青年の手を掴むのは誰?   作:寡黙なる詐欺師

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後悔だらけの過去 Strikers編

 

機動六課

はやてが、わざわざ呼んでくれた部隊だ

せっかく呼んでもらったのに、結局最後の大一番で入院中なんて笑えもしない

ホント、最悪だな。俺って…

 

 

機動六課に呼ばれた俺は、フォワードはキツイだろう、ということで隊長補佐。

その名の通り、隊長陣の補佐をするのがメインの仕事だ

 

…だがしかし、アイツらは責任感が無駄に強いので俺のする仕事は皆無と言っていいほどだった

なので俺はフォワードの訓練を見ることが多かった

 

そんな中、俺は一つの違和感を感じた

発信源はティアナだという事に気が付くのは、そう時間がかからなかった

なぜなら、俺はティアナが今感じている感情に近い感情を抱いていたからだ

自分の近くにいる人は皆、自分より優れている物を持っている

それ自体は当たり前の事だ

 

しかし。

 

一度、その感情が見えてしまうと泥沼のように抜け出せなくなる

すなわち、

 

 

――――――劣等感

 

 

ティアナが感じているのは、きっとこの感情だ

断言できる

明らか無理をしている自主練

それを止めないスバル

しかも、なのはは気が付いていない

たぶん、フォワードには地味な訓練の理由を話してないな

…仕方がない。

こういうのは、隊長補佐(俺)の仕事らしいからな

 

ハァ~世界は俺に恨みでもあるのかね~まったく、

 

 

 

自分の仕事を終えた後、俺はなのはの部屋まで来ていた

 

「オーイ、なのは~」

 

扉の前で呼びかける

流石に幼馴染だからといって、女性の部屋に無断で入る事なんてしない

そこら辺の常識は踏まえているつもりだ

 

「は~い。って、ゆっくん?どうしたの、こんな時間に?」

 

「いや、大したことじゃないんだが…一つだけ、言いたい事があってな」

 

「言いたいこと?」

 

首を傾げるなのは

「ああ…俺さ、フォワードの皆にはお前の教導の意味を教えてやった方がいいと思うんだ」

 

「教導の意味を…?」

 

絶対に言った方が良いと俺の第六感が伝えてくる

 

「…言わないと後悔するかもしれないから」

 

「?よくわからないけど、わかったの」

 

「…用事はそれだけだから、じゃあな」

 

「う、うん。また明日」

 

そう言って、俺はなのはの部屋から立ち去った

大丈夫‥だよな?

 

 

その気持ちは、見事に裏切られることになる

 

 

 

訓練所

なのはとスターズの模擬戦

起きてほしくなかった事件

…やっぱり、俺じゃあ止めることはできなかった

 

 

俺はライトニングの二人、そしてヴィータと一緒に来ていた

なにやら、ヴィータの様子がおかしい

 

「ヴィータ、どうしたんだ?具合でも悪いのか?」

 

「…いや、なにか嫌な予感がするんだ」

 

「嫌な予感?」

俺と一緒だ

なにか、妙な胸騒ぎがする

 

「アタシの気のせいなら良いんだがな」

心配そうに言うヴィータ

 

「…同感だ」

なにも起こってくれるなよ

 

「ヴィータ副隊長、裕さん!始まったみたいですよ」

 

「おっ、ホントだ。サンキュー、エリオ」

 

「いえ…あれ?フェイトさんだ」

 

「……あ、もう模擬戦始まっちゃってる?」

 

「フェイトさん……」

 

「私も手伝おうと思ってたんだけど……」

 

「今はスターズの番だ…」

 

「本当は、スターズの模擬戦も私が引き受けようと思ってたんだけどね……」

 

「あぁ…なのはも、ここんとこ訓練密度濃いからな……少し休ませねぇとな……」

 

「なのは、部屋に戻ってからもずっとモニターに向かいっぱなしなんだよ………訓練メニューを作ったり、ビデオでみんなの陣形をチェックしたり………」

 

「なのはさん、訓練中もいつも僕達のことを見ててくれるんですよね……」

 

「ほんとに……ずっと……」

 

…確かに、よく訓練メニューを考えていると思う

だけど、それだけじゃ伝わらない事もあるんじゃないか?

ティアナが抱えている劣等感は、もっと他の部分にあるんじゃないか?

それに気付くのが教導官なんじゃないのか?

……なのは

ティアナが、牽制用のクロスファイアを撃とうとしていた。

 

「クロスファイア……シュート」

 

「…………ん?、なんか、キレがよくねぇな……」

 

「コントロールは、いいみたいだけど……」

 

「!!」

 

「フェイクじゃない……本物!!」

 

『ディバインシューター』

放たれた魔力弾はスバルに向かっていくが、プロテクションで対応しそのまま向かっていった。

 

「うおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

スバルはディバインシューターをしのぐと、リボルバーナックルとなのはさんの展開したラウンドシールドと激突

 

するが……

 

「っ……きゃぁぁぁぁ!!」

なのはは激突のエネルギーを利用してスバルをはじき飛ばした。

なんとか維持されていたウイングロードの上に着地した。

 

「こら、スバル、ダメだよ。そんな危ない機動!!」

 

「すいません……でも、ちゃんと防ぎますから!!」

 

「ティアナは……?」

なのはの頬にレーダーポイントが付く

 

「砲撃!!……ティアナの奴が!!」

 

ヴィータ副隊長がティアナの行動に驚いているが、これもフェイクだ。

きっとコレの狙いは、なのはの意識をスバルから離すことだ。

スバルがなのはに突っ込んでいく

なのはもラウンドシールドで防ぐが、今度ははじき返すことは出来ず、砲撃体制に入っていたティアの方へ視線を向けた。

 

しかし

 

「!!」

 

「あっちのティアさんは幻影……」

 

「本物は?」

 

ティアナはその間にクロスミラージュのトリガーを引き、カートリッジをロードさせ魔力刃を作り、ウイングロードを駆け上っていく。

ウイングロードから飛び、魔力刃をなのはに向ける

 

「っ、けぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

魔力刃はなのはに迫っていったが……

 

「…………レイジングハート、モードリリース……」

ボソっとつぶやいた瞬間………爆発が起き、衝撃がこっちまできた。

 

「なのは!!」

どうなったんだ?

 

「……おかしいなぁ……二人とも、どうしちゃったのかな…………」

ティアナの魔力刃も、スバルのリボルバーナックルも、なのはさんが直接受け止めていた。

頭上から一撃を加えたティアはその場に留まり、桃色の魔力光に包まれている。

おそらくはなのはさんが、浮遊の効果をティアナに与えているのだろう。

だが、なのはをよく見ると感情の色が完全に抜けていた。

 

「がんばってるのはわかるけど……模擬戦はケンカじゃないんだよ……」

その言葉にスバルはハッとし身動きが取れなくなる

 

「……練習の時だけ言うこと聞いてるフリで、本番でこんな危険なムチャするんなら……練習の意味、ないじゃない……」

次の言葉でティアが息を呑んだ……

 

「……ちゃんとさ、練習どおりやろうよ……」

二人は戦意は消失しかけているが、さらになのはは言葉を続ける

 

「ねぇ………」

 

「あ……あああ……」

 

「わたしの言ってること……」

 

「わたしの訓練………そんなに間違ってる…………?」

 

「アタシはもう、誰も傷つけたくないから!失いたくないから!」

 

傷付けたくない、か…

 

「だから、強くなりたいんです!」

 

「……少し、頭冷やそうか‥…クロスファイア」

なのはは数個のスフィアを作る

 

「わぁぁあああああ!ファントム、ブレ―――」

 

「シュート」

なのはの攻撃の方がティアナよりも早く当たる

 

「ティア!!……っ!? バインド!」

 

「じっとして……よく見てなさい……クロスファイア―――」

チッ、なのはの奴、完璧に自分を見失ってやがる!

 

「ソウル!」

 

『了解です!』

その瞬間、俺は皆のいる所からティアナの元まで転移する

 

「――――シュートォ!」

俺の体を盾にしてティアナを守る

 

「!?」

この弾道は‥俺のあの(・・)傷に当たる!!

 

「―――ガハッ!」

あまりの弾速に対応できずに、スフィアは俺の、あの傷

……古傷に直撃する

 

「……えっ?」

突然の事で何が何だか理解できてないなのは

 

「ッ!?」

ヤバイ、傷口が開いてきやがった

バリアジャケットを纏っているので、なのはにはバレていないが傷口から決して少なくない量の血液が出ている

 

「どう、して?」

 

「どうして私の邪魔をするの、ゆっくん!」

 

…どうやら、怒りの矛先が俺に向いたようだ

正直言って、この状況はかなりやばい

俺の腹部からは血がタラタラと流れている

そのうち、意識が薄れていくかもしれない

だけど。

ここで倒れたら、なのはは自分の間違いに気づくことができない!

 

「…なのは…お前、俺の言ったことをちゃんとしたか?」

 

「…………」

 

やっぱりな

 

「なのは…今のお前がやっている事はただの暴力だ」

 

「!?」

 

「お前はその暴力で才能がある奴の未来を奪うのか?」

 

「…さい」

 

「教導官(なのは)という強者は、教え子という弱者の未来を奪うのか!?」

 

「うるさい‥うるさい!」

 

「お前がしたかったのは、こんな教導なのか!?」

 

「!!うわぁぁああああ!!!」

 

『ディバインバスター』

なのはの叫びと共に放たれた桃色の閃光が俺の腹に直撃する

 

「グ、グガァアァアア!」

 

「「ユウ!!」」

フェイトとヴィータが俺に駆け寄ってくる

 

「落ち着いて、なのは!」

 

「オイ!しっかりしろ、ユウ!!―――ッ!?このままじゃヤベェ!」

ヴィータはモニターを開き、はやてに繋げる

 

『どうしたんやヴィータ、いきなり掛けてきて?』

 

「はやて!ユウが、ユウが……!!」

 

『!?裕君がどうしたんや!?』

 

「…落ち・・つけ…ヴィータ、はや・て…」

 

「オイ!無茶するな!」

 

『裕君、まさかその傷は!?』

 

「俺の事なんかで騒ぐな…ッ!」

 

「ユウ、しっかりしろ!」

 

『今、シャマルを呼ぶからな!』

その言葉を聞いた瞬間、俺は意識を失った

 

目を覚ました俺は、現在いる場所‥医務室を見回す

どうやら、気絶した後に運ばれたようだ

 

「……なんで、コイツがここに居るんだ?」

 

俺の隣のベットでは、なのはが寝ていた

 

「なのはちゃんは、あの後フェイトちゃんに気絶させられたんや」

そう言いながら医務室にはやてがやって来た

 

「…バレたかな?」

 

「多分バレたやろな…と、いうより今まで隠してこれた方が不思議や」

 

「俺はできれば墓まで持っていきたかったよ、この秘密だけは。」

 

「…もうバレたもんは、仕方ないやろ」

 

「そう、だな」

少し顔を俯かせる俺

 

「それにな、なのはちゃんは裕君が何か隠してることに感づいてきよったし」

 

「はぁ~~」

もう、溜息しか出ない

そんな中、一つの警報が鳴り響く

 

『一級警戒、ガジェット出現!』

 

「「なっ!?」」

よりにもよって、このタイミングで…!

 

「俺が行く」

なのはが向かえない今、俺が行けば手伝うぐらいの事はできるだろう

 

「それはダメや!」

はやてが後ろから抱きしめてくる

 

「…今、なのはが使えない状況なんだ。今動けるのは俺ぐらいしかいないだろ」

 

「それでもダメなんや!裕君が今行けば、重症じゃすまんってシャマルが言ってたで!!」

 

「それでも―――「ならば私が行こう」――シグナム!?」

 

「…せやな、シグナム頼むわ」

 

「任せて下さい、主はやて…と、いう訳だ」

 

「…わかった。けど、無茶はするなよ」

 

「フッ、お前にそんな事を言われるとわな」

シグナムは口元を綻ばせながら部屋を出て行った

 

「……裕君、あんたには、してほしい事があるんやけど」

 

「…あの事をフォワード達に話してほしいのか?」

 

「そうや。」

 

「…わかった。あまり気は進まないが」

 

「良かった!そんじゃあ、ミーティングルームへ集合や!」

はやてはなのはを起こし、俺はフォワードを呼びに行った

 

 

 

 

さてと、めんどくさい事になったな

今、ミーティングルームには機動六課のメンバー全員がいる

シグナム達もガジェットの相手をしてきたようだ

 

「ほな、全員集まったから…裕君お願いや」

 

「…わかった。」

一度だけ、深く息を吐く

 

「…これから話すことはただの俺の失敗談だ。聞いた後で笑ってもらっても構わない」

そういって、ソウルからモニターを出す

 

「…ある、雪の日の事だ。一人の少年は墜ちた」

 

「…えっ?」

なのはが驚きの声を上げる

モニターに映し出されたのはガジェットに腹部を貫かれている俺

 

「「「「――――ッ!!」」」」

フェイト、はやて、ヴィータ、シグナムが唇をかみしめる

 

「別に、お前らのせいじゃねぇよ。だから、そんな顔すんな」

 

「ねぇ…どういう事?」

 

「見てればわかる」

 

「……原因は無茶な訓練、そして自ら進んでした膨大な任務」

 

「疲労が溜まらん筈がなかったんや」

悲しそうに呟くはやて

 

「でも、私達は気づかなかった」

 

「任務のない日は、ほぼ一日。任務のある日でも最低5時間」

フェイト、ヴィータの順に言葉を繋げる

 

別に焦ってたわけじゃない

だけど、嫌だった

誰も救えない自分

大切な人達を見守るしかない自分が

 

「…俺は自分が大嫌いだ」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

「ティアナ…俺はさ、才能のあるお前が俺みたいな奴と同じことをしてほしくないんだよ」

 

 

 

 

 

 

「そして、俺はお前を見ていると腹が立つ」

 

 

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

チビッ子達まで驚いている

 

「お前には良い所がある。才能もある。俺が歩めない道を歩める。俺とは違い誰かを救えることもできる。それなのに、自分を周りと比べ劣等感を抱く。力の無い俺からしてみれば、見ていると腹が立つんだよ!」

 

「!?才能なんて、有りませんよ!」

 

もうだめだ。

我慢できない

「クソがぁぁあああああ!!」

 

ドゴンっ!

 

俺が思いきり拳を振り上げティアナを殴る

拳の皮が裂けたが今は冷静になるのに徹するしかない

 

「……悪い、少し頭を冷やしてくる」

俺はソウルを置いたまま、ミーティングルームを出た

 

 

ミーティングルームを出た俺は、屋上にいた

地面に座り夜空を見上げると、そこには雲一つない夜空が広がっていた

その清々しいほど澄みきった空が俺の心に沁みてくる

 

「…こんなつもりじゃなかったんだけどな」

 

そういえば、いつかクロノが言ってたっけ

 

「世界はいつだって、こんなはずじゃない事ばっかり‥か…」

確かにその通りかもな

プレシアもアリシアもリインフォースも死んでいった

俺の両親も死んだ

俺の家族はソウルだけだ

 

「…って、あれ?ソウルは何処へ」

 

「はいコレ、忘れちゃダメだよ?」

 

「なのはにフェイトにはやてか…」

なのはが俺にソウルを渡してきた

その後ろにはフェイトとはやてがいる

 

「それと、ダメやで?女の子の顔を殴るなんて」

 

「シャマルが手当てしたから良いものを…」

 

「……悪いと思ってるよ。後で謝ってくる」

流石に、やってしまったとは思ってる

というか、ソウルはスリープモードでいるのは何故?

 

「でね?ゆっくんに聞きたい事があるの」

 

「聞きたいこと?」

大体話したと思うけど…

 

「ユウは、その…」

 

「?」

そんなモジモジされると困るんだけど…

言いにくいなら言わなくていいぞ?

 

「ティアナと同じように劣等感とか、ないの?」

なうほどね

良くも悪くも他人の事が第一だな、こいつ等

 

「どうなんや、裕君」

はやてが詰め寄ってくる

…顔が近いぞ?

 

「…劣等感(そんなもの)なんて、とうの昔に捨てたよ」

 

「「「ホント!?」」」

 

「ああ、だから心配すんな」

ワシャワシャと三人の頭をなでる

 

…劣等感なんて、そんな感情は力がある人だけの特権だ

 

「じゃあ俺は、ティアナの所に行って謝ってくる」

三人の横を通り、出口に向かう

 

「!?ちょっと待って!」

 

「なんだよ、なのは?」

 

「えっ、う、ううん、やっぱ何でもなかった!」

 

「?変なの」

そう言って俺は、ティアナの所へ向かった

 

 

「どうしたの、なのは」

 

「そうやで、急に裕君を呼び止めたりして」

 

「…なんかね、ゆっくんがいなくなってしまうような気がしたの」

 

 

 

その後の事は、簡単だ

ヴィヴィオを狙いに来た奴等に俺を含む機動六課のメンバーが重傷

俺は気絶で最後の戦いも病院で過ごした

 

 

俺は無力だ

 

 

 

 

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