーは寧ろ僕を助けてくれたんだ」
ソファに沈んでいたダドリーはゆっくりと起き上がって、掠れた声で言った。
「薄ぼんやりとだけど覚えてる。黒い影みたいな奴と、大勢の髑髏の仮面の連中から僕を守ったんだ。そこんとこの責任ごっちゃにする僕じゃねえや」
「吸魂鬼と死喰い人だね」
「……例の、闇の帝王とかいう輩か?ハッ、何が帝王だ!ふざけた連中だ!そんなティーン染みた名前をいつまでも使っている真っ黒馬鹿どもめ!」
「あなた今魔法界行ったら称賛されるか殺されるよ」
どうやらバーノンの怒りは有耶無耶になったようだった。
「よく分からないけど、お礼を言っておくべきかな」
「礼なんて言われる筋合いはないわ。……その顔をこっちに向けないで頂戴」
「………?」
「うわ、酷い言い草。いいですよーだ、シェリーは夏休みの間こちらで保護しますとも」
「話が合うわね、私もその案に賛成よ」
「じゃあ交渉成立ってことで。シェリー、トランクに荷物入れようか」
二階に上がる途中、トンクスは何度も階段に脚を引っ掛けて転んだ。
その度に物を倒してしまうので、レパロで直せるとはいえシェリーは気が気ではなかった。彼女はちょっとばかしドジっ子らしい。
「?あれ、髪の色変わってない?」
「あー、さっきの連中にムカムカしたからかな。赤に近い色になってら。私は『七変化』っていう特異体質でね、髪の色や顔のパーツを変えることができるの」
「すごいじゃん」
「えっ、そう?へへ……この能力の凄いところはね、変装だけじゃなくて戦闘にも役立つところなんだよ!体内の魔力も変わるから、色んな種類の魔法が使えるんだー!」
「すごいじゃん!」
「まあ『紅い力』とか、特殊な魔力は無理だし、私の技量を超える魔法は無理だけど。はい変身っ!シェリーッ!」
「あ、私がもう一人いる……んっ?傷の向きが……」
「あらーっ!?」
トンクスの特技鑑賞は、戻ってきたチャリタリに急かされるまで続いた。
愛用の箒、クリムゾンローズを手に、シェリーは庭へと下りる。去年は出番がなかったものの、三年時にグリフィンドールを優勝に導いた逸品だ。
(クィディッチ、か……)
「?どうしたのシェリー?」
「何でもない。行こうか」
マントを被り、何やら魔法をかけられ、シェリーを囲むようにして箒の集団はプリペット通りを後にする。……自分如きに人材をこんなに使ってしまうのか。いっそ、どこか遠いところに行って隠れながら闇の勢力を削っていくのも悪くないかもしれない。
「……シェリー、どしたの、暗い顔して」
「……セドリック達のこと?あれは仕方ないよ…って言って納得するタイプじゃないか。でもさシェリー、復讐心なんて、早めに捨てなきゃ身を滅ぼすだけだよ。気持ちを共有しないと、周りの人達にも迷惑をかけるようになる。それに……
……復讐心が当たり前に心の中にあるようになってからじゃ手遅れなんだ……」
「?」
「ああ、見えたよ。グリモールド・プレイス十二番地だ」
閑静な住宅地の中に、その建物はあった。
そこには秘密の守り人という魔法がかけられており、『符丁』を知る魔法族の前にのみその姿を見せる屋敷だった。
そこにはシェリーと親しい人物が勢揃いしていた。ウィーズリー家にハーマイオニー、ムーディーやキングズリーといった闇祓いの面々。それとなんか割と馴染んでるシリウスにルーピン。
「ここは私の実家でね」
「私は家賃が払えなくなったので居候させてもらってるんだ」
「大変だね……」
いや本当に。
大人って大変ダナー、と思っていると、二階からシェリーの見知った人物が降りてきた。
「ベガ?ドラコ、コルダ!?」
「よう」
「なんだいたのか、来るのが分かっていたら出迎えたのに」
「久しぶり……でもないですね、ポッター」
シェリーは混乱した。
ベガはまあ分かるが、ドラコとコルダはかのルシウス・マルフォイの子供達。敵の子息なのである。何故ここで普通に暮らしている……?
「それは……私が、闇の帝王を裏切ったからだ」
「!!ルシウス・マルフォイ…!!」
「ああ、君の怒りはもっともだ。私はあの場にいながら何もしなかった男だ……君に恨まれても仕方のない人間だ。だが、今の私はこちら側の人間だ、それだけは保証する」
「色々と思うところはあるが、事実だ。あの後すぐにダンブルドアのところにやって来て仲間に加えてほしいと頼んだそうだ」
「信用されないのは分かっている、せめて行動でそれを得るつもりだ」
しょぼくれながらもきっぱりと言う男を見て、シェリーもルシウスへの殺気を押し留めることにした。思い返せば、彼はあそこで攻撃してこなかった。
「まあ、他にも今の魔法界の情勢とか、裁判のこととか、色々と話すべきことは山積みとはいえ、飯を食わなければ始まらん。まずは腹ごしらえといこうじゃないか」
久しぶりに出されたまともな食事を見て、胃袋は空腹を訴え、シェリーは食事に齧り付くのだった。
「……………これって………」
「?ご飯。美味しくなかった?」
「!ううん、モリーおばさんのご飯が美味しくないわけないよ」
シェリーは束の間の幸せを享受する。
それが彼女に与えられた最後の心休まるひと時とも知らずに。
絶望までのカウントダウンは、もう始まっている。
彼女が戻れなくなる日まで、あと少し。
ドロホフって何した人だっけ…という人のために説明をば。
モリーの親戚ぶっ殺したりルーピン殺してたりするやべー奴です。
あと別時空でオスカー君って息子がいます。
愉快なおじさんキャラになってるけど原作の死喰い人って一部を除いてキャラ薄いしこういう性格変化も大事なことなんだよきっと…。