一人ずつやっていくと原作の焼き回しになり、時系列順に並べると視点が何度も入れ替わってゴチャゴチャするので、風子目線の試験までの話を書くことにしました。よって五月が下田さんとケーキ食べるシーンや、二乃と三玖のチョコ作りのシーンはカットです。二乃×三玖書きたかった…。
ここまで読んでくださった読者の皆様ならきっと原作も既に読んでいるだろうと思い書かせていただいた次第です。
これを機に単行本読み直したり買ったりしてくれると嬉しいです!
ーー1月9日
「冬休みも終わっちゃったね」
「あんた達のクラスも進路希望調査もらった?」
「うん。でも何を書けばいいのか…」
「一花はすぐ書けるよね」
「うーん、まだ学校に言ってなくて」
「………」
よし、皆んな揃ってるな。
私も進路は決めかねているけれど、まあ、十分な学力がないと行きたいところにも行けないし、勉強しようか。
「よーし、じゃあそろそろ始めるよ」
「やりましょう!ぜひやってください!そして確かめてください!試験突破には一体何が必要なのかを!」
「アッハイ。と、ともかく三〇点越えを目指さないとね。頑張って……あっ」
「わっ」
「どうしたのよ」
「エッチな本でも見たんじゃない?」
一瞬気が抜けると同時、鼻に熱い感覚。
鼻血が出てる。
慌ててティッシュを詰める。うわー、久しぶりに鼻血なんて出たな。
ていうか。
「三玖……あのね、気持ちは嬉しいんだけれどもね、市販のチョコを食べさせてくるのはやめてくれない?」
「今日も持ってきた」
「マジかよ」
「あら、丁度甘い物欲しかったのよ」
「二乃にはあげない」
「はぁー?独り占めしないでよ」
「…………、しないよ、まだ」
?何の話だろう……?
頭を捻ってると、三玖が炬燵の上に大量のチョコレートを置いた。
「ってことで全部食べて感想教えて」
「罰ゲームかな?」
「わ、私も一つくらい……!」
「もー、皆んな勉強するよ?試験まであと二ヶ月なんだから」
「そうそう。皆んな四葉を見習って」
四葉は今回、いやに真剣に取り組んでる。
いつも真面目だったけれど、その入れ込みようは鬼気迫るものがあった。
やはりお父さんとの邂逅があの子に良い影響を与えたみたい。緊張感を持って取り組めている。
似たような理由で、皆んな真面目に勉強に取り組んでる。
そう、真面目に取り組んでると思ってたんだけどなぁ。
ーー1月14日
「ーー五月いないし!今日で三学期が始まって一週間、これからって時に!ぜひやってください☆そして確かめてください☆って言ってたじゃん!」
「気を確かに」
「静まって……鎮まれ……」
あー、もう。あの子は姉妹の中でも真面目な方だと思ってたのに。
もしや勉強から逃げたのか。
「ほら、五月はあれよ。今日はあの日よ」
「あの日………あぁ……大変だね」
「………あぁ、変な言い方して悪いわね。今日は母親の命日なのよ」
「……え?皆んなお墓参りに行かなくていいの?全員同じ母親じゃ……」
待てよ。
この子達のお父さんに隠し子がいて、全員同じ年齢だったとしたら……。
「ちょっとあの人シバいてくる」
「いらぬ深読みしてない?」
「正確には今日じゃないんです。お母さんが亡くなったのは8月の14日」
「あー、月命日」
「それであの子は律儀に毎月お墓参りに行ってるの。フー子も今度お線香あげて」
「それは良いけど……」
五月……本当にそれだけの理由で……?
私は知っている。
あの子が母親の代わりになろうとしていた事を。
あの子は、母親に囚われ続けているのではないのだろうか。
まだ高校二年生の私じゃ、助言できる事は少ないけれど。誰かの代わりを演じたり、なりたい自分になろうとする事は悪い事じゃない。
けどーー自分らしくいるって事も、同じくらい大切だと思うんだけどな。
ーー2月13日
一花が家の前で身を屈めてた。
お腹でも痛めたの?
「なんで好きになっちゃったんだろ」
何言ってんだコイツ。
「……えっと、一花?どうしたの?……大丈夫?」
「〜〜〜!!!」
「あ」
「痛っ!」
手、ぶつけてるし。
「な、なぜここに!」
「四葉が参考書を家に忘れたっていうから取りに来たの。家、入るね」
「あ!い、今はダメ!」
「えっ?」
「二乃と三玖がチョコを……じゃなくて…あー、参考書間違えて捨てちゃったかもしれないからさ、うん、今から買いにいくからついてきて!」
ええー…?
参考書も安くないんだから気をつけてよ。
一花と一緒に本屋に向かう。
お、あったあった、これだ。
「結構いい値段だけど、平気?」
「!え、えっと……し、心配しないで!お姉さんに任せなさい!」
「それならいいけど」
と。
本棚に興味深い本を見つける。
良い教師になるためのいろは、か。
ふむふむ。ふむふむふむ。
中々内容も充実していて、実践的だ。
「へー、いい先生になりたいんだ?」
「げっ見られてた!」
「照れないの!どうせだしそれも一緒に買ってあげるよ」
「自分で買うよ」
「遠慮しなくていいって。もしかした今度こそ落第になっちゃうかもしれないしね」
「?今度こそ?」
「あれっ、言ってなかったっけ?私達、前の学校で落第寸前でね。それはまずいって事で転校してきたんだよ」
「あー……まあ、あんた達ならありそうな話だね」
「という訳で、この出費は赤点回避のための投資みたいなもの!」
「んー…まあ、そこまで言うなら。ありがとね一花、これよろしく」
「はーい」
「うん、ありがとね、一花」
「…………ッ。うん。どういたしまして」
色々してもらって、悪いな。
この子達にはお世話になりっぱなしだ。
「一花。実はあんたが姉妹で一番器用で飲み込みが早いの。仕事との両立ができてるのが何よりもの証拠。合格しようね、今度こそ!」
「……うん!やるだけやってみるよ」
本が入った袋を片手に歩いていると、背後から呼び止められる。
ウチの学校の制服。
……誰だろう?
「な、中野さん!上杉さんも!」
「?」
「あ、水澤君に谷田部君」
「プ、プライベート百合ップルだ……」
「尊い!」
いや誰だこいつら。
「こんな所で会えるなんて!しかも名前まで覚えてくださってるなんて感激です!」
「……一花、この人達、誰?」
「同じクラスの子だよ」
「とてもそうは見えないほどの熱狂っぷりだけど……」
所謂、ファンとか信者ってやつかな。
「まぁ、でも私って、クラスの皆んなのお誘いをほとんど断っちゃってるし。そう思われても仕方ないのかな」
「とんでもないむしろアリです!」
「お二人は俺達みたいな下界の人間と別次元のお方ですから!」
「……え?わ、私も?」
「勿論です上杉さん!今日は何しに…」
「バカ、本買いに来たに決まってんだろ」
……うーん、なんかこう、むず痒い。
というか恥ずかしい。一花はともかく、別に私は大した人間でもないし…。
でもこれだけ慕ってて女優の話題が出てこないのは、まだ一花が端役にしか出てないから、なのかな。
この子的には喜んでいいのか複雑なところだろうけど…。
一花が困ったように頭を掻くと、何やら顔を歪めた。右手が腫れてる。さっきぶつけたやつだろうか。
男の子二人組は絶句した。
「中野さんのゴッドハンドが!」
「えっ。いやぁ、これくらい……」
「この店にお医者様はいませんかー!」
「も、もー!大袈裟!」
「恥ずかしい奴等め…」
たかだかぶつけたくらいで。
さすがにもうこれ以上は面倒くさい。さっさとこの場を離れよう。怪我をしている方の反対の手を握って、走り出す。
「あー、ごめんね。私達急いでるから……ほら行くよ一花」
「えっ?」
「あぁっ上杉さん!中野さん!」
「……愛の逃避行ですか!」
一花とひとまず本屋の外に出て待避する。
うわぁ、もう。面倒臭い。
一花の方を見ると、辟易とした表情が置いてあった。
「……図書館、行こっか」
「そだね。……手、大丈夫?」
「うん。あ、でもそんなに痛くないから心配しなくても……」
「ドジなんだから。気をつけなね」
「…………うん」
一花は顔を赤くして黙りこくって俯いた。
やば。恥ずかしかったのかな。
どうもこういう時の対処が苦手だ。
仕方なしに、彼女の右手を手に取った。
一花の手は柔らかかった。
私を引っ張ってくれたこの手。
繊細で長くて、綺麗なこの手。
「こうして摩ってれば痛みも和らぐから」
「…………、あ、ありがと」
この子は何だか放っておけない。
きっと。
こういうトコなんだろうなぁ。
ーー2月3日
「試験まで残り一月もないよ!皆んな、ここからが正念場!いい、ここの現代文の問題は要するに作者の意図を汲み取る必要があるわけで……」
「ぽへー……」
「作者の意図は……あなた……」
「横の糸は私……」
(ダメだこりゃ)
いつかは来るだろうと思っていたけれど。
教師としてのノウハウがない私の限界。
どこが分からないのか分からない!
どう教えたらいいのか分からない!
「頭が悪いと大変だね……」
「ぶち転がすわよ」
「というか皆んな、集中力の限界だよね」
「わ、私はまだ……!」
「むむ……」
けれど、その成果は出てる。
確実に各科目三〇点を取るために、あと一押し欲しいところ……だけど……。
この間買ってもらった本をめくる。
ーー詰め込みすぎは逆効果、ねぇ。
時には飴も必要か。
「決して余裕があるわけではないけど、明日は一日だけオフにしよっか」
ーー2月4日
「ふふ、休日デートにここを選ぶなんてフー子ちゃんもベタだねぇ」
「デート!」
「他に行きたいところあったなら言ってよね。こういうのあんまりよく知らないんだからさ」
遊園地。
気分転換といえば、これだろう。
ここに来るのは小学生以来だから、私も少しワクワクが抑えきれない。
あ、五月ったらジェットコースターを堪能して。乗る前はあんなに震えてたのに。
「次はあれに乗りましょう!」
「い、五月ちゃん待ってぇ……」
「つい数ヶ月前まで勉強サボって人生ゲームしてたら怒るような性格だったのに」
「というか五月はこっちが素だよね」
「もしかして人生ゲームしてた時、あの子も混ざりたかったんじゃ……」
「あれ、四葉は?」
「お腹が痛いからトイレだって」
「何故直接言わな……って、………、私もトイレ行ってくる」
嘘だな。
私はこっそり観覧車の方へと向かうと、四葉を探した。
悪目立ちするリボン。
あー、見つけた。
「え?もう一周ですか?」
「お願いします!」
「他に他にお客さんもいないからいいですけど、一体何周するんですか」
「……すいません、私も乗りまーす。相乗りいいでしょ?」
「………!ど、どうぞ……」
彼女の小脇には、現代文のノートと教科書が置いてある。
まさかとは思ったけれど、皆んなから隠れてここで勉強してたんだね。一花も前に撮影の合間に勉強してた事があったけど、なんだ、隠れて勉強するのがブームなのか。
「それにしても上杉ちゃん、よくここが分かりましたね」
「リボン見えてたし……」
「ああっ!頭隠してリボン隠さず.ですね!」
「はは……でもお休みの日くらいちゃんと休みなよ。せっかく貯金はたいて遊園地に来たんだからさ」
「いいえ。一番体力があるくせに一番おバカな私が、姉妹で一番頑張らなければならないんです」
「…………」
心なしか、四葉の笑顔に陰が見えた。
夕焼けが窓ガラスから私達を刺す。彼女の顔が、紅く、そして暗く照らされた。
「上杉ちゃん。私達が転校してきた理由をご存知ですか?」
「この間一花から聞いたよ。……、落第寸前だったんだって?」
「そうなんです」
四葉達のいた高校は、いわゆる名門。
試験に落ちれば落第なんて珍しい話ではなかったのだという。
そして当然の如く彼女達は落ちるが、そこで追試のチャンスが与えられた。
皆んなで勉強して再起を図ったが……、まあ、そこで受かってたらここにはいない。
(五つ子の中の誰かが落ちたのだろう。それで私の高校に来るようになって……)
そこではたと矛盾に気付く。
五つ子の中の誰かが落ちた。その落ちたメンバーに四葉は当然入っているだろう。だが、それだけで彼女はこんな顔を浮かべるだろうか。
真実はーーもっと、残酷なのでは。
………まさか。
四葉の陰りのある笑顔を見て、嫌な予感が頭に浮かぶ。
無力さに対する失望。
劣等感による苦しみ。
……この子は。
「落ちたの?その……四葉、だけが」
「さすが。上杉ちゃんは何でも正解しちゃいますね」
ーー私は何でも間違えちゃうのに。
そんな心の悲鳴が聞こえた気がした。
一人一人が、五分の一人前。
少なくともーー前の学校ではそうだった。
姉妹の中で、一人だけ出来ることがある。
しかし反対に、姉妹の中で一人だけできないこともある。
それが四葉の場合、勉強だったのだろう。
彼女は五分の一の外れクジを引いたのだ。
ーー四葉に勉強の才能はなかった。
運動能力を活かした生き方ができれば良かったのだろうけど、おそらく、彼女はそこまで入れ込む程好きというわけじゃない。
望まぬ才能を持った彼女は、どう生きるべきだったのだろう。
そして。
落第したのは四葉ひとりだけ、それなのに全員が転校してきたということは。
「皆んな私についてきてくれたんです」
「ーー例の、五人でいることが大事だっていう教え?お母さんのーー」
でも、それは五人を繋ぎ止める絆であり、五人を縛り付ける鎖でもある。
母親が死別さえしなければ、五人を苦しめることも無かったのだろうけど。ーー親として導く存在が要るべきだったと、つくづく思う。
姉妹が好意で四葉をフォローしても、劣等感を刺激するだけだ。
姉妹以外で、四葉を肯定してあげられる人が一人でもいたならーー。
「だからお願いします。今は少しでも勉強させてください。もう皆んなの足は引っ張りたくありません」
そう言って頭を下げる四葉は、とても、見ていられなかった。
「ーー今日は休みだって言ったでしょ。でも、残り半周、手持ち無沙汰だね。暇だしマンツーマン授業やろっか。他の四人には内緒、ね。特別だよ」
「は、はい!」
「ふふ。いい機会だし、昨日教えきれなかった国語の文章問題を理解させてみせるよ!」
「あっそれは大丈夫です」
「えぇーー……」
四葉のノートを覗くと、ちゃんと出来るようになってる。
まぐれ、じゃない。しっかり理解した上で問題が解けている。
他の姉妹に教えるのは苦労したのに……。
………待てよ?
たしか前に、三玖が四葉に武将の名前を教えてあげていた事があったような……
「四葉!」
「えっ、ええっ!?ちょっ、近っ!な、何をするつもりですか!?確かに頂上で絶好のタイミングですけれども!まさか!よもやマンツーマンではなくマウストゥーマウスをかますなんて!正月のありゃあ事故でございまして!」
「何言ってんの。…光明が見えてきたよ」
「何言ってんです?」
「あんた達のお父さんはやっぱり『正しい』ってこと。二人体制ならいけるかも」
「……??いや何言ってるんです?」
「国語はあんたも教えるの」
「えっ」
「無理無理無理!」
「やれるって!姉妹でも各々得意科目があるの。四葉、あんたが得意なのは国語!」
「私の…」
「特別なことをしろってんじゃないの。感じたまま言えばいいだけ!あんたができるなら他の四人もできる!あんた達は、五つ子なんだから!」
そう、特別なことはしなくていい。
だって私も、勉強が得意なだけで教えるのは得意じゃなかったもの。
四葉なりの伝え方で伝えればいいだけ。
ーー誰かに認めてもらったら、それは次の頑張りの原動力になる。
「ーーおバカな私が皆んなの役に立てるのですか?」
「駄目な先生でごめん。これからは皆んなが生徒で皆んなが家庭教師だよ」
「ーーおバカな私にできることがあるんですか?」
「四葉にしかできない仕事だよ」
「ーーもうーーもう、足を引っ張るだけの私じゃないんですか?」
「そうだよ。今度はーー今日からは、」
「あんたが皆んなの手を引いていくの!」
ーー2月5日
「これからは全員が家庭教師だよ」
「え?どういうこと?」
「自分が得意な科目を積極的に他の姉妹にも教えてあげるの!私のいない時もお互いに高め合って、全員の科目を一科目ずつ引き上げるよ!」
ーー2月14日
「本当に毎月いるんだね、五月」
月命日。
姉妹の中でも一番母想いであった五月が、必ず墓参りにやってくる日。
三玖から教えてもらった情報を頼りに墓所へ向かうと、本当にいた。お墓なんて見分けつかないと思っていたけど、良い目印があった。
朝から探した甲斐があったというもの。
「なぜ……」
「ここにあんたがいるって教えてもらってね。お線香、あげていいでしょ?」
「はい……」
少し驚いた様子の五月の隣で、線香に火を点して手を合わせる。この子の母親も、知らない人から参られても、困惑するだろうけど。
「全員家庭教師ですが、今のところ、良い傾向にあります。教わること以上に教えることで咀嚼できることもあるんですね。もっと早くやるべきでした」
「………む。私なんかいらないっての?」
「貴方に教えられた事を、噛んでいるのですよ。感謝してます」
「………」
いっちょ前に、四葉が最近教えてた所の慣用句を使いやがって。
生意気な。
「教えた相手にお礼を言われるのはどんな気分ですか?」
「恩着せがましいな……まあ、でも。悪い気はしないよ」
「私もです。姉妹に教えて、感謝された時の喜びーーそしてやり甲斐。私は、あの時の気持ちを大切にしたい」
五月は、きっと私の預かり知らぬところで何か自分が変わるための切っ掛けを得たのだろう。
母親に囚われているわけじゃない。
母親になるための手段として、それになりたいわけではない。
この子は、自分の意思でーー。
そして、きっと。
『先生』になりたい理由があるのだろう。
「私、先生を目指します」
ーー数時間後
墓参りを終えて、中野家に行ってみれば、ラップで包まれたチョコレートが。
三玖かな。
朝ご飯もまだだったし、丁度良い。
………うん、美味しい。
味音痴の私がこのチョコを食べてもロクな感想が出てこないし、他の人が食べたらあまり美味しくないって言うのかもしれないけれど。
でも、私にとってこのチョコはとっても美味しい。
自然に口角が上がるのを感じながら、模擬試験の結果を分析する、
「一番要領が良いのは一花だけど……やっぱり一番の成長株は……」
「あっ、上杉さん!鼻血!」
「わっ!ティッシュティッシュ!」
とうとうチョコを食べるだけで鼻血が出る体質になってしまったか…!?
「ふぁ……」
「あ、三玖!おはようございます」
「おはよ。ちょっと寝過ぎだよ、三玖。二乃もだけど」
「!来てたんだ、フー子。丁度いい……」
三玖はそう言うと、冷蔵庫の方へとよたよたしながら歩いて行った。
「あれ、ここにあったチョコ……」
「ああそれね。チョコレート、今日も食べておいたよ。とっても美味しかった」
「……………!」
「いつもありがとね」
「!!う、うん!」
思えば、家庭教師を始めた時からこの子には世話になりっぱなしだ。
積極的に勉強会に参加してくれて、自分の成績を上げる事に余念が無い。
「そのチョコなんだけど……」
「やっぱり三玖が一番だね」
「!!?な、何が!?」
「この前の模擬試験の成績!三玖が一番の成績だよ!」
「アッハイ」
「これは希望が見えてきた!」
これならーーいける!
「……私頑張るから。見ててね、フー子」
「?うん!」
ーー3月1日
(この試験で目指すのは赤点回避だけじゃない。他の姉妹にも負けない。あの日そう決めたんだ)
(今まで失敗続きの私だけど、勉強の神様どうか今だけは私に力を貸してください。だってあんなに皆んなで頑張ったんだから)
(お父さんとの約束もありますが。私の夢のため、まずはこの試験を通って進級しないことには話になりません)
(余計なことは考えちゃダメ。今は赤点を回避することだけに集中しよう)
(ありえない。ありえないわ。私があいつのことを好きだなんて、絶対に認めない)
(ーーやれるだけの事はやった。私はどうなってもいい、あの子達がどうか合格できますようにーー)
最後の試験が、始まる。
おまけその1、時系列
◯1月?日
鼻血(全員)
◯1月14日
墓参り、下田と遭遇(五月)
◯2月?日
チョコ作り(二乃&三玖)
↓
本屋デート(一花)
◯2月?日
試験まで残り一ヶ月切ってる
遊園地(四葉、ときどき二乃)
◯2月?日
これからは全員が家庭教師だ(五月)
◯2月14日
墓参り(五月)
↓
チョコ(三玖)
◯3月?日
試験当日
五等分の花嫁の世界を試験当時で2018年と仮定して計算してみました。だけどどっかで必ずボロが出てるんやろうなぁ…。
おまけその2、水澤君と谷田部君
一花と同じクラスの彼等が初登場したのは四巻のおまけページの四コマです。
「一花さんが片付けできない?いやアリだわ」
「いやむしろアリだわ」
おまけその3
零奈さん登場時の反応
「んー顔は面影あるかもだけどあんま似てないな」
無堂登場時の反応
「ぐるぐるの眼……性欲……大食い……似てる……」