五等分の花嫁 -上杉風子の場合-   作:悠魔

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前からずっと思ってましたけど、二乃のイメージソングっていきものがかりのブルーバードがピッタリだと思うんですよね。作中にも鳥とかそういう比喩でてくるし、歌い方もめちゃくちゃかっこいいし。
四葉はなんとなく黒い羊……かと思ったけど、アイネクライネの方が会う気がしてきた。つか米津玄師全般合う気がしてきた。灰色と青とか。過去編みた後だと暗くて重い曲合うよね……。
あと三人のイメソンは……なんだ……?
というわけで募集中です。


六巻
二つのさよなら


ママの作るパンケーキが好きだった。

貧乏なのにも関わらず、私達のためにふわっふわのスフレパンケーキを焼いてくれた。思い出補正抜きにあのパンケーキはとても美味しくって、貧乏なのにこんなに美味しい料理を作れるのかと舌を巻く。

その味に憧れて、初めてパンケーキ作りに挑戦した。そこから私の料理への興味が膨らみ(パンケーキだけに)、今では四人の姉妹達のご飯を作っている。

料理が得意な今なら分かる、あのパンケーキは貧乏なりにかなりの手間と工夫が施されていた代物なのだと。私の母親はすごい人だったんだと。

 

父親は、どうなんだろう。

蒸発した方の父親は論外として、今のパパには色々とお世話になってる。今の生活は何不自由なく暮らせてるし、有名な女子校にも通わせてもらった。

私達がここまで成長できたのもパパのおかげだけれど。ただ、なんとなく、受け入れ難いものがある。あの人は正しさしか見ていないから。

いえ、そういう問題じゃないわね。

単純に、私が勝手に拒絶してるだけか。

私の家族はあくまで母親と姉妹だけ。パパは役割としてそこにあるのであって、心のどこかであの人を家族だと思えないんだと思う。……自分の事ながら、随分と贅沢な悩みを持ったものだわ。

 

パパで思い出したわ。パパにパンケーキのお店に連れてってもらえるようにお願いした時に、他の子がいない時に食べるのは平等じゃないとかでやんわり断られた事があったんだった。

パンケーキは私のお母さんの味を再現したくってお願いしたのに……。

あれ、だけど、この話には続きがあったような。家に帰ると、パンケーキの材料がーーー

 

 

 

 

 

「ーーーふぁ」

 

いつの間に寝ていたのだろう。部屋に帰ってきてからの記憶が曖昧だ。

ソファの上でゆっくりと意識を覚醒した私は、何をするでもなく夢の内容を思い出していた。

そう……そうだ、父親について何か考えていたんだった。

 

(……家出して、私を心配してくれてるのかな。………そもそも家出自体知らなさそうだけれど。あーあ、こういう時頼りになる大人がいればなー)

 

こういう、私達だけじゃ解決できないような問題が起きた時、一花や四葉が中心となって事態が好転するように奔走する。だけど私達の頭脳は五等分なので、問題が解決するような事はない。

だから自然と外部の誰か頼れる人に相談するべきなんだけれど……。パパは基本無関心だし、江端さんはドライバーだし。

あ、上杉がいたじゃない。

 

「って何でそこでアイツが出てくるのよっ!」

 

思わず自分自身に突っ込む。上杉が、頼れる人間?まさか。

そりゃあ花火大会の時も修学旅行の時も色々してくれたけれど……って、違う!私が目指すかっこいい素敵なお姉様はかな子ちゃんだけだわ!

……喉乾いたわ。コンビニ行こっと。そう思いつつロビーに降りて、

げっ。

何でコイツがここにいるのよ?

しかも今日はまた随分とびしょ濡れで、服までびっしょり。どこでヘアゴムを無くしたのか、貞子みたいになってるし。

「あいつ、また来て…。キモッ!いい加減にしてほしいわ、ほんとに、もう……。しつこいんだから」

口元の微笑みには、気付かないまま。

 

「おーい、うえすぎ……」

「何度言ったら分かるんですか。お客様の迷惑ですよ」

「…………すみません、帰ります」

「あらっ」

拍子抜け。意外とすんなり帰るのね。

ちょっと気になって上杉の姿を追った。

(………………)

「警備員さんの言う通り、あんたみたいなのがいたら、他の人のお目汚しになるわ」

「………二乃?」

「部屋に入りなさい」

そんなショボくれた顔されちゃ、放っておけないでしょうが。

 

「…………………へくちっ」

「やだやだ。辛気臭いわ。ってか普通に臭いわ上杉。仮にも女の子が出していい臭いじゃないわね」

「あー……諸々あって池に落ちた」

「どんな諸々?いいからさっさとシャワー浴びてきなさい」

「え?水道代かかるし」

「ここホテル!ってか、その髪我慢できない!こっち来なさい、上杉!」

「えぇ〜…」

 

上杉をシャワー室へ放り込む。

まったく。私が毎日きちんと手入れして綺麗な髪を手に入れてるってのに、こいつは色々と適当なのにサラサラなのがむかつくわね。

着てる服とか、普段の態度を見てればかなり質素で清貧極まる、私から言わせればケチな生活してるみたいだけど。シャンプーとかトリートメントとか、何使ってるのかしらね?

 

「スーパーのやっすいやつ」

「あんたそれ……ほんとに安い薬用のシャンプーとかだと、食器用洗剤と成分ほぼ同じなのよ?髪が傷むわ」

「嘘でしょ。私、将来ハゲるかもね」

「お婆ちゃんあたりになると怪しいわよね。髪といえば、ゴムはどうしたのよ?」

「池に落とした」

「また池ぇ?ま、これを機にゴム無しにしてみることを勧めるわ」

「昔は金……ショートだったんだけどね」

「あら。意外だわ」

 

あれっ。

あんなに険悪だったのに、いつの間にか上杉と喋れてる。なんでかしら。

………あ、今は家庭教師じゃないからか。

上杉個人には、あまり悪感情は感じない。

私はまだこいつのことを理解しようとしてなかったのかもしれない。

 

「……何があったの?ここに来る前に」

「………別に、何もないよ」

「いいから聞かせなさいよ。一人は楽だけど暇なのよ」

「……つまらない話だよ?」

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

五年前、私はある女の子に出会った。

一度会ったきりだからよく思い出せないんだけれど、私にとってその子はとても眩しい存在だった。

その子と遊んだ日の事はとても楽しくて、最悪だったはずの修学旅行はカラフルに彩られていった。

その子と約束したんだ。

必要とされる人間になろう、って。

だから私は今まで勉強を重ねて、必要とされる人間になろうとしてきた。

 

そんな折、こんな事が起きてしまって。

自分の不甲斐なさに泣きそうになっている時に、その子が現れたんだ。

 

「久しぶり。上杉風子ちゃん」

「………………」

 

私が取っていた行動は、脳内の辞書を片っ端から調べる事だった。

私の知り合いといえば、家族の他には五つ子くらい。五人に似てるような気もするけど、そもそも世間一般の女性がどんな顔をしてるか分からない。

 

他に……知り合い……クラスメイトの顔は覚えてないし………。前田君の女装?それとも菊が成長してビックバン菊になったのかな?あははー。中学生の時は交友関係断ち切ってたし、小学生の頃の知り合いなんて言われても分からないぞ。

 

「……人違いじゃないですかねー。じゃ、私もう行くんで」

「待った。あれ、私の事思い出せない?」

「帽子で顔を隠されてちゃ分からないよ」

「あー、これは事情があってね。んー、それじゃあこれで思い出せる?」

 

言うと、帽子の少女はポケットからお守りを取り出して……お守り?まさか。

「五年前、京都」

今度こそ私はハッとして、汗ばむ手で生徒手帳の写真を取り出した。

似ている。

面影があるといえば、ある。髪の長さ、目鼻立ち……。

 

「もしかして……あの時の」

「ふふっ」

「……………」

頭の中で様々な情報が駆け巡る。

私がずっと憧れ続けていた人、私にきっかけをくれた女の子。

過去の記憶と、今の彼女とが混ざり合い、ごちゃごちゃになって、もうなんだかよく分からなくなって逃げ出した。

 

「あっ!なんで逃げるの!?」

「私はまだあの時から成長できてない!」

「何の話!?」

「やめて!引っ張らないで!服が伸びちゃうでしょ!」

「それはあなたが……も、もう!………こ、これを返して欲しかったら言うこと聞いてね!」

「あっ!生徒手帳!卑怯な……!」

 

それは他の人に見られたくないのに…。

あれ、そういえば。私の生徒手帳には確かに当時の見られたくない秘密………つまり私の弱味が入っているんだけれど、なんでこの子はそれを知っているんだろう?

写真だけ見ても、『私が昔の自分を見られるのが恥ずかしい』っていうのには繋がらないと思うんどけど。

……まあ、いいか。

 

「風子ちゃん、あれ乗ろっ」

少女が指差したのは、二人乗りのボート。

あれなら私に逃げ場はないし、ゆっくり話もできるから……らしい。

流されるままにボートを漕いで、(逃げようとした罰、らしい)湖の真ん中まで来たところで少女は無邪気に笑った。

 

「……名前、知らない」

「私?私は……そうだなあ、零奈。改めて、五年ぶりだね。風子ちゃん」

「…………」

「髪、黒くなってたのにはびっくりしたけど。そっちのが似合ってるよ。サラサラでとても綺麗だし。印象変わるね」

 

聞きたいことがいっぱいありすぎて、くだらないことを質問するのが精一杯だった。

「…………なんでここに」

「今の君に会うため」

「今の?」

「聞いたよ。あれから勉強して学年一位になって、家庭教師もしてるんだって?」

「……どこ情報、それ」

「………………わ、わわ私の情報網を舐めない方が良いよぉ……」

どうした急にどもって。

 

「どんな生徒さんなの?」

「同級生の五つ子で……」

「うんうん。…………あっ。え、えー、五つ子!?うそー、私、し、ししし信じられないなー!」

「?……でね、その子達が困ったことに、馬鹿ばっかりなの」

 

思い出す。この数ヶ月、嫌んなるほど勉強したあの子達のことを。

 

「長女は夢追い馬鹿」

その夢がきっかけで、長女として胸を張れるようになれるって言っていた。あの子もちゃんと長女してると思うけど。

「どうせ夢は叶いっこないと言ってるんだけど」

夢という選択肢がある彼女は羨ましい。

「ま、根気だけはあるみたい」

私も、上手くいかなくても何かが残るって応援しちゃったし、ね。

 

「次女は身内馬鹿」

思い返せば、あの子はいつも姉妹のために行動していたんだと感じる。

「この子は姉妹贔屓ですぐ噛みつく」

自分も繊細なくせに、それ以上に家族が大切で何だかんだ面倒見も良い。

「…だけかと思っていたんだけれど、今はよくわかんない」

あの時二乃が姉妹に対して憤っていたのは、姉妹の事が好きだとか大切だとか、それ以外の感情のような気がする。

 

「三女は卑屈馬鹿」

自分が何もできない、いや、自分だけができることなんてないって勘違いしてた。

「初めは暗くて覇気のない顔をしてた」

自分に自信がなくて、世間一般の女の子や五つ子達を比較してしまいがち。

「最近は見るたび生き生きしていて安心してるよ」

何があったんだろうね。

 

「四女は脳筋馬鹿」

あの体力は反則だよなぁ。

「やる気もあって頼りになるけど、一番の悩みの種」

文字通り、問題児の中の問題児。だけど、あの子が最初に変わってくれたのは、とても助かった。

「それに………ああ、いや、何でもない」

私の思い過ごしだ、きっと。

 

「五女は真面目馬鹿」

真面目すぎて空回りしちゃって、それで失敗してしまう。

「この子とはまず、相性が悪い」

この子とは一度だけだけど、一番大きな喧嘩をしてしまった。

「だけど本当はやればできる子。このままじゃもったいない」

きっと一番伸びるのはこの子だ。

 

「だけど、全員馬鹿」

「あらっ。…………ふふ、でもなんだかびっくりしたなぁ。ひとりひとり、真剣に向き合ってるんだね」

「…………」

「きっと君はもう必要とされる人になってるよ」

『変われる手助けをしてほしい。あなたは私たちに必要です』

 

そういえば五月も同じことを……。

変われてる、のだろうか。

彼女たちの言うように、私は必要とされる人になれているんだろうか。

……いや。

「私はあの日から何も変わってない」

涙声になっていた。

あの子はきっと頑張っているはずなのに、私は勉強しかしなかった。他の全てを不必要だと切り捨てて、見ないふりをしてきたツケがこれだ。

私はこんなに馬鹿だったのか。

 

「………そっか。じゃあ、君を縛る私は消えなきゃね」

「え?なんて……」

「きゃーっ、噴水!」

「わあ!?」

普通に危ない!

降りそそぐ冷たい粒の雨。

ひたすらボートを漕いで逃げるけれど、噴き出す水は私たちを容赦無しに襲った。

服の中に忍びんこんだ水が背中を擽る。後で服洗わなきゃ……。

だけれど、自然と笑えるくらいには楽しかった。

まるであの日に戻ったみたいにーー。

ボートが岸に着いた。

 

「疲れた……」

「お疲れ様。じゃあ、これは返すね」

零奈は私の生徒手帳を渡した。

「でも、これは返してあげない」

五年前、二人で撮った写真。あの日の大切な思い出。

 

「なんで……」

「もう君に会えないから」

え?

なんでそんなことを……、いや、何のために私に?

混乱する私を置いて、彼女は歩く。振り返ることもせずに行ってしまう。ここで呼び止めなければ、本当に二度と会えない気がした。

思わず口から情けない声が出た。

 

「待っ……待って、行かないで」

「…………」

 

零奈は手元をごそごそさせると、それを私に投げた。お守り?金の刺繍が施されたそれは、京都のものに見えるけれどーー。

「自分を認められるようになったらそれを開けて」

「どういう……」

「それじゃあ」

「待…………!」

 

視界が揺れる。

急いで追おうとして、ボートから足を踏み外したのだと気が付いたときには、既に水面はすぐそこにあった。

水に叩きつけられる、その直前。彼女は一言だけ私に告げた。瞳に映ったその表情の中には、どんな気持ちがあったというのだろう。

 

 

 

「さよなら」

 

 

 

湖から上がった時。

そこに彼女はいなかった。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「ーーで、今に至る、と。そういえばその後四葉に会ったんだっけ」

「……………」

「悪いね、こんなつまらない話して」

「ひっく……うう〜〜………」

「なんで泣いてんの!?」

「だって、あんたずっとその子のこと尊敬してたんでしょ。なんだったら好きだったんでしょう?そりゃ泣くわよ、切ないわ」

「なによなんだったらって……ま、でも私のためにそこまで…」

「あーちょうどいいちょうどいい!手頃な泣ける話だわ!」

「屑」

 

涙脆いのは姉妹譲りだなぁ。泣き顔を見るのは一花と四葉以来かな。

「でもさ、元気出して?あんたみたいなクソダサお洒落下級者でも、好きになってくれる人が地球上に一人くらいはいるはずだから」

「………そうかな」

「そうよ。あ、リボン貸したげる」

「ありがと。ところで二乃」

「なによ?」

「風呂場で話してたからめっちゃ喉乾いた。お水ちょうだい」

「この話の流れでそれ言う?いいわ、ルームサービス頼むから……あっ」

 

二乃が電話を取ろうとした拍子に、近くの紙袋を蹴飛ばしてしまった。外に出た中身を拾うと、懐かしいプリントが。

ご丁寧にセロテープで破った部分を繋いである。

「私が作った問題集……やってたんだ」

「……ま、まあね。これ、個別で問題を分けてたんでしょう?……あの時も、その。一応は悪いと思ってる、わよ。…ごめん」

「………ふふっ。いいよ」

一時はどうなることかと思ったけれど、こうして謝罪の言葉を聞くといじらしいもんだね。

 

「その調子で、五月にも謝れる?」

「それは嫌!」

「なぜ!?」

可愛く頰を膨らましやがって。それも姉妹譲りか。まさか叩かれたことまだ根に持ってるの?

「昔はあんなことする子じゃなかった。五月が知らない子になったみたいだわ」

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

「だってさ」

「二乃が謝罪した、って。そんなにすんなり行きますか?信じられません」

「本当だって。あ、五月、卵入れて」

「はい。今から集中するので少し待ってください」

「はやく割れよ」

「そんなこと言われても……あっ、殻が入ってしまいました!」

「おいおい。……まあ、少しくらいならすぐ取れるから、いいか。じゃあ卵焼き作るから、お皿取ってくれる?」

「は、はい」

「……そうだ、何か好みの味付けとかある?普段の卵焼きもいいけど、偶にはね」

「味付け…ですか……マヨネーズとかありますか?」

「…………デブめ………」

「何か言いました?」

「あははは」

 

どうしたらいは。

私と五月が朝ご飯作ってるのがそんなに面白いの?

「だってなんだか夫婦みたいなんだもん」

「なっ!?」

「えっ」

「それも新婚の!」

「どんな見方だよ」

「あ、ありえません!」

 

こいつと私が、ねぇ。

あれ、なんかデジャヴ……。

「そうそう、思い出した、家族写真!プリクラの時の写真、どこにあったっけー」

「出さなくていい!それは出さなくていいからぁ!」

「らいはちゃん探すのはやめましょう!」

「お、なんだなんだ。風子、プリクラなんか行ってたのかー」

「気にしなくていいからぁ!」

朝からどたばたしつつ、ご飯を食べる。今日は白ご飯にお味噌汁にお魚、そして卵焼きだ。

 

「いただきます!……ところで上杉さん」

「ん?」

「私たち、なに喋ってたんでしたっけ」

「…………………二乃が謝ってた」

「そう、それです!私にはそれが信じられないんですよ」

「そう言われてもね……。あんたも意地張るのをやめなって。ほら、この前二人で映画行ってたでしょう?また……」

「そうは言いますが、私たちもあの後観たい映画の話で揉めたんですよ。ほら、『恋のサマーバケーション』より『生命の起源〜知られざる神秘〜』の方が面白そうでしょう?」

「恋……なに?まあ、そこをほら、ね」

「むう」

頰を膨らまして。二乃そっくり。

 

「ってな感じで、五月の方も意地になってるみたいでさ」

「そう。それで、上杉」

「?」

「なんでさも当たり前のようにいるのよ」

「まずは目の前の問題から解決しないときいけないしね」

「話を逸らすな」

入れたのはあんたでしょうが。

 

「昨日、零奈に色々言われて気付いたことがあるんだ。……人が変わっていくのは避けられない、って。過去を忘れて受け入れていかないとね」

「…………」

「だから二乃も、仲直りして帰ろう?」

「そんな簡単に割り切れないわよ」

家庭教師と生徒という関係が崩れた今、いつも強気の彼女は、今はどこまでも普通の女の子だった。

 

「私たちが同じ外見で、同じ性格だった頃。全員の思考が共有されているようで居心地がよかった」

「でもそれは五年前から少しずつ変わっていったの。皆んなはそれぞれの道を歩くようになっていった。五つ子同士なのに、好みが違う事が増えていった。『同じ事』が共有されなくなっていった」

「私だけを残して、ね。皆んなは五つ子から巣立っていったけれど、私だけが殻を破れたいないまま。あの頃を忘れられずに、髪の長ささえ変えられずにいるの」

「だけど巣立たなくっちゃならない。私一人だけが取り残される前に」

 

一花が言ってた繊細、って。この事か。

思えば、家を出て行った日も、彼女なりに変わろうとしていたのかもしれかい。それが上手くいかなくって、それで……。

彼女が変わったわけじゃない。

二乃は、姉妹が大切だからこそ、変わることを怖れていたんだ。

だけど、私という異分子が乱入したことで、無理矢理にでも変わらざるを得なくなってしまったんだ。

これが、私がとうとう掬い取ることのできなかった二乃の心理……。

 

「……それでいいの?」

「ええ、いいのよ。過去は忘れて受け入れていかなきゃいけない。その時はもうすぐそこまで来てる。……あと、心残りがあるとすれば、そうね」

「?」

「かな子ちゃん……」

「えっ。ちょっ」

「忘れさせてくれないわ」

忘れて!

や、でもそういえばこの子はあの日……。

こういう時、私はどうすべきだ?ああ、もう。誰か教えてほしいよ。

って、それを考えるのが私の仕事……なんだっけ?誠実に向き合えとも言われたんだっけか。

私の、誠実。

……これからやる事に誠実さのかけらも無い気がするけど。

 

「……あ、えーと。…………会えるって言ったら、どうする?」

「え?」

家にダッシュで帰らないと。

……演劇部にもらったカツラって、まだ捨ててなかったっけ?




おまけ

バストサイズを測るロボ「五つ子+風子のバストサイズの合計を発表します」
五月「バストサイズを測るロボとは……」
ロボ「測定結果は合計516です」
三玖「私達は88×5だけど、風子は…」
風子「なんと綺麗に六で割り切れるね。一人86センチは一般的に巨乳の部類に分類される、それでいいよね」
二乃「いや……でも……」
風子「それでいいよね?」
四葉(無理がある……)
一花(バレなくてよかった)

おわり。
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