シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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9.あなたの望みは何ですか?

「怪しいわ」

ハーマイオニーは言った。

「スネイプが、怪しいわ」

そんな彼女に、どうしたの?とシェリー達は目で聞いた。

 

「絶対怪しいわ!私達、見たもの!スネイプが、シェリーを凝視して何かブツブツ言っているのを!」

「?そんなこと日常茶飯事だろ」

「違うの、何か魔法を使っていたのよ。箒に魔法をかけられるだけの実力があって、シェリーに何か恨みがあって、状況証拠も揃ってる。どう考えても、彼が呪いを使ったのは間違いないのよ!」

「俺もあいつは好かんが、あれでもホグワーツの教師だ。何でそんなことをしなきゃならねえ?」

「それは……分からないけど!でも、ええ、彼が怪しいのは確かよ!」

きっかけは、シェリーの発言。

 

クィディッチの初陣を祝おうとのことで、ハグリッドの小屋に招かれ、試合に関してあれやこれやと感想を言い合い、シェリーが

「そういえば箒のコントロールが利かなくなったのはどうしてだろう」とポツリと漏らした一言。それがハーマイオニーの導火線に火を着けた!

 

「変なのよ、色々と。ハロウィーンの件にしたってそう。ホグワーツにトロールが侵入するだなんて、普通ありえないでしょう?きっと誰かが手引きしたのよ」

「うーん……トロールを連れてきてまでやりたい事って何だろうな」

「特定の誰かを狙ったとは考えにくいしね。じゃあ……トロールに気を取られている間に、何かやりたかった事があるとか」

「やりたかった事?」

「うー…ん……強盗とか……」

「まぁ、それなら賢者の石が狙いだろうな。うん」

「賢者の……え?何?ハグリッド」

「……!!お、俺はもう何も言わんぞ!お前さんらを危険な目にあわせっちまう訳にはいかねえ!」

ハグリッドの口から、聞き慣れない単語が飛び出した。賢者の石?聞いても、口を結んで答えてくれない。

 

「じゃあ、僕達で話してるよ。どこかの誰かがトロールをホグワーツにけしかけた。その理由は、あー、その、賢者の石?だかなんだかを手に入れるため」

「たしか本で読んだわ。二コラス・フラメルが作ったとされる、黄金と、永遠の命の水を生成することができるという代物」

「そんなものがホグワーツで守られていたなんて……。泥棒さんが欲しがるっていうのも、納得」

「おったまげーな石だもんな、あぁ」

「そ、そんな石があるわけなかろう!俺はダンブルドアの命令で取りに行ったりしちょらんぞ!」

「取りに行ったんだね……」

何も言わなきゃいいのに……。

 

「…………あっ。ハグリッド、私達がグリンゴッツに行った時、何か小さな包みを取っていたけど……それってもしかして」

「!!違う、違うぞ!断じてあれは賢者の石じゃない!普通の石だ!」

「………だってさ。それで、ホグワーツのどこにあるってんだい?女子トイレの中じゃなさそうだけどさ」

「もしかして、四階の廊下、三頭犬の足元にあった仕掛け扉の下に……」

「!!?あ、あれはあれだ……あれだ!」

「どれなのさ」

仕掛け扉の中にあるのは確定した。

 

「ベガからも、変な話を聞いたわ」

「変な話?」

「ハロウィーンの日、スネイプがベガを医務室に連れて行ったでしょう?その時にマダム・ポンフリーから『傷ができてるならすぐ来なさい!』って怒られてたらしいの。どこで怪我したのかしらって思ってたけど……」

「うーん、トロールと戦ってできた傷じゃないし、生徒にやられたものでもないよね、多分。となると……」

「……三頭犬……?」

「?何でフラッフィーの事を知っとるんだ」

「……フラッフィーって言うんだね」

ご丁寧に、名前まで。

もはや校長との約束を守る気がさらさら無いんじゃないかというくらい、ボロボロ情報が溢れてしまっている。

 

「じゃあ、トロールを手引きしたのは、十中八九スネイプってわけだ」

「トロールが暴れている間に、廊下に忍び込もうとしたのね。失敗したようだけど……」

「……まとめると。スネイプ先生が賢者の石を狙ってて、その石は四階の廊下の隠し扉の下にあって、厳重に守られてる。その、フラッフィーちゃんに」

「厳重かどうかは分からないけどね。ハグリッドが色々教えてくれたし」

「あぁ、俺はなんちゅうことを!口を滑らしおってからに!」

「もはや自分から滑らせていたわよ」

 

語るに落ちるとはこの事である。

だが、ハグリッドは賢者の石についてはほぼほぼ肯定していたが、スネイプが石を狙っている疑惑に関しては真っ向から否定した。あいつが賢者の石を狙うなんて、何かの間違いだ、と。

 

「あいつは……まあ……昔色々あったが……うん、ダンブルドア先生が信用しとる。それだけで十分だ。そうだろうが?」

「でも!ハグリッド……」

「ほれ、ほれ!冬休みはもうすぐだろう?お前さんらは家に帰るのか?俺は、クリスマスで大事な役目があってなぁ」

「あ!モミの木を運ぶんだよね、たしか!」

「おう。クリスマスツリーを飾らんといかんからな」

これ以上の情報が引き出せそうにない事もあって、そこからはホグワーツのクリスマスの話題になった。

 

双子が新たな悪戯の企みをしていたりとか、ベガがまた新しい彼女を作ったりとか、ダンブルドアがサンタクロースのコスプレをするともっぱらの噂だとか。(似合いそうで困る)

ハーマイオニーは家に帰ってしまうので、クリスマス休暇はロンと過ごす。両親が末っ子のジニーを連れて長男のビルの所へと行くので、自動的にパーシー・双子・ロンはホグワーツに残る事になるのだ。

 

「お土産話、いっぱい用意するから!」

彼女にとって友達と言える存在はシェリー達が初めてだったので、彼女達と離れるのはとても寂しいものだったのだろう、駅で何度もハグを見舞われた。

 

「クリスマスかぁ」

シェリーとしては、その日に何か思い入れがあるわけでもなかった。

ただ、普段お世辞にも勉強が得意とは言えないダドリーが凄まじい計算能力と記憶力を発揮して、去年よりいくら増えたか?とプレゼントの量に一喜一憂しする日でしかない。

 

いや、そういえば、その日の夕食は美味しいものにありつけた。普段はみずぼらしい食事ばかりだったが、チキンの骨、余ったケーキに、ピザの残り物といった豪華な残飯を味わうことができるのだ。

大食漢が二人いるダーズリー家でも食べきれなかったものを、洗い物をしている最中にパクついていた日常をベッドの中で思い出し……

 

「さむぃ……」

ベッドの中まで忍び込んできた冷気で目を覚ました。窓にはしんしんと降り積もる雪。ホワイト・クリスマスだ。

二度寝したい欲求を堪えつつ、うーんと背伸びをすると、ロンの待つ談話室まで歩く。案の定、彼はクリスマスツリーの前で箱を開けている真っ最中だった。

 

「ロン、メリークリスマス」

「シェリー!メリークリスマス!君の分もプレゼント来てるよ!」

「えっ?」

プレゼントを貰うなんてのは、そういえばハグリッド以来だった。なんだか涙が出そうになるのを堪えて、夢中で箱を開ける。

黄金のスニッチが胸に施された、真紅のセーター。ロンのお母さんのお手製らしい。駅でうすうす感じてはいたが、あの人はとても親切な人だ。

 

「僕のは……あぁ、また栗色だ。他の色がいいって毎年言ってるのに」

「ハーマイオニーの髪みたいだね」

「!?な、なんでそこでハーマイオニーが、それは、マ、マーリンの髭だよ!あんまり好きじゃないよ、この色!」

そうは言いつつ、そのセーターを貰って満更でもなさそうだ。

「私も、着てみるね!」

「!?!?だから君はまた、もう!」

 

シェリーはロンの前だろうとお構いなしにパジャマを脱ぎ出した。(これで二回目)ホグワーツで多少は成長したが、こういった異性に無頓着な所は相変わらずである。

「どうかな?ロン」

「う、うん。あー、すごく似合ってる」

「ありがとう!」

なんだか髪と同じくらいの赤い顔になったロンに、モリーおばさんからの手紙を渡される。フレッドとジョージがすごいシーカーだと騒いでいたことや、パーシーが勉強熱心な生徒だがムラがあると愚痴をこぼしていたことなど。(彼には宿題を見てもらっている)

シェリーにはそれがとても嬉しかった。

 

ハグリッドからは、色とりどりのラズベリーがふんだんに使われた大量のロックケーキと、手作りらしき木彫りの笛。

無骨ではあるがとても優しい音のする、彼らしい贈り物だ。ロックケーキは……ひとまず保留。

ロックケーキと言えば、ハーマイオニーからお菓子の詰め合わせが届いている。マグル界のものと魔法界のものが半々だ。それと、『癖毛矯正クリーム』と『ふんわり香水櫛』などのお手入れセット。女の子らしく身嗜みを整えろ、という事らしい。

 

驚くなかれ、なんとダーズリー家からも届いている。『メリークリスマス。バーノンおじさんより』と殴り書きされたクリスマスカードの裏に、小銭を一枚、セロテープに貼り付けたという簡素なものだった。これにはロンも目が点をするしかない。

「やばいね、君のおじさん。これならもう贈らない方がマシだろ」

バーノンはこういう行事ごとはしっかりするタイプなのだ。後でプレゼントを贈っていないと非難されるのを防ぐために。

 

そして……最後のプレゼントは、マクゴナガルからだ。

『呪文学のすすめ』。呪文学の授業で(ハーマイオニーには一歩劣るものの)優秀な成績を修めているシェリーにとってこのプレゼントは嬉しかった。お前は馬鹿なのだから、これを使ってもっと勉強しろ、という事ではないだろう。

 

「おったまげー、まさかマクゴナガルがプレゼントくれるなんてね。君、そんなに熱心に授業受けてたのかい?」

「ハーマイオニーほどじゃ……あ、そういえば魔法界について色々教えてくれたのはハグリッドとマクゴナガル先生だったなあ……」

魔法の存在を初めて知った日の事を思い出す。あれも、今となっては懐かしい。

 

どうやら双子の悪戯のレパートリーは底無しのようで、クリスマスでも変わらず周りを楽しませていた。七面鳥に舌鼓を打っていると、彼等から雪合戦に誘われる。ここではシーカーの経験が活きて、何度か雪玉のスーパーキャッチを決めた。

「GO!GO!GRYFFINDOR!!」

しかし当てられる訳ではなく、へろへろの雪玉は躱されっぱなしだった。

 

あまりの寒さに談話室まで戻れば、ロンとチェスを夜遅くまで打つ。彼のチェス捌きは本物で、どれだけ先を考えてもその十手以上先を読まれているようだった。……チェスが良いからといって、成績が上がるわけではないようだ。

ハーマイオニーにオススメされた図書室の本をランタンの灯りで読み進めていく。時にはページを開いたまま眠ってしまう事もあった。何かに夢中になるのも、初めての経験だった。

 

クリスマス休暇のある日。

「シェリー、お茶でもどうです」

「え?………え?」

まさかマクゴナガルの口からそんな言葉が出るとは。彼女はそういう事を言うタイプの人間ではないと思ったが。

プレゼントを貰ったお返しをしたいと思っていたので、シェリーにとっても好都合だ。是非!と誘いに乗る事にした。

 

「マクゴナガル先生、失礼します」

そう言って彼女の研究室に入ると、マクゴナガルの姿はなく、何故か月光のような髪をした少年ーーベガの姿があった。何故?

 

「テメーも呼ばれたのか、シェリー」

「貴方もお茶に誘われたの?」

「まあな。女からの誘いは基本断らねえ。マクゴナガルだが……、双子の悪戯が随分派手でな。そっちの対処に行ってるぞ」

「そうなの?」

「………まぁ、その悪戯には俺もちょいと手を貸したからな……」

 

バツが悪そうに言うベガ。

一年生きっての悪童が手を貸せば、いったいどれほどの凶悪な物が出来上がるのか、正直興味はあった。

ベガとこうして話すのは、トロール以来だ。

 

「……まだちゃんと言えてなかったけど、改めて、ベガ、ありがとう。あなたのお陰でトロールを……」

「うるせえな、その話はヤメロ。別に感謝されたくてやった訳でもなし、あげく醜態晒しちまって黒歴史なんだよ」

「あ、うん。ごめんね」

 

これ以上穿り返すのもどうかと思ったので、話題を変える事にする。……そういえば、ベガとの共通の話題はほとんどない気がする。

(あんまりベガと喋らないからなあ……何か話題ないかなあ……?あっ!)

近々で、共通するイベントがあった。

 

「クリスマスプレゼント、どうだった?」

「殆どが碌なもんじゃなかったな。女どもが愛の妙薬入りの手作りクッキーだのなんだのを贈ってきた。情熱的だろ?」

「あはは……」

「後はネビルとかの男友達と、親戚連中からだな。親がワインとか売ってて顔が広いから色んな所から貰うんだよ」

 

ワイン!

なんだかカッコいい響きだ。ベガの家はワインの製造をしているのか!

そういえば、シェリーはホグワーツ以外のベガの事をほとんど知らない。ベガの家族はどんな人なのだろう?

 

「そういえば、前にマグルの家で育てられたって言ってたよね?でも、レストレンジって魔法界でも有数の名家って聞くし……どういう事?」

「俺はレストレンジ家の生まれだが、赤ん坊の時にマグル界のガンメタル家ってとこに預けられたんだよ。当時、全盛期だった例のあの人のゴタゴタに巻き込みたくなかったんだと」

「……あー、何だか複雑なお家事情?」

「気にする事ねえよ、お前も似たような物なんだろ?」

 

知っていたのか。

自分は思った以上に有名らしい。

「……にしても、お前。さっきから髪が変な方向にいつ向かってはねてるぞ」

「えっ?えーと、これはハーマイオニーに髪のお手入れの道具を貰って、自分でやってみたんだけど……」

「下手くそめ……、ちょっとこっち来い」

「ベ、ベガ?」

「しわくちゃでも女の部屋だ、鏡の一つくらい置いてあんだろ」

 

シェリーの手を取って奥の方にずんずんと進むと、あった。頭から足元まですっぽり入りそうな大きな鏡。

……なるほど、たしかに変な髪だ。こんな格好でマクゴナガルに会うのは失礼かもしれない。「淑女たるものもっと身嗜みに気をつけなさい!」とか言ってくるかも。

「あいつに出会い頭で説教かまされても何だしな。軽く整えるくらいは………、」

「?ベガ…………、えっ?」

 

鏡には、ベガは写っていなかった。

人影が三つある。

自分と、見知らぬ男女が二人。

綺麗な赤毛の女性は、まるで大きくなった自分そのものではないか。

くしゃくしゃの黒髪の男性の眼は、自分と同じハシバミ色だ。

口元が震えた。

まさか、そんなはずはない、と。

頭は覚えていなかったが、魂が覚えていた。

「もしかして………ママなの……?」

女性は、にっこりと微笑んだ。

「隣にいるのは………パパ…………?」

男性は、悪戯っぽく笑った。

 

後ろを振り向いても、誰もいない。

鏡の中だけにいるのだ。シェリーはそれから目を離せなかった。

赤毛の女の子は、幸せそうだった。

両親の手を引いて、天真爛漫に笑っていた。

「ベガ、すごい、すごいよ……この鏡!この人達、私の……パパと、ママだ!二人がここに……、ベガ?」

「………シド…………?」

ベガの瞳には、何か別の物が写っているように思えた。

 

そこで、気がついた。

鏡には文字が書かれてある。

『Erised stra ehru oyt ube cafru oyt on wohsi (すつうを みぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はしたわ)』

「私の、のぞみ……?」

それがこれだと言うのか?

私は、こんな事を望んでいたというのか?

鏡の中を、もう一度覗いて……

 

『パパ、ママ、だいすき!』

……彼女は、鏡の中に吸い込まれた。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

どこかの村で遊んでいた。

長閑なところだ。大人達はのんびりとお茶を飲んでくつろぎ、子供達は草原を駆け回る。

それはシェリーも例外ではなかった。

赤毛ののっぽの男の子と、栗色の髪をした女の子。二人と追いかけっこをして、笑って、時折転んで、それでも笑った。

 

「シェリー、晩ご飯の時間だよ」

「はーい!ロン、ハーマイオニー、また明日ね!」

「「ばいばーい!」」

夕暮れ時になれば、親が迎えに来てくれて。

親戚の優しい大人達と、お母さんが作ってくれた美味しい料理を一緒に食べる。

 

「シェリーはもう幾つになる?」

「7歳!」

「そうかあ、よく言えたな、偉いぞ!叔父さんがプレゼントをやろう!」

「シリウス、毎回プレゼントを用意してくれるのはありがたいんだがね、最近置き場所に困ってるんだよ。クリスマスと誕生日の時だけで十分」

「何を言う!こんなに可愛い子に、何も渡さず帰れというのか?ジェームズ!」

「この駄犬には何を言ったって無駄だよ。一切聞き入れやしないんだから」

「プレイボーイが形無しだね、シリウス」

「黙れ!ムーニー、ワームテール!私はこの子の後見人としての責務を全うしているだけだ!」

「週一でこの子に会いに来る事がかしら?最初は嬉しかったけどね、ええ、その度にシェリーの身長がいくつ伸びたかなんて聞かれたら、たまったもんじゃないわよ!」

『HAHAHAHA!』

 

鳶色の髪の男と小柄な男は、黒髪のイケメンをケラケラと笑った。

赤毛の女性はやれやれとため息をついたが、その顔は柔らかいものだった。

 

「君は本当に親馬鹿というか、後見人馬鹿だな。まるであいつのようだ」

「あの陰険蛇野郎と一緒にするな!」

「彼は来るのかい?魔法薬の学会に参加しているんだろう?」

「『もしも気が向けばそちらに足を運ぶ事も無きにしもあらず、ですかな』……だって」

「ああ、それじゃあ来るね。確実に」

「素直じゃないなあ、相変わらず」

 

大人達の会話は、何を話しているのかよく分からない。だけど皆んな表情は穏やかで、そこには確かな幸せがあった。

 

だからこそ、かもしれない。

気づいた。気づいてしまった。

 

「シェリー?どうした、早く食べないと冷めてしまうぞ?」

「嘘だ」

 

この鏡に写っているものは、全て幻だ。

自分が、こんなに幸せになっていい筈がないから。幸せな光景すべてが嘘だ。

きっと、心の底でこの幸せを求めていたとしても、絶対に叶う事はないと断言できる。

 

「どうしたの?シェリー。どこか具合でも悪いの?」

「ママも、パパも、私のせいで死んだから」

 

自分の両親がどんな人かは知らない。どんな風に死んだのかなんて分からない。

だけど、ハグリッドもマクゴナガルも、ジェームズとリリーは素晴らしい人間だったと言って譲らない。

なら、私はその二人の足枷となったのだ。

二人が死に、私が生き延びているという事は、最後に私が狙われたという事。

おそらくだがーー私を護って、逃げていた。

私を見捨てれば、逃げられたかもしれないのに……二人はそれをしなかった。

 

「シェリー……」

「二人が死んだ原因の私が、こんな幸せを神様から貰える訳がない」

 

だから、嘘だ。

「ーーッ!?」

空間にヒビが入った。

ガラスが割れるかのように、鈍い音と共に辺り一面に亀裂が走っていく。空に、地面に、登場人物達に。

自分が見る限り、どこを見回しても亀裂が入ったところで。

 

世界が、一斉に砕けた。

色づいたガラスの空間は割れ、シェリーは暗い空間へと落ちていく。底のない暗闇を見て思わず目を瞑りーー

「ッ!?」

足裏の感覚で、いつのまにかーー普通に立っている事に気がついた。

おそるおそる目を開けてみる。マクゴナガルの部屋だ。どうやら、自分は鏡が創った異空間に飛ばされていたようだ。

 

「シェリー!大丈夫ですか、気を確かに!」

「えっ、あ……マクゴナガル先生?それに、ベガも……」

「ああ、無事か?シェリー」

「どこか、どこか痛みなどは!?ああ、あなた達がこの鏡の中に『入っている』のを見た時、心臓が止まるかと思いましたよ!」

 

鏡と聞いて、思いだした。

みぞの鏡……、何かしらの魔法がかけられており、その人の『のぞみ』を見せる道具。

珍しく半狂乱のマクゴナガルに何とか無事を伝えると、彼女はほっと一息ついた。厳格だがその実とても生徒想いなのだ。

 

「この鏡は多くの魔法使いを虜にしてきました。扱える魔法が強大であったり、家柄が良かったり。そんな魔法使いは精神的に未熟な者が多く、こういった物に惑わされやすい」

「……あのまま鏡に捕らわれたら、どうなるんですか」

「意識だけが向こうに飛び、帰ってこられなくなります。他の人間が解呪するまでは。解呪自体は簡単ですが、長い間鏡の中に捕らわれ続けると、そうなるのです。……望みを独り占めしようして、誰からも見つからない所でこれを使って、永遠に帰れなくなってしまった者もいます」

 

嘆かわしい事です、とマクゴナガルは言った。

「もっとも、貴方達は自分で『のぞみの世界』を見極めて、脱出したようですが。私の不注意で飛ばしてしまったとはいえ、実に喜ばしく思います」

「………いや……俺は……」

違う。

望みの世界だと、区別をつけたから出られたんじゃない。諦めたから出られたんだ。

自分にはその資格がないと思っていたから。

 

「私……私、両親と一緒にいる望みを見たんです。どこかで、楽しく過ごしていました。でも、私の両親はどこかで生きている訳でもなくって、死んでるんですよね。その人は消えて無くなっているわけだから……だから望みの世界を諦められたんです」

「…………」

 

死んだ人は、もういないのだ。

そう言うシェリーに、マクゴナガルは幾許が言葉を考えてーー

 

「シェリー、ベガも。よく聞いておきなさい。死んだ人は確かに消えて無くなってしまいます。ですが、その人が大切にしていた何かを、今生きている私達が護る事で……その人達の想いは受け継がれていきます」

「…………」

「そして、彼等が大切にしていたのは、貴方達自身です。貴方達は彼等を望みーーそして彼等が鏡に写った、これだけでよく分かりますよ。今でも、ええ、今この瞬間も、ずっと愛し続けている何よりの証拠なんですから」

「!」

「自分を愛しなさい。そして、彼等の想いを護りなさい。それが生きる者に課せられた義務なのですから」

 

マクゴナガルの言葉がじんわりと胸に沁みた。ただ空虚なだけだった心の穴は、何か温かいもので塞がれていった。

それは、ベガも同じようだった。

 

「……悪いな、先生よ」

「ええ。今日のお茶会はお開きにしましょうか、ぐっすりお眠りなさい」

「……ああ」

「一つ、聞いてもいいですか?先生」

「何です?」

「その……先生がこの鏡を見たら、何が写るんですか?」

「グリフィンドールの全員が満点を取り、クィディッチで優勝し、対抗杯を手に入れる姿ですかね。さ、もうお行きなさい」

 

誤魔化したのだろうが、強ち間違いでも無さそうだった。

その答えに、二人はクスリと笑った。




休日って事で、まあ初日はダラダラ過ごすかーと思ったら昼まで寝てしまって、その後二度寝して、5時まで寝てました。やばすぎるよ……。

透明マント没収です。後でちゃんと貰いますが、一年生の時点ではマントは使えません。縛りプレイ。
みぞの鏡がやばいトラップ筆頭になりました。
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