よく分からないけど頑張るしかない!   作:ぽむぽむ

21 / 21
何でもない日常パートです。


2人きりの夕飯

ラグーラビットを討伐した後に、なぜか宿まで突撃してきたアスナ。

 

 

「そういえば、なんで俺がラグーラビットの肉を持ってることを知ってんだ?」

 

「キリト君に教えてもらったの」

 

「キリトが言ったのか!?」

 

 

あいつ...勝手に言いふらしやがって。

 

ん?キリトからメッセージ届いてたの気づかなかったな。

なんだって。

『俺だけが美味しく料理された肉を食べるのは、なんか申し訳ないだろ?料理できる奴を向かわせとくよ』

 

.......あいつマジか。

 

 

「てか、それよりも重要なのは、俺の居る宿、どうやって突き止めたんだ?」

 

「それはアルゴさんから」

 

「あの鼠がぁ......!」

 

 

なんで住所ばらまくんですかね...

流石に個人情報はあかんでしょう。

 

ま、過ぎたことはしょうがねぇか...

あの二人、どうお仕置きしてやろうかなぁ?

 

 

「てか、アスナの料理スキルはどんなもんなんだよ」

 

「ふっふーん、先週コンプリートしました!」

 

「な、え、マジ?」

 

「まじです!」

 

 

料理ができるって程度のレベルじゃないな、こりゃ。

 

 

「え、んで、料理してくれるってことで良いのか?」

 

「じゃなかったらここまで来ないでしょう?」

 

「ありがてぇ...神かよ...」

 

「そ・の・か・わ・り、半分は貰いますからね?」

 

「もちろんもちろん。シェフが食べないなんて、有り得ないからな」

 

「やった!それじゃあ行こうか!」

 

 

交渉が終わったと思ったら、どこかにつれてこうとするアスナ。

 

 

「えーと、どこまで行くご予定で?」

 

「私の部屋よ」

 

「んー、聞き間違えかな?今、アスナの部屋に良くって聞こえたんだけど」

 

「そう言ったんだけど」

 

 

え、は、こいつ馬鹿なん?

そろそろ夜になるって言うのに、男を自分の部屋に上げるか?普通。

 

 

「なんでわざわざアスナの部屋まで?」

 

「逆に聞きますけど、サイタマ君の部屋にはちゃんとした料理道具があるの?」

 

「......すんませんした。ほとんどなんもないです」

 

「だと思ってた。だから行くわよ」

 

「分かりましたよ...」

 

 

料理食いに行くためだけにアスナの部屋行くって、なんか気まずい気も

するけど、しゃあないか。

 

 

話がまとまり、アスナの部屋に向かうことになった。

 

 

「それじゃあ行こう...ってうおおぉぉぉ!??!?!」

 

 

部屋を出た瞬間、目の前に骸骨みたいな顔をした、辛気臭い男が立っていた。

 

 

「おたくどちら様?服的に血盟騎士団っぽいけど.....」

 

 

そう話しかけるが、重ねてくるようにその男は喋り出す。

 

 

「アスナ様!!どちらに行かれたかと思えば、こんなよくわからん男の家に上がり込むなんて」

 

 

よくわからんなんて、言ってくれんじゃねぇか。

てか、コイツの方がよく分からんだろ。

 

 

「クラディール(Kuradeel)、なんでこんなところまで......今日はもういいわ、帰りなさい」

 

「そうはいきません!私は護衛として...」

 

「団長に報告するわよ」

 

「ぐっ...失礼します...」

 

 

そう言って俺を睨んでから去っていくクラディール。

 

えぇ......なんで睨まれたん?俺。

 

 

「それじゃ、いきましょ?」

 

「お、おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階層を跨いでアスナの部屋のある61層までやってきた。

 

 

「おお!隠居生活にうってつけ、って感じの落ち着いたとこだな」

 

「気に入った?」

 

「おう!ここ、いいとこだな」

 

「それじゃあサイタマ君もここに住めば?」

 

「金が足りねぇよ...」

 

 

装備品等にお金を回し、ギルドにも所属していない俺は、ぜんぜんお金が貯まらず、割とカツカツな生活を送っている。

 

 

「それにしても、良かったのか?あいつのこと」

 

「......最近、幹部には護衛が付くことになってるの。いらないって言ったんだけどね」

 

「護衛ねぇ...」

 

 

俺からしたらストーカーにしか見えなかったが。

 

 

「昔はこんなんじゃなかったの。どんどん人が増えて、最強ギルドなんて言われ始めてから、おかしくなってきちゃった」

 

「大丈夫なのか?」

 

「...まぁ、大したことじゃないから、気にしなくてよし!早くいかないと日が暮れちゃうわ、いそぎましょう?」

 

「ああ、そうだな」

 

 

本当に大変そうだったら、どうにか手助けしてやりたいな...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お邪魔しまーす」

 

 

女性の家に入ったことなんてなかったため、緊張が隠せないまま、アスナの部屋に入る。

 

部屋には、観葉植物や花、汚れの付いていない白い壁紙、高そうなソファーなど、高級感がありながらも落ち着けるような内装になっている。

......いい匂いが、っと、これ以上は変態の称号をいただいてしまうな。

 

 

「なぁ、ここっておいくら万円したんすかね?」

 

「んー、土地と内装とで大体400万コルぐらいかな?」

 

「よ、よんひゃくまん...」

 

 

やっぱ大手ギルドの副団長ともなると、こんないい家に住むのは普通なんだろうか...

 

 

「それじゃあ着替えてくるから、ちょっと待っててね」

 

「お、おう」

 

 

女の子から着替えてくるときいて、ドキドキしない男がいるのだろうか、いいや、居ない!(唐突な反語)

 

アスナが別の部屋に行くと、俺はソファーに腰を掛ける

座った瞬間に腰が沈みこみ、それでいて体に負担を掛けないようになっている。

 

これはまさしくソードアートオンライン内の人をダメにするソファーだ!!!

 

そんな事を考えていると、アスナが帰ってくる

 

は?肩チョイ出しのホットパンツとか、男がいる時の格好かよそれ。

エッッッッッッッ!!!!!!!

 

呆けた顔でアスナを見ていると、話しかけてくる

 

 

「そんなに見られると、恥ずかしい...かな?」

 

「す、すまん!」

 

 

ヤバイだるぉ!!

顔を少し赤くしてそんな事言われたら、男心鷲掴みされまくりなんですが!?!?

 

 

「というか、いつまでそんな格好してるつもりなの?」

 

 

そう言われ自分の服を見てみると、ダンジョン攻略用の防具たちを装備し、剣を携えたままの姿だった。

 

ま、まぁ、人様の家でする格好じゃないわな。

そうかんがえ、普段着へと着替える。

 

 

 

 

キッチンに向かった俺とアスナ。俺は、ストレージからラグーラビットの肉を取り出す。

 

 

「これが伝説のS級食材かぁ~、それで?どんな料理にするの?」

 

「あー、何も考えてなかったなぁ......お任せ、でいいか?」

 

 

俺は恐る恐る、といった感じにアスナに聞いてみる。

お母さんに『夕飯は何でもいい』とか言うとブチギレされてたからなぁ。

 

と、思い出していたら、アスナから提案がきた。

 

 

「それじゃあ、シチューにしようかな。ラグー、煮込むって意味だしね」

 

「へぇー、物知りなんだな」

 

 

じゃあラグーラビットって、煮込みウサギって事か?

なんかグロいのしか想像できないんだが...

 

 

変なことを考えていたら、すでにアスナが包丁を構えていた。

 

その包丁を食材たちに当てると、食べやすそうなサイズに切り分けられていく。

 

 

「ほぉ...魔法みたいだな...」

 

「本当はもっと手順があるんだけどね。SAOの料理は、簡略化され過ぎていてつまらないわ」

 

「なるほどなぁ」

 

 

ってことは、アスナは現実世界でも料理してるってことだよな?

美少女が料理してるって、夢物語だと思ってたけど、実際に存在してたのか......

 

まぁ、そんな状況を堪能させていただいてるんだけどね!!!

 

 

「っと、これでシチューはオッケーで......あとは付け合わせね」

 

そうこうしてる間に、シチューの下準備は済んだようだ。

にしても、速いもんだなぁ......

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ、完成」

 

「おお!できたのか!」

 

「ええ、自信はあるわよ」

 

 

そういって、シチューの入った鍋を開けようとするアスナ。

その手元を、集中してみてしまう。

 

蓋が開けられると、そこからは、アツアツな湯気と、美味しそうなシチューの香りが漂ってくる。

その食欲を掻き立てられる匂いに、自然とよだれが出てくるように感じる。

 

 

「それじゃあ頂きましょう?」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

 

ご馳走を目の前にし、心臓が躍る。

 

 

「「いただきます!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ...ご馳走様でした!」

 

「ふふっ、お粗末様でした。それで?どうだったかな?」

 

「ほんっとに旨かったよ!バトル以外でこんなに集中したのは、はじめてかもしれないな」

 

「そう言ってくれると作った甲斐があるわ。あ、お茶飲むかしら?」

 

「おう、いただく」

 

 

会話を交わした後に、アスナからお茶を受け取る。

 

てか、ポットの中に花とか浮いてるんだけど。

絶対お茶って言うより”ティー”って言った方が正しいタイプの奴じゃん。

めっちゃオシャンティーなんですけど。

 

作る人によって、食卓ってこんなに雰囲気変わるもんなんだな......

 

 

「S級食材なんて、二年も過ごして初めて食べたわよ...」

 

「ああ、俺もだ。アスナに料理してもらって本当に良かったよ。他人の手料理なんていつ振りか...」

 

「そ、そう?まぁ、褒めてもらって悪い気はしないけど」

 

 

そういって頬を染めるアスナ

お茶を一口飲み、口の中を潤した後、アスナが話しかけてくる。

 

 

「何だか不思議ね、この世界で生まれて今まで育ってきた。最近そんな風に感じることがあるの」

 

「なんだかそれ、分かる気がするわ。俺もあっちの世界(現実)の事を思い出さない日が増えてきた気がする」

 

 

そういって、最近の事を思い出す。

 

攻略は前向きに行っているが、現実に戻りたいという気持ちは、薄れてきている気がする。

なにもそれは自分だけじゃない。

周りの奴らも、クリアに全力なやつが減ってきている。

惰性で攻略に臨むやつが、確実に増えてきている。

 

 

「今最前線で戦ってる人たちなんて、500人もいないでしょう。皆馴染んできてるのよ、この世界に」

 

「......」

 

 

馴染む...か、その表し方が一番合ってるように感じるな...

 

 

「それでも私は帰りたい。あっちにやり残したこと、いっぱいあるもの」

 

「.......ああ、そうだよな」

 

 

まだ成人も迎えてないし、親孝行も全然できてない。

なにより、なんでこの世界にやってきたのかもわかってないからな。

死ぬわけにはいかないな。

 

 

「ここで俺たちが頑張らなきゃ、下の階層で待つ奴ら、支えてくれる職人たちに、申し訳がたたないもんな」

 

 

今まで出会ってきた人たち、サービス初日に広場に集められた人たち、いろんな人の顔を思い浮かべる。

すると、

 

 

「あ、やめて」

 

 

そういきなりアスナに言われる。

 

暗い話は嫌だったか?

でも、アスナ自身も話してた気が...

 

 

「今までそんな顔をしたからは、何度か結婚を申し込まれたわ」

 

「!!?!」

 

 

全く予想してなかった類の言葉が飛んできて、俺はゴホゴホと、むせてしまった。

 

 

「ふふっ、その様子じゃ、他に仲の良い子、居ないでしょう?」

 

「う、うるさいわい!仕方ないだろ、ソロ活してんだから...」

 

 

恥ずかしさから語尾は小さくなってしまった。

 

 

からかうような顔から一転し、アスナの顔が険しくなる。

 

 

「サイタマ君はギルドに入らないの?仮面ライダーっていう、他の人にはないスキルがあるのは分かってるけど、70層になってきてからモンスターは格段に強くなってきてるわ。一人だと対処しきれない事もあるでしょう?」

 

「安全マージンはしっかりとってるし、複数人だと俺のスキルが上手く使えなかったりするから、逆に邪魔というか...」

 

 

そこまで言ったところで、いきなりアスナからナイフを突きつけられる。

 

 

「あ、あの、なんで殺されそうなの?俺」

 

「こんな攻撃も対処できないのに、他の人は邪魔だとでも言うの?それに、キリト君と結構レベリング行ってるみたいじゃない」

 

「あー、はい。アスナとキリトは例外ってことでお願いします」

 

「よろしい。ってことで、久しぶりに私とコンビ組みなさい。噂の仮面ライダーさんと一緒に戦ってみたかったし」

 

「はぁ!?い、いやでも、ギルドは「うちはレベル上げノルマとか無いし」...」

 

 

「じ、じゃああの護衛は「置いていくし」...う、うーむ...」

 

 

他に理由づけできないもんかねぇ...

 

そう思い、カップに手を伸ばすが、中身はもう空だった。

チラッとアスナの方を見ると、ティーポットを持ちながらニヤニヤとこちらを見ている。

 

くッ、恥ずかしいが、おずおずとティーカップをアスナに差し出すと、おかわりをくれる。

 

......おいしい

 

 

カップに口をつけると、アスナからパーティーの招待がくる。

 

 

「......俺、キリトと約束が「許可はすでに取ってあります」......」

 

 

もうどうしようもなくなった俺は、おとなしくパーティーに参加することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一応お礼を言っておくわ。今日はご馳走様」

 

 

アスナの部屋から出て、帰ろうとしたところ、そう話しかけられた。

 

 

「こっちこそ、美味しい料理を作ってくれてありがとうな。またお願い、って言いたいが、S級食材なんて、もうお目にかかることはねぇだろうな」

 

「あら、普通の食材でも腕次第よ?」

 

「その通りだ」

 

 

そう言って二人で笑みをこぼす。

するとアスナがそれを見上げたため、俺も追って空を見上げる。

 

そこには、現実でも見たことが無いような、澄んだ星空が浮かんでいた。

 

 

「こんな世界が、茅場昌彦の望んだ世界なのかなぁ...」

 

 

そんなアスナの呟きは、夜の空へと吸い込まれていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ギャグや恋愛の描写出したいんですが難し過ぎませんかね......



感想・評価・誤字報告お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。