シェリー・ポッターと神に愛された少年【完結】   作:悠魔

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サブタイが思いつかない問題。


10.シェリー・ポッターと愚者の行進 Ⅰ

 見渡すばかり、岩ばかり。

 空は見えず、出口も目視できない、どこまで続いているかも分からないトンネルの中。真っ直ぐ歩いていたかと思えば、広い空間に出たりいくつも道が枝分かれしていたり……まさしく迷宮と呼ぶに相応しい空間。

 そんな場所に、シェリー達はいた。

 

「何処、ここ……」

「さあ……?」

「さあじゃなくて」

「ええまぁ、私も何度かここに来てますけれど、こんな殺風景な場所ではなかった筈ですけどねぇ」

 

 自信なさげにロックハートは言う。

 長距離移動用の移動鍵を使い、久方ぶりにイギリスの大地にやって来たはいいが、飛ばされた先は不死鳥の騎士団の支部とは到底思えないような迷宮の中だった。

 出口は見えず、だだっ広い殺風景な空間で、とてもではないが人が暮らしているようには思えない。

 移動鍵が故障してどこか別の場所に飛ばされてしまったのだろうか……?

 

(それならまだいい……問題はここが何処かも分からないことだ。位置呪文や磁場も狂っているから、今、迷宮のどの辺りにいるのかすら分からない……出口から遠ざかっているのか、近付いているのか……それともそんなもの存在しないのか)

「水と食糧が補充できないのはまずいね……マッピングも何処まで役に立つか」

「騎士団支部の近くにこんな大きな迷宮があるなんて話も聞いたことがありません。死喰い人の用意した罠なのか……なら、どうして私達に無反応なのか……」

 

 この問答も何度目だろう。けれど行く度も答えの出ない会話をしていたのは、何か話していないと気が狂いそうだったからだ。

 

(一番まずいのは、本当に移動鍵が故障していて、死喰い人も騎士団も関係ない何処かの迷宮に迷い込んでしまった、という可能性ですね。

 死喰い人の施設なら最悪彼等から情報を奪い取ることも可能ですが、それもないとなると……)

「……一旦休憩しましょう。このままずっと歩いていても埒が開かない」

 

 シェリーとしてはもう少し出口を探したいところではあったが、言われるままに腰を下ろす。ロックハートの言うことも尤もであると理解しているからだ。

 いざという時に体が動かない、では話にならない。

 水を飲み、互いに気になっていたことを共有する。

 

「この岩……見たことのない素材で出来てるよね。洞窟の中なのに灯りを点けなくても遠くまで見えるし、普通の岩よりも頑丈そう」

「私は今まで色々なところを旅してきましたが、こんな岩は知らない……おそらく錬金術の類で出来た岩石ではないでしょうか」

「……ってことは」

「ええ。推測するに、この迷宮は自然界に存在するものではなく、人工的に作られたものではないでしょうか」

「それは私も思ってた。……ただ、これだけの規模の迷宮だなんて、想像もしてなかったけれど……」

「この迷宮を作ったのはよほど腕の立つ魔法使いなのでしょうね」

 

 魔法学校対抗試合の最終戦を思い出す。あの時も今回と同様に迷宮を探索していたが、あの時と違うのは『出口がないかもしれない』ということ。

 もしも出口が塞がっていたとしたら、もしも侵入者を逃がさないための迷宮だったとしたら。そのような嫌な予感がついて回る。

 ごくり、恐怖に蓋をするように唾を飲み込んで──

 

──弾かれたように立ち上がる。

 

 冷やり、としか表現しようのない、殺気混じりの異様な冷気がシェリーの本能を刺激した。

 何か敵意のあるものがこちらへ迫って来ている──!

 

「伏せて──!オルガン・フリペンド!!」

「グレイシアス」

 

 冷気の発生源に向かって、フリペンドの連射。

 何がどの程度の速さで、どの程度の規模でやって来たのかが分からなかったため絨毯爆撃という手段を取ったが、それは正解だった。

 鈍い音と共に砕け散ったのは、氷だ。

 あと数瞬遅れれば通路全体が氷で覆われていたほどの制圧力……使い手はかなりの魔力量の持ち主だろう。

 と、いうよりも。

 この氷には、見覚えがある。

 

「コルダ……!?」

「…………!?貴方は…………」

「コルダ!私だよ、シェリー!」

 

 通路の先にいたのは、プラチナブロンドの髪を一房だけ三つ編みにした女。シェリーのよく知る彼女よりも数段美しさを増し、雰囲気も変わっていたけれども、共に死線を潜り抜けてきた友人を見紛う筈もない。

 一方のコルダも、しばらくぶりに再会した友人への動揺で、臨戦態勢を崩さないまでも杖先が震える。

 毅然な態度を保ちつつも、彼女もまた内心穏やかではいられなかった。

 

「その攻撃魔法のキレ……まさか本物?パンジーさんから送られてきた報告書の写真とも一致してるし……

 ……取り敢えず守護霊を出してください。それまでは杖を下ろすことはできません」

「あっ、うん。エクスペクト──」

「シェリー!左だ!!」

「ッ」

 

 ロックハートに言われるままに、その場から大きく飛んで攻撃を躱す。すると一瞬前まで彼女がいた場所に、雷が走った。

 新手が現れたのだ。

 予期せぬ乱入者に杖を構えると、またも、シェリーの見覚えのある魔法使いが現れる。

 

「あなたは……もしかしてネロとリラ!?ダームストラングの……」

「……、シェリーさん……?」

「待てリラ、軽々に近寄るナ」

 

 対抗試合の際に出会ったダームストラングの兄妹。

 父親のダンテがヴォルデモートと手を組んだという話を聞いてはいたが、ロックハートから聞いた話では、子供の彼等は騎士団の陣営に入ったのだとか。

 三竦み、意図せずして互いが互いを警戒し合うこう着状態が出来上がる。初手で攻撃してきたことと言い、コルダやネロ達にはどこか余裕がないように見えた。

 

「まずは全員、守護霊を見せてもらおうじゃねェの。コルダも念の為に頼む」

「分かりました」

「あっ、うん。エクス──」

「──待て!盾の呪文!!」

 

 またも乱入者。

 死角からの攻撃をいなして、ネロは攻撃の発生源を確認する。……その乱入者はコルダ達のような騎士団の人間ではない、まごうことなき『敵』だった。

 

「アントニン・ドロホフ……!!」

「クソ、長い間アズカバンにいたせいで鈍っちまってるなァ。不意打ちが失敗しちまうなんて何年振りだ?」

 

 彼がシェリー達が不在のホグワーツに攻め入ったことは知っている。その後は敗れて収監されたらしいが……まさか自由の身になっていようとは。

 しかし……騎士団の死喰い人が何故この迷宮の中に?という疑問が湧いてしまい、シェリーとロックハートの反応は遅れた。代わりに対応したのはコルダだ、得意の氷魔法を展開する。

 

「私が捕らえます!グレイシアス!!」

 

 壁や床などお構いなしに、目に入る範囲全てを氷結させていく。持ち前の身体能力でドロホフは逃げ回るも、搦手や心理戦で掻き回すタイプの彼にとって、こういうゴリ押しは実は非常に苦手なタイプの攻撃だ。

 そしてコルダもただ考えなしに凍らせているわけではない。相手の逃げ道を潰し、誘導するようにして凍らせているのだ。結果としてドロホフは壁へと追いやられ、動きを封じられてしまう。

 あまりの手応えのなさに違和感を覚えつつ、コルダはとどめの氷魔法を放とうとして──

 

「今だロックハート!!シェリーを狙え!!」

『────!?』

 

 無論、これはドロホフのハッタリだ。

 シェリーと共に行動し、ハリー討伐の際に粉骨砕身で戦っていたロックハートが今更裏切る筈もない。

 だが。コルダやネロ、リラの視点で見れば話は大きく変わってくる。

 彼等からしてみれば、この迷宮の中を探索していたらシェリーとロックハートに偶然出会った、という形になるのだ。彼等の身元も定かではないし、ポリジュース薬で化けている可能性もある。

 それに、どちらかが本物でどちらかが偽物、という可能性だって有り得るわけだ。依然彼等にとって警戒すべき対象であることは間違いない。

 

 だから、ほんの一瞬──彼等はロックハートの方に意識を割いてしまった。

 

「違う!!私は本物だ!!」

 

 ロックハートにそれを証明する手段も時間もない。

 というより、コルダ達に迷いを生じさせて隙を作らせた時点でドロホフの目論見は達成している。その一瞬さえ作ることができれば、彼はいくらでも殺しの手段を用意できるからだ。

 にやりと笑い、ドロホフは呪文を唱えようとして──

──第四の乱入者が現れる。

 

『グオオオオオオオオオオ!!!!!!』

 

 何者かの咆哮とともに地響きが生じ、バランスを崩してしまう。何が起きた?と確認する暇もなく、岩壁がせり上がり、まるで生き物のように躍動する。

 果てにその岩壁は、トロールの腕ほどもある太さの柱へと変化して、無差別に攻撃をするではないか。

 こうなってはもはや現場は大混乱だ。

 コルダ達の手前、妙な動きをするわけにもいかず沈黙していたシェリーとロックハートだが、魔法を使い岩の攻撃を掻い潜る。上下左右……この迷宮そのものが攻撃をしているかのようだ。

 コルダやドロホフ、ネロにリラも、突如として起こる迷宮の異常に対処せざるを得なかった。こうなっては警戒もクソもない、自分の身を守るための行動を取る。

 

(何が起こってるの……!?迷宮の防衛機能が働いてるんじゃない、明らかに人の手による操作!騎士団でも死喰い人でもない人が、私達に攻撃してる……!?)

『誰か……侵入者がいるな……!!一匹ずつ捻り潰してやる……!!』

 

 低い唸り声が再び聞こえる。誰かは分からないが、この迷宮の主はこちらに敵意を持っているらしい。

──やばい。対応し切れなくなってきた。

 質量の暴力に押し潰される。

 体力を温存しておきたかったが、仕方ない。

 ばちん、シェリーの血管に電流が流れたかのような衝撃が走り、次いで溢れんばかりの高揚感が生まれる。

 

「──紅い力、解放!!」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

「分断されちまっタ」

「分断されたね…」

「分断されましたね」

 

 シェリー、ネロ、コルダは荒い息を整える。

 あの後暫く質量攻撃をいなしていたが、ある時ぴたりと攻撃が止んだ。無理もない、人間がずっと息を止められないように、魔法使いはずっと魔力を込めてはいられないのだ。

 だが地形が変わったことで、ドロホフやリラ、ロックハートの姿を見失ってしまったのは痛手だ。特にドロホフが何をしてくるか……。

 ともあれ、ずっと反省していても二進も三進も行かないのも事実。守護霊や暗号を使って互いの素性を確認すると、周囲に警戒しつつ情報を整理する。

 リラやロックハートも心配だが、彼等はあれしきで死ぬような魔法使いではない。

 

「じゃあ、まあ……今の状況について簡単に説明しますね。ここには不死鳥の騎士団の支部があって、私達は貴方達の到着を待っていたんですが……間の悪いことに、支部にダンテが攻めてきたんですよ」

「ダンテって……ダンテ・ダームストラング?ネロ達のお父さんの……?」

「ああ。あいつは三年前のダームストラング城の決戦以降、行方知れずだったんだが……城くらいの大きさのある超巨大ゴーレムに搭乗して支部に攻撃したんだヨ。

 俺達は奴と戦ったんだが、支部ごとゴーレムの中に引き摺り込まれちまってナ」

「……!じゃあまさか、ここはそのゴーレムの体の中ってこと……!?」

「ああ。曲がりなりにも親父は魔法の腕だけなら闇の帝王にも匹敵する程だ。それくらいできたっておかしくはねェわナ」

 

 ここがゴーレムの中というのなら、移動鍵の謎にも説明がつく。本来ならば支部の中に飛ばされる予定だったのが、ゴーレムが支部ごと吸収してしまったので、シェリー達はゴーレムの中へと飛んでしまった……というわけだ。些か、スケールの大きな話だとは思うが。

 なんせシェリーが授業で学んだゴーレムとは、せいぜい人間と同じか、大きくてもトロール(3〜4メートル)くらいの大きさのものだ。城ほどの大きさのものを、それも個人で動かすなど想像の範囲外である。

 ホグワーツ城を魔法で動かすのと同じことだ。相応の超魔力でなければ不可能な荒技。

 

「で、俺達が収監していた死喰い人達も、その時の衝撃で解放されちまってナ。大抵はゴーレムに押し潰されたんだが、ドロホフは上手く逃げ出したみてぇだナ。

 ドロホフはただ暴れ回りたいだけダ、このゴーレムを脱出するまでの間の共闘も望めないだろうナ」

「……ダンテさんは何が目的なの?死喰い人を解放するために、わざわざこんな大きなゴーレムを……?」

 

 シェリーの疑問は最もだ。

 人間サイズのゴーレムを一つ二つ作る程度ならともかく、城ほどの大きさのゴーレムを操るとなれば如何に彼でも魔力の消耗が激しい筈だ。

 そこまでしてやろうとしたことが『死喰い人の解放』では、コストとリスクに比べてリターンが小さすぎる。

 

「元々ダンテは正規の死喰い人じゃなく、闇の帝王との協力者って立ち位置だったんだヨ。あくまで取引相手として互いに利用し合ってた……それがダームストラングの決戦でダンテがいなくなっちまったモンだから、闇の帝王側はダンテの資産を根刮ぎ奪ったんダ。

 しかしダンテは生きてて俺達の前に現れタ。奴の性格を鑑みるに、死喰い人も騎士団も気に入らねえモンは全部ぶっ潰してやるってつもりなんだと思う」

「……、全部?」

「全部サ。このゴーレムは周囲のモノを吸収しながら少しずつ進んでる。吸収する度にゴーレムは大きく、強くなっていく。魔法使いもマグルも関係なく、無差別に被害を撒き散らしながら街も村も全部呑み込んでいく。

 そして騎士団本部まで直進して……ドカン、ってとこじゃねーの」

「…………!!」

 

 提示された『最悪の未来』に、思わず歯噛みする。海沿いの支部だからまだ被害は抑えられているものの、そんなことが現実に起こればどうなるのか、想像すらつかない。

 

「それは──…」

「ああ、その通りダ。ダンテの野郎はタダじゃ済まさねーヨ。取り込まれた時の衝撃で支部にいた騎士団員も何人か死んでる。

──落とし前はつけさせる」

「…………、……うん」

 

 父親に対して昏い意志を燃やすネロに、シェリーは頷きを返すことしかできなかった。

 

「大抵こういうのって『核』を破壊すれば動作を停止するものだけど、このゴーレムにもそれはある?」

「ある。それが何処にあるかは分からねーが、ダンテが邪魔してくるだろう。俺達の役目はリラやロックハートを探しつつ、ダンテを倒すことダ」

「これだけの質量のものを操ってるんだから、それなりに魔力は喰われてる筈だし、勝算はゼロじゃないよね」

「ええ。それと、取り込まれる寸前に私の氷魔法でゴーレムの関節部と脚部を凍らせたので、少しくらいは足止めもできてるでしょう。時間との勝負です。速攻でダンテを倒しましょう」

 

 方針は固まった。

 倒すべき敵も定まった。

 相手はかのヴォルデモートにも匹敵するほどの強大な魔法使いだが……彼を倒せないようでは、ヴォルデモート打倒など夢のまた夢。

 決意を胸に、立ち上がる。

 

「……フー……さて……」

 

 

 

 

 

「じゃあ行くぜェ!!髭全部むしり取ってダンテの毛布を作ってバザーで売って売れ残ったのを見て悲しい気持ちを胸に抱いたまま俺達は大人になってやらァ!!」

「…………!?」

「ネロネロネロネロ!!!」

「気をつけて!ネロが錯乱の呪文をかけられた!」

「あ、放っておいて大丈夫です」

「!?」

 

 




とゆーわけでダンテ戦です!
そしてハリポタ舞台も近付いて盛り上がってきましたねえ!!
濁点まみれのハリーと会えるぜ!チケット取れるかなあ!!
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