シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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前回の話をちょっと加筆してます。
元々分けて保存してあった話なんですけど、投稿の際に入れるのを忘れてしまってました。
お手数ですが先にそっち読んでもらえるとより楽しんで貰えると思います。


3. kha:S'os

 ホグズミード休暇が解禁され、生徒達が思い思いに楽しむ中、村の喧騒から離れたパブに赴く人影があった。

 コーマック・マクラーゲン。またの名をクラゲ野郎。

 三本の箒が満席だったのでたまには他のところに行ってみるか!と辺りを散策して隠れ家的スポットとして密かに人気なホッグズ・ヘッドへ来ていたのだった。

 店に入ると、無愛想なマスターがグラスを拭いている他は客が一人来ているだけのようだ。しかも何の因果か、ホグワーツの生徒ではないか?

 

「やあやあそこに座ってる君、そう君のことさ無視するなハハハ照れ隠しか?僕に会えた幸運を幸せに思うといい。君は確か……えーと……誰だったかな?」

「うろ覚えなのに話しかけてくるなよ……ザカリアスだザカリアス。ハッフルパフでチェイサーやってる」

「ああ、あの地味な!」

「うっさいわ失礼だな」

 

 あからさまに嫌な顔をするザカリアス。

 DAに所属しているハッフルパフ生で、事あるごとにロン達と衝突していた嫌味な生徒、それがザカリアス・スミスである。

 

「いったいこんなところで何を一人寂しく呑んだくれてるんだ?」

「君には関係ないだろ」

「分かった、当ててやろう!ふむ……確かこの間、クィディッチの実況やってただろう?あれで落ち込んでるのか?まあ確かに大して面白くもないごく普通のありふれた実況だったけど、まあ素人にしては及第点じゃないかと思うけどね」

「失礼すぎて笑えてきたわ。別にそんなことで悩んでるわけじゃない、ただちょっと顔を合わせ辛い連中がいるってだけだ」

「顔を合わせ辛い……そうか、確かDAとか何とか呼ばれてる連中のことだろ?」

「何で妙なとこ鋭いんだよ」

 

 あれだけ大口を叩いておいて、いざという時に役に立たなかった男。そういう後ろめたさが彼にはあった。

 

「まあ、そうさ。僕は一時は下級生と一緒に逃げ出した。でもそこで逃げるのは恥ずかしいと思って戦場に戻ってきた。

 ……だけど結局、何もできなかった」

 

 ゴトリ。

 俯くザカリアスの眼前に瓶が置かれた。

 顔を上げると、バーのマスターが髭を弄りながら諭すような目をしていた。

 

「……所詮はジジイの戯言だがよ。別にそれで良いんじゃねえのか、ホグワーツの兄ちゃんよ。俺も昔は魔法大戦なんてくだらねえモンに駆り出されたクチでよ、いつもは大口叩いてるくせにいざ戦場に出れば腰が引けるような腑抜けはごまんといたぜ。

 そんな連中に比べりゃあ、弱え自分を恥じてるだけ遥かに上等だと思うがね。それすらできねえ大人がこの世にはいんだよ」

「まったく信じられないな、敵を前にしながら怯えるなんて!」

(この小僧はある意味大物だな……)

「──あんたは、あいつらを見てないからそんなことが言えるんだ!僕と変わらない歳のくせに、臆さず立ち向かっていけるような連中を見てないから……!」

「…………」

 

 もはや隠しようもない感情を吐露するザカリアス。彼が戦線を経てロン達に抱いていたものは、憧憬にも近いものだった。

 

「敵の本丸を倒したのはロンだ。皆んなを鼓舞し続けたのはネビル。冷静に状況を判断したのはハーマイオニーだし、ウィーズリーの双子は下級生達を守ってた。ジニーは一番敵を倒してた。コルダなんか身体を引き摺ってまで戦って……」

「…………」

「それに……それに、もっといる。チョウにルーナ、いや、DAメンバーの全員が城を守るために全力だった。僕はその誰よりも劣っていたんだ。挙句、他所から来た人間に助けられる始末さ」

 

 ザカリアスの成長は悩みを生んだ。

 彼は決して劣等生ではないし、以前までと比べると一皮剥けたと言っていい。だが自分が目にしたロン達は……到底同年代とは思えぬ程に勇敢だった。

 

「あんだけ追い詰められて僕はまだ勇気が足りてなかったんだっ!僕ができることなんて限られてるのに、与えられた中で最大限の働きをしようとしなかった!この命に換えても戦うべきだったのに……!!」

「──このバカガキがっ!!」

 

 それまで静かに話を聞いていたマスターは、一変して張り裂けるような声を出す。

 

「生意気抜かすな小僧!自分の分も弁えねえで命だなんだほざくな!お前みたいな鼻垂れが英雄気取ったところで何も変わりはしねえんだ!命を賭けて戦うことだけが勇気じゃないと分からねえのかっ!!」

 

 まさかこの人物にこのようなことを言われるなどと思っていなかった。虚を突かれたザカリアスとクラゲは押し黙り、しん、という静寂だけが残った。

 

「チッ……俺としたことが柄にもねえこと言っちまった。ま、なんだ。若い頃、色々あって兄貴と大喧嘩したことがあんだよ。自分の夢の実現のために家族をほっぽって世界中を巡る旅に出るとほざきやがる。俺は正義だの信念だのに興味はねえが、病気の妹を放ってどこかに行く兄貴のことがどうしても許せなかった。

 衝突はとうとう魔法の殺し合いにまで発展して、結果……戦いに巻き込まれた妹だけが死んじまった。そこでようやく戦いは終わったってわけよ」

「!……、……すみません、事情も知らずに失礼なことを……」

「いい。だが覚えとけ。お前の目がその時の兄貴によーく似てるんだよ。自分の正義だけが正しいと疑ってない目だ。危ない兆候だぜ、それ。信念を貫き通すのはかっこいいことだが、それだけに囚われんな。でねえと大事なもんまでおっ死んじまう」

 

「勇気を時には負けを認めるのも勇気よ。その上で仲間のために何ができるか考えたらいいじゃねえか。お前達はそういうことができる資質があんだぜ」

「──あ、ありがとう」

「あの……名前を伺っても?」

「人に名乗るような名前はねえが、よしみの人間はアバさんって呼んでる」

 

──アバさん。

 それがこの店で彼を呼ぶ時の名前。

 

 そしてまたの名を、アバーフォース・ダンブルドアという。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 死喰い人達が潜んでいるアジトにて、ヴォルデモートは退屈そうな声を上げた。

 

「暇だ。暇で仕方がない。おいペティグリュー、何かないのか」

「そ、そう申されましても……もう物真似も一発芸のネタが尽きてきましたし……」

「廊下に立ってろ」

「ヒィェエエエエ……ブラック企業……」

「俺様は闇の帝王だぞ?企業体系も真っ黒に決まってるだろ。なあおいオスカー、何か面白いネタねえの?」

 

 暇だったので気怠げにその辺の幹部に声をかけた。

 近くにグリンデルバルドもいたが奴には何も期待していない。あいつは自分さえ楽しければどうでもいいタイプだ。

 

「今日は一人でどこかに行っていたようだが?なあおい教えろよ、何してたんだよ」

「ああ、新聞社に行っていた。情報操作するついでに、嫌がらせをな」

「ほう?それで、適当な人間を一人二人ほど虐めてたってわけか?」

「いや……新聞社の中でも信頼のある記者を捕まえて、家族を人質に取ってある記事を書かせたのさ。業界ではそれなりに影響力もあるのでまだまだ使い潰すつもりだ。スキーターもいないしな……ま、青田買い、先行投資ってやつさ」

「……また悪いこと考えてるな?」

「ああ」

 

 自分の嫌いな奴が痛い目に遭うとスカッとすることはないだろうか。そしてどうせなら、その場面を直接見てみたかったと思わないだろうか。

 オスカーもそうだ。彼は別に嫌いな相手などいないが、人が苦しむなら人づてではなく直接見てみないと面白くない。いくら実際に人が苦しんでいるとはいえ、想像するだけでは愉しくないのだ。

 なので今回、オスカーが行った行動はただの徒労でしかなく、彼が求める快楽はまだ得られていない。

 

「──だがまあ、いずれあの兄妹と相対する時、私は怨嗟と復讐に塗れた目を見られるのだ。その瞬間が楽しみだ──」

 

 今は快楽を味わえなくとも、こうして悪虐を重ねていけば恨みを買っていずれ誰かが殺しにやってくる。その時の必死こいた顔が見たい。復讐を成し遂げられなかった時のかんばせが見たいのだ。

 オスカーは種を蒔いた。

 復讐の種を。

 彼が己の悪に目覚めてからもう十五年は経っているのだ。杖もナイフも使わずに、一つの情報だけで人を苦しませる術があると知っているのだ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ふぁあ。今日は起きるのが遅くなってしまいました……いけませんね、名門たるマルフォイ家の淑女がこんなことでは」

 

 寝ぼけ眼でコルダは廊下を歩く。

 満月が近いせいか、ここのところ生活リズムが崩れ気味だ。しっかりしなければ。

 さて、朝食を食べようと食堂に入った途端に視線が突き刺さった。

 

「──……?」

 

 恐怖や興味がないまぜになった視線。

 マルフォイ家の令嬢として注目されることは多々あったが、この手の視線は始めてだった。何か──いつ爆発するか分からない爆弾を見ているような。

 

「ちょ、ちょっとあんた、これ──」

「?どうしたんですパンジーさん」

「……、これ……あんた、これ、書いてあること、本当なの?……嘘よね?」

 

 最近仲良くなったパンジー・パーキーソンから新聞を手渡される。

 一体何事だと、目を通すと──

 そこには──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新聞には、こう書かれてあった。

 

『名門貴族か?それとも野蛮な獣か?』

『純血の一族に隠された闇』

『マルフォイ家の令嬢は狼人間だった!?』

 

 

 

 

 




ハリポタ世界は他種族への差別思想を持ってる人が多くて、そのせいでハグリッドとかルーピンとかが苦労してましたけど、反対にフリットウィック先生みたいに皆んなから慕われる人もいるんですよね。あの人を明確に馬鹿にしたのってアンブリッジくらいです。
タマモも自分が半妖だということで迷惑はかけたくないと言っていたのですが、ハグリッドとかフリットウィック先生の後押しでホグワーツに来たという裏話があります。
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