五等分の花嫁 -上杉風子の場合-   作:悠魔

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今回長いです。
分けようかなとも思いましたが、思い切って投稿してみました。アニメ11話、神作画の所です。


結びの伝説 3日目

キャンプファイヤーに使う木材を運んでいたと思ったら、閉じ込められていた。何を言っているのかわからないと思うけど、実際にそういう状況なんだから仕方ない。

あはは……まさか、よりにもよってフー子ちゃんと一緒とはねー…。

さっき変なところ見せちゃったから、何だか恥ずかしいや。

 

「ドアを壊して外に出よう。私の力でできるか分からないけど……」

「あー、待って!あれ防犯センサーじゃないかな?ドアを壊したら警備員が飛んでくる系のやつ……」

「……………」

 

私の言おうとしている事は伝わったらしい。

警備員がやって来てしまっては、せっかくの林間学校が台無しだ。

何とかしてあれを解除できないかな?

どうやらフー子ちゃんも同じことを思っていたらしい。

「一花、解除できるか見てくれない?」

「あはは、私の身長じゃ……」

「何言ってんの。肩車」

………。

こういうトコなんだよねー…。繋がりを断とうと思っても、絡められてしまう……。

 

でも、そんなの、三玖に悪いよ。

平常心……。ここのセンサーも反応させちゃダメだ。重いとか言わないでよー?

「一花、重い!」

「コラー!重いとか言っちゃ駄目!」

「てか、この感触、何か懐かしい」

「!た、堪能するのも駄目っ!」

フー子ちゃんが寝てる間にこっそりやったのに!膝枕の感触、ちゃんと覚えてるし!

 

仕方ないので、フー子ちゃんが四つん這いになって、その上に私が乗ることにした。そして分かったけど、センサーの解除には鍵が必要みたい。

やっぱり、誰かを待つしかないのかな。

……二人っきり、か。

昨日、肝試しで三玖に言われた事を思い出すなー。

 

『一花は、フー子の事どう思ってる?』

『?どう思ってる、って?』

『……私、変かも。フー子は皆んなの家庭教師なのに……なのに、私』

『………三玖、フー子ちゃんをダンスに誘わなくて本当に良いの?』

『……………』

『後悔しないようにしなよ』

あの子も、さっきの私みたいに、フー子ちゃんが恋愛したくないって事を知ったのだろうか。元から消極的なあの子のことだ。余計に気負っちゃったのかなー…。

 

「いっきし!」

「!フー子ちゃん、大丈夫?ほら、コート返すね」

「は?返すのは私の方だよ。そのコートはあんたが選んで買ってくれたんだから、本当はあんたの物だし」

「もう、こういう時にそんなの気にしないのー!」

 

それでも、フー子ちゃんは頑として受け取らなかった。気にしなくて良いのに。

まあ、本当は私も寒いんだけどさ……。私はお姉ちゃんなんだから、我慢しなきゃ。

でも実際、ここに一晩いたら体の隅まで冷えちゃいそう。何か暖を取れるものがあれば良いんだけど……。

それを聞いたフー子ちゃんは、何かを思いついたように薄い木の板やら木材やらを集めて何か作り始めた。

えーと、先生?それは何をしてるのかな?

「見ての通り、火を熾すんだよ。風邪でもひいたら最終日がパーだよ」

「フー子ちゃんは頭が良いけどお馬鹿さんだよねぇ……」

 

この子、即興で火起こしができるあたり、器用で色々な事ができる筈なのに、きっと全知全能が勉強の方向を向いているんだ。

そういう風に生きてきたんだ、たぶん。何であの時の女の子がそんな道に行ったのかは分からないけど。

………だからかなー。

 

学校でフー子ちゃんを見た時、この子に恋愛は出来そうもないって思った。そして家庭教師と生徒として接していくうちに、この子は恋愛をしない主義だって知った。

でも、それも違った。

しないんじゃなくて、したくない。

この子に何があったかは分からないけど、この子にとって恋愛は忌避の対象なんだ。

 

それを悟って……何だか私のこの気持ちが馬鹿らしくなって、泣いちゃった。

林間学校の少し前あたりから、三玖がフー子ちゃんを避けるようになったのも、たぶんこの事を知ったから。……気持ち、痛いほど分かるなぁ……。

……そうやって勉強一本道のフー子ちゃんを振り向かせたくなって、私は、今朝のメールの内容を思い出していた。

 

「私、学校辞めるかも」

「…………え?」

「ま、休学って形だけど。新しい仕事の話も少しずつ貰えるようになってきたの。もう何度か学校は休んで、仕事に行ってるんだ。他の女優志望の子達も留年覚悟で休んでたり、融通の利く学校に転校してるみたい」

あー、こういう時だけ、ペラペラ喋れちゃうんだ、私って。

 

「私は知っての通り学業は絶望的だからさ。高校に未練は無いかなーって」

「…………」

「………あ!ま、まだ決めてないけどね?」

「良いじゃん。やりたい事見つかって」

………あれっ?そういう反応?

いや、私もどういう反応して欲しかったか分からないけどさ。フー子ちゃんの答えは、一番予想できないものだった。

 

「待って。それって、私の給料は二割減になるって事?…………一花、もうちょい学校いない?」

あー、いつものフー子ちゃんだ。なんか安心した。これで安心しちゃうのもどうかと思うけど。

「冗談だよ。正直言って、選択肢のあるあんたが羨ましい。……ま、どうせ失敗するだろうけどね」

「もー、また言う!」

フー子ちゃんは夢がないなぁ。

 

「ま、夢が叶うとは思わないけど、でも、人が夢見るのを馬鹿にする気もないよ。失敗も糧になる。上手くいけば儲けもの」

チリチリと音を立てて、木から小さな赤い火花が生まれた。

私の心も、何故だか高揚した。まるで、赤い火花が灯ったみたいに。

 

「何事も、挑戦だよ」

うそ?この子、本当に火を熾しちゃった。

 

木屑やら何やらを寄せて、火を絶やさないように気をつける。

小さくてちっぽけだけれど、暖かくって、それでいて力強い火だった。

 

何事も、挑戦か。

私も決めたよ。

 

繋がりを断ち切ってでも進もうと思った。だけど彼女の言葉は鎖じゃなくって、私に飛び立つための羽根をくれた。

私は女優を目指そう。そのためなら、学校だって辞めよう。

フー子ちゃんとの思い出が、私の心の原動力になった気がした。……あとは、三玖と若い二人でごゆっくり!三玖だったら、別に取られちゃってもいいや!

 

「フー子ちゃん。何事も挑戦って言うんだったらさ、もし、キミとダンスしたいって子がいたら断らないであげて欲しいんだ。その子も、必死に勇気を振り絞ったんだろうから」

「………、うん………」

「って事で!私もフー子ちゃんと踊りたいな。私達は家庭教師と生徒として出会ったけど、お互いにパートナーとして、学校を卒業した後も、大人になっても、いつまでも話せる関係でいたい。そういう『結び』も、良いんじゃないかな」

「……一花」

「なんてね?この間買った小説の影響だけど。……今夜は二人だけのキャンプファイヤーだよ」

 

ふぅ、とフー子ちゃんはため息をついた。

「まぁ誰も見てないし……良いか」

「あはは、やっぱ恥ずかしいんだ?可愛いとこあるじゃん」

「あ、当たり前でしょ」

センサーに異常なし。だけど、身体は何故だか、じんわりと暖かかった。

彼女の手を取った。女優業のために、ダンスの練習をしておいて本当によかった。

 

「こらこら、フー子ちゃん、それじゃ転んじゃうぞー?」

ぎこちなく脚が動く。

 

「し、仕方ないでしょ!踊った事なんて、ほとんど無いんだから……っ」

リズムを取って、その方向に引っ張る。

 

「フー子ちゃんは身体を動かすのが壊滅的にダメだね。もうちょっと運動しなきゃね」

右へターン。左へステップ。

 

「それなら、勉強した方がマシだよっ」

手を離して回転。

 

「そんな事言って、林間学校、結構楽しんでるじゃんっ」

勢いをつけて、移動する。

 

「………そうかも。きゃっ!」

そこで右にスライド……というところで、フー子ちゃんがどこかに脚を引っ掛けたのか、急にバランスを崩した。

それでなし崩しに私もぐらぐらとバランスを崩して、近くの壁にぶつかってしまった。

「やば……」

「危ない!」

どうやらぶつかったのは、壁じゃなくって、木材だったみたい。私の身長の倍はあろうかという木材が、私達の方に向かって、倒れてくる。

 

フー子ちゃんが袖を引っ張った。

びっくりした。こんなに運動神経の無い子が、こういう時に素早く反応できるだなんて。木材が倒れた先はドアで、なんとその勢いのままぶち破ってしまった。

だけど、そんな事、まったく目に入っちゃいなかった。

「はぁ……、体勢が崩れるのなんて、もう何度目だって話だよ。流石にもう、慣れちゃった」

私の眼は、心は、もうフー子ちゃんに釘付けだった。

 

目を離せるなんて。

この手から離れるなんて。

繋がりを手離すなんて。

 

私には、できそうもなかった。

 

「ドジだね、私も」

「…………っ」

そう言って彼女は笑った。

その無邪気な顔に、私の心臓はいつのまにか早鐘を打っていた。

血が巡って、顔が熱くなる。

やばい。フー子ちゃんを見ていると、この湧き上がる気持ちが抑えられなくなる。

 

ビーーー。ビーーー。

 

情熱の炎が、消えてくれない。

センサーに反応しちゃって、非常ベルが鳴り止まない。

 

ビーーー。ビーーー。

 

私の『この気持ち』が、赤く光って止まらない。止まってくれない。

 

ビーーー。ビーーー。

 

「は、放してっ!」

ていうか、離れなきゃダメ!

「ちょ、一花、暴れないで!……それにしても何?この音」

『衝撃を感知しました。30秒以内にアンロックしてください。解除されない場合、直ちに警備員が駆けつけます』

「!」

 

やばい。誰か来る前に、離れないと。

不意に冷たいものが首筋を走った。それが水だと気づいた時、既にスプリンクラーは大量の水をばら撒いていた。

「冷たっ!」

何で急に?……そっか、火か。こんな時に、タイミングの悪い……。

ひとまずセンサーを何とかしなきゃ。でも鍵が無いから、どうしようもない。……どうしたら……

 

………どうもしなくて良かったりして。

 

どうせ、誰かに開けてもらわなきゃいけないのなら。私達の事を知らない警備員さんに開けてもらった方がマシだったりして……。

 

「鍵ならここにあるよ」

………あっ。

 

「一花、フー子。……二人してこんな所で、何してたの」

そこには、いつも以上の無表情を浮かべた三玖が立っていた。

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

一花との一件は三玖だけでなく先生にも説明するはめになり大目玉を食らった。

疲れからか、そのまま倒れるように寝てしまったみたい。服もそのままだし。楽しい林間学校が何故こんな事に……。

 

「………んー………?」

喉に違和感。なんか、だるい。

寝るか。

「上杉ちゃん!」

うわっ四葉だ!びっくりした!

「自由参加だからって逃しませんよ!スキー行きましょうスキー!!」

やめろ めろめろ!四葉めろ!

ヤメロー!シニタクナーイ!

 

抵抗虚しく、ゲレンデに連れて来られた。にしても宿の近くにこんな立派なゲレンデがあるなんてすごいなー。

「さあ!滑り倒しますよー!」

「寒いよぉ、四葉。滑れないよぉ」

「じゃあ、私が手を引いてあげますね!」

「えっ。ちょ!」

 

四葉はそういうと、私を連れて雪山を滑り降りていく。わ、わ、やばい、フラフラする。

「四葉、四葉!わ、わ、私、滑ってる!」

「そりゃスキーですからね」

「よ、四葉!下に向かってる!」

「まあスキーですからね」

「ああああああっ!」

「えーっと、フー子ちゃん、まだほとんど傾斜ないですから、大丈夫ですよー」

 

ていうかスキーってこんなに勢いよく滑るものなの?何だかよろけてしまって、内股で滑っていく。

「目線はまっすぐ、脚を開くんですよ!八の字じゃないと上手く滑れません!」

「そ、そんな事言ったって……ま、待って四葉!……きゃあっ!?」

「わぷっ」

雪の上でもつれて転ぶ。四葉の上に重なる形になっちゃった。……そういえば昨日もこんなのあったぞ。大丈夫か、私。何回転ぶんだよ。昨日は上手く一花を支えられたんだけどなぁ。

 

「けほっ……あははー!派手に転んじゃいましたね!」

「そだね……。大丈夫?四葉」

「全然平気です!」

すげー。四葉は頑丈だなー。

「そういえば四馬鹿はどうしたの」

「え、私ですか?」

「違う、そっちの四じゃない」

「あー…他の四人なら、一花は体調を崩して三玖が看病してくれてます。二乃と五月はもう滑ってるみたいですよ」

体調………。あんな目にあったんだ、当然といえば当然か。

「確認してから鍵かけなよ」

「?あ、来た!」

 

そこには、スキー服を身につけた女の子。

………???誰?帽子とゴーグルで顔隠れてるから分からない!

「三玖」

な、なんだ三玖か……。

「三玖、一花は大丈夫?」

「うん。気にせず遊んでこいって」

「そっか。それにしても顔だけだと本当に分からないね」

「!あっ」

私が近づいたら、三玖はびっくりしたのか派手に転んじゃった。………私の転び癖、移ってないよね?

 

「平気?」

「………。うん、大丈夫」

そう言って立ち上がる三玖。私が伸ばした手はスルーされた。あれー?

「三玖にも私が教える約束してたんです!普段教わってばかりの私ですが、今日は教えまくりですよ!」

 

三玖に教わりつつ、ぎこちなくではあるけど徐々に滑れるようになってく。これなら何とか、初級コースくらいなら滑れそうだ。

「じゃあ、今度は楽しく覚えましょう!追いかけっこです!鬼は私ですから、安心して逃げてください!」

なぬ。ようやく滑れるようになったところなのに無茶な……。

(………待てよ?これは昨日しっかり話せなかった三玖に弁明できるチャンス)

 

「三玖!一緒に……ってああっ!逃げるのはやっ!」

あの子、いつの間にあんなに上達したの?あ、でも反射神経よりバランスが大切なスポーツだから、コツを掴めば早いのかな……。

「ハァ……ハァ……」

これはまずいかも。

……どうやって止まるの、コレ?

 

最早何度目か分からない転倒に、私の身体は悲鳴を上げた。

「………雪山があって助かった。四葉、教える時はしっかり教えて……」

「あのー、大丈夫?」

「お構いなく!」

注目集めてる。恥ずかしい。らいはのお守りが無いからか、昨日から不運続きだよ。早く三玖を探さなきゃ。

すると、ぶつかった衝撃で二乃に貰った絆創膏が剥がれてしまった。まあ、もう傷も塞がったし、いいか……。

 

「この絆創膏……もしかして、お姉様?」

「……………」

全然良くなかった。

今、背後には二乃がいる。

「って、その呼び方は嫌なんだっけ。かな子ちゃん?」

「…………え?違いますよ、何ですかその平凡な名前」

「嘘!だってこれ君にしかあげてないもん」

もっと色んな人にあげろよ!

「それにプレミア品だから滅多にあるような物じゃないし!」

そんなもん人にあげるなよ!

 

ダメだ。一刻も早く逃げよう。

「あ!何で逃げるのー!?」

あの建物の影に隠れて……、って。

「上杉ちゃん、見ーっけ!」

見つけるんじゃない!

ダメだ、前門の四葉、後門の二乃!四葉に捕まれば二乃にもバレちゃうし、誤魔化すにも人気がなさすぎる!

あー……もう、クラクラする。

 

「え?」

 

背後から、何者かの手によって引きずりこまれる。私の後ろには、盛り上がった雪しかなかったはずだけど……。

よくよく見てみれば、その雪がドーム状になっていて、私は裏側にいる事に気がついた。ここって……。かまくら?

私をそのかまくらの中に引きずり込んだ少女は、スキー板を使って入口を隠してしまう。

 

「三玖?」

「捕まるところだった……」

「あ、ありがと。……ここ、作ったの?」

「ううん、元からあった」

初めて入ったけど、中は結構暖かいな……。

 

『あれ、四葉?そっちに金髪の女の子行ってない?』

『二乃こそ上杉ちゃん見なかった?』

『おかしいわねー。向こうかしら?』

 

今なら、この子と話すチャンスかも。

「狭いから、あんまり動いちゃだめ……」

………、今はそんな余裕はなさそう。

「じゃあ私は出るから……、」

「!い、行かないで。出るのもだめ……。もう、よくわかんない」

 

三玖?自分でも何を言っているのか分からない様子だ。……急にどうしたっての?

「それなら、もう少しここにいようかな。四葉もいるかもだし」

この子を放っていくのも、なんか駄目なような気がしたし。

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

ーー二時間前。

 

「一花、大丈夫?」

「うん、ありがとうね、三玖」

昨日の事があって会いづらいけど、でも誰かが看病しなきゃって事になって、私が立候補した。五月は用事があると言って朝早くから出かけちゃったし、他の皆んなにも遊んでほしかったし。

それに何より、昨日の事がどうしても引っかかってしまっていた。

 

「あー…三玖は私に付き合わなくていいから、スキーしてきな」

「だけど……」

「……フー子ちゃんと顔合わせづらい?」

図星を突かれる。

一花はこういう時、けっこう本質を突いてくる。私達のお姉ちゃんだからかな……。のらりくらりとしているようで、ちゃんと私達の事は分かってる。

 

「ごめんね、昨日は。私の不注意であんな事になっちゃった」

「………別に、構わない。私達は平等だから、この気持ちも五等分」

「三玖……」

そう、だから。私は……。

「三玖、旅行が始まった時からフー子ちゃんの事避けてたでしょう」

「うっ」

再び図星を突かれる。

「もしかして、フー子ちゃんが恋愛に消極的なのを知って避けるようになったんじゃないの?あの子に遠慮しちゃったんだよね」

「!一花も、その事を知ったの?」

「ん、まあね。昨日フー子ちゃんと話した時に教えてもらったんだ。……けどね?」

一花はにこりと笑った。

 

「何事も、挑戦だよ。上手くいけば儲けもの。………って、これは私が言われた事なんだけどね」

「…………」

「大丈夫。フー子ちゃんなら、きっと受け止めてくれるよ」

 

そう背中を押されて、自然と脚はゲレンデに向かっていた。そこで二人を探す。フー子と四葉、どこだろう。

「え?」

「あ?」

何かオールバックの怖い男の子と目が合っちゃった……。あれ?もしかして。

 

「確かフー子に告白してた……」

「なっ!?し、知ってんのかよ!?」

「あっ。ごめん、たまたま通りがかって…」

「あー、まあ、別にいい。アンタは、確か上杉さんの友達だったよな。何か用か?」

「……フー子どこにいるか知らない?」

「それなら、あっちに行くのを見たぞ」

「そっか。ありがとう」

 

「……ねえ。私が今聞くことじゃないと思うんだけど、なんで好きな人に告白しようと思ったの……?」

「えっ。そ、そうだな……」

 

「とどのつまり、相手を独り占めしたい。これに尽きる」

「!」

「あ、知り合い来たわ。じゃーな、上杉さんによろしくな」

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

ーー現在。

 

避けていた筈のフー子と喋ってる。

フー子とはなかなか話せなかったけれど、でも二人きりならどんどん話題が生まれる。

 

「そもそもあの無尽蔵のスタミナは何なんだろうね。あんた達と同じ五つ子とはまるで思えないよ」

「私もここがなかったら捕まってた」

「途中からスキー関係無くなったし」

私、なんでこんな事……。

 

「どうやって逃げ切ろうか?」

「……、ハンデもらおうよ。何か荷物を持ってもらって、足の速さを平等に!」

「たしかに、その方が盛り上がるかもね」

「うん、じゃあ……」

「でもそれはあんまり好きじゃないかな」

「え?」

それは、どういう事だろう。疑問符を浮かべた私の顔を見ると、フー子は説明するように言った。

 

「あんた達は、見かけや身体つきはそっくりでも、見えないところは少しずつ違う。一昨日のお風呂で見たよ。四葉はスポーツしてるから身体は締まってるけど、五月の身体は肉まんおばけだし。

……つまり、あの運動能力は四葉が後天的に身につけたもの。遊びで何言ってんだって話だけど、その努力を否定したくない」

 

四葉が身につけたもの。

ーー天真爛漫な明るさ。

ーー運動能力。

ーー人を支える力。

 

私が、身につけたもの。私にあって、皆んなにないもの。

ーー日本史への知識。

ーー変装のうまさ。

ーーフー子への、この想い。

 

「全員平等もいいけど、そこに至るまでを否定しちゃいけない。平等じゃなく、公平にいこうぜ」

公平に……。

やれる、のかな。私でも。

「……フー子、私でも、できる……かな?」

「勝敗なんてね、運動能力だけじゃ決まんないよ。やってみないとわかんないよ」

やってみないと……。

フー子、出会ったばかりの頃も、同じような事を言っていた。織田信長の台詞から取ったんだよね。小さな一国の領主でしかなかった彼も、その名を天下に轟かせた。

 

「私だって、成績最悪の五つ子の家庭教師ができるなんて到底思ってなかった。でも、四葉や三玖や一花が変わってくれたから、何とかやれてる。五月や二乃も変わり始めてる。必死にやれば、その人のなにかを変えることができるかもしれない」

 

その可能性があるだけで、私がまだフー子を好きでいてもいい理由は充分あった。

変えることが、できるなら。

フー子、あなたが恋愛を避けるのなら、私がその想いを変えてあげたい。

 

ーー必死に生きてこそ、その生涯は光を放つ

 

ーー何事も、挑戦だよ

 

ーー相手を独り占めしたい。これに尽きる

 

ーー平等じゃなく、公平にいこうぜ

 

 

 

「公平にいこうぜ」

私はフー子が好き。

フー子に私の事を好きになってもらうために。私は、全力でフー子を好きになる。




書いていてすごい思いましたが、一花のうちは一族感。この子は写輪眼使えそうな気がする。里抜けしそう。
「繋がりがあるからこそ苦しいんだ!」

3話で原作とあまり変わらずに物足りなかったので織田信長の台詞とか入れてみましたが、後々この台詞使う機会が用意できて良かったです。備えあれば憂いなしやね。他にも一花のコートとか、伏線?っぽいの回収できて満足。
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