五等分の花嫁 -上杉風子の場合-   作:悠魔

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最後の試験編はエピソードの順番が人気投票の順位と同じなんですよね。こういう小ネタ好きです。


最後の試験が二乃の場合

試験の前の日のことだ。

いつもすぐに帰って勉強会をする私達を見かねて、クラスメイトが声を掛けてきてくれたことがある。

 

「中野さん、最近すぐ帰ってるけど勉強の方大丈夫?試験でもあまり良い成績じゃないでしょ。分からない所があったら教えるけど」

 

凄く親切な人だと思う。

ぶっちゃけ五月は友達が多い方では無いから、こういう申し出があるのは凄く嬉しかったのだと思う。

けれど。

 

「ありがとうございます!だけど、今は私達だけの力で頑張りたいんです」

「ーー私達にはもう、最高の先生がついてますから!」

 

 

 

ーー3月7日

 

 

 

「五月!どう!?」

「うわあああん二四〇点ですううう!!」

 

国語数学理科社会英語合計
4735703240224

 

「やったあああーーー!!」

「どうしたんだあの二人急に」

 

五月と抱き合う。

本当に、本当によく頑張った。テスト前の一週間だけでなく、ずっと勉強を頑張っていたんだもの、そりゃ伸びる!

おめでとう五月!

となると、次はーー四葉。最も赤点に近い彼女だけれど、でも最も勉強したのも彼女の筈だ。

四葉を見つけた。

 

「四葉!試験の結果はどうだった!?」

「上杉ちゃん、すみません。ーー実を言うと姉妹の皆んなに教えてもらった方が、分かりやすい時もありましたーー不出来ですみません。……そして、ありがとうございました」

彼女は深く、深く頭を下げた。

「私……初めて報われた気がします」

 

国語数学理科社会英語合計
5133323632184

 

「四葉ーー頭を下げる必要なんてないよ。誇りなって!凄いよ、四葉!」

「ーーあ、ありがとうございます…!」

「今日は祝賀会だね。私のバイト先でやるから、四葉も行こっ!」

「ーーーは、はい!」

 

バイト先に行くと、もう既に三玖と五月とが到着していた。

赤点回避した旨を伝えると、二人とも自分ごとのように喜んでくれた。いや、五つ子の姉妹なのだから、自分の分身のようなものか。そりゃあ嬉しいよ。

皆んな頑張った訳だからね。

 

「私史上一番の得点です!合計一八四点とギリギリでしたけど…」

「私は合計二二四点。少し危ない科目があったのが課題ですね」

「そーだね。数学とか社会とかね」

「は、反省会は後にしましょうよ!三玖はどうでしたか!?」

「私は……二三八点」

「えーすごい!」

 

国語数学理科社会英語合計
4348417234238

 

流石は三玖だ。

この子に関しては特に心配はしてなかったけれど、やはり試験突破すると嬉しいものがある。

となると、今までの結果を鑑みるに、今回も三玖が一番の成績かな。

 

「あ、一花も来たよ。二乃はまだかな?」

「試験結果が返ってきたらここに集まると伝えてあるはずですが……もしかして」

「三玖!見違えたね。やっぱり三玖が一番の成長株だよ」

「フー子………」

「よかったー、一花も赤点なかったんだ」

「合計何点だったんですか?」

「私………」

「えーっと、二四〇点」

「ーーーー」

 

えっ?

ってことは、一花が一番?

 

国語数学理科社会英語合計
3863524047240

 

「あ、そうなんだ。ーーやった」

 

この子ったら、いつの間にそんなに勉強してたんだろう。確かに成績は三番目で成長できる要素はあったけれど、前回に比べると……えーと……七〇点くらい上がっているのか。

とんでもねぇ伸び率。

そういえば前回、特に点数が高い訳でもない理科が急上昇したんだっけ。今回は理科だけでなく全教科が大幅に上がってる。

 

「すごい勉強したんだね、一花」

「………ッ」

「いや〜頑張りました」

「お仕事もあるのに凄いです!私はてっきり、今回と三玖が一番かと」

「!あ……や……三玖、私………」

「一花、おめでとう。私もまだまだだね」

「…………」

 

「試験突破おめでとう!」

あ、店長。

「今日はお祝いだ、上杉さんの給料から引いておくので好きなだけ食べなさい」

「もー店長ったらウソばっかり。労働基準法24条で訴えますよー」

「ごめんなさいもうしません。……ああそれと、二つ結びの子が君達より先に来て、これを置いてったけど」

「え?あ!試験結果の紙!」

「それと上杉さん、彼女から君に伝言だ」

 

国語数学理科社会英語合計
3233404856209

 

「おめでとう、あんたは用済みよ」

 

 

 

「……なんかあったの君達?」

「………こっちの話です。紛らわしい伝言残しやがって……」

「やったー!全員赤点回避成功です!」

ともあれ、これで。

本当の本当に、私の役割は終わった。

家庭教師としての仕事もーー。

 

「皆んな、本当に……本当によく頑張ったね。凄いよ。特に三玖、あんたはいち早く安全圏に入って教える側に立ってくれた。助かったよ。ありがとう」

「……うん!」

「…………」

「よし、祝賀会は全員強制参加!ちょっくら二乃を連れて来るよ」

「上杉さん、もうすぐバイトの時間だ。これ使っていいよ」

「!どーも、店長」

 

さてさて、二乃。

あんたは今どこにいるのーー?

 

 

 

 

 

 

 

『最後の試験が二乃の場合』

 

 

 

 

 

 

 

 

ありえない。

ありえないわ。

私があいつのことを好きだなんて、絶対に認めない。

思い出しちゃダメ。

思い出させないで。

あいつのことなんて何とも思ってない。

そしてーーあいつは私のことなんて何とも思ってない。

だから、あいつにはもう会わない。

 

(分かってはいる。それは逃げだとーー)

 

頭の中では理解している。何とも思ってないのなら、会っても平気なのだろう、と。

それでも私は、何とも思われていない、その事実にーーきっと耐えきれない。

会う度に顔がチラつくのなら、そもそも会わなければ良いだけの話だ。

だから、私は、今、ここにいる。

 

「帰ってきてくれたんだね二乃君」

「パパ、その君付けやめてって言ってるでしょう」

「悪かったね二乃く、あー……ご、ごほんに、に、二乃っ。げふん。先程赤点回避の連絡をもらったよ。君達は見事六人でやり遂げたわけだ。おめでとう」

「あ、ありがとう」

「どうやら上杉君を認めざるを得ないようだ。だから明日からはこの家に来なさい。試験突破のお祝いの用意もしてあるよ」

「あいつとはもう会わない!それと……もう少し新しい家にいることにしたわ」

「えっ」

 

暗いから、パパが今どんな顔をしているかはわからない。

まあ、いつもの無表情でしょう。

 

「試験前に五人で決めたの。一花だけに負担はかけない、私も働くわ」

「ーーーそれはーー」

「正しくない、それは承知の上。自立なんてしたつもりもないわ。でもあの生活が私達を変えてくれそうな気がする。少しだけ前に進めた気がするの」

 

停滞していた時間は進む。

翼を広げなければならないのだ、私達は。

 

「……理解できないね。前に進むなんて抽象的な言葉になんの説得力も無い。君達の新しい家とやらも見させてもらった。僕にはむしろ逆戻りに見えるね」

 

言ってくれるじゃないの。

 

「五年前までを忘れたわけではあるまい。ーーもう君達に二度と、二度とあんな暮らしをさせてたまるものか。誓ったんだ、あの人に、自分自身に。君達に不憫な暮らしは絶対にさせないと……僕の生ある限り君達を守ると……!だから聞き分けて……」

 

その瞬間。

眩い程の光が私達を襲った。

白馬の王子様が、現れた。

「うえすぎ……」

白馬じゃなくてバイクだし、王子様じゃなくて女の子だけど。

でも。

私をここから連れ出してくれるひと。

 

「上杉、なんでここに……」

「えっ!?上杉くん!?」

「ここにいたのね二乃。帰るよ」

「はぁ!?」

王子様は突拍子も無い事を言い出した。

「な、何よ、それ!」

「早く乗って!バイトが始まる前に帰らないといけないから、さ」

「ちょ……」

「二乃。やめて。君が行こうとしてるのは茨の道だ、うまくいくはずない。後悔する日が必ず訪れるだろう。心配だし、外も寒いからこちらに来て中に入ってぽかぽか暖まりなさいな」

 

……もう。

会わないと決めていたのに。

でも、茨の道だろうが何だろうが、私は前に進むと決めたのだ。

彼女は、手を伸ばしてくれている。

 

「行って!上杉」

「……え、えーっと、お父さん。

ーーー娘さんを頂いていきます!」

 

何ともテンプレートな台詞を吐いた。

だけど、何故だろうか。

気持ちが高揚していた。

私の想いに知ってか知らずか、羽ばたいた先でーー貴方に会えたのだから。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「江端。めでたいことに娘たちが全員試験を突破したらしい。………僕は笑えているだろうか」

「………………勿論でございます」

「………ほんと?」

「……強いて言うなら苦笑いです。これ以上ない困り顔でございます」

「そうだよね……」

「…………」

「…………」

「………どうしよう江端」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

「あんた、びっくりするほどバイク似合わないわね」

「うるさいよ。ああ、知ってるかもしれないけど他の四人も試験合格だよ」

「えっ?なに!?風で聞こえない!………あっ、これのこと?」

「あ!やめて!見ないでってば!」

 

国語数学理科社会英語合計
8997949188459

 

「………これって………」

「得意の理系科目だけでも、と思ったんだけれど。……一生の不覚、ってやつ?あーマジで恥ずかしい」

「………私達のせい?」

「違うよ。そんなことより、ちょっと飛ばすからーーしっかり、掴まっててよね」

 

「…………」

「…………」

「寂しくなるね」

「……!………、……」

 

「ーーっていうか何で私だけノーヘルなのよ!?」

「だってあんたが行けって……」

「危ないじゃないの!バイクの死亡率知らないの!?私も知らないけど!」

「ヘルメット一つしかないもん」

「はぁ!?あんたのをよこしなさい!」

「分かったってば!止めるところ探すから暴れないでって!」

「全く、もう。嫌んなるわ」

「…………」

「あんたはずっとそうだったわね」

 

「ほんと、最低。最悪」

「……ふふっ」

「………なによ?」

「何だか懐かしいなー、って思って」

「……なに、それ」

 

ーーーああ、やっぱり。

初めてのこの気持ちは、収まらない。

抑えきれない。

 

「変なの」

 

あの時あんたが教えてくれたこと。

あんたが勝手に教えてきたこと。

胸の中で、高鳴ってる。

 

 

 

 

 

「あとは…そうね」

 

吹き抜ける風が、夜の中に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイクの上は、二人だけの空間だった。

ああーーようやく、未来へと、明日へと進み出したばかりなのに。

時が止まってほしいだなんて思ってる。

バイクが止まらないでほしいだなんて思ってる。

 

このまま、いつまでも、この時間が終わらなければいいのにーー。

 

 




最新話読みました。
どうもね、おめでとうって気持ちよりも先に私の推し(一花と二乃)が選ばれなかったんだっていう辛さが先に来ましたね。ごめんね四葉。
でも誰が選ばれてもちゃんと祝福しようと決めていたので、辛いけれどもそれ以上に本当に喜ばしく思います。
良かったね四葉!

13巻が今週で終わりだから、あと単行本一巻分(9〜10話くらい?)しかないのかぁ…寂しい……
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