五等分の花嫁 -上杉風子の場合-   作:悠魔

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七巻
初の春、ほか


 

 

 

『初の春』

 

 

夢を見ていた。

お嫁さんにしたいキャラクター人気投票に参加した夢を。

五位と千票近い差をつけられたばかりか、六位の前田とたった13票しか違わなかった日の夢を。

主人公なのに。

恋愛ものとはいえ主人公ならある程度貰っているはずなのに…!

 

「うわあああああ!!!………なんだ夢か」

「お姉ちゃーん、お爺ちゃん家に行くよー」

「はーい」

あれ、何の夢を見てたんだっけ。

 

 

 

 

 

 

 

『私、あなたが好きなの』

「わ!わー、ちゅーした!」

「正月から見るもんじゃなくない?」

 

冬に打ち付ける風は少し肌寒い。

今日は一月一日。正月だ。

おじいちゃんからお年玉を貰うと、神社に行ってお賽銭を投げる。えーと…二礼して二拍手して、だっけ?

いつもお祈りなんて来ないくせに、こういう時だけ人も多い。御神籤を引いてさっさと帰ろう。新年初勉強もしたいし。

まあ、今年の運勢なんて引かなくとも分かる。あの子達と会ってなら、ずっと。

 

「あ、フー子」

「なんでいつもあんたがいんのよ!」

「上杉ちゃんにらいはちゃん!よかったらうちに寄っていきませんか?」

「や、悪いけど」

「いくー!!」

ほら、やっぱり。

大凶だ。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

はぁ。勉強したかったのに。

それにしても女子が大勢、つけるチャンネルも女子寄りだ。

何かのドラマの再放送が流れてる。まぁ、正月らしいといえば……らしいけど。

ウチにはテレビなんてないから、どのチャンネルが面白いのかなんて全然分からないけどさ。

 

「真冬に髪を切ったのは失敗だったわ。スースーする……」

「でも、もう電車のドアに引っかかる事もないでしょう」

「それはそうだけど」

「私は冬に引っ越したからアパートの二階までの階段が少し辛い」

「それはただの運動不足ですよね」

「引っ越しで思い出したけど、なぜか陸上部の江場部長から年賀状届いてました」

「こわっ」

「あ、おせち作ったけど、食べる?」

「………あはは、遠慮しとく」

「?どうしたのらいはちゃん」

「あー…私、勘違いしてたみたい。中野さんのお宅はお金持ちって聞いてたから」

「色々ありまして……」

うん。本当色々あった。

 

「ひとまず今は必要なものから揃えてる段階ですねー」

「テレビは必要なの?」

「とにかく自分の家だと思って寛いでよ」

「あぁ……うん」

 

炬燵に七人か。

ちょっと狭いし、らいは優先でいいか。

私はこっちに座っとこう。

「ちょっと、何でそこに座んのよ。寒いでしょ?こっち来なさいよ」

「……………えっと」

「ほーら、遠慮しないで。そうだ、マッサージしてあげようか?」

「えっ?」

「じゃあ私、腕!」

「ちょっ」

「私は足を」

「おい」

「仕方ないわね」

「あるよ」

 

私の身体は五つ子に確保され、ありとあらゆる所を揉まれまくった。

変な気分だ。

マッサージなんて受けた事ないし、そもそも人に触られ慣れてないから身体が敏感に反応してしまう。

しかも私が男子ならともかく、女子同士のマッサージなもんだから遠慮っていう物が全くない。ありとあらゆるところを揉まれて、悶絶してしまった。

 

「ちょっ、触られ慣れてないからっ…!」

「フー子ちゃん肩凝ってるねー」

「なんのつもり!?」

「日頃の感謝だよね」

「嘘つけ」

なんだこれ。

 

(………!まさか、この状況は……)

 

『フー子ちゃん見て見て!ジャーン、可愛いでしょ。皆んなで協力してUFOキャッチャーでゲットしたんだ』

『似合わない……』

『ひどい!』

『そういうのは二乃は四葉が欲しがると思ってたけどね』

『うん。皆んな欲しがってた。……だから分け合ったんだ』

『ヒッ、ヒィェェァァ………』

 

「そういう事でしょ!?私を五等分の風子にしようって事でしょう!?」

「人聞きの悪い」

「そんな事しないよねー」

「ねー」

ほんとぉ?

だって今日の皆んなは何かサービス精神旺盛というか、こう……らしくない。

 

「いつもお疲れ様」

笑顔の二乃。

怪しすぎる…

「私のですがよければ食べてください」

ご飯をくれる五月。

怪しすぎる!

「お正月らしく福笑いでもどうですか?五つ子バージョンを作りました」

謎の努力によって生み出された福笑い。

難しすぎる!

 

「えっと、フー子に渡したいものが」

「それはまだ早いよ!」

「向こうの部屋いこっか」

「………何を企んでるっていうの?」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

さすがに、このままじゃフー子に悪い。

クビになったフー子に、仕事でもないのに家庭教師を続けてもらう。

せめても、と思って色々とサービスしたけれど……あんなものじゃ到底足りない。

「何とかしてあげたい……」

「お父さんにはできるだけ頼りたくないしね」

「私達ができること、か……」

 

何かできる事はないか……。そう考えた時、私達の頭の中には、共通のイメージが浮かび上がった。(ような気がした)

恋愛ドラマ。

恋人達のキス。

フー子に……キス……。

 

「不純です!」

「あんたもね。……一花、女優ならほっぺにくらいできるんじゃない?」

「女優をなんだと思ってるの!」

 

ほっぺに…………キス…………。

『三玖、私をその気にさせたね?もう誰も私を止められないよ』

『ええっ!?だ、だめだよフー子……やめて……』

『やめて欲しいなら、やめちゃうよ?』

『……やっぱやめないで』

「あんたが止まりなさい」

「皆んなはなんの話をしているの?」

 

うーん……流石にこれはダメかな。

どうせやるなら、皆んなの見てない所でやりたいし。

やっぱり、予定通りこれかな。何だかんだ一番喜ぶだろうし。

そうと決まれば、隣の部屋で待ってるフー子の所へ行かなくっちゃ。

 

「一花!」

いた。

「動かないで」

「えっ……?ちょ、何……を……」

 

フ、フー子が一花に近づいて……!

デリカシーない上に同性同士だからか、距離感を気にせずに、殆ど密着するかのように顔を凝視して……!

な、なにを……!?

 

「んっ……………っ、」

「やっぱり!これが一花の口だよ!」

「えー、こっちだと思うけどなー」

 

……福笑いやってた。

まあ、だよね。フー子らしいや。

「四葉、これはどう?」

「えー、どれどれ……あ、フー子さん」

「?」

「クリーム付いてますよ」

「うん…………うん!?」

 

ほ、ほっぺにチュー!

あんなに自然に!

らいはちゃんですら動揺してるのに全く戸惑いを見せずにあんなことをやってのけるなんて、只者じゃない……!

特殊な訓練でも受けてない限りは……!

しかもその後しっかり照れて、ついうっかりしてしまったと思わせる事で(つーか本当にうっかり)、キスされた側に心の距離が近いと思わせるという高等テクニック!

成る程……まさか、四葉がね……。

 

(まさかの四葉……気を抜いてた……)

「ハッ、殺気!」

 

何だかんだあって、フー子に家庭教師のお礼の件を伝える事にした。

今の私達では十分な報酬をあげる事ができないけれど……せめても、と思って用意したお金。

 

「せめても、と思いまして……」

「お年玉、ね。……まぁ、私がやりたくてやってるんだし、気にしなくていいよ。このお金はあんた達のために使いなさい」

「え、でも……」

「今お金が必要なのはあんた達でしょう?私に気を遣わなくていいから、まずはしっかり生活を送れるようにしなさい」

「上杉さん……」

 

フー子……!

そうだ、私はフー子のこういうところに惹かれて……!

 

「私の分は出世払いで結構だから」

「えっ」

「一人一日五千円、一日たりともまけないからね」

「えぇー……」

 

フー子……。

そうだ、フー子にはこういうところがあるんだった……。

 

 

 

 

 

 

『中野丸男の楽しい年末年始』

※風子ではなく風太郎の設定です。

 

 

 

「年末の仕事も終わった。後は年が明けるのを待つだけだ」

「年が暮れるのも早いものですな。お疲れ様でございます、旦那様」

「ああ、江端。……ところで、今日はまだ空いているかい」

「?ええ」

「我が家の大掃除を手伝ってほしい。勿論、その分の給料は支払おう」

「……ああ、現在、お嬢様方は一人暮らしをなさっているのでしたね。……おっと、五人ですから五人暮らしですか」

「ああ、誰かのおかげでね」

「ホホホ、何のことやら」

 

「未成年が部屋を借りれる筈がない。誰か成人が名前を貸す必要がある。誰が名前を貸したか、私が調べていないわけがないだろう」

「はて?この歳になると、物忘れが酷くなってしまいましてなぁ」

「それは由々しき事態だ。早急に代わりの秘書を探さねばなるまい」

「ホホホ、これは手厳しい」

「冗談だ」

 

「まあ、それはこの際放っておくとしよう。……掃除の話だが」

「ええ、最上階というだけあって、色々と整備が行き届いておりましたな。お部屋も大変お広く……」

「ああ。だが、彼女達が出て行ってしまってから掃除が大変になってしまってね」

「なるほど、それで私めに、と」

「御察しの通りだ」

「家族全員で大掃除を行い、その後美味しい年越しそばを食べて、親睦を深めようとしたのに。残念でしたなぁ」

「その話はやめろ」

「旦那様、12月の初めから年末の予定を入念に入れていたのにですなぁ」

「やめろ」

 

「それでは今より大掃除を始める」

「ホホホ」

「その笑い方をやめてくれるかい?確かに綺麗なように見えるが、部屋の隅や棚の上、特に風呂周りの上などは知らぬ間に汚れているものだ」

「埃やカビ、ですなぁ」

「幸い、掃除グッズは大量にある。まずは江端、水回りから頼む。水垢はいつのまにか出来ているからね」

「承知」

「私は部屋の掃除からだ」

 

「……部屋の掃除はまず、天井から埃を落とす事から始める」

「天井の掃き掃除は大変だが、この日のために通販で買ったスーパーロングモップを持ってきた」

「収納も簡単、良く取れゴミを逃がさないスグレモノだ」

「……………」

「掃除をしよう」

 

「次は床の掃除だ」

「テーブルの下やカーペットの下などはあまり汚れを意識しない。そういうところこそ、私が忌むべき埃が溜まっているものだ」

「フローリングの床を傷つけないよう、掃除機を丁寧にかけていく」

「カーペットも変えてしまおう」

「…………」

 

「さて……」

「今まで見ないフリをしてきたが、やはり大掃除と言うからには、全ての部屋の掃除をやってしまいたい」

「あの子達の部屋もだ」

「…………」

「娘の部屋に入ると言うのはいかがなものか」

「しかし、五月君たちには着信拒否されているから確認も取れない」

「………仕方あるまい」

 

「鍵は……かかっていないな」

「さて、久し振りに見る娘達の部屋はどんなものか……」

「何か、彼女達の趣味嗜好の分かる物だと助かるのだが」

「………ほとんど何も無い」

「それもそうか。家出しているのだからね」

「………掃除が楽だ」

 

「風呂掃除は終わりました、旦那様」

「そうか、早いな」

「若い頃に掃除夫のバイトをしていた時期がありましてなぁ。その頃の経験が役に立ちましたわい」

「そうか。僕は正直、江端を雇えた事を奇跡だと思う事があるよ」

「そうでございますか?まあ、亀の甲より年の功。旦那様よりほんの少しだけ年を取っているだけの事でございますよ」

「……一体何者なんだい、江端は」

「ただのしがない秘書でございます」

「謙遜を通り越して嫌味だな」

 

「何はともあれ、掃除もひと段落ついた。お疲れ様、江端」

「いえいえ、旦那様の方こそ」

「……ところで年末は暇か?」

「申し訳ありません。家内とハワイ旅行に行く事にしておりまして」

「そうか。ご苦労、もう上がってもらって構わない」

「失礼致します。良いお年を」

「ああ、良いお年を」

「……年末は一人で過ごそう」

 

「…………」

「……あ、ゴミ出ししないと……」

「…………」

「そろそろお腹が空いたな」

「年越し蕎麦でも作るか」

 

「蕎麦に入れる天ぷらはどうするか」

「やはり、海老天が一番だろう。二個入れておくか」

「そういえば五月君は、かしわ天やさつま天もトッピングしていたな」

「…………」

「………かしわ天も揚げるか」

 

「蕎麦には食べ方がある」

「細かいルールは様々だが、特に姿勢を正して食べる事が大事だ。ちょうどそこが麺で切れるようになっていて食べやすい。そういう長さに切られているからな」

「…………」

「………美味しい」

「だが、二乃君の作ってくれた料理の方が……」

「…………」

「うん、美味いな」

 

「テレビは普段観ないから、どの番組が良いか分からないな」

「四葉君に聞けば、どれが面白いのか教えてくれるのだろうか」

「……このドラマ、端役だが一花君が出ていた物だったな」

「録画しておこう」

 

「紅白か。たしか、三玖君はよく音楽を好んで聞いていたな」

「あのヘッドホンは、ほとんど飾りのような気もするが」

「……そういえば彼女の趣味は音楽なのか?あのヘッドホンをまともに使ったところを見た事がないが……」

「そういえば、日本史関係の本を読んでいた気もするが……」

「まあ、戦国武将好きだとか、そういう事はないだろう。たぶん」

 

「……………」

「あー」

「……意外と大きな声が出たな」

「………眠くなってきた」

 

「あけましておめでとう」

「と言っても、特にすることも無いな」

「…………」

「メールでも送ってみようか」

「江端……あけましておめでとう。ハワイ旅行を楽しんでくれたまえ」

「上杉……こいつは別にいいか」

「一花君達……そういえば着信拒否されているんだったな」

「武田さん……かねてよりお世話になっております、今後とも……云々」

「部下にも、労いのメールを……」

「……後は上杉君だけか。論外だな。メールを送るにも値しない」

「……暇だ。神社にでも行こうか」

 

「…………!?!?!?!」

「い、一花君!?それに二乃君に三玖君も、四葉君と五月君!!!」

「久し振りに見た!!!」

「なんか着物着てるし!!!!」

「やばい零奈さんに似て滅茶苦茶可愛い!!!!!」

「落ち着こう」

「迂闊に近づいてはまずい。仮にも家出されている身だ。あくまで、慎重に……」

「?あ、あれは……」

 

「お前達……」

「なんでいつもあんたがいるのよ!」

「上杉さんにらいはちゃん!よかったらうちに寄っていきませんか?」

「いや、悪いが勉強を……」

「行くー!!」

 

「何だと……?」

「上杉君、僕は君のことを勘違いしていたようだ」

「僕は君のことを、卑劣な屑野郎だと思っていたが、訂正しよう」

「今日から君は見下げ果てたドブネズミだ」

「それで?誰を狙うつもりなんだ?え?あわよくば五人全員と関係を築こうとしているつもりではなかろうな」

 

「おー、マルオー!お前も来てたのか」

「………!上杉か。奇遇だな。では僕はこれで失礼するよ」

「待てっつーの。正月くらい仕事休まねーでどうすんだよ!風太郎から聞いてるぜ?いつも仕事でいない、ってよ」

「………その風太郎君から、僕の娘達を唆した事は聞いていないのかな」

「はぁ?風太郎にそんな度胸があるわけないだろ」

「……………………」

 

「まあとにかく、酒呑もうぜ酒!新年から開いてる酒屋知ってるからよ!」

「僕は酒は苦手だ。特別な日にだけと決めている」

「今日がその特別な日なんじゃねーか!さ、行くぞ!」

「やめろ。肩を組むな。仲良しだと思われるだろ。おい、聞いてるのか!おい!」

 

 

 

 

 

ーーこの後、風太郎に対する愚痴を爆発させ、泥酔して酔い潰れたマルオが大暴れした後、上杉勇也の粋なはからいにより、江端さんにその時の一部始終を撮った動画を送られたと判明するのは、また別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「四葉のリボン大きくなってない?」

「転校してきた時はもっと小さいっていうか、細かったわよね」

「養分を吸ってるとか」

「あー、だから最近寒くてヘタってたんだね!教えてくれてありがとう三玖!」

「……納得するんですか!?!?」




最近スイッチで欲しいゲーム多いな…。
ポケモン剣盾にライザのアトリエにドラクエ10に、色々とタイトルが揃ってきましたねぇ。前まではスマブラとマリカぐらいしかなくね?と思ってたけども。
ps4はだってペルソナにキンハーに隻狼にDBFにプロスピにと、色々揃いすぎてるもん…。
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