今まで次話投稿でさっさと投稿できずに面倒だったので…。読み辛いようであればまた変えます。
おまけは七つのさよなら編が終わったら投稿する予定です。感想欄で言われた百合ハーレムルート書こうかなーと思ってます。
かな子になる事には抵抗があった。
二乃が、まさか彼女に恋愛感情を抱く事になるとは思っていなかったから。あの子は男の子が好きなタイプだと思っていたし、彼氏彼女の関係に憧れている節がある。
だのに。
外見は違うとはいえ…私なんかに恋心を抱いてくれた。よりにもよって私に。あの子ならもっと良い相手がいただろうに。もっとかっこいい彼氏、あるいは彼女ができたと思う。
だからこれは、彼女に分かって貰うための行動だ。かな子を忘れてもらうための…。
汗ばんだ手でノックをすれば、扉の向こうから走る音が聞こえる。ガチャリと音がすると、この数ヶ月で嫌と言うほど見た顔が出てきた。
「かな子ちゃん!」
「ど、どうもー…」
「遠慮せずに入って!」
「お邪魔します」
彼女の顔を見て、ああ、今からこの子に打ち明けなければならないのだと実感して、背中の辺りがじわりと汗ばんだ。
『今後のこと』を考えるなら、架空の女を演じ抜いて未練がなくなるまで付き合うべきだろうけど…。
……いや、そう言うことを考える必要はないな。この子達の仲が元通りになるなら、私がどうなろうが知った事じゃない。喉元に引っかかった錨を、無理矢理引っ張りだした。
「……その、あー……っとね。今日は言いたいことがあって」
「なあに?」
「……ごめん。本当に、悪かったと思ってる。実は…」
「いいよ。キャンプファイヤーをすっぽかされた件は水に流してあげます!ま、あれは私が一方的に言っただけだしね」
「そっち?あ、や!違くて!」
「はい、この話はこれでおしまい!お守り返すね。今日はずっと一緒にいてね。破ったら今度こそ許さないんだから」
「…………」
言いづれえ!
いぇーい私は風子です☆とか、この流れで言えるかよ!
い、いや、焦るな。タイミングが重要。今が正体を明かせる雰囲気じゃないなら、無理矢理そういう空気に持ってくまで。
「ちょっと待ってて。今、お菓子作ってる途中なの。本当はかな子ちゃんが来るまでに終わらせておきたかったんだけど」
「……すぐ終わらせよっか。私も手伝うよ。何作ってるの?」
「えっ、あっ、ちょっと待ってて」
「?」
携帯片手にベランダに行って、一体何がしたいんだろう。好きな子の前で緊張しちゃったのかな……。若いなー。うん、まあ、軽く現実逃避してるけど、他人事じゃないんだよなぁこれが。
「あれ、電話……えっ、二乃から?」
『もしもし上杉!?かな子ちゃんめっちゃ優しいし可愛いし、っていうか緊張してまともに顔見れないんですけどー!もー!心臓破裂しちゃいそうだわ!好きすぎてなんかもう辛いわ!』
「………そ、そうですね。えーと、大丈夫、二乃?」
『あ、ごめんごめん。かな子ちゃんってシュークリーム好きかな?』
「……………好きだと思うよ」
『オッケー』
電話切られた。
嫌な予感がして携帯を隠すと、ベランダからぴょこんと二乃が顔を覗かせる。
「シュークリーム作ろうと思うんだ」
「………いいね!」
いじらしいなこいつ。
「あー……と…どうやって作るの?料理は好きだけど、お菓子作りは経験なくって」
「料理、するんだ?」
「うん、まあ。家族が……家族に……妹によく作っててね」
「お姉様素敵!」
「………ありがと」
素直に喜べねえ!
「あー、違ったわ。かな子ちゃん。作り方だったわよね?クリームはもう作ってあるんだけど、生地は今から作るんだ」
「え?今から?」
「生地は作る前に材料を全部常温に戻さなきゃ、お店の味が出ないんだよね。今はもう冬だし、それで時間かかってたんだ」
(めんどくさっ……)
何だその面倒臭い料理。面倒臭いよ。お菓子作りって大変なんだな……。思えば料理対決の時も結構凝ったの作ってたし。
料理器具も見慣れないものばっかりだし。何だこの……何?よくわからないけど、もしかして分量測るやつ?
「そして出来たものがこちらになります」
「わぁー、あとは焼くだけですね先生」
「はいそうです!15分っと。…………」
「………………」
「…………………………」
「……………………………ちょっと電話」
三分経ったところで二乃が沈黙に耐えられなくなってしまったらしい。ベランダに走った。あれ、何かデジャヴ。
『会話が続かないんだけど』
「そこは頑張りなさいよ!ほら……何か共通の話題とかないの!?」
『…………かな子ちゃんの好きなものって何かしら。趣味とか……』
「勉きょ………読書とかでしょ」
『それなら分かるわ!』
二乃が顔を出した。いじらしい…。
「この前観た映画面白かったなー。あれって原作は小説だったのよねー。詳しい人いないかしら」
「下手くそ……ああ、一花が出てた奴……じゃなくて!あの恋愛映画ね!」
「そうそう、私とかな子ちゃんが初めて本屋に会った時に話してた奴ね。私のお姉ちゃんが出てて……」
「はは、そういえば似ている女優さんもいたような……」
「うん!女の子同士の禁断の恋愛を描いた作品だったわよね」
「……………」
改めて思うけど、よりによって女性同士の恋愛映画かよ。このタイミングで……。
「タイトル何だっけ」
「おばさんずラブ?」
「絶対違う……あ、焼けたみたいだよ」
オーブンから音がして、シューの部分を取り出す。……うーん、シュークリーム作った事ないからよく分からないけど、こういうのって焼いた直後はこんな茶色いものなのかな?
「う、嘘、失敗だわ……霧吹き忘れてたのかしら」
「やっぱり失敗か……気にする事ないよ、二乃。そう、失敗を恐れてはいけない。諦めず続けることで報われる日がきっとくる!成功は失敗の先にあるんだ!」
「え?」
「いやだから、成功は失敗の先に……」
「そこじゃなくて……」
二乃はベランダに駆けた。
『ねえ彼女、私のこと二乃って言ったわ』
「どうでもいいわ!」
『ああ、もう、彼女が名前を呼ぶだけでこんなに胸がときめくなんて!ええ、毎回言われてるけれど!その度にこんなにドキドキするだなんて!』
(つーかせっかくいい事言ったのに、感動するのそこかよ!)
材料が余っていたのでもう一度作る事に。ああ、もう、疲れる……
「そして出来上がったものがこちらになります」
「綺麗だね……私の知らないシュークリームだ。こんなのもあるんだね」
「あ、ごめん!作り直すね」
「いや、食べるよ。……うん、美味しい。こういうのもいけるね」
まあ、貧乏舌の私が言っても説得力ないだろうけどね。前の料理対決の時はそれで二乃を怒らせちゃったけれど、今回は二乃に喜んで貰えるんだから、人生どうなるかよく分からないよね…。
「ほら、どんどん食べて!たくさん作ったから!」
本当にたくさんだ……。三玖が料理をいっぱい作ったのを思い出す。
三玖、か。
あの子は二乃をとっても心配していた。正反対に見えるけれど、あの子は心の底でとても心配している。
三玖だけじゃない、一花も、四葉も、五月だって。二乃のことが心配のはず。
あの子達のためにも……。
「………こんなにたくさんあるんだから、さ。私達二人で食べるのは勿体無いよ」
「え?」
「………姉妹、いるんでしょ?今から呼んで、来てもらおうよ。皆んなで食べよ?」
さっき一花の話題で盛り上がった時に、何となく気付いた。
この子は家族を捨て切れていない。嫌いになりきれていない。いや、むしろ、大切だからこそ家出なんてしたんだろう。
だって、悩み方が五月とそっくりだもの。
勉強が出来なくって、焦って、自分の頑張りだけじゃ上手くいかなくって。
それでいて、私の事を受け入れられない。
そして、変わっていく皆んなについて行けない。それ故の疎外感。
……中間試験の時の五月と似てる。あの子もそうだった。
違うのは……二乃が、未だ羽根を広げられずにいるという事か。
飛び立つ手助けをするのは、きっと私じゃない。あの子達だ。
「姉妹のこと、大好きなんでしょう」
「そんなこと言わないで」
だけど、彼女はそれを拒絶する。
二乃は頰を紅潮させた。それでいて、声は自信なさげに震えていた。
壊されたくないのだ。この空間を。
今この時を、崩したくないんだ。
だけど、それじゃこの子は永遠に飛び立てないままだ。ある意味私を縛っていた零奈が私の前から消えて、私に進むべき道を見せたように。
この子を縛る鎖は、籠は。かな子はいなくならなくっちゃいけないんだ。
「せっかく二人っきりなんだもん。邪魔されたくないよ」
「…………」
「私は……」
伏し目がちに、彼女は言った。
彼女の鼓動がここまで伝わってくるようだった。震えた唇が言葉を紡ぐ。
「かな子ちゃんさえいれば、それでいいから」
…………。
違うんだなって、ようやく自覚した。
私は、この子に飛び立って欲しいとか、彼女を縛る自分は消えなきゃとか、そういう使命感で動いてた訳じゃなかったんだ。
もっとーー、もっと、単純な理屈。
私は、五つ子が羨ましいから、あの五人がとても可愛く見えたからーーだから、役に立ちたいって思ってただけだ。
あんなに仲良くできて、張り合えて、分かち合うことの出来る五人に惹かれて。そして彼女達と一緒にいると……柄にもなく、楽しいって思えたんだ。
だけど、いつまでもそこに浸るわけにはいかない。今のままの生活は楽しいけど、迷惑をかけてしまう。
それにーーそれ以上に、私が望むものが別にある。
「……やっぱ従姉妹だね。上杉も同じこと言ってた」
『……二乃、あんたは意外と家族想いで、皆んなのことが大好きなんだと思ってたんだけど』
「中間試験であんなこと言っちゃったし、迷惑かけちゃってるけどね」
『赤点を取ればクビ、ね』
『次は実現させなさい』
確かに、そんな事も言ったし言われた。
「………そうじゃないよ」
「え?」
でも、私が本当に望むのはそれじゃない。
勉強よりも大切なもの。
自分よりも大事なもの。
本当に望むのは、私が五つ子といる事じゃない。五つ子が五つ子であることーー。
「試験なんてどうでもいいよ。五人で一緒にいてほしいの」
人はいつか変わってしまうけれど。
それだけは、変わってほしくない。
「二乃、今日は話があって来たんだ」
「……………………」
「私は……『かな子』は、」
「待って」
………え、今?
「ちょっとトイレ行ってきていいかしら」
「い、今………?う、うん、いいよ」
彼女が部屋から出て行った。そして、同時に電話がかかってくる。……まさか。
「なに、二乃?」
『あんた今ホテルの近く?』
「………まぁ、うん」
『一階のカフェにすぐ来て』
「えっ。今から?」
「今から」
人使いの荒い……そう内心で毒づきつつ、カツラを外して私服に着替える。エレベーターはまずい、階段で行かなきゃ。
中野家のマンション程じゃないけれど、ここも中々高い。降りるだけでも大変だ。
時間を測りつつ汗だくになりながら、彼女の後ろ姿を見つける。おっと、お守りもカーディガンで隠さなきゃ……。
「遅いわよ」
(さっきはちょっと早いくらいだったのに……)
「なんで汗だくなの?すみません、ほら、アイスコーヒー」
「……注文してくれてたんだ。でもごめんね、私苦いの苦手で」
「砂糖とミルクもあるわよ」
「なら、いいや。ありがと」
彼女が言うには、今からかな子ちゃんに告られるかもしれないとのこと。そして人に聞いてもらうことで、自分の状況を整理したかったのだという。
甘ったるくて歯に染みるコーヒーを飲み干したところで、彼女は手を差し出した。
「今日は彼女に会わせてくれて……ええ、感謝してるわ」
「……らしくないじゃん?」
「この先どうなっても、彼女とは一区切りつけるつもり」
「…………二乃」
彼女は、本気で……。
「何もできなくてごめん。……頑張って」
「………」
彼女の手を握り返したところで、その顔が貼り付けられたものだと分かった。
私の腕を強引に引っ張ると、左手のカーディガンを捲り上げた。突然の事に反応が追い付かない。まずい、そう思った時にはもう私のーーいや、かな子がつけていたお守りが既に晒されていた。
頭の中が真っ白になった。
白の空間に最初に浮かんだ言葉を、口から放っていた。
「これは……!順を追って話すから……」
だけど、それ以上は紡げない。
視界の隅に入るのは、アイスコーヒー。まさか……ミルクの中に……。
薄れゆく意識の中で、二乃はどこまでも無表情だった。
その言葉はもう二度と聞きたくなかった、はずなのに。
零奈がダブって見えた。
「バイバイ」
私は、またーーー。
目を覚ました時、二乃はもういなかった。
ーー期末試験まで、残り三日。
最近執筆が遅れているのは鬼滅を一気見したのと、ファイアーエムブレム風花雪月を買ったからです。あれ面白すぎるよ!買って数日経つけどまだ教団ルート終わってねえ!
エガちゃん抜けて盾役がいなくなってどうしようと思ってましたが、ペトラが回避盾として優秀すぎる…。そのうち風花雪月の小説も出すと思います。まだ黒鷲の学級のキャラしか分からんけども。スカウトしたのヒルダだけだよ!もっと誘うべきだったよ!
そして鬼滅は柱が良いキャラしてますね。冨岡さんが中野家の家庭教師になったら、というIFも書いてますが投稿するかは微妙です。